2026年8月29日

やりすぎ血栓回収?――『血栓が取れる』と『患者が助かる』は別だった

2026  8月  中国


血栓回収術(EVT/MT)は、大きな脳血管が詰まるタイプの急性期脳梗塞に対する重要な治療である。

近年、その対象は発症早期の患者だけでなく、発症から時間がたった患者、大きな脳梗塞、脳底動脈閉塞などへ広がってきた。

しかし問題は、「血栓を取れるか」ではない。「血栓を取ることで、その患者のその後の生活が本当に良くなるのか」である。

そこで、血栓回収術の患者選び、治療方法、追加治療について、最近の研究結果を整理してみたそうな。



最近のRCT、メタ解析、ガイドラインなどをもとに、血栓回収術について次の3点を整理した。

・どの患者に血栓回収術を行うべきか
・どうすれば安全で質の高い血流再開ができるか
・血栓回収後に薬を追加するなどの治療は有効か

特に、軽症の大血管閉塞、中血管・遠位血管閉塞(MeVO)、非常に広い脳梗塞、発症24時間を超えた患者など、治療するか迷いやすいケースが重点的に検討した。



次のことが分かった。

・前方循環の大血管閉塞、選択された大梗塞、脳底動脈閉塞などでは、血栓回収術を支持するエビデンスが蓄積している。

・しかし、血管が詰まっている患者なら誰にでも血栓回収術を行えばよい、というわけではない。

・特にMeVOでは、2025年のESCAPE-MeVO、DISTALという2つのRCTで、通常治療に血栓回収術を加えても、全体として90日後の機能予後は改善しなかった。

・つまり、「カテーテルが届いて血栓を取れる」ことと、「患者が実際に良くなる」ことは別なのである。

・ただしMeVOでも、症状が明らかに生活の支障になる場合、比較的太いM2が詰まっている場合、すでに壊死した脳が少ない場合などには、治療の利益が残されている可能性がある。そのため一律に治療するのではなく、患者ごとの判断が必要である。

・また、血管が再開通しても、脳の細い血管まで十分に血流が戻らず、患者の回復につながらないこともある。血栓回収後にアルテプラーゼを動脈内投与する方法には有望な結果もあるが、他の薬では効果がはっきりせず、現時点では通常行う治療とはいえない。


血栓回収術は、「詰まった血管を開ければよい」という段階から、「その患者に本当に利益があるか」を考える段階へ移っている。
血栓回収術の対象をむやみに広げるのではなく、利益が期待できる患者を慎重に選び、できるだけ速く、質の高い血流再開を目指すことが重要である、


というおはなし。

やりすぎ血栓回収



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感想:

『ほっとけば死にそうだけどその治療をすれば助かりそうな患者をランダム化比較試験の前に厳選することでほぼ意図した通りに結果を導けるでしょ。代わりにそういう都合の良い患者はごく一部しかいないわけ。それでもこの治療法が効いた!って主張するの。たしかに嘘ではない本当のことだけど、それは治療が効いたんじゃなくて状況に合う患者を見つけただけなのよ。
そして治療が効いたっていうストーリーが載った論文を免罪符にして医者たちが好き勝手なことを始めるわけ。それはツイッターでの血管内治療医のつぶやきをみればあきらか(https://doi.org/10.1136/neurintsurg-2018-014319)。
業界全体がこういう詐欺的手法を容認しているわけ、世も末だとおもわない?』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓



問題の構造自体はかなり鋭いと思う。ただし「RCTをやれば患者選択だけで、ほぼ好きな結果を作れる」というところだけは少し修正したほうが強い議論になる。

RCTの前段階で「放置すれば予後が悪そうで、しかも再灌流すれば救えそうな患者」を強く濃縮することはできる。これは enrichment(濃縮)であり、初期MT試験の大きな効果を理解するうえで非常に重要である。しかし、その選択をした後は同じ適格患者をMT群と対照群へランダム化するので、患者選択だけではMT群を勝たせられない。治療が無効なら、原則として両群とも同じように悪くなる。

だからHERMESなどから本当に証明されたのは、

「脳梗塞にMTが効く」

ではなく、

「一定の条件で厳選されたLVO患者にはMTがかなり効く」

である。

ここまではインチキではない。むしろ臨床試験として正攻法である。

問題はその次だと思う。

この限定命題がいつの間にか、

「MTは劇的に効く治療である」

という治療そのものの属性に変換される。そして「ちょっと遠位でも」「少し軽症でも」「梗塞がかなり完成していても」「もっと時間が経っていても」と境界を外側へ押していく。この瞬間に、最初のRCTが持っていた患者選択条件が消えてしまう。

今回の2026年レビューが、わざわざ

> technical feasibility ≠ clinical benefit

という趣旨を繰り返し、MeVOではESCAPE-MeVOとDISTALが陰性だったことを強調しているのは、この拡張に対するブレーキと読める。著者は最後には「indiscriminate expansion(無差別な適応拡大)」を明確に戒めている。 

そして、今回添付されたTwitter論文は、この「成功物語が独り歩きする文化」が実在したことについては、かなり強烈な資料である。

115例のTwitter投稿では、

* 良好な再灌流 94% vs HERMES 71%
* 治療後NIHSS≤2 81% vs 21%
* 症候性脳出血 0% vs 4.4%
* 死亡 0% vs 15.3%

だった。要するにTwitter上には、ほとんど奇跡の治療にしか見えない世界が出来上がっていた。

しかも著者自身がかなり辛辣で、血管内治療医が「lifesaving」「helping patients cheat death」といった成功例を投稿し、それが同業者間の社会的評価を獲得する材料になっている、とまで書いている。治療前後の血管造影画像や取り出した血栓の写真まで、術者や施設の評判を高める材料になると記述している。

Discussionはさらに露骨で、Twitter上の成績を「hyper-idealistic」と呼び、MTを「miraculous」に見せるメディア表現と「unbridled evangelism of novel ‘miraculous’ therapies」を医師側が抑える責任がある、と述べている。

だから、この論文を持ってくるのはかなり効いている。

ただし、この研究が証明したのは「血管内治療医がTwitterで都合のいい成功例ばかり見せていた」という publication bias であって、「その医師たちが不適応患者にもMTを乱用していた」ことまでは証明していない。そこは分けたほうがいい。

私なら「業界ぐるみの詐欺」とするより、もっと逃げにくい形でこう批判する。

「極端に選別された患者で確立した治療効果が、いつの間にか『血栓回収術そのものは効く』という一般命題へすり替えられた。その成功物語を医師自身がSNSで増幅し、適応拡大への心理的な追い風まで作った。そしてRCTを実際に境界領域まで広げてみると、MeVOでは患者利益が消えた。」

この言い方なら、かなり厳しい批判だが、ほぼ全部エビデンスに足がついている。

そして今回の2026年レビューは、皮肉にもその流れの終着点で、

「取れるから取るな。患者が得するかを見ろ」

と言い始めた論文、と読むことができる。



『この論文では血栓回収に適する患者は脳梗塞全体の何%に相当するって?』



約9%です。

本文では「EVTは虚血性脳卒中患者の一部にしか適用できない」と述べ、その根拠として引用している文献3が、タイトルそのものを「Around 9% of patients with ischaemic stroke are suitable for thrombectomy」としています。 

つまり、このレビューの前提では、
「血栓回収の適応になりうるのは脳梗塞患者全体のざっくり1割弱」
という位置づけです。