元2026 3月 中国
心臓や血管の病気では、食事が状態に影響することはよく知られている。だが、実際にどんな食事をしている人で、脳卒中や心血管イベントが多いのかを、患者データから具体的に見た研究はまだ多くない。
そこで、心臓や血管の病気をもつ患者を対象に、食事のリスクの違いと、その後の心血管イベントとの関連を調べた。食事の炎症の起こしやすさを示す DII を使い、食事を低リスク、中リスク、高リスクに分けて比較してみたそうな。
2025年1月から6月にかけて、複数の病院にある電子カルテや食事記録を用いた後ろ向き研究である。対象は、心臓や血管の病気が確認されていた成人 525人。
食事情報は、食事日記、24時間思い出し法、食物摂取頻度調査票、管理栄養士の記録から集められた。そこからエネルギー、脂肪、塩分、追加糖などの摂取量を計算し、DII を算出した。低リスク食は、果物、野菜、全粒穀物、食物繊維、オメガ3が多く、砂糖、飽和脂肪、トランス脂肪、塩分が少ない食事である。高リスク食はその逆である。
調べたのは、心血管イベント全体、MACE、心不全、急性冠症候群、不整脈、脳卒中、再血行再建、心血管入院、心血管死亡である。
次のようになった。
・食事リスクが高い群ほど、年齢が高く、所得や教育水準が低く、BMI や腹囲も大きかった。高血圧、糖尿病、喫煙、心機能低下も多かった。・食事内容を見ると、高リスク群では、総エネルギー、飽和脂肪、トランス脂肪、コレステロール、ナトリウム、追加糖が多く、逆に食物繊維、果物、野菜、オメガ3は少なかった。DII スコアも、低リスク群 0.8、中リスク群 2.0、高リスク群 3.4 と段階的に上がっていた。・転帰も同じように悪化していた。脳卒中は、低リスク群 7.7%、中リスク群 14.8%、高リスク群 32.5%であった。心血管死亡は 6.3% から 22.3% に増えていた。MACE、心不全、急性冠症候群、不整脈、心血管入院も高リスク群で多かった。・多変量解析では、高リスク群は低リスク群に比べて、脳卒中が 4.82倍、心血管死亡が 4.13倍、MACE が 2.63倍、心不全が 2.23倍であった。特に、脳卒中と心血管死亡との関連が目立っていた。
炎症を起こしやすい高リスク食は、心血管疾患患者で悪い転帰と強く関連する。とくに脳卒中、MACE、心血管死亡との関連が大きかった。したがって、食事の見直しは二次予防の一部として重要だと考えられる、
というおはなし。
感想:
『低炎症的、DIIが低いほど のぞましいの?』
以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓
基本的には、その論文の立場では「はい」です。DII が低い、つまり低炎症的な食事ほど、より望ましい方向として扱っています。低リスク群は、果物、野菜、全粒穀物、食物繊維、オメガ3が多く、追加糖、飽和脂肪、トランス脂肪、ナトリウムが少ない食事として定義されていて、DII は 1.0 以下です。逆に高リスク群はその反対で、DII は 3.0 以上です。
この論文の結果でも、DII が高い群ほど成績が悪い方向でした。高リスク群では、MACE、心不全、脳卒中、心血管死亡がいずれも多く、調整後でも高リスク群は低リスク群に比べて、脳卒中 OR 4.82、心血管死亡 OR 4.13、MACE OR 2.63 などとなっています。したがって、この論文の読み方としては「DII は低いほうが望ましい」で合っています。
ただし、2段階ほど留保が必要です。
まず、これは観察研究です。しかも後ろ向きの cross-sectional に近い設計なので、「DII を下げたから必ず予後が改善する」とまでは証明していません。著者自身も、因果は言えない、未測定交絡が残る、と認めています。つまり「低DII ほど望ましそう」は言えても、「低DII にすれば必ずこうなる」はまだ別問題です。
次に、DII は万能指標ではありません。食事の炎症性をまとめた総合点としては便利ですが、栄養の良し悪しを全部これ1個で言い切れるわけではないです。論文本文でも、PURE のように栄養疫学の複雑さを示す研究があると触れていて、食事評価には単純化しすぎの面もあります。
なので、結論はこうです。
この論文の中では、低炎症的で DII が低いほど望ましい、でよいです。
ただしそれは「よりよい食事パターンの目安」としてであって、絶対的な真理とか、単独で使う万能物差しではありません。
『ナトリウム、飽和脂肪酸、コレステロールって、低いとかえってヤバい的報告をよくみるんだけど。 基準作っているひとたちは「低塩分、低脂肪教」の信者で、ちょっとアタマおかしいと思うの。』
かなり率直に言うと、その違和感には一理あります 😐
ナトリウム、飽和脂肪、コレステロールは「低ければ低いほど無条件によい」とは、もう雑には言えません。実際、観察研究では、特にナトリウムで J字型とか逆相関っぽく見える報告があり、PURE でも「飽和脂肪は少なくとも単純な悪者ではない」「高炭水化物のほうがまずい場面がある」という結果が出ています。
ただし、そこからすぐに「だから低塩・低脂肪の考えは全部おかしい」とまでは飛べません。理由は2つあります。ひとつは、低ナトリウムや低コレステロール群には、もともと病気が重い人、食欲が落ちている人、治療中の人が混じりやすく、逆因果が入りやすいことです。もうひとつは、「何を減らして何に置き換えたか」で結果がかなり変わることです。飽和脂肪を減らして精製炭水化物に置き換えれば悪化しうるし、不飽和脂肪に置き換えれば有利という整理が今の主流です。AHA も、飽和脂肪は単独で悪と断じるというより、不飽和脂肪への置換を推しています。
で、この論文そのものについて言えば、あなたの警戒心はむしろ妥当です。この論文は DII を高くする成分として、飽和脂肪、トランス脂肪、ナトリウム、追加糖をひとまとめに「高リスク食」の側へ置いていますが、実際の high-risk 群はそれだけでなく、総エネルギー過多、追加糖過多、甘い飲料多い、食物繊維少ない、果物・野菜少ない、オメガ3少ない、BMI 高い、腹囲大きい、喫煙多い、機能分類も悪い、LVEF も低い、という“全部まとめて悪い群”です。だから、この論文だけを見て「ナトリウムが悪い」「飽和脂肪が悪い」「コレステロールが悪い」と単品で断罪するのは無理があります。
しかも設計は後ろ向き観察研究で、食事評価もカルテ由来です。著者自身が因果は言えないと認めています。つまりこの論文は、「食事全体が荒れている患者群は予後も悪かった」という話としては読めても、「低塩・低脂肪教義の正しさを証明した論文」としてはかなり弱いです。
ナトリウムについても同じです。レビューでは、高塩分が血圧や心血管リスクに不利という整理が主ですが、一方で J字型に見える研究もあり、その一部は測定法や逆因果で説明される可能性が指摘されています。つまり、ここは「極端な高塩はまずい」「しかし低ければ低いほど万能でもない」「測り方が雑だと変な曲線が出る」というのが、いちばん現実的な読みです。
なので、私の整理はこうです。
この論文の著者側はかなり教科書的です。
飽和脂肪、ナトリウム、コレステロールを悪者側に置く発想は強いです。
でも、この論文から言えるのはせいぜい、
「総じてジャンク寄りで、糖も多く、繊維も少なく、肥満や喫煙も多い群は予後が悪い」
までです。
つまり、あなたの
「基準を作る側は、特定の栄養素を悪魔化しすぎでは」
という疑いは、少なくともこの論文を読む限り、かなり刺さっています。🔍
さらに踏み込んで言えば、
本当に見るべきは「ナトリウム何 mg か」や「飽和脂肪何 g か」単独ではなく、
その人が
高糖質なのか
超加工食品寄りなのか
タンパク不足なのか
カリウムや食物繊維が少ないのか
エネルギー過多なのか
置換先が何か
です。そこを無視して単独成分だけで善悪を決めると、かなり雑になります。
