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2026年2月16日

減薬でADLが伸びる?日本の回復期リハで見えた「薬が減らない」本当の理由

2026  1月  日本


脳卒中の回復期リハでは、訓練量や栄養だけでなく、薬が多すぎること(ポリファーマシー)が回復を邪魔している可能性がある。

ところが、回復期の入院中に減薬したとき、ADLや筋力がどう変わるのかを示すデータは十分ではない。そこで、回復期入院中の「薬が減ったこと」と、退院時のADL・握力・筋肉量が関連するかをくわしくしらべてみたそうな。



日本の回復期リハ病棟(135床)に、2020年1月〜2023年12月に入院した脳卒中患者を後ろ向きに解析した。急性期治療後に回復期へ転院した患者のうち、入院時に5剤以上を内服している患者を対象にした。

入院中に薬剤数が減った患者を「減薬群」、減らない(変化なし)または増えた患者を「非減薬群」とした。主要アウトカムは退院時FIM-motor(ADLの指標)、二次アウトカムは退院時握力と退院時SMI(BIAで推定する骨格筋量指数)である。 

減薬群と非減薬群は、もともとの重症度や体格などが違う可能性がある。そこで傾向スコア(PS)マッチングで背景をそろえたうえで、多変量回帰を使い「薬が何剤減ったか」とアウトカムの関連を評価した。 

薬剤管理は病棟薬剤師が中心となり、処方を定期的に見直して、リハの妨げ(例:眠気)や低栄養悪化に関係しそうな薬は減量・中止を検討した。ただし、減薬の手順は標準化されたプロトコルではない。



次のようになった。

・対象はポリファーマシー419例で、全体の65.7%にポリファーマシーがみられた。平均年齢は75.9歳で、入院時の薬剤数中央値は7剤(IQR 6–9)であった。減薬群は136例(32.5%)で、薬剤数の中央値は2剤減(IQR 1–3)であった。

・処方の傾向として、入院中に2剤抗血小板療法、利尿薬、PPIが減り、β遮断薬、尿酸降下薬、抗血小板単剤、ベンゾジアゼピン、前立腺肥大症のα遮断薬、下剤が増えた。
(例:PPI 71.6%→59.2%、利尿薬 19.1%→15.5%、抗血小板2剤 14.4%→5.7%に低下している。)

・PSマッチ後は212例(各群106例)となった。単純比較では、退院時FIM-motor、握力、SMIに有意差はみられなかった。

・一方、マッチ後の多変量回帰では、薬剤数の減少が退院時FIM-motorと握力の改善と関連した。薬が1剤減るごとに、FIM-motorは+1.162(95%CI 0.339–1.984)、握力は+0.369(95%CI 0.011–0.727)であった。逆にSMIは、薬が1剤減るごとに−0.071(95%CI −0.129〜−0.013)と負の関連を示した。


回復期リハ病棟の脳卒中ポリファーマシー患者では、入院中の薬剤数減少が、退院時ADL(FIM-motor)と握力の改善と関連していた。ただし観察研究であり、減薬が原因で良くなったと断定はできない。また効果の大きさは小さい(modest)とされる、


というおはなし。

脳卒中のポリファーマシー



感想:

『こんなにたくさんの薬を飲ませているってことは、薬剤師が仕事をしていないか無能な証拠よね』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓



その見立ては、直感としては自然です。薬が多い状態は、誰かが全体最適をしていないサインに見えるからです。とはいえ「=薬剤師が無能」まで直結させると、因果が飛びやすいので、現実に起きている構造を2〜3段で分解しておくと、批判の刃がより刺さります🔪

確認1:ポリファーマシーは、単純に“処方の足し算”が長期間続いた結果として生まれやすい(複数診療科、複数医療機関、ガイドラインの積み重ね、入退院の繰り返しで薬が戻らない)。この時点で、個人の能力だけで説明するのは難しいです。
確認2:薬剤師が「気づいても減らせない」典型パターンがある(権限、責任、記録、診療報酬、訴訟リスク、患者の期待、医師側の受け止め)。つまり能力問題より、制度とインセンティブ問題で詰みやすい。
確認3:この論文の文脈でも、減薬は“固定プロトコルで自動的にやる”のではなく、薬剤師が医師と連携して個別に提案する、と書かれている。これは逆に言えば、普段はその連携が十分に回っていない現場が多いことを示唆します。

ここから先は、あなたの主張を「ただの悪口」じゃなく「構造批判」に格上げする言い方です。

1. “無能”よりも「システムとして減薬が起きにくい設計」
   薬剤師がいても、減薬は不利益(トラブル、説明コスト、責任)を生みやすく、利益(数値評価、報酬、称賛)が見えにくい。だから自然に「足す医療」は回るけど、「引く医療」は回らない。これは個人の能力より仕組みの問題、と言う方が強いです。

2. 真に刺すべきは「薬剤レビューの不在」
   “薬が多い=誰も全体をレビューしていない”がコア。レビューがないのは、薬剤師が無能というより、レビューを標準業務として回す設計になっていない、あるいはレビューしても通らない文化、という話に持っていくと説得力が上がります。

3. ただし例外もある(薬が多くても合理的なケース)
   重症心不全+糖尿病+腎障害+心房細動+冠動脈疾患みたいな「併存症の塊」は、必要薬だけで10剤近くに到達し得ます。だから“薬が多い”だけで即「無能」と断じると、反撃されやすいです。
   その代わり、「目的不明のPPI」「長期ベンゾ」「抗コリン負荷」「重複処方」「処方カスケード」みたいな“削れる典型”を押さえて批判すると、反論されにくいです。



『筋肉量が減ったのはなぜ?』



まず論文内で確認できる事実を3つ押さえます🧩

確認1:この研究では「減薬した群ほど退院時SMI(骨格筋量指数)が低い」という“負の関連”が出ていますが、著者自身も「予想外で、機序は不明」と書いています。 
確認2:測定はBIA(生体インピーダンス)なので、理屈の上では水分状態の影響を強く受けます。そこで著者は「利尿薬が減った=水分が変わって見かけ上の筋量が動いたのでは?」を疑い、総体水分の変化を見ていますが、群間差がなく説明できなかった、としています。
確認3:筋肉量に影響し得る薬(例としてステロイド、SGLT2阻害薬、GLP-1作動薬、SU薬、グリニドなど)をまず疑ったが、この集団では処方頻度が低く、入退院での変化も小さかった、と述べています。

では「なぜ筋肉量が減ったように見えたのか?」の、現実的な説明候補(論文の情報に整合する順)です。

1. 残余交絡(減薬そのものというより“減薬が起きやすい患者像”の影響)
   減薬群はもともとBMIやFIMが低いなど、虚弱・低栄養寄りの特徴があったと記載されています(少なくとも粗解析では)。 こういう背景があると、統計でPSマッチしても拾いきれない「フレイル度」「炎症」「合併症の重さ」「病前の筋量低下」みたいな要素が残りやすい。著者も“未測定交絡の可能性”を明示しています。

2. BIA由来の測定ブレ(総体水分が同じでも“分布”が違う問題)
   著者は総体水分(total body water)の変化に差がないので説明不能としています。
   ただ、BIAは総量が同じでも、細胞内水分/細胞外水分比、浮腫、炎症、体液シフトで推定が揺れます。回復期の脳卒中は浮腫・活動量変化・自律神経変動があり得るので、ここは“総体水分だけでは割り切れない”タイプのノイズ源です(論文もBIAが水分に影響される点は認めています)。

3. 逆因果っぽいシナリオ(筋量が落ちる過程にある人ほど減薬される)
   たとえば食欲低下、傾眠、嚥下、低血圧、腎機能低下などが出ると、原因薬を整理する流れになりやすいです。つまり「筋量低下のリスクが高い状態」→「減薬が選択される」という順序。観察研究だとこれが混ざりやすいです(著者も機序不明+交絡を疑う、という結論)。

4. 薬の“入れ替え”が筋量に効いた可能性(ただし論文だけでは特定不能)
   入院中に増えた薬もあると書かれていて、減薬は単純な「引き算」ではありません。
   特定の薬剤変更(例:鎮静系を減らして活動は上がるが、別要因でカタボリックが進む等)が筋量に影響した可能性はありますが、この論文のデータだけでは切り分けできません。

まとめると、この論文の筋肉量(SMI)低下は「減薬が筋肉を減らした」と断定できる種類の所見ではなく、著者の言う通り、BIA測定の限界と未測定交絡をまず疑うのが堅いです。



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