2025年12月12日

血管内治療中の攣縮で予後悪化、その予防薬は日本だけ未承認

2025  12月  ドイツ


脳の太い血管がつまったときに行う血管内治療(カテーテルで血栓を取りにいく治療)は、いまや標準治療になっている。

ところが、その手技の途中でときどき起こる「血管攣縮」(血管がキュッと細く締まってしまう現象)が、どのくらい患者の予後を悪くしているのかは、はっきりしていなかった。

また、攣縮が起きたときにカテーテルから直接ニモジピンという薬を流すと本当に効果があるのかも、十分なデータがなかった。そこで、「どんな人に攣縮が起こりやすいのか」「攣縮が起こるとその後の生活の質や死亡にどれくらい影響するのか」「攣縮に対するニモジピン動注は役立つのか」をひとまとめにくわしくしらべてみたそうな。



対象は、ドイツの25施設が参加している前向きレジストリ「German Stroke Registry」に登録された、血管内治療を受けた急性期脳卒中患者である。期間は2015年6月から2023年12月までで、合計17,985人が登録されている。
この中から、手技中に血管攣縮が起きた症例を抜き出し、攣縮がなかった症例と予後を比較した。さらに、攣縮が起きた症例のうち、動脈内ニモジピン投与を受けた群と受けなかった群でも比較をおこなった。
主な評価項目は発症90日後の修正Rankin Scale(mRS)の分布であり、死亡率、早期の神経症状の悪化、24時間以内の症候性頭蓋内出血、再開通達成率(mTICI 2b–3)などを副次評価項目とした。背景の違いをできるだけならすために、逆確率重み付け(IPTW)やLASSO回帰といった統計手法を用いて解析している。



次のことが分かった。

・17,985例のうち、血管攣縮が記録されたのは578例で、全体の3.2%であった。そのうち約6割にあたる300例が動脈内ニモジピン投与を受けている。

・血管攣縮が起きた群は、起きなかった群に比べて、90日後のmRSが明らかに悪い方向へずれており(調整オッズ比1.25)、死亡率も36%対29.7%と高かった(調整オッズ比1.35)。

・一方で、攣縮を起こした患者の中では、ニモジピンを動注された群は、されなかった群よりも「早期の神経症状の悪化」が少なく(調整オッズ比0.54)、悪化リスクがおおよそ半分になっていた。再開通率や出血性合併症については、ニモジピンによる明らかな悪影響は見られなかった。

・血管攣縮を起こしやすい条件としては、年齢が若いこと、喫煙していること、M2などやや末梢側の閉塞であること、ステントリトリーバーを第一選択にしていること、そして血栓回収を何度も試みていることなどが挙げられた。


血管内治療中の血管攣縮は、「一時的に細くなっただけで大きな問題はない」というレベルではなく、死亡率の上昇や生活機能の悪化につながる重要な手技合併症であることが、大規模データから示された。とくに、若くて喫煙歴があり、末梢寄りの閉塞で、デバイス操作を何度も繰り返すようなケースでは、攣縮リスクが高いとあらかじめ意識しておく必要がある。また、攣縮が起こってしまった場合には、動脈内ニモジピン投与が早期の神経症状の悪化を抑える可能性がある、


というおはなし。

ニモジピン?



感想:

血管内治療をがんばって何回も血栓除去を試みるほど血管攣縮で予後悪化が進む可能性があきらかになりました。血管内治療は合併症の少なさばかりが宣伝されますが、そうでもなさそうです。
しかも日本は血管攣縮を防ぐ世界標準薬ニモジピンが未承認です。
ひょっとして日本は血管内治療でガラパゴス後進国という理解でよいですか?
くも膜下出血治療でもよく話題になりますが、そもそもなんで日本はニモジピン未承認なの?』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓



まず、大枠から答えます。

1) 「血管内治療でガラパゴス後進国なのか」
2) 「なぜニモジピンが日本だけ未承認なのか」

この二点を分けて整理します。

――――――――――――
1. 日本は血管内治療の「ガラパゴス後進国」なのか
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視点を分けるとこうなります。

a. デバイス・手技そのもの
日本はステントリトリーバーやアスピレーションカテーテルなど、機器面では国際水準とほぼ同期しており、症例数も多く「後進国」とまでは言いにくい領域です。

b. 血管攣縮・DCIに対する薬物治療
ここはかなり“ガラパゴス”です。

・世界的には
 くも膜下出血後の遅発性脳虚血(DCI)予防薬として、エビデンスレベル1Aで推奨されているのは経口ニモジピンだけであり、AHA/ASAガイドラインでも「唯一の標準薬」と位置づけられています。

・日本では
 ニモジピンは未承認で、代わりに
 ファスジル、オザグレル、シロスタゾール、スタチン、EPA、エダラボン、そして最近はクラゾセンタンなど、日本特有の薬剤が組み合わされて使われています。

つまり、
「世界標準薬ニモジピンが使えない一方で、ファスジルやクラゾセンタンといった世界的にはほぼ日本専用の薬を使っている」
という意味では、かなり典型的な“ガラパゴス構造”です。

今回のEVT攣縮論文も

・多回リトリーバー操作などで攣縮が起きると死亡率・機能予後が悪化
・IAニモジピンで早期神経学的悪化が減る可能性

を示したので、「本来ならニモジピンを自由に使える国であれば、EVTの安全性を底上げできる余地がある」と読めます。日本はその選択肢を持っていないので、ここだけ切り取れば「後進的」という評価は、かなり妥当な部分があります。

ただし公平に言うと、

・日本発のファスジルは、逆に欧米では承認されておらず、日本・中国だけの“ガラパゴス優位”な薬でもあります。

したがって、

「血管内治療の技術そのものが後進国」とまでは言えないが、
「薬物治療のレギュレーションは、エビデンスより薬事・産業構造に引きずられた結果として、かなりガラパゴスで患者に不利な面もある」

というのが、現状に近いと思います。

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2. なぜ日本だけニモジピンが未承認なのか
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公式に「この理由です」と一本化された説明はありません。公開情報をつなぎ合わせると、だいたい次の三層構造になります。

(1) 最初のつまずき:認知症薬として申請して失敗した説
医師・作家の李啓充氏などが指摘している経緯です。

・欧米ではニモジピンは「くも膜下出血術後の脳血管攣縮予防薬」として承認された。
・ところが日本の製薬企業は、この小さな市場(年間SAH患者数は約1万5千人)では採算が合わないと見て、「認知症治療薬」としての適応で大きな市場を狙って申請。
・ちょうどその頃、「脳代謝改善薬」全般への規制強化の流れに重なり、認知症適応での承認が取れず、結果として日本市場にニモジピン自体が入ってこなかった。

この「入口でこけた」ために、SAH用としても申請されず、未承認のまま時代が進んだ、というストーリーです。

(2) その後の停滞:誰も“スポンサー”にならなかった
PMDA資料やガイドラインをみると、
「ニモジピンは海外でaSAH後攣縮予防薬として承認されているが、日本では未承認薬」
と繰り返し記載されています。

一方で、日本には

・ファスジル(日本・中国のみ承認)
・ニカルジピン静注、ペレット製剤
・近年のクラゾセンタン(日本で世界初承認)

といった「国産・日本主導」の薬がそろってしまったため、

・古くて特許も切れた安価なニモジピンのために、高額な国内治験と申請コストを負担する企業インセンティブがほぼない
・厚労省の未承認薬要望リストには載るものの、手を挙げる企業がいないので前に進まない

という、政策と市場インセンティブのミスマッチ状態が続いてきたと考えられます。

(3) 科学的に「ニモジピンは要らない」と判断したわけではない
日本の専門誌や総説でも、

・「DCI予防で確実なエビデンスがある薬は、国際的にはいまなおニモジピンのみ」
・「日本では未承認のため、ファスジル等で代替している」

と明言されています。
つまり、「薬効が疑わしいから承認しない」のではなく、

「効くことはみんな知っているが、利害のからみで誰も正式に持ち込まなかった」

という構図に近い。

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3. あなたの問いに対するまとめ
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あなたの文章を前提にすると、次のように言えます。

・EVTで何回も血栓除去を試みるほど、攣縮リスクが上がり、今回のGSR-ET解析のように死亡・機能予後が悪化しうることは、かなりはっきりしてきた。
・本来なら、こうした手技起因の攣縮に対してもニモジピンという「世界標準薬」を自在に使えるはずだが、日本では制度の都合で封じられている。
・その一方で、ファスジルやクラゾセンタンなど高価で日本特有の薬に依存している。

この全体像を踏まえると、

「日本は血管内治療で、少なくとも薬物面ではガラパゴス後進国と呼ばれても仕方がない」

という理解は、かなり現実に近いと私は考えます。ただし、それは

「科学的にニモジピンを否定して選んだ結果」ではなく、
「薬事行政と製薬ビジネスの都合で、安価でエビデンスの確立した薬が取りこぼされ、高価な新薬が優遇されてきた結果」

という性格が強い、という点だけは押さえておくとよいと思います。