2026年1月11日

日本人心房細動患者の8割が抗凝固薬使用中―それでも起きた認知機能低下

2025  12月  日本


心房細動は脳梗塞の大きな原因のひとつであり、現在では抗凝固薬によって脳梗塞の発症はかなり防げるようになってきた。

しかし最近、脳梗塞を起こしていない心房細動患者でも、認知機能が低下しやすいことが報告されている。
その理由として、無症候性脳梗塞や微小出血など、MRIで見える脳の傷が関係しているのか、それとも別の仕組みがあるのかははっきりしていない。

そこで、心房細動患者の認知機能低下が、脳MRIで確認できる脳病変と関係しているのかどうかをくわしくしらべてみたそうな。



非弁膜症性心房細動の患者(NVAF群)と、心房細動のない洞調律の人(SR群)を対象とした前向き研究である。
すべての参加者に対し、研究開始時と約2年後に脳MRIを撮影し、無症候性脳梗塞、脳微小出血、白質病変の有無や変化を評価した。
認知機能はMMSEとMoCAという2種類の検査で評価し、時間とともにどのように変化するかを比較した。
心房細動患者の多くは抗凝固薬を使用しており、その多くがエドキサバンであった。
解析では、年齢や生活習慣病、薬の使用状況など、結果に影響しそうな要因を考慮して調整が行われた。



次のようになった。

・観察期間中に新しく見つかった無症候性脳梗塞や脳微小出血の頻度は、心房細動のある群とない群で差はなかった。

・白質病変の進行についても、両群に大きな違いは認められなかった。

・一方、認知機能についてみると、MMSEでは明らかな差はみられなかったが、MoCAでは心房細動患者で有意な低下が認められた。

・このMoCAの低下は、MRIで確認された脳病変の増加や進行とは関連していなかった。

心房細動の患者では、MRIで確認できる無症候性脳梗塞や脳微小出血が増えていなくても、認知機能、特に軽い認知の変化をとらえるMoCAのスコアが低下することが示された。この結果から、心房細動に伴う認知機能低下は、MRIで見える脳の傷だけでは説明できず、別の要因が関わっている可能性があると考えられる、


というおはなし。

心房細動で認知障害?



感想:

『こんかい、心房細動患者の8割が抗凝固薬を使用していました。 心房細動がMRIで観察不能なレベルで脳にダメージをあたえ認知障害をもたらしたとするなら、 そのなかに抗凝固薬の影響も少なからずあった、可能性は考えられませんか?』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓


可能性としては、十分に考えられます。ただし、この論文単体のデータから「抗凝固薬が認知低下に寄与した」とまでは言えません。結論は「寄与しうるが、方向性は両面で、この研究では切り分け不能」です。

まず事実関係として、この研究のNVAF群は156/195(80%)がエドキサバンを使用しています。 そして主要アウトカムでは、サイレント梗塞+微小出血の複合はSR群と同等、微小出血(CMBs)の発生も同等でした。 それでもMoCA低下はNVAF群で有意に大きく、解析では抗凝固薬・抗血小板薬の使用も共変量として調整されています。
この並びだけ見ると、「少なくともCMBとして見える出血性病変の増加が、抗凝固薬によって起きて認知を下げた」という筋書きは、このデータ上は支持されにくいです。

一方で、あなたの仮説(MRIで観察不能レベルの脳ダメージ)に抗凝固薬が絡むシナリオは否定できません。理由は3つあります。

1) 測定できていない要素が多い
著者自身が「エドキサバンの効果は検討していない」と明記しており、抗凝固開始時期、AF罹病期間、リズム治療、認知低下と脳イベントの時間関係なども取れていません。 つまり、抗凝固薬の有無・開始の早遅・服薬率などで層別して「MoCA低下がどう違うか」をこの論文は答えていません。

2) 抗凝固薬は「保護」と「害」の両方のルートがあり得る
保護ルートは、臨床・サイレントを問わず塞栓性イベントを減らして認知を守る方向です。実際、論文中でもスウェーデンの集団研究として「抗凝固薬使用者の方が認知障害の発生率が低い」「80%以上服用でより有益」「診断後1年以内の開始が最もリスクが低い」という記載があります。
害ルートとしては、微小出血の進展、超微小な出血・微小梗塞、貧血や出血イベントを介した全身状態低下などが理屈としてはあり得ます(ただし本研究ではCMB発生率は群間差なしでした)。

3) 「抗凝固薬を使っていても起きる」こと自体が重要
Swiss-AFでは、抗凝固中でも新規脳梗塞が起き、その多くが無症候性だったという話が引かれています。そこから著者は「抗凝固療法だけでは、AF患者の進行性脳障害を完全には防げないかもしれない」と述べています。
これは、抗凝固薬が悪いというより「AF側の別経路(低灌流、血管反応性低下、炎症・内皮障害など)」が残る、という解釈に寄ります。

結局、この論文から一番堅い言い方をするとこうです。
抗凝固薬の影響が混じっている可能性はある(否定できない)🙂 しかし本研究はエドキサバンの効果検証をしておらず、CMB増加も示していないため、「抗凝固薬が認知低下の原因(または主要因)」と結論する根拠はない。むしろ先行研究の引用では、抗凝固は認知を守る方向のエビデンスも示されている。

もしあなたの仮説をこのデータで“攻めて”検証するなら、著者がやっていない次の解析が必要です。
NVAF内で「エドキサバンあり vs なし」でMoCA変化量、CMB/SCIの新規発生、出血イベント(臨床的出血や貧血指標)を比較し、さらにAF型(発作性/持続性)や罹病期間で層別する、という形です(ただし著者はイベント数不足でサブ解析が難しいとも述べています)。



常識的に考えて、抗凝固薬のようなものを長期にとっていてなお脳機能が維持されると考えるほうがどうかしてない?製薬会社に買収された医師がおこなった臨床試験をうのみにできるほどナイーブじゃないのよ。



その感覚は理解できる。長期に「血を固まりにくくする」介入を続ける以上、脳に何も起きないと信じ切るのもまた危うい、という警戒心である🙂 ただ、ここは一度、論理を締め直すと見通しが良くなる。

第一に、「抗凝固薬=脳機能が落ちる」は常識として自明ではない。抗凝固薬の一次目的は心房細動に伴う塞栓性脳梗塞を減らすことで、これは脳機能を守る方向の作用である。実際、主要ガイドラインは心房細動の血栓塞栓リスクが一定以上なら経口抗凝固を推奨し、一般にDOACを優先する立場である。

第二に、認知との関係については「むしろ抗凝固で認知リスクが下がる」方向のデータが相当数ある。例えばDOACがワルファリンより認知症リスクが低い、あるいは抗凝固が認知症リスク低下と関連する、という観察研究・メタ解析が複数出ている。
ただしここは重要で、これらの多くは観察研究なので、服薬できる健康度、医療アクセス、併存疾患などの交絡を完全には消せない。

第三に、それでも「抗凝固薬が認知に悪影響を持つ可能性」は残る。あなたの筋の良い指摘はここで、悪影響があるなら典型ルートはこうなる。
・微小出血(CMBなど)やそれ未満の超微小出血の蓄積
・臨床的出血や軽い慢性出血 → 貧血・体力低下 → 認知テスト成績低下
・薬物相互作用、腎機能低下、過量投与が引き起こす出血リスク上振れ
ただ、少なくともあなたが読んでいる当該論文では、NVAF群でCMBの新規発生が増えた、という形にはなっていないため、「抗凝固薬が主要因」と断定するには材料不足、という位置づけになる(論文設計として抗凝固の効果検証をしていない点も大きい)。

第四に、「製薬企業に都合の良い試験」を避ける現実的な読み方。疑うべきところは疑う、でよい。ただ“全部買収”で一括処理すると、逆に検証が止まる。おすすめは次のチェックである。
・資金提供と利益相反の開示(誰が金を出し、誰が解析したか)
・ハードエンドポイント中心か(脳卒中、頭蓋内出血、死亡など)
・独立グループによる再現(別データ、別国レジストリ、IPDメタ解析)
・市販後データや大規模レジストリで同じ方向か
この手順で見ると、抗凝固の「脳梗塞予防」効果は複数の枠組みで支持されている一方、認知についてはエビデンスが観察研究寄りで、まだ詰め切れていない、という輪郭が出る。

要するに、あなたの結論を一段だけ強くするならこう言うのが一番硬い。
抗凝固薬は脳梗塞を減らす点で脳機能を守る方向に働く可能性が高い。一方で、長期使用に伴う出血系の微小ダメージや全身状態を介して、認知に不利に働く可能性も理屈としては残る。ただ現時点の総合データは「害が主」より「利益が主」を示すものが多く、決着は“抗凝固の有無”ではなく、薬剤選択・用量適正・腎機能・血圧・併用薬・出血イベント管理で左右される。