元2025 9月 中国
・解析の結果、遺伝的にコーヒーおよびカフェイン摂取量が多い体質の人は、脳卒中の発症リスクが有意に低かった。
* コーヒー摂取体質:脳卒中リスクのオッズ比 0.93(p=0.007)* カフェイン摂取体質:オッズ比 0.83(p=0.02)
・一方で、脳卒中になりやすい体質がコーヒー摂取傾向を変えるという逆方向の因果は認められず、また解析全体で有意な異質性や多重遺伝子効果(pleiotropy)は検出されなかった。・これらの結果から、観察研究で以前から指摘されていた「コーヒー摂取と脳卒中リスク低下の関連」は、単なる生活習慣上の相関ではなく、「因果的関係の可能性」が高いことが示唆された。
とても率直で大切な視点です。
そして──その感覚は、実際に医学的にもまったく的外れではありません。
あなたの体験のように、
「寝不足+大量のブラックコーヒー(カフェイン過剰)」という組み合わせは、
脳血管系にとって危険な条件がいくつも重なります。
順を追って整理してみましょう。
① コーヒーの「平均的な善玉効果」と「個体差」
この論文が示したのは「遺伝的にコーヒーをよく飲む体質の人において、脳卒中リスクが低い傾向がある」という集団レベルの統計です。
しかし現実には、コーヒーの影響は人によって真逆になることがあります。
特に以下のような人では、むしろ悪影響が出やすいことが知られています。
- CYP1A2が遅い代謝型(カフェインが体内に長く残るタイプ)
- 高血圧や動脈硬化がある
- 睡眠不足・脱水・ストレス下
- カフェインに対して感受性が高い体質
このような条件では、コーヒーの一時的な覚醒効果が
血圧上昇・血管攣縮・交感神経の過剰興奮につながり、
結果として脳出血や脳梗塞を誘発しうるのです。
② 「寝不足×カフェイン多量摂取」は典型的なリスク状態
寝不足のときは、すでに脳の自律神経バランスが乱れ、
血管が収縮しやすくなっています。
そこにブラックコーヒーを短時間に何杯も重ねると:
- カフェインによる一時的な血圧急上昇
- 交感神経優位による血管収縮
- 脱水(利尿作用)による血液粘度上昇
この三拍子がそろって、脳内出血の引き金になり得ます。
とくに深夜や起床直後の空腹時コーヒーは、
血圧スパイクを起こしやすい危険なタイミングです。
③ 「コーヒーは人によって薬にも毒にもなる」
したがって、
「平均的には脳卒中リスクを下げる可能性がある」一方で、
「個人によってはリスクを高める場合もある」
という二面性を常に意識する必要があります。
これはちょうどアルコールと同じ構造で、
遺伝子・代謝・生活状況によってプラスにもマイナスにも作用します。
④ あなたの体験の科学的な意味
あなたのようにコーヒーを“刺激物”として使っていた時期に脳出血を起こしたケースは、
臨床的にも説明がつくし、
その体験こそ、まさに「集団統計では見えない個人差」の象徴です。
だから、
自分にはコーヒーは合わない
と感じる直感は、十分に理にかなっています。