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2026年10月9日

「症候性出血は1人だけ」その陰で42%がくも膜下出血――血栓回収の“安全性”とは

元
2024  8月  日本


血栓回収療法の安全性では、しばしば「症候性頭蓋内出血(sICH)が何人起きたか」が重視される。

しかし、sICHが少なくても、実際には画像上の出血がもっと起きている可能性がある。

そこで、M2閉塞に対する血栓回収後のくも膜下出血(SAH)に注目し、とくにSAHの程度と予後のくわしくしらべてみたそうな。



M2単独閉塞に対して血栓回収療法を受けた36人を解析した。
治療後CTでSAHを評価し、SAHなし・薄いSAHと、厚いSAHに分け、手技回数、血管の曲がり、24時間後のNIHSS、90日後のmRSや死亡率を比較した。



次のようになった。

・sICHと判定されたのは36人中わずか1人だった。

・ところがCTをみると、SAHは15人、42%に認められていた。さらにそのうち8人は厚いSAHであった。

・この厚いSAH群では、血栓回収の回数が多く、M2の屈曲も強かった。
そして予後も悪く、90日後にmRS 0~2となった割合は、
SAHなし・薄いSAH群 75%  
厚いSAH群     23%
死亡率は、
SAHなし・薄いSAH群 0%  
厚いSAH群     25%
であった。


sICHは1人しかいなかった一方で、SAHは15人に起き、そのうち8人の厚いSAHは明らかな予後不良と関連していた。
つまり、血栓回収後には、sICHという指標では拾われないSAHがかなり存在し、とくに厚いSAHは患者の回復を妨げる重要な合併症である可能性がある、


というおはなし。

血栓回収でくも膜下出血



感想:

『血栓回収をするとはんぶん近くでくも膜下出血がおきていて、予後悪化と関連していた。症候性頭蓋内出血sICHという鈍感な指標を採用することで、あたかも有害事象などほとんど存在しないかのように扱い治療の有効性をひねり出してきた。このトリックの構造は近位の大血管閉塞についても似たようなものよね。』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓



構造の一部は似ています。ただし、近位大血管閉塞(ICA/M1)についてまで「sICHを鈍感な指標にしたから有効性をひねり出せた」と言うと、そこは言い過ぎになります。

理由は重要で、血栓回収RCTの「有効性」はsICHで判定したのではなく、90日mRSという最終的な機能予後で判定しているからです。HERMESではmRS 0–2が血栓回収46.0%に対して対照26.5%で、mRS全体のshiftでも大きな差がありました。仮に血栓回収で「sICHには分類されない有害な出血」が起きて回復を妨げていれば、その害は原則として90日mRSには反映されます。したがって、sICHの定義を鈍くしただけで、このmRS差を作り出すことはできません。[PubMed Central (PMC)](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5537551/)

ただし、「安全性の見せ方」という意味では、あなたが指摘している問題はかなり現実的です。

たとえば前方循環血栓回収3077例を調べたスウェーデンの全国登録では、

- 何らかの頭蓋内出血:24.2%
- SAH:10.9%
- sICH:4.5%

でした。つまり「sICH 4.5%」だけ聞く場合と、「約4人に1人に画像上の頭蓋内出血、約9人に1人にSAH」と聞く場合では、安全性に対する印象がずいぶん違います。[PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37798105/)

STRATISでも同じ構造が見えます。主として近位LVOを含む841例ではSAHが5.23%だったのに、神経学的悪化を伴うSAHは1.84%にすぎませんでした。しかしSAHを起こした患者の90日自立率は32.5%、SAHなしでは57.8%でした。もちろんこれは観察研究なので、SAHそのものが悪化の原因とは断定できませんが、「無症候性だから無害」とは簡単には言えません。[PubMed Central (PMC)](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8185211/)

さらに血管穿孔、解離、新領域への塞栓など、出血以外の手技合併症もあります。4029例のLVOレジストリでは手技合併症が約8%、血管穿孔1.69%、新領域塞栓5.2%で、穿孔例では90日死亡40.7%でした。これらも当然「sICH率」だけでは表現できません。[PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34706564/)

だから私は、あなたの問題提起を少し修正するとかなり強くなると思います。

> 血栓回収療法の有効性そのものは90日mRSで示されているため、「sICHという鈍感な指標によって有効性を作り出した」とまでは言えない。  
> しかし安全性について「sICHは数%だから出血性合併症は少ない」と説明するのは別問題である。実際にはsICHに分類されないICHやSAH、血管損傷がそれよりかなり多く存在し、一部は予後不良とも関連している。

今回のM2論文は、この「安全性評価の死角」を非常に極端な形で見せた研究、と位置づけるとよいです。

M2 36例  
→ sICH 1例  
→ しかしSAH 15例(42%)  
→ そのうち厚いSAH 8例  
→ 厚いSAH群では自立23%、死亡25%

という順番です。

なお、「血栓回収をすると半分近くSAH」という表現を近位LVOまで一般化するのは避けた方がよいです。42%は今回のM2・36例という特殊な集団であり、大規模なLVOデータではSAHはおおむね5~11%程度です。問題の核心は「半分近く」という発生率より、「sICHという数字だけでは実際の手技関連出血をかなり取りこぼす」という点にあります。[PubMed Central (PMC)](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8185211/)



『くも膜下出血って、致命的なヤバイ状態なんじゃぁないの?治療のついでにおきる善意に基づく出血はセーフなの?お医者さんの判断で致命傷でなくなるの?』



そこは「くも膜下出血」という言葉が同じなので、非常に誤解しやすいところです。医師が「治療中に起きたからセーフ」と判断すると危険性が消えるわけではありません。

ポイントは、SAH(くも膜下出血)は病名であると同時に「血液がくも膜下腔に出た」という解剖学的な記述でもあり、重症度にはものすごく幅があることです。

典型的な動脈瘤性SAHでは、比較的太い動脈が突然破れて、高い動脈圧で血液が脳底槽などに大量に流れ込みます。頭蓋内圧上昇、再出血、水頭症、遅発性脳虚血などを起こし得るため、文字どおり致命的になり得ます。

一方、血栓回収後のSAHでは、M2やその先の細い血管がデバイスで傷つき、脳溝などに少量の血液が漏れるタイプがかなり含まれます。出血が少量で止まってしまえば、典型的な動脈瘤破裂SAHほど危険ではない場合がある。だから「SAHが起きた=即、致命的」ではありません。

しかし、それは、

「医原性SAHだから無害」

という意味ではまったくありません。

むしろ今回の研究が面白いのは、そこです。

36人
→ SAH 15人  
→ そのうち厚いSAH 8人  
→ sICHは1人だけ

だった。

そして厚いSAHの8人では、

良好転帰 23% vs 75%  
死亡 25% vs 0%

と予後が悪かった。

つまり、生体側から見れば、

「医者が治療目的で血管を傷つけた血液」
も
「自然に血管が破れて出た血液」
も、

くも膜下腔に入った血液であることには変わりません。

血液そのものが皮質を刺激してspreading depolarizationを誘発したり、局所的な虚血や炎症、血管攣縮などにつながる可能性もあります。この論文自身も、SAHが回復を妨げる機序としてそうした先行研究を引用しています。

だから問題は「善意による出血かどうか」ではなく、

どこから出たか  
どれくらい出たか  
どこに溜まったか  
出血が止まったか  
周囲の脳・血管をどの程度傷つけたか

です。

そしてsICHは、この出血そのものの重症度を測る名称ではありません。

ここが一番大事です。

sICHとは大雑把に言えば、

「画像上の頭蓋内出血 + 規定以上の急性神経学的悪化」

という研究上のカテゴリーです。

したがって、

「SAHだがsICHではない」
≠
「無害なSAH」

なのです。

今回の論文は、その区別を非常にわかりやすく見せています。

「症候性頭蓋内出血は1人だけだった」と聞けば安全そうに見える。しかし実際には15人がSAHを起こし、その中には90日予後の悪化と関連する厚いSAHが8人いた。

なので、「医者の判断で致命傷でなくなる」というより、

「sICHという定義を満たさなければ、重大な安全性エンドポイントとしてカウントされない」

というのが正確です。

この違いはかなり大きいです。今回の論文を記事にするなら、まさにここを軸にすると面白いと思います。




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