2026年1月25日

3人に1人に起きる“無症候性”脳出血は本当に無害だったのか?

2026  1月  中国


血管内治療(EVT)は、太い血管が詰まった脳梗塞に対して高い確率で血流を再開させる治療である。しかし、血管が開いても必ずしも後遺症が軽くならない例が少なくなく、「再開通しても回復しない」ことが問題になっている。

これまで注目されてきたのは、症状が悪化する明らかな脳出血(症候性脳内出血)であった。一方、画像では出血があるが症状の悪化を伴わない「無症候性脳内出血」は、臨床的にあまり重要でないものとして扱われてきた。

しかし最近の研究では、この無症候性出血も長期予後に悪影響を与えている可能性が示唆されている。そこで、EVT後に見られる無症候性脳内出血が、本当に「問題ない所見」なのかを、大規模試験のデータを用いて検証してみたそうな。



前方循環の主幹動脈閉塞に対してEVTを受けた患者を対象に、3つの無作為化試験(DEVT、RESCUE BT、MARVEL)の個々の患者データを統合して解析した。
治療後48時間以内のCTやMRIを専門の読影チームが評価し、症状の悪化を伴わない出血を「無症候性脳内出血」、症状が悪化した出血を「症候性脳内出血」と分類した。
主要な評価項目は、90日後の生活自立度を示すmodified Rankin Scale(mRS)であり、年齢や重症度などの影響を統計学的に調整した上で、出血の有無と予後の関係を解析した。
さらに、無症候性出血と重い後遺症が同時に起こるリスクを予測するモデルも作成した。



次のようになった。

・全2562例のうち、約28%に無症候性脳内出血が認められた。無症候性出血があった群では、出血のなかった群に比べて、90日後の機能予後が明らかに悪く、死亡率も高かった。

・この関係は、さまざまな統計手法で調整しても一貫して認められた。特に脳実質内に血腫を形成するタイプの出血では、予後不良の影響が強かった。

・無症候性出血と重度障害を起こしやすい因子としては、高齢、発症時の麻痺や意識障害が重いこと、梗塞範囲が広いこと、血糖値が高いこと、血流再開が不十分であったことなどが挙げられた。


EVT後に症状を伴わずに見つかる脳内出血は、決して「放っておいてよい無害な所見」ではなく、長期的には生活機能の低下や死亡率の上昇と関係していた。これまで安全性評価の中心とされてきた症候性出血だけでは、EVTのリスクを十分に捉えきれていない可能性がある。無症候性出血も、脳が再灌流によって傷ついたサインとして重視すべきであり、EVTの適応判断や術後管理では、こうした“静かな出血”の影響も考慮する必要がある、


というおはなし。

血栓回収の無症候性脳出血とは



感想:

『EVTでICHになる理由は、 術中の抗血栓薬と、カテーテル操作による穿孔 でしょ』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓



大枠ではその理解で合っています。ただし「それだけでは説明しきれない層」があって、そこが今回の論文の核心とも重なります。

整理すると、EVT後ICHの機序は少なくとも三層あります。

第一層:純機械的損傷
・マイクロワイヤー、マイクロカテーテル、ステントリトリーバーによる穿孔
・末梢枝の牽引、解離、偽動脈瘤
これは典型的な「手技合併症」で、局在性、くっきりした出血になりやすい。

第二層:抗血栓・抗凝固の薬理学的増幅
・rt-PA前投与
・術中ヘパリン
・GPIIb/IIIa阻害薬(中国ではチロフィバンなど)
・DAPT導入
これは「出血したら止まりにくくする要因」で、穿孔や微小破綻を“臨床的ICH”に育てる。

ここまではあなたの言う通りで、sICHの多くはこの二つの組み合わせです。

しかし今回問題になっている aICH の本体は、第三層です。

第三層:再灌流障害と血液脳関門破綻
・虚血で内皮が死にかけた状態で急激に再灌流
・タイトジャンクション崩壊
・基底膜融解、MMP活性化
・赤血球が「漏れ出る」
これは穿孔がなくても起きる“滲出性出血”で、HIや小PHの主因です。

論文が示している危険因子
高齢、重症NIHSS、低ASPECTS、高血糖、再灌流不全
はすべてこの第三層=「脆い脳を無理やり再灌流した指標」です。

つまり構造はこうなります。

機械損傷モデル
「カテで穴を開けた」「薬で止まらなくなった」
→ 事故

再灌流障害モデル
「もう壊死寸前の血管床に血流を再注入した」
→ 生理学的必然

aICHが予後を悪化させるという事実は、
EVTが単なる“血管工学”ではなく
“虚血脳生理への侵襲”であることを暴露しています。

なので、あなたの命題を精密化すると:

EVTでICHになる理由は
・術具による直接損傷
・抗血栓薬による止血不能化
・そして何より「救えない虚血組織への再灌流そのもの」

であり、最後の項目が一番“思想的に痛い”部分です。




『術後画像でICHが判明しても、48時間以内に症状がなければ「問題なし」という謎理論を勝手に適用して、EVTは有効だ!と主張し続けてきたものの、よく調べてみたらICHが問題でないはずもなく、しっかりと生存率と機能予後に悪影響を及ぼしていたってことよね。』



あなたの要約は、この論文が突き崩している構造をかなり正確に捉えています。論理の流れを、論文の定義と結果に沿って2〜3段で確認するとこうなります。

第一に、「問題なし」の根拠にされてきた“無症候”は、本質的に「48時間以内にNIHSSが4点以上悪化しなかった=sICHの定義を満たさない」という運用上の分類です。つまり「症状がないから無害」ではなく「急性増悪として検出されなかったから非sICH」というだけです。

第二に、この論文は、その“非sICH”の集団(aICH)について、90日mRSが悪化方向へシフトし、死亡も増えることを、調整解析・PSM・IPTWで一貫して示しています(aICHは約28%)。ここで重要なのは、「画像所見にとどまるイベント」を「患者中心アウトカム」に結びつけてしまった点です。

第三に、したがってあなたの言う「48時間で症状がなければ問題なし」という扱いは、少なくとも“予後”の観点では成立しない。より正確には、「急性期に症状が出ないタイプの出血は、短期安全性指標からこぼれやすいが、長期転帰にはしっかり響く」という話になります。

ここで一段だけ補強すると、これは「EVTが無効」ではなく、「EVTの成功物語(再開通+sICH低率)だけで安全と有効を語ると、aICHという“静かな失点”を見落とす」という形のダメージです。つまり、EVTの“有効性”主張は、従来より条件付きにならざるを得ない。

あなたの文章を、さらに切れ味よく短文化すると、こう言い換えられます。

「無症候性出血は“無害”ではなく、“急性期にバレにくい予後悪化因子”だった。だからEVTの評価は、sICHだけを安全性の門番にする設計そのものが甘かった。」