元
脳卒中は世界中で多くの人が悩まされている深刻な病気であり、予防がとても大切である。これまでの観察研究では、果物や野菜を食べたり、運動したり、たばこをやめたりすることで脳卒中のリスクが下がるかもしれないと言われてきたが、ほんとうにそうなのかははっきりしていなかった。
なぜなら、生活習慣の影響を受けやすい研究では、原因と結果が逆だったり、ほかの要因がまざっていたりするからである。そこで、「メンデルランダム化」という遺伝情報を使った方法で、本当に生活習慣が脳卒中の原因になるのかをしらべてみたそうな。
イギリス(UK Biobank:46万人以上)とフィンランド(FinnGen:18万人以上)の2つの大きな人の集団から集められた遺伝データを使った。
「果物」「サラダ」「チーズ」「コーヒー」の食べ物に関する習慣、「喫煙の開始」「喫煙の強度」「母親の喫煙歴」「運動」「BMI(太りやすさ)」の9つの項目について、それに関係する遺伝的な特徴(SNP)を使い、脳卒中との関係を調べた。統計には、結果の信頼性を高めるための複数の方法が使われた。
なお、検討された項目が9つと少ないのは、メンデルランダム化という手法の性質によるものである。遺伝的に裏づけのある生活習慣(=信頼できるSNPが見つかっている項目)しか分析できないため、対象はどうしても限られてしまう。
次のようになった。
・はっきりと「脳卒中のリスクを下げる」とわかったのは、「果物を食べること」と「運動すること」の2つだけだった。
・サラダやチーズも少しよいかもしれないという結果がイギリスのデータで出たが、フィンランドでは効果が見られなかった。コーヒーは脳卒中との関係が見つからなかった。
・たばこについては、自分が吸うかどうかや量にかかわらず、また母親が妊娠中にたばこを吸っていたかどうかも、脳卒中のリスクを大きく高めていた。
・BMI(太りやすさ)は、フィンランドのデータではリスクを高めていたが、イギリスのデータでは関係が見られなかった。
この研究は、今までの「こうすれば脳卒中を予防できる」という話が本当に正しいのかを、遺伝的因果関係の点から確かめたものである。その結果、果物を食べることと、定期的な運動が、脳卒中の予防に本当に効果があるとわかった。サラダやチーズは良さそうだが、まだ確実とは言えない。BMIやコーヒーについては、これまで言われてきたほど明確な関係は見られなかった。このことから、誰にでも当てはまる健康法をうのみにせず、それぞれの人に合った方法を考えることの大切さがわかる、
というおはなし。
感想:
『運動とフルーツがあきらかに脳卒中を防ぐいっぽう、喫煙はまちがいなく脳卒中の原因であり、 BMIはあんまり気にする必要なさそう。コーヒー サラダ チーズは好きにして、ってことね。』
まさに、この研究の本質を一行でズバッと要約するならそれである:
🟢 「運動とフルーツは脳卒中を防ぐ、たばこは確実に害、BMIは気にしすぎなくてよい、あとは好きにしなさい」
この“割り切り感”が、従来の「とにかく全部制限しましょう」式の健康指導とはまったく異なるところであり、
メンデルランダム化という手法だからこそ言える冷静な因果評価とも言える。
🔍 あえて分解するならこう:
分類 | 要因 | 結論 | コメント |
✅ 確実に効果あり | 運動、果物 | 保護的(リスク↓) | 誰にでも推奨できる。遺伝的にも明らかに有利。 |
☠️ 確実に害あり | 喫煙(本人・母親) | 危険(リスク↑) | 開始・量・親世代、どこからでもダメ。 |
🤷♂️ 効果にばらつき | BMI | コホートで結果が違う | 肥満だけで一律に悪者扱いすべきではない。 |
🫥 関係薄い/判断保留 | コーヒー、チーズ、サラダ | 有意差なし or 地域差 | 好きならどうぞ、無理にやめる意味は薄い。 |