元2026 1月 韓国
・対象となった患者は41,530人で、平均年齢は66.3歳、約6割が男性であった。このうち約6割がDAPTを受けていた。・90日以内に主要なイベントが起きた割合は、DAPT群で10.7%、単剤療法群で11.6%であり、全体としてDAPTはリスクを下げていた。・特に、発症から24時間以内にDAPTを始めた場合に効果が最も大きく、再発などのリスクが明らかに低下していた。一方、24~72時間で開始した場合には差は見られず、72時間を超えてから開始した場合には、むしろリスクが高くなる可能性が示された。・時間の経過を連続的に見た解析では、DAPTの利益はおよそ42時間あたりでなくなっていくことが示された。
『ようするに、DAPTで防げるタイプの脳梗塞は42時間以内に集中していて それ以降は別の機序による脳梗塞が発生する可能性が残る。 さらにDAPTによる出血リスクは相変わらずなので、42時間以降はその影響が予防効果を上回り始めるってことよね。』
概ねその要約で合っています。さらに精度を上げるために、2点だけ確認と補足を入れます。
1) 「42時間以内に集中している」の意味
ここで“集中”しているのは、脳梗塞そのもの全部というより「DAPTで上乗せして防げるイベント(可逆的・血小板依存の再発)」です。実際に42時間以降も虚血イベントは起こり得ますが、DAPT追加で差がつきにくい(=抑えられない/既にリスクが下がっている/別機序が混じる)領域に入る、という整理が適切です。
2) 「出血リスクは相変わらず」について
方向性は正しいです。DAPTの出血リスクはゼロにはならず一定程度ついて回ります。一方で、時間が経つほど“防げる虚血イベント”が減る(もしくはDAPTの寄与が薄まる)ため、純利益が相殺され、場合によっては不利益側に傾きやすくなる。論文の結果(24–72hで有益性なし、>72hで有害示唆)と整合します。
なのであなたの文を、より厳密に言い換えるならこうです。
「DAPTの便益は超早期に偏在し、42時間前後を越えると便益が急速に減衰する一方、出血というコストは残り続けるため、以後はリスク・ベネフィットが不利化し、>72時間では不利が表面化し得る。」
大枠の理解は正しいです。さらに踏み込むなら、“42時間”は絶対的な生物学的境界というより、この集団・この解析で推定された閾値で、患者背景や病型(大血管病変の有無など)で前後し得る、という扱いになります。
『ひょっとしてDAPTを2週間も飲ませるのってヤバいんじゃね?』
その理解は「ほぼ当たり」である。ただし、2つだけ切り分けると誤解が減る。
第一に、主要評価項目の中身(この論文)について。
この論文の主要評価項目は「90日以内の再発脳卒中・心筋梗塞・死亡」の複合であり、DAPTの利益が24時間以内で最大、24–72時間で消え、72時間超で不利方向という結果である(いわゆる“42時間でヌルを跨ぐ”)。
つまり、この論文の枠内では「効果が出るのは超早期で、遅い開始では利益が薄れる(あるいは不利)」が主メッセージである。
第二に、「2週間も飲ませるのはヤバいのでは?」という疑問の核心(一般化)について。
“2週間”は、少なくとも主要ガイドライン/主要試験の文脈では、むしろ標準的な短期DAPTの範囲に入ることが多い。たとえば、CHANCEはアスピリン+クロピドグレル併用を21日行う設計である。
また、POINTの二次解析(時間経過での利益とリスク)では、アスピリン+クロピドグレルは「およそ21日程度」が利益最大化と出血最小化のバランスになり得る、という趣旨が示されている。
さらに、BMJの迅速勧告は「発症後24時間以内に開始し、10〜21日継続」を強く推奨している。
では、あなたの直感(“出血リスクが前に出る局面”)はどこで正しくなるか。
ポイントは「期間」よりも「誰に」「いつから」「何を」足すかである。一般に、DAPTは長期でやるほど出血リスクが積み上がるため、“短期に限る”が原則であり、AHA/ASAも長期DAPTは推奨しない立場である。
実際、POINTでは重大出血が増える方向が示されており、出血リスクは一定程度ついて回る。
今回あなたが読んでいる新しいコホート研究は、さらに「開始が遅いほど、利益が減ってコスト(出血など)が相対的に目立つ」可能性を示す、という流れになる。
要するに、2週間そのものが即「ヤバい」ではない。むしろ「超早期に開始して短期で切り上げる」枠に入ることが多い。一方で、この新論文の含意を重く見るなら、「開始が遅いなら、2週間でも“上乗せの意味が薄いのに出血は増やし得る”」という方向の警戒は合理的である。
注意として、これは一般論であり、個別患者では出血リスク(高齢、既往、併用薬、病変、腎機能など)や病型(頭蓋内狭窄など)で最適解が変わる。ここは主治医判断が前提になる。
