2017年10月22日

親が長命だと生活習慣によらず脳卒中にならない?


Effect of Exceptional Parental Longevity and Lifestyle Factors on Prevalence of Cardiovascular Disease in Offspring.
2017  10月  アメリカ

両親が長命だった者が脳卒中や心血管疾患にかかる率はあきらかに低いことがわかっている。

この関係がまったくの遺伝によるものなのか、それともライフスタイルも影響したものなのか はあきらかになっていないのでしらべてみたそうな。


65-94歳のアシュケナージ系ユダヤ人を対象にして、
すくなくとも両親のいずれかが95歳以上生きた395人と、
両親共に94歳以下までだった450人のグループにわけた。

脳卒中など心血管疾患の有無および社会経済的地位、身体活動、食習慣についてのアンケートをおこない関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・肥満、喫煙、飲酒、身体活動、社会階層、食事内容のいずれもグループ間で差はなかった。

・親が長命だったグループでは高血圧が29%、脳卒中が65%、心血管疾患が35%少なかった。

95歳以上まで長生きした者の子どもはライフスタイルや社会階層、栄養状態によらず脳卒中や心血管疾患が少なかった。彼らの長寿遺伝子が病気予防におおきく影響しているのかも、


というおはなし。
図:長寿

感想:

家系に脳卒中おおいから小学生のころから覚悟はしていたよ。

2017年10月21日

脳卒中後うつ患者の脳内ネットワーク


A Study of the Brain Abnormalities of Post-Stroke Depression in Frontal Lobe Lesion.
2017  10月  中国

脳卒中後のうつ症状は患者の30-60%に見られリハビリの大きなさまたげになる。

そのメカニズムはいまだよくわかっていない。いくつかのネットワーク仮説が提唱されてきたがいずれの研究も病変位置がさまざまな患者をひとまとめにして評価していた。

今回、もっともよくあるタイプの前頭葉脳卒中のうつ患者に限定して、
脳の各部分の体積変化を評価するvoxel-based morphometry (VBM)と
安静時脳機能MRI(rs-fMRI)から脳の部位間の同期的機能結合(FC)を評価する方法を
組み合わせてしらべてみたそうな。


前頭葉に梗塞のある脳卒中患者30人について
うつ程度を評価するテストと
MRIの解剖画像および安静時のBOLD画像を撮影して関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・うつ患者の前頭前皮質と辺縁系、運動皮質の灰白質体積が減少していた。

・前帯状皮質を起点にしたとき、前頭前皮質、帯状皮質、運動皮質との機能結合は低下し、海馬回、海馬傍回、島皮質、扁桃体との機能結合は増加していた。

・病変のある側の脳半球は活動が低下していた。

脳卒中後うつ患者では前頭前野から辺縁系にかけてのネットワークのはたらきが気分に影響していた。さらに運動皮質やデフォルトモードネットワークもまきこんだネットワークも脳卒中後うつに影響していると考えられた、


というおはなし。
図:

感想:

そんなことだろうと思っていたよ。

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2017年10月20日

3年後の手の回復程度


Patient reported outcomes of hand function three years after stroke.
2017  10月  オランダ

脳卒中を発症するとおよそ80%の患者の手の機能に問題が生じる。そして3ヶ月後 20%の患者は程度の差はあっても手の機能になんらかの問題がのこると考えられている。

手の機能評価には多くの側面からのアプローチが必要になる。
こんかい Michigan Hand Outcomes Questionnaire (MHQ)アンケートをもちいて発症後3年ほどの脳卒中患者の「手の回復度」についてしらべてみたそうな。


発症から2-5年(平均36ヶ月)の脳卒中患者576人にMHQアンケート用紙を送った。

MHQは手に関する6つのドメイン(機能、日常生活動作、仕事、疼痛、外見、満足度)からなり各100満点で57の質問がある。


次のようになった。

・36%から回答があり、非回答者との年齢(平均63.8)や性別の差はなかった。

・MHQの総合スコアの中央値は79.9、

・各ドメインのスコアは、機能75.0、日常生活動作90.5、仕事85.0、疼痛100(痛みなし)、外見93.8、満足度83.3 だった。

・もともと重症だった者や小脳 脳幹以外の脳卒中、低教育歴の者でMHQスコアが低かった。

発症からおよそ3年後の脳卒中患者についてMHQアンケートで手の回復度を複数の側面から評価できた。手の見た目の「美しさ」や機能上の「満足度」はおもいのほか重要と考えられた、


というおはなし。
図:脳卒中から3年後の手の回復

感想:

低教育歴でスコアが低いのは、関連情報に乏しくて現状を良しとするべきか判断がつかないからなんだろな。

2017年10月19日

脳の白質病変が小さくなる簡単な方法 RICとは


Remote Ischemic Conditioning May Improve Outcomes of Patients With Cerebral Small-Vessel Disease
2017  10月  中国

ラクナ梗塞、微小脳出血や白質病変は脳小血管障害(cSVD)とも言われ、血管性認知症の主な原因でありアルツハイマー病とも関係すると考えられている。

しかしcSVDの有効な治療法はない。

いっぽうで 遠隔虚血コンディショニング(RIC)はターゲットとなる臓器から離れた組織に虚血再灌流を短時間繰り返すことで保護効果が得られるとする現象である。

最近では脳卒中の再発予防や抗炎症 抗血栓効果、さらには白質病変や脳の灌流状態を改善する効果の報告もある。

そこで遠隔虚血コンディショニングの脳小血管障害と軽度認知障害への効果を実験でたしかめてみたそうな。


cSVDで軽度認知障害の患者30人について、RICグループ14人と偽RICグループ16人にわけた。

RICは両腕に巻いた腕帯を200mmHgの圧力で締めつけ、そして開放する。このサイクルを5分間に5回行い、1日2セット、1年間継続した。

偽RICでは締めつけ圧力を50mmHgにして血流が止まらないようにした。


次のようになった。

・1年後、白質病変体積がRICグループではおおきく減少し(9.1→6.5cc)、偽RICでは有意な差は生じなかった。

・ラクナ梗塞の数は両グループで差はなかった。

・視空間認知と実行能力はRICグループで明らかにすぐれていた。

・RICグループでは中性脂肪、総コレステロール、低密度リポ蛋白、ホモシステインがおおきく減少していた。

・中大脳動脈の脈動性にも差が生じていた。

遠隔虚血コンディショニングには脳小血管障害の白質病変を小さくし、認知能力の衰えを遅らせる効果がありそうだ、


というおはなし。

図:遠隔虚血コンディショニング装置

感想:

これは流行る予感。

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2017年10月18日

脳卒中経験者に運転させていいのか


Investigating cognitive ability and self-reported driving performance of post-stroke adults in a driving simulator.
2017  10月  オーストラリア

脳卒中を経験した元ドライバーが運転を再開する際には医師の許可が必要である。

車の運転は自らの認識能力を自覚して常に行動に修正をかける複雑なメタ認知活動を要する。その能力評価には机上と路上のテストが必要になる。

しかし路上テストは現実的ではないので、運転シミュレータをつかって脳卒中経験者の運転能力を健常者と比較してみたそうな。


元ドライバーの脳卒中経験者で、すでに医師から運転再開許可を得ている40人と同年齢の健常者43人について認知機能テストとドライブシミュレーションをおこなった。


次のことがわかった。
・運転に必要な 心理的、身体的、スピード的かつ 自己を評価する能力は両グループで差がなかった。

・認知能力的に劣る部分はあっても 脳卒中経験者は自己の能力を過大評価しそうにはなかった。

・平均して脳卒中経験者は認知能力の点で自己評価が低い傾向にあった。

脳卒中経験者は自らの欠点を自覚して運転を正そうとしているようにみえた。ドライブシミュレータと認知機能テストの組み合わせは運転能力評価に役立つかも、


というおはなし。
図:脳卒中のドライブシミュレータ

感想:

健康なひとでさえ事故を起こすのに、脳をやられてなお「自分は運転できる」と考えること自体がドライバーとしての適性に欠ける証拠。

ただし じぶんは例外。
脳卒中経験者は自動車運転をナメきっていることが判明

2017年10月17日

右脳が身体バランスに特化はほんとうか?


Right cerebral hemisphere specialization for quiet and perturbed body balance control: Evidence from unilateral stroke.
2017  10月  ブラジル

左右の脳半球が運動コントロール的にそれぞれ別のはたらきをするという考え方がある。たとえば左脳はおもに筋力を、右脳はバランスをになうという。

特にバランスコントロールについて左右脳のちがいを実験でたしかめてみたそうな。


慢性期脳卒中で中等度片麻痺の 右脳損傷患者9人と左脳損傷患者7人、健常者24人について実験をした。

静かに立っているときと外力を加えたときの体重の圧力中心と身体の揺れ、下肢関節や筋肉の動きを測定した。

視覚によるバランス補正の影響を知るために視野を塞いだ実験もした。

足の感覚機能への影響を調べるべく 硬い床と柔らかい床を用意した。


次のようになった。

・静かに立っているときの圧力中心と身体の前後左右への揺れは右脳損傷患者のみが大きく、

・左脳損傷患者は硬い床のときだけ左右の揺れが健常者よりもおおきかった。

・外力を加えたとき、身体の前後への揺れの大きさ 速度 回復時間 下肢筋肉 関節のうごきは右脳損傷患者がもっともおおきく、

・左脳損傷患者は麻痺脚の筋肉のブレが健常者に劣るのみだった。

左脳損傷にくらべ右脳を損傷した脳卒中患者のバランス能力は劣っていた。この効果は足の感覚情報の違いに依らなかった。右脳はバランスコントロールに特に重要なのであろう、


というおはなし。
図:脳卒中患者のボディバランス

感想:

なるほど、駅の下り階段で おんな子どもや高齢者にまで煽られるのはこういうわけだったのか。

2017年10月16日

お医者さんでも脳卒中になるの?


The Risk of Stroke in Physicians: A Population-based Cohort Study in Taiwan.
2017  10月  台湾

人々の健康意識の高まりから医師の労働時間は長くなるいっぽう、訴訟のリスクも増えて常にストレスの高い状態にあると考えられる。

これら過労やストレスは脳卒中の要因でもあることから、はたして医師の脳卒中リスクは一般人にくらべ高いものなのか しらべてみたそうな。


台湾の国民健康保健データベースから28062人の医師と84186人の一般人の記録を抽出して解析したところ、


次のことがわかった。

・医師は高血圧(23.6% vs. 19.1%)、高脂血症(21.4% vs. 12.9%)、冠動脈疾患(6.4% vs. 5.7%)の割合が多かったが、脳卒中は(2.52% vs. 3.60%)医師が少なかった。

・高血圧、糖尿病、高脂血症、冠動脈疾患、現役医師のちがいを考慮にいれても医師の脳卒中リスクは明らかに低かった。

高ストレスで労働時間もながく、高血圧 高脂血症 冠動脈疾患がおおいにもかかわらず 医師の脳卒中リスクは一般人よりも低かった。これは病気への意識と知識の高さゆえのことだろう、


というおはなし。
図:医師 多忙 ストレス

感想:

ようするに高血圧や高脂血症のたぐいは積極的に治療しなくても実はたいした脅威ではないってことだな。

2017年10月15日

高血圧の認知能力の低下は肥満で防げる?


Higher Adiposity Is Associated With Slower Cognitive Decline in Hypertensive Patients: Secondary Analysis of the China Stroke Primary Prevention Trial.
2017  10月  中国

肥満は脳卒中など心血管疾患のリスク要因の1つである。

いっぽう肥満の心血管疾患患者は生存率が高く回復も良いとする いわゆる「肥満パラドックス」は数多く報告されているものの、認知能力との関連はよくわかっていない。

そこで高血圧患者について肥満と認知能力との関連を大規模にしらべてみたそうな。


45-75歳、およそ4年半の間に認知機能検査を2回以上うけた高血圧の男女16791人について、そのスコア変化と肥満度との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・この間に男性の15.3%と女性の33.1%に認知障害が確認された。

・標準体重にくらべ肥満の男性は 11.3% vs. 18.0%で、女性では 30.1% vs. 36.5%で認知障害が少なかった。

高血圧を対象とした調査では 肥満度が高いほど認知能力の低下がゆっくりだった、


というおはなし。
図:肥満とミニメンタル検査スコア

感想:

肥満を見る目がかわったよ。

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2017年10月14日

脳卒中後の視覚障害の種類と割合


Vision In Stroke cohort: Profile overview of visual impairment
2017  10月  イギリス

脳卒中のあと65%の患者がなんらかの視覚障害を経験するという。

これら視覚障害は、視力低下、視野欠損、眼球運動障害、視知覚障害のおおきく4つに分類できる。

それぞれどのくらいの割合なのか しらべてみたそうな。


20の病院の脳卒中患者1345人にアンケートして、視覚障害の疑われる915人についてくわしい検査を行ったところ、


次のことがわかった。

・8%は正常で92%に視覚障害が確認できた。

・24%は視力0.5未満、13.5%が視力0.3未満だった。

・斜視が16%、眼球運動障害が68%だった。

・同名半盲など視野欠損が52%あった。

・視覚不注意は15%、4.6%が視知覚障害だった。

・84%が視界不良、読字困難、複視をうったえていた。

・これら視覚障害には めがねの新調、プリズムめがね、タイポスコープ、片目遮蔽などの対応策がとられていた。

脳卒中後の視覚障害はめずらしくなく さまざまな種類があり、おのおの対応策があった。すべての脳卒中患者が視覚検査を受けるべきだろう、


というおはなし。
図:メガネ

感想:

脳卒中やってから まいとし日が短くなってくると実感するのが、夕方の薄暗くなってきたときのコントラストの弱さ。車運転しててこわい。

2017年10月13日

鍼治療は脳卒中後うつの予防になる?


A Population-Based Cohort Study on the Ability of Acupuncture to Reduce Post-Stroke Depression.
2017  9月  台湾

脳卒中後のうつは長く患者に影響する合併症の1つである。投薬治療も試みられているが効果は小さい。

伝統中国医学の鍼治療は漢方薬もあわせると 台湾人の脳卒中患者の半数以上が選択する代替医療でもある。

鍼治療を受ける患者が脳卒中後のうつになりにくいという報告がいくつかあるので、これを検証してみたそうな。


2000-2005に脳卒中になった台湾人について、鍼治療経験とうつ発症の有無を2007までフォローしたところ、


次のことがわかった。

・トータル8487人の脳卒中患者のうち1036人は 発症後6回以上鍼治療を受け、1053人は1-5回、6398人は鍼治療をまったく受けなかった。

・年齢、性別、重症度、他の病気など関連要因を考慮に入れると、頻繁に鍼治療を受けていた(6回以上)グループではうつリスクが53%低く、それより少ない頻度では28%のリスク低下だった。

脳卒中後の鍼治療はうつのリスクを低下させるようだ、


というおはなし。
図:鍼治療頻度と脳卒中後うつ割合

感想:

今回使用したデータベースにはどのツボを刺激したかについての情報がない。だから鍼でうつを治そうとした結果ではなく、目的によらず鍼治療をうけること自体のおまけ効果 といってもいい。

鍼治療のような根拠のよくわからないものを積極的に利用しようとする楽観的かつポジティブな気質が そもそもうつと縁遠いのではないか、、、と思う。

2017年10月12日

目の角膜の神経と脳梗塞の関係


Corneal Confocal Microscopy Detects Corneal Nerve Damage in Patients Admitted With Acute Ischemic Stroke
2017  10月  カタール

脳卒中リスクの高まりを確認する方法としてMRIによる無症候性の脳梗塞や微小出血、白質病変の観察がある。

いっぽう目の共焦点顕微鏡検査では 非侵襲的に角膜内の細胞や神経線維の構造を観察できる。

いくつかの神経変性疾患(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症)では角膜神経の消失がおきていることから脳梗塞患者ではどうか、しらべてみたそうな。


急性脳梗塞患者130人(57糖尿病なし、32耐糖能低下、41人糖尿病)と28人の健常者について、角膜の共焦点顕微鏡検査を行い、角膜神経の繊維密度、枝密度、長さを測ったところ、


次のことがわかった。

・脳梗塞患者で角膜神経の繊維密度、枝密度、長さがあきらかに低下していた。

・角膜神経の各計測値は、HbA1cや中性脂肪と関連していた。

・しかし脳卒中のリスク要因とのあきらかな関連は確認できなかった。

角膜の共焦点顕微鏡検査は 急性脳梗塞患者の角膜神経の消失を確認できるかんたんかつ非侵襲的な方法である、


というおはなし。
図:急性脳梗塞患者の角膜神経

感想:

へぇ、角膜って神経とおってんだ。でも視力が低下した理由とはちがうとおもう。

2017年10月11日

サフランの香りの素が脳梗塞に効く理由


Neuroprotective effect of safranal, an active ingredient of Crocus sativus , in a rat model of transient cerebral ischemia.
2017  10月  イラン

サフランの香りの主成分であるサフラナールには抗酸化作用や抗炎症作用、抗けいれん作用があることが知られている。

そこでサフラナールの脳梗塞治療効果を実験してみたそうな。


ネズミの脳を人為的に30分間脳虚血にしたのち再灌流した。異なる量のサフラナールを注射し24時間後の神経症状、梗塞体積、海馬細胞の消失、酸化ストレス等を測定した。


次のようになった。
・虚血再灌流によって神経症状スコアと梗塞体積、海馬細胞の消失、酸化ストレスマーカーがふえた。

・サフラナール注射後 抗酸化力があきらかに増加し、神経症状スコアや梗塞体積、海馬の細胞消失、酸化ストレス度は減少した。

サフラナールには脳の虚血再灌流傷害から神経を保護する効果がある。これは主にフリーラジカルの生成を抑え抗酸化力を高めることによると考えられる、



というおはなし。
図:サフラノールと脳梗塞

感想:

これにラベンダーもあわせたらアロマ療法的によさそうだな。
【アロマテラピー】ラベンダーの香りが脳梗塞にすごく効く

2017年10月10日

脳卒中で海馬の神経新生に異常


Adult hippocampal neurogenesis poststroke: More new granule cells but aberrant morphology and impaired spatial memory
2017  9月  ドイツ

脳卒中を経験すると海馬の機能に障害がおきて記憶力が低下することがわかっている。

海馬の歯状回は 生涯をとおして新たな神経細胞がつねに生まれている箇所の1つである。

脳の虚血刺激によってこの神経新生が活発になることがわかっているが、なぜか記憶力が改善するわけではない。

最近の研究では代わりに異常な神経新生がおきている可能性が指摘されているので、実験でたしかめてみたそうな。


ネズミの行動が 海馬の記憶に基づくものか、海馬に依らない記憶によるものか を区別できるようにモリス水迷路試験を工夫した。

ネズミを人為的に脳虚血にしたのち水迷路試験を行い、さらに7週間後 海馬組織を顕微鏡観察した。

また 神経新生刺激の1つとして走行輪を与えたグループも作成した。


次のことがわかった。
・虚血刺激によって海馬の神経新生があきらかに増加していた。

・虚血ネズミは水迷路試験で時間がかかり、海馬記憶を活用していなかった。

・顕微鏡観察では虚血刺激で新生した神経細胞は形状が普通でなかった。

・ランニングによっても神経新生が促されたが、この細胞もまた異常形状だった。

脳の虚血経験により海馬歯状回に異常な神経新生が起き、海馬記憶に障害がおきた、


というおはなし。
図:脳卒中で海馬神経細胞の奇形


感想:

新しい細胞が生まれるだけじゃ問題は解決しないんだな。まともな形に育ってちゃんと機能しないと。

2017年10月9日

脳卒中後うつ:病巣の位置と方法論的限界 レビュー


Post-Stroke Depression: Impact of Lesion Location and Methodological Limitations-A Topical Review.
2017  9月  ドイツ

脳卒中患者のおよそ3分の1が脳卒中後うつ(PSD)になる。
その結果リハビリがさまたげられ機能的回復は遅れ 死亡率があがると考えられている。

これまで多くの研究者がPSDを発症する要因を特定しようと試みてきた。
例えば病変の大きさや位置との関連性などである。

しかし初期の研究では技術的な制約がおおきく、必然的に病変の左右脳の違いや前頭部へ近い単純なケースにフォーカスせざるをえなかった。

より最近の研究では 特定の神経回路の影響を調べるようになってきたが、
たとえばVLSM法(病変症状マッピング)では患者のサンプルサイズが非常に小さいという問題がある。

全体として おおくの議論の余地があり、PSDに関する病変の明確なパターンは現れていないものの 前頭部の病変がPSDと関連していることを示唆するいくつかの所見がある。

これら研究は分析法の問題、サンプルサイズの小ささ、患者選択を含む方法論的限界によって妨げられ、PSDの評価方法および画像解析法のちがいも相まって研究どうしの比較を困難にしている。

まとめると、
病変部位とPSDとの明確な関連性は確認できず、PSDの理解はまだまだである


というおはなし。

図:脳卒中後うつ

感想:

改行がないレビューの要約文ってストレスなのでAIの助けを借りてみた。

2017年10月8日

半側空間無視の3つの種類と回復度


Effect of subtypes of neglect on functional outcome in stroke patients.
2017  9月  イタリア

脳卒中のあとの半側空間無視は右脳損傷のケースによく見られ日常生活動作の回復におおきく影響する。

半側空間無視には3種類あって、

自分の半身を無視する personalタイプと
手の届く範囲を無視する peripersonalタイプ、
その外の空間を無視する extrapersonalタイプである。

それぞれの場合での脳卒中の回復度のちがいをしらべてみたそうな。


2002-2016にリハビリ病院に入院した右脳損傷の脳卒中患者359人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・130人が左方の半側空間無視で、229人には片麻痺のみで無視症状はなかった。

・このうち、46%がpersonal、69%がperipersonal、68%がextrapersonalタイプの半側空間無視だった。

・半側空間無視があると運動機能と認知機能の障害はおおきく、リハビリ入院の期間も長かった。

・特に、extrapersonalタイプとperipersonalタイプが回復度におおきく影響した。

半側空間無視が脳卒中からの機能回復にネガティブに影響することを確認した。半側空間無視の種類を考慮したリハビリが必要だろう


というおはなし。

図:半側空間無視の種類

感想:

さらに あと2種類あって、、↓
アロセントリックな半側空間無視とエゴセントリックな、、

2017年10月7日

軽い脳梗塞やTIAの1年再発率


One-Year Outcomes After Minor Stroke or High-Risk Transient Ischemic Attack
2017  9月  韓国

軽い脳梗塞やTIAのあと3ヶ月時点での再発率は西洋人で10-17%といわれ、アジア人ではその割合はさらに高いとする報告もある。

これを韓国人を対象に大規模に調べてみたそうな。


発症後7日以内に入院できた軽症脳梗塞またはTIA患者9506人について、3ヶ月後、1年後の再発 死亡事例をフォローし、

抗血栓療法の種類も調査したところ、


次のようになった。

・退院時、95.2%が抗血栓薬(抗血小板薬37.1%、抗凝固薬15.3%)を、86.2%がスタチンを処方された。

・3ヶ月後、脳卒中の再発は4.3%、死亡は2.0%だった。1年後はそれぞれ、6.1%、4.1%だった。

・抗血栓療法をうけていない患者の再発率はアスピリン単剤の1.5倍だった。
韓国人を対象にした軽症脳梗塞やTIA後の再発率は これまで報告のあった値よりも低かった。抗血栓療法のおかげだろう、


というおはなし。
図:脳卒中再発率と抗血栓療法

感想:

アスピリン単剤がいちばんいいみたい。

2017年10月6日

nature.com:飲酒習慣が脳梗塞をいやすメカニズム


Effect of Low-Dose Alcohol Consumption on Inflammation Following Transient Focal Cerebral Ischemia in Rats.
2017  10月  アメリカ

ほどほどの飲酒が脳卒中予防になるという報告はすくなくない。

そこで事前の飲酒習慣が脳卒中の虚血再還流傷害へおよぼす影響を 実験してみたそうな。


12匹ずつ3グループのネズミについて、それぞれエタノール、赤ワイン、水を混ぜたエサを8週間与え続けた後、
一時的に脳虚血にして再還流した。

24時間後に梗塞の体積、炎症 免疫関連たんぱく質を定量したところ、


次のことがわかった。
・梗塞体積はエタノール 赤ワイングループで明らかに小さかった。

・また 細胞接着分子や免疫細胞ミクログリアの活動が抑制された。

・組織を破壊するメタロプロテアーゼの阻害物質を増やし、炎症性サイトカインを減少させた。

・さらに赤ワインは好中球浸潤をあきらかに減少させた。

ほどほどの飲酒習慣には虚血後の炎症反応から脳を護るはたらきがあるのかも、


というおはなし。
図:脳虚血と好中球浸潤と赤ワイン

感想:

酒のむとまちがいなく脳のはたらきが悪化する。もう余裕はないからぜったいに飲まない。

2017年10月5日

カロリー制限後の脳卒中とその回復


Caloric restriction stabilizes body weight and accelerates behavioral recovery in aged rats after focal ischemia.
2017  9月  スイス

肥満は脳卒中になる要因の1つである。

事前のカロリー制限が脳卒中後の結果にどう影響するものか実験してみたそうな。


高齢で肥満のネズミに、人為的に脳梗塞にする8週間前からカロリー制限食を与えた。

食べ放題ネズミと比べたところ、


次のようになった。
・脳卒中のあと、食べ放題ネズミの体重は10日後まで減少を続けた。

・しかしカロリー制限ネズミに体重減少は起きず、5日目から体重が急速に増え始めた。

・さらにカロリー制限ネズミでは、複雑な感覚運動スキルや皮膚感受性 感覚運動統合 空間記憶力が必要な課題の動作が改善した。

・同様に、インスリン様成長因子や糖代謝、動脈新生に関連する遺伝子発現が明らかに増加していた。

カロリー制限で体重を適切に保っていた高齢ネズミは脳梗塞後の回復がとても良かった、


というおはなし。
図:高齢ネズミのカロリー制限と脳梗塞体積

感想:

人間様のばあい「肥満パラドックス」ってのがあって、実際は太っているもの勝ち のもよう。

2017年10月4日

ランセット誌:通勤や家事は脳卒中予防にならないの?


The effect of physical activity on mortality and cardiovascular disease in 130 000 people from 17 high-income, middle-income, and low-income countries: the PURE study.
2017  9月  カナダ

身体活動量がおおいと脳卒中など心血管疾患が起きにくくなり死亡率も下がるという報告は数多くある。しかしこれら調査の多くは高所得国の余暇時間の使い方にフォーカスしたものがほとんどである。

そこで、十分な余暇時間をとれない中低所得国を調査対象にいれて非余暇時間(仕事や通勤 家事など)での身体活動量と心血管疾患との関連を大規模にしらべてみたそうな。


2003-2010に、カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ブラジル、チリ、ポーランド、トルコ、マレーシア、南アフリカ、中国、コロンビア、イラン、バングラディシュ、インド、パキスタン、ジンバブエの健康な国民 計130843人から身体活動量についてのアンケートをとり、

平均6.9年間にわたり死亡率 心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞など)の発生をフォローしたところ、


次のことがわかった。
・週当たりの身体活動量が増えるにしたがい死亡率および心血管疾患リスクは低下した。

・この関連は高所得国、中所得国、低所得国に共通で、

・余暇時間、非余暇時間に依らなかった。

余暇時間または非余暇時間にかかわらず、身体活動量がふえると死亡率や脳卒中など心血管疾患のリスクは低下する、


というおはなし。
図:非余暇時間の運動と脳卒中リスク

感想:

都心に職場があると 通勤だけで1日の体力の9割が削がれる。終わりがみえない千日回峰行のようでメンタルがずたずたになる。むかしのはなし

2017年10月3日

ランセット誌:糖質で死亡、動物性脂肪は脳卒中予防


Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study
2017  8月  カナダ

現在の食事ガイドラインでは脂肪は総カロリーの30%未満にして さらに飽和脂肪酸を減らし不飽和脂肪酸に置き換えるよう推奨されている。

しかしこれらガイドラインの多くは肥満が問題化している北米 ヨーロッパを対象とした研究結果にもとづいている。

そこで精製穀物を多く摂る中低所得国を含めて炭水化物と脂肪および脳卒中など心血管疾患との関連を大規模にしらべてみたそうな。


35-70歳、18カ国(カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ブラジル、チリ、ポーランド、トルコ、マレーシア、南アフリカ、中国、コロンビア、イラン、バングラディシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ、パレスチナ自治区)
の健康な135335人に食事アンケートをおこない、死亡や脳卒中など心血管疾患の発生を7.4年間ほどフォローした結果、


次のことがわかった。

・炭水化物が多いと総死亡率が高かった。

・脂肪はその種類(飽和、不飽和、多価、単価)によらず多く摂ると総死亡率は低く、

・飽和脂肪酸で脳卒中リスクがおおきく下がった。

・飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は心筋梗塞や心血管疾患死亡率に関連しなかった。

炭水化物を多く摂ると総死亡率が上がるいっぽう 脂肪は総死亡率が低下した。脂肪は心筋梗塞や心血管疾患死亡率と関連せず、むしろ飽和脂肪酸で脳卒中リスクがおおきく低下した。ガイドラインをただちに見直すべき、


というおはなし。

図:脂肪OR炭水化物のエネルギー源とした時の脳卒中リスク

感想:

今日、やたらニュースになっていてきがついた。↓

「糖質制限」論争に幕?一流医学誌に衝撃論文
「炭水化物は危険、脂質は安全」の波紋 (東洋経済オンライン)



糖質制限がいいのはわかった。

「どうぶつ性の脂をとると血液がドロドロになって冠動脈や頸動脈にべったり理論」はどうなちゃうのかな。

2017年10月2日

重症脳卒中患者の予後精度


Predictive accuracy of physicians' estimates of outcome after severe stroke.
2017  9月  オランダ

脳卒中患者の半数以上が2年内に死亡または重度の障害を抱える。

また 院内で死亡するケースのおおくは医師が延命治療を引き揚げたあとに起きる。それゆえ終末期の判断には患者の正確な回復度の予測が必要となる。

そこで発症後間もない重症脳卒中患者の 医師による予後の精度を検証してみたそうな。


くも膜下出血を除く 脳梗塞または脳内出血の発症4日時点での重症患者(BI<6/20)について、
複数医師による6ヶ月後の死亡、生活自立度、QoLの予測と、
じっさいの6ヶ月後のフォロー結果を比較したところ、


次のようになった。

・平均年齢72、60人(脳梗塞30人)の患者を対象とした。

・6ヶ月時点で30人の患者が死亡した。

・生き残った30人のうち1人は死亡すると予想されていた。

・死亡予測された15人のうち14人はほんとうに死亡した。

・回復不良(mRS>3)と予測された46人のうち4人は回復良好だった。

・QoL低予測の8人中5人およびQoL高予測の18人中14人はそのとおりになった。

重症脳卒中患者の担当医師たちによる6ヶ月後の死亡 回復不良予測は正確ではなかった。QoLにいたってはもっと不正確だった、


というおはなし。
図:重症脳卒中患者の予後予測の精度

感想:

上の図の青棒と赤棒がハズレ。死亡予測ですら半数を外している。

実は回復しそうな患者には悪しめの予測(上図の赤棒)が告げられる。これをセルフハンディキャッピングという。

2017年10月1日

くも膜下出血の脳血管れん縮と早期脳損傷とクルクミン


Curcumin mitigates cerebral vasospasm and early brain injury following subarachnoid hemorrhage via inhibiting cerebral inflammation.
2017  9月  中国

脳卒中の5%を占めるくも膜下出血は、そのおおくが脳動脈瘤の破裂によるもので死亡率がとてもたかい。

早期脳損傷(EBI)と血管攣縮が高死亡率のおもな原因と考えられており、酸化ストレスや炎症、細胞死がそのメカニズムに関係している。

いっぽうウコン(ターメリック)に含まれる黄色の成分クルクミンにはおおくの病気で抗炎症 抗酸化作用が確認されており、脳梗塞や脳内出血では神経保護効果がしめされている。

くも膜下出血へのクルクミンの影響をしらべてみたそうな。


視交叉槽に事前採集した血液を注入して人為的にくも膜下出血状態にしたネズミについて、クルクミン(150mg/kg)を注射した。

死亡率や神経症状、血管攣縮、活性酸素反応、炎症性たんぱく質を定量した。


次のようになった。

・クルクミングループで死亡率が低下し 神経症状も緩和され、

・血管攣縮も軽減されていた。

・炎症性サイトカインの過剰発現が抑制され、その転写因子も抑えられていた。

クルクミンには くも膜下出血による脳の炎症を免疫反応の転写因子レベルで抑制することで血管攣縮や早期脳損傷を軽減するはたらきがある


というおはなし。
図:くも膜下出血へのクルクミンの影響

感想:

今夜はカレーライスだ。

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