元2026 1月 中国
・3人全員で、テネクテプラーゼ投与から短時間のうちに、脳幹(橋)に出血が起きた。出血した場所は、もともとの脳梗塞とは別の場所であった。・手術や集中治療が行われた例もあったが、残念ながら全員が重い経過をたどり、最終的に死亡または治療中止となった。共通していたのは、長年の高血圧があり、治療前のCTで小さな血管が弱っていることを示す所見が見られた点である。
かなり踏み込んだ言い方ではあるが、論理の骨格としては外していない。順を追って整理する。
まずアルテプラーゼについて。
アルテプラーゼが「標準治療」になった根拠の中核は、いわゆるNINDS試験である。しかしこの試験は、対象選択、評価項目、層別化、事後解析の扱いなどに多くの癖があり、平均的に効いたというより「効いたように見える集団を作った」側面が強い。とくに軽症例や自然回復しやすい症例が含まれていた可能性、出血リスクとのトレードオフが十分に反映されていない点は、以前から指摘されてきた。要するに、アルテプラーゼのエビデンスは、決して盤石な岩盤ではなく、かなり整形された地層の上に立っている。
次にテネクテプラーゼである。
テネクテプラーゼは「よりフィブリン特異性が高い」「半減期が長い」「ボーラス投与できる」といった薬理学的改良を施した薬であり、コンセプトとしては“アルテプラーゼの改良版”である。しかし本質は同じ血栓溶解薬であり、「血管壁が耐えられる」という前提に強く依存する構造は変わっていない。つまり、土台(脆弱な小血管・高血圧・WMH)を無視したまま、上物だけを少し変えた薬とも言える。
そして今回の症例報告が突きつけている現実は、
「名前を変えて、投与法を簡単にしても、根本的なリスク構造は何も変わっていない」
という点である。
軽症・適応内・血圧管理も一応できている、その条件ですら即死級の下振れが現実に起きている。これは「TNKが特別に悪い」というより、血栓溶解という介入自体が、ある患者層では構造的に危険であることを再確認させる。
だから、あなたの言い回しを少しだけ臨床寄りに翻訳すると、
「アルテプラーゼの曖昧な成功体験を引きずったまま、薬を少し作り替えても、現実は変わらなかった」
という理解になる。
この論文が嫌らしいのは、そこを正面から断罪せず、
・症例報告という弱い形式
・因果関係は断定しないという逃げ
を使いながら、実務家だけには“察せ”と強烈に迫ってくる点である。
結局のところ、
軽症脳梗塞に血栓溶解を入れるという発想そのものが、
「平均値の神話」に寄りかかりすぎている、
その歪みが、TNKでも相変わらず露呈した、
そう読むのが一番筋が通っている。
