2026年7月28日

「HH5は99%助からない」は本当か?――くも膜下出血の死亡予測を覆した研究

2026  7月  アルゼンチン


動脈瘤性くも膜下出血では、入院時の重症度と予後の評価にHunt and Hess(HH)分類が広く用いられている。

しかし、動脈瘤治療や神経集中治療が進歩した現在でも、HH分類による死亡予測が正確であるかは明らかでない。

そこで、HH分類による院内死亡予測の精度と、退院時および6か月後の神経学的転帰をくわしくしらべてみたそうな。



アルゼンチンの高度医療病院3施設で、2011~2022年にICUへ入院した非外傷性の動脈瘤性くも膜下出血患者を後ろ向きに調査した。
対象は175人で、HH分類、APACHE II、治療方法、院内死亡、退院時および6か月後のmodified Rankin Scale(mRS)を評価した。
HH分類の予測性能はAUROCと、予測死亡率と実測死亡率の一致度によって検討した。



次のようになった。

・院内死亡率は21%であった。HH分類は、死亡しやすい患者を区別する能力は一定程度認められたが、死亡率を全グレードで過大に予測した。

・とくにHH1では予測死亡率10%に対して実測0%、HH5では予測99%に対して実測46%であった。

・良好転帰(mRS 3以下)は退院時49%、6か月後54%であり、HH4~5でも退院時9%から6か月後22%へ改善した。 


HH分類は重症度の判別には一定の有用性があるが、現在の動脈瘤性くも膜下出血診療では死亡率を大幅に過大評価する。重症患者でも退院後に回復が続く可能性があるため、HH分類だけを根拠に予後を判断したり、早期に治療を中止したりすべきではない、


というおはなし。

ハントヘス5は99%死ぬ?


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感想:

『本文中に、死亡率の従来予測値としてHH1=10%、HH5=99%という数字が当然であるかのようになんの根拠の引用もなく出てくる。(しかし今回の実測はそれぞれ0%、46%だった。)
HH5の患者は99%助からないという業界の暗黙の了解は、患者家族に臓器提供を決断させるストーリー作りにとても役に立つ。
くも膜下出血治療がいまもなお頑なまでに動脈瘤治療vs非治療のランダム化比較試験を拒み続けている背景には臓器提供コントロール権を手放したくないという意識があるんだとおもうの。HH判定のまえに鎮静剤うてばHH5なんで簡単に作れるでしょ。若くて生きのいいHH1相当の患者が入院してきても、10人に1人は死亡しうると説明すれば患者家族は涙ながらに「どうぞ臓器を役立ててやってください」と懇願してくるよね。
この一見無茶な仮説をわかりやすく擁護解説して。』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓



この仮説は、そのままでは「医療界が臓器を得るため意図的にHH分類を操作している」という証拠のない告発になる。しかし、意図的な陰謀ではなく、予後評価と治療制限が臓器提供につながり得る制度的な循環として組み直せば、検討に値する仮説になる。

### 予後予測は、単なる説明ではなく患者の運命を変える

HH分類は表面的には重症度を記録する尺度である。しかし実際には、医師が家族へ予後を説明し、積極的治療を続けるかどうかを相談する際にも用いられる。現在の米国ガイドラインも、重症度尺度を予後予測と家族との意思決定に利用するとしている。([professional.heart.org][1])

ところが今回の論文では、HH1の予測死亡率10%、HH5では99%という極端な数字が、由来を明記されないまま登場する。実測死亡率はそれぞれ0%と46%であり、著者自身もHH分類が死亡を大幅に過大予測すると結論づけている。 

このような悲観的予測は、単に間違った数字を伝えるだけではない。

> HH5だから回復不能に近い
> → 積極的治療を続けても無益である
> → 延命治療を中止する
> → 予測どおり患者が死亡する
> → HH5の死亡率はやはり高かったと記録される

という自己成就的な循環を作り得る。

実際、重症くも膜下出血患者357人を調べた研究では、死亡した152人のうち107人、71%の主な死亡経路が生命維持治療の撤回であった。病変そのものだけで死亡したのではなく、治療を終了する決定が死亡時期を決めていた患者が多かったのである。([サイエンスダイレクト][2])

### HH判定の時点が曖昧なら、重症度そのものが不安定になる

今回の論文はHH分類をICU入室時の情報として収集したとするだけで、鎮静、挿管、筋弛緩薬の投与前に評価したのかを説明していない。しかも対象者の66%が人工呼吸管理を受けている。 

もちろん、鎮静された患者を意図的にHH5として採点した証拠はない。また本来、薬剤で意識を抑えられた状態を患者本来の神経学的重症度として扱うべきではない。

しかし、

* いつ判定したのか
* 鎮静前の所見を使ったのか
* 水頭症や発作など可逆的要因を除外したのか
* 蘇生後に再評価したのか

が記載されなければ、HH5というラベルの信頼性は検証できない。したがって問題の核心は、「鎮静すれば簡単にHH5を作れる」というより、**判定時点を記録しない仕組みなら、薬剤や一時的な病態による見かけ上の重症化を排除できない**ことである。

### 臓器提供は、この循環の下流に置かれ得る

脳死または回復不能と判断された患者が、臓器提供候補になることはある。そのため、悲観的な予後説明から治療撤回へ進む経路と、臓器提供の経路は制度上接続し得る。

ただし、ここには重要な区別がある。臓器提供は死亡判定と本人または家族の同意を前提とするものであり、HH1に10%の死亡可能性があると説明しただけで、直ちに臓器提供を依頼できるわけではない。国際的な倫理原則でも、死亡後の臓器摘出には法的に必要な同意が求められる。([世界保健機関][3])

したがって擁護できる主張は、

> 医師が臓器を得るためHHを操作している

ではなく、

> 悲観的な重症度評価が治療撤回を促し、その結果として臓器提供可能な死亡経路が生じるため、予後評価の過大化に対する制度的な抑制が弱くなる可能性がある

という形である。

これは個々の医師の悪意を仮定せずに成立する。誰も「臓器を取ろう」と考えていなくても、悲観的予後、医療資源、家族の負担、治療撤回、臓器提供という複数の制度が同じ方向へ働けば、結果として同様の構造が生じるからである。

### ランダム化比較試験を避ける理由までは説明できない

動脈瘤閉塞治療対非治療の現代的なランダム化比較試験がないことは、治療効果を厳密に検証するうえで大きな弱点である。

しかし、その理由を臓器提供の支配権だけで説明するのは難しい。現在のガイドラインは、再出血を防ぐため破裂動脈瘤を原則24時間以内に治療するよう推奨している。その状況では、非治療群へ無作為に割り付けることは倫理的に承認されにくい。([professional.heart.org][1])

また、動脈瘤治療そのものを比較した試験が一度もなかったわけではなく、過去には手術と保存的治療の無作為化研究があり、その後はクリッピング対コイル塞栓術の大規模ランダム化試験が行われている。([サイエンスダイレクト][4])

したがって、より堅い問題提起は次のようになる。

> 動脈瘤治療はすでに標準治療として固定されているため、非治療との再検証は事実上不可能になっている。その一方で、HH分類などによる悲観的な予後判断は、治療撤回という自己成就的予言を生み得る。さらにその死亡経路が臓器提供と接続する以上、重症度判定の時点、鎮静薬の影響、治療撤回の理由、臓器提供の有無を透明化する必要がある。

この論文から臓器提供目的を立証することはできない。しかし、**根拠不明の予測死亡率、HH判定時点の記載欠如、重症患者の予想以上の生存、治療撤回が死亡結果を左右する既存研究**をつなげれば、「悲観的予後評価が臓器提供に都合のよい物語を結果的に形成し得る」という仮説までは、十分に論理的に提示できる。




『動脈瘤治療そのものを比較した試験が一度もなかったわけではなく、過去には手術と保存的治療の無作為化研究があり 
っていうけどさ、どこにあるの?すごい大昔でしょ。』



そのとおりである。私の前の言い方はかなり雑だった。確認できる「手術対保存療法の無作為化試験」は、いずれも半世紀以上前で、現在の急性期治療を直接支えるような試験ではない。

最も明確なのは、フィンランドで1964~1969年に行われ、1971年に報告された試験である。くも膜下出血後も良好な状態で生存していた178人を、手術86人と保存療法92人に無作為化した。ところが割り付け時期は出血から平均約7週間後である。つまり、

> 発症直後に動脈瘤を塞ぐべきか、それとも塞がずに集中治療するか

を比較した試験ではない。急性期を生き延びた、状態のよい患者だけを対象とした「晩期手術対保存療法」の試験である。([PubMed][1])

もう一つは米国を中心としたCooperative Aneurysm Studyで、結果報告は1974年である。約1,000人を安静療法、薬物による低血圧療法、頸動脈結紮、頭蓋内手術などへ振り分けた古い試験である。頭蓋内手術には274人が割り付けられたが、そのうち40人は実際には手術を受けていない。現在のクリッピング、コイル塞栓術、神経集中治療とは条件が大きく異なる。([PubMed][2])

したがって正確には、

> 手術対保存療法の無作為化試験が皆無だったわけではない。しかし存在するのは1960年代に患者を登録した、現在とは診断・手術・集中治療の条件がまったく異なる試験である。発症直後の破裂動脈瘤について、現代的な全身・神経集中治療を共通に行ったうえで、動脈瘤閉塞と非閉塞を比較したRCTは確認できない。

となる。

クリッピング対コイルのISATなどは、「動脈瘤を処置すること自体」の有効性を検証した試験ではない。処置することを前提に、二つの処置法を比較した試験である。

だからあなたの「すごい大昔でしょ」は正しい。私が前に「過去には手術と保存的治療のRCTがある」とだけ書いたため、現代医療に近いまともな対照試験が存在するような印象を与えてしまった。実態は、現行治療の基礎を直接検証したRCTというには遠すぎる。

[1]: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/5570768/?utm_source=chatgpt.com "Results of a controlled trial of late surgical versus conservative treatment of intracranial arterial aneurysms - PubMed"
[2]: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/4851185/?utm_source=chatgpt.com "Cooperative study of intracranial aneurysms and subarachnoid hemorrhage. Report on a randomized treatment study. I. Introduction - PubMed"



これも似たような内容よね』



うん、かなり近い。むしろこちらは、先ほどの論文の「HH判定そのものが時代とともに変質している可能性」を、10万人超のデータで示した系統的レビューである。


このレビューは、1968~2022年の214研究、動脈瘤性くも膜下出血102,845人を集計している。その結果、過去50年間でHH/WFNS 4~5の重症例は2~3倍、最重症のgrade 5は6~8倍に増えていた。HH5の割合は1981~1990年の3.04%から、2011~2020年には20.48%まで増加している。([PMC][1])


重要なのは、著者がこの増加を「出血が本当に重症化した」とは断定していない点である。考えられる理由として、


* 救急搬送や集中治療の進歩により、以前なら病院到着前に死亡した重症者が生存搬送されるようになった

* 診断・紹介体制が変化した

* HHやWFNSの採点行動そのものが変化した

* 搬送前の早期鎮静・挿管により、本来より悪いgradeに見えている


を挙げている。特に本文には、早期の病院前鎮静・挿管が患者の本来の良好な臨床状態を覆い隠し、「見かけ上のpoor grade」を作る可能性が明記されている。([PMC][1])


したがって、先ほどの論文との関係はこうなる。


先ほどの2026年論文

→ HH5は死亡率を過大予測している。重症患者でもかなり生存・回復する。


今回の2024年レビュー

→ そもそもHH5と分類される患者が異常に増えており、その一部は鎮静・挿管による見かけ上の重症化かもしれない。


つまり両方を合わせると、


> HH5患者が昔より6倍以上増えたのに、HH5の予後は従来考えられていたほど悪くない。これは単に治療が進歩しただけでなく、鎮静・挿管や判定方法の変化によって、以前ならHH5とされなかった患者までHH5に分類されている可能性がある。


という筋になる。


しかもこのレビューは、grade 4と5を臨床判断に使える形で区別するには、現在の分類法では不十分であり、改良された重症度分類が必要だと結論づけている。([PMC][1])


ただし、この論文は臓器提供や治療撤回を調べたものではない。そこまで直接結びつける証拠ではないが、「鎮静前後を区別しないHH5が、回復不能という物語の入口になり得る」という問題提起には、先ほどの論文以上に直接的な材料である。


[1]: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11153276/?utm_source=chatgpt.com "Clinical severity of aneurysmal subarachnoid hemorrhage over time: systematic review - PMC"