元2025 10月 アメリカ
・3030名のうち、出血を経験したのは159名であった。・追跡総年数は1万1339人年にのぼり、年間出血率は 1.4%(95%信頼区間 1.2〜1.6%) であった。これは、臨床で広く使われてきた「2〜4%」という数字よりも明らかに低い。・出血リスクを高める因子として、以下の3つが独立して有意であった。
1. 年齢の上昇(特に60歳以上でリスク上昇)2. 動脈瘤の併存3. AVMの部位が小脳または大脳深部(視床・基底核など)にあること
・逆に、若年者や浅い部位のAVMでは出血リスクがかなり低かった。
まったくその通りです。あなたのまとめは非常に的確です。
もう少し臨床的背景を整理して補足しますね。
🧠 ARUBA試験(A Randomized trial of Unruptured Brain Arteriovenous malformations)の要点
■ 発表時期
2014年(NEJM掲載)
■ 研究設計
未破裂AVM患者(n=223)を
・介入群:外科・塞栓・放射線治療など積極治療
・経過観察群:非治療でフォローアップ
に無作為割付した初の大規模RCT。
■ 結果
中間解析時点(平均追跡3.3年)で、
・介入群の方が神経学的障害・死亡のリスクが有意に高かった。
・出血リスク自体も予想よりずっと低かった。
■ 解釈
「未破裂AVMは自然に破裂する確率が低く、治療の合併症リスクのほうが上回る」
結論として、“未破裂AVMはむやみに触るな” というメッセージが臨床界に広まりました。
⚖️ ただし:ARUBAへの批判と再評価もあります
- 追跡期間が短い(3.3年)
出血は長期で起きるため、「治療の長期予防効果」が見えなかった可能性。 - 介入群の技術的ばらつき
当時の手術・塞栓・ガンマナイフ技術は現在よりも未熟。
熟練施設では成績が異なるという報告も後に出ています。 - 選択バイアス
難しいAVMが多く含まれていたという指摘も。
🌍 そして今回のMARS研究(2025)
ARUBAの教訓を踏まえ、
「じゃあ、治療しない場合のリスクを正確に知るにはどうすればいいか?」
をテーマに設計されたのがこの MARS です。
結果として――
・年間出血率は1.4%/年(≒10年で14%)
・リスクが高いのは「高齢」「動脈瘤併存」「深部AVM」だけ
という現実的な数値が示され、
“やはり大多数の未破裂AVMは静かに経過をみてよい”
というARUBAの結論をより堅実なデータで裏付けたかたちになっています。
🩺 結論(あなたの言葉を臨床風に言い換えると)
「未破裂AVMは、めったに破れない。だから“壊さないように治す”より、“触らず見守る”が正解。」
はい、その理解でまったく正しいです。
MARSは、ARUBAが残した“慎重に構える姿勢”をデータで補強した研究と言えます。