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2026年8月9日

脳内出血を吸い出しても効果は不明――STICH後も続く日本の外科介入

2026  8月  日本


自然発症の脳内出血では、血腫による圧迫を減らす目的で外科的血腫除去が行われることがある。

近年は開頭術より低侵襲とされる内視鏡的血腫除去術が普及しているが、高齢者、抗血栓薬使用者、さまざまな出血部位を含む実臨床でのデータは十分ではない。

そこで、一施設で行ってきた内視鏡的血腫除去術の治療成績をまとめ、その安全性、血腫除去率、90日後の機能予後などをくわしくしらべてみたそうな。



2018年4月~2026年2月に、山形市立病院済生館で自然発症の脳内出血に対して内視鏡的血腫除去術を受けた連続136例を後ろ向きに解析した。
患者の年齢中央値は72歳で、21%が抗血小板薬や抗凝固薬などの抗血栓薬を使用していた。
出血部位は被殻43%、視床出血+脳室内出血18%、皮質下15%、小脳13%、脳室内出血のみ10%などであった。
手術は拡張した穿頭孔から透明シースを挿入し、内視鏡下で血腫を吸引・除去する方法で行われた。主要評価項目は90日後のmodified Rankin Scale(mRS)0~3を「良好な転帰」とした割合である。



次のようになった。

・評価可能な122例での血腫除去率中央値は90%であった。手術時間中央値は80分であった。

・90日後にmRS 0~3となった患者は全体の32%で、部位別では、

* 小脳出血 56%
* 被殻出血 36%
* 皮質下出血 25%
* 脳室内出血のみ 21%
* 視床出血+脳室内出血 17%

であった。

・90日死亡率は全体で15%であった。術後24時間以内のCTでは再出血は136例中0例で、再手術を必要とした患者もいなかった。

・良好な90日転帰と関連していたのは、若い年齢、入院時GCSが高いこと、血腫量が小さいこと、発症前mRSが低いことであった。一方、視床出血+脳室内出血は不良転帰と強く関連していた。


内視鏡的血腫除去術は、血腫を中央値90%除去でき、136例で術後再出血や再手術を認めなかったことから、さまざまな部位の自然発症脳内出血に対する実行可能な低侵襲治療法である、


というおはなし。

内視鏡血腫除去



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感想:

『外科的介入による血種除去はSTICH試験で百害あって一利なしと否定されたんじゃなかったっけ?』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓



そうです。ただし正確には、STICHが否定したのは「脳内出血の血腫を外科的に除去する発想そのもの」ではなく、主として「広い患者群に対する早期の開頭血腫除去術を、ルーチンに行えば予後が改善する」という仮説です。

STICH Iでは、早期手術群の良好転帰は26%、初期保存治療群は24%で、有意差はありませんでした。つまり「害だけだった」というより、手術侵襲を加えても全体として利益を証明できなかった、という結果です。([PubMed][1])

STICH IIは、比較的手術向きと思われる「表在性の脳葉出血・意識あり・脳室内出血なし」に絞りましたが、それでも6か月の死亡・障害には有意な改善がありませんでした。ただし、手術で死亡・障害が増えたわけではなく、わずかな生存利益の可能性は残りました。([PubMed][2])

したがって、かなり乱暴に整理すると、

「開頭して正常脳を通り、血腫を取りに行くと、血腫除去の利益が手術侵襲で相殺される」

というのがSTICHの核心です。

今回の論文は、そこに対して、

「大きく開頭せず、内視鏡で血腫の90%を除去でき、再出血も再手術もなかった」

と技術的安全性を示したものです。

しかし、これは保存治療群のない後ろ向き症例集積です。著者自身も「対照群がないため因果的な有効性は結論できない」と認めています。

結論としては、

「STICHで開頭血腫除去術の一律実施はほぼ否定された。今回の研究は、内視鏡なら同じ失敗を回避できるかもしれないと示しただけで、患者を救った証明にはなっていない」

という位置づけです。32%が良好転帰だったという数字も、手術しなければ何%だったか分からない以上、効果判定には使えません。

[1]: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15680453/?utm_source=chatgpt.com "Early surgery versus initial conservative treatment in patients with spontaneous supratentorial intracerebral haematomas in the International Surgical Trial in Intracerebral Haemorrhage (STICH): a randomised trial - PubMed"
[2]: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23726393/?utm_source=chatgpt.com "Early surgery versus initial conservative treatment in patients with spontaneous supratentorial lobar intracerebral haematomas (STICH II): a randomised trial - PubMed"



『患者を救う証明もなしに、対照群もないこれほどの数の手術をこなしたのはなぜ?』



端的には、これは「有効性を証明するために136人へ試験的に手術した」のではなく、臨床上必要と判断して行った手術を、約8年分まとめて後ろ向きに解析した研究だからです。

論文では、2018年4月~2026年2月に同院で内視鏡手術を受けた連続136例を集計しています。年平均にすると約17例であり、単一の脳卒中センターとして異常に大量というほどではありません。研究開始後に患者を割り付けたのではなく、「すでに手術された患者だけ」を後から調べた症例集積です。

手術した理由は、著者らの説明では日本脳卒中学会ガイドラインと救命上の判断です。具体的には、神経症状が悪化する30mL以上の被殻出血、3cm以上または悪化する小脳出血、表在性で30mL以上の皮質下出血などが対象でした。視床出血については、視床内の血腫を積極的に取るのではなく、主に脳室内血腫を除去して閉塞性水頭症を解除する目的でした。

つまり現場の発想は、

「放置すれば脳圧亢進、脳ヘルニア、水頭症で死亡または重度障害になりそうだ。開頭術より低侵襲な内視鏡で減圧できるなら実施する」

というものです。「予後改善がRCTで証明済みだから手術した」というより、「目の前の悪化を止めるために、合理的と思われる救命処置をした」という位置づけです。

ただし、その臨床判断と、科学的に効果があるかどうかは別問題です。

この施設では基本的に手術を選択した症例だけを集めているため、同じ重症度で手術を受けなかった患者がどれだけいたのか、保存治療ならどうなったのかが分かりません。著者自身も、対照群のない単施設後ろ向き研究なので、手術の因果的有効性は結論できないと認めています。さらに手術適応には担当脳外科医の個別判断が入っており、患者選択の偏りも避けられません。

したがって、この136例から分かるのは主に、

「この施設では内視鏡で血腫をかなり除去できた」
「少なくとも術後再出血や再手術は観察されなかった」

という技術的成績です。

分からないのは、

「手術しなければ死亡していた患者を何人救ったのか」
「手術によって障害を軽くできたのか」
「手術しなかったほうが良かった患者はいなかったのか」

です。

かなり批判的に表現すれば、この論文は「136人を救った証拠」ではなく、「この施設では136人に手術を行い、手技としてはうまく血腫を取れたという活動報告」に近いです。著者らも最終的には、前向き無作為化試験で確認する必要があるとしています。

したがって疑問は妥当です。特に、内視鏡手術を積極的に実施してきた施設であるなら、少なくとも保存治療例との傾向スコア比較や、手術導入前後の比較くらいは提示できたはずです。それを行わず「90%除去、再出血ゼロ」を前面に出すと、血腫を取れたことと患者を救えたことが、読者の中で混同されやすくなります。



『内視鏡ならあたかも正常脳を傷つけないかのような言い方だけど、そうじゃないでしょ。ゆいいつ内視鏡手術を肯定するENRICH試験は利益相反ゴリゴリのインチキ試験で、しかも適応になる患者は数%にすぎないっていうじゃない。この施設のこれほどの手術件数は妥当って言えるの? STICHを真に受けると脳外科医の仕事が減っちゃうから知らんぷりして血腫介入を続けてきたんじゃぁないの?』



結論から言えば、136例の「手術適応が妥当だった」とは、この論文からは言えません。むしろ、適応の妥当性を検証するために必要な情報が意図的かと思うほど欠けています。

ただし、「脳外科医の仕事を守るために続けた」とこの施設について断定する証拠もありません。最も堅く言えるのは、

「効果不明の手術が、弱い推奨と救命目的を根拠に長年ルーチン化され、その結果を対照群なしで“高い技術的有効性”として報告している」

というところです。

### 内視鏡でも正常脳は通過する

この手術は、頭蓋骨に25~30mmの穴を作り、透明シースを皮質・白質内に通して血腫腔へ到達し、吸引、灌流、双極凝固を行う手術です。開頭術より進入路が小さいだけで、正常脳を通らずに血腫へ瞬間移動するわけではありません。

したがって「低侵襲」は、

「損傷がない」
ではなく、
「開頭術よりアクセス損傷が小さい可能性がある」

という相対的な表現です。

シースによる圧排、皮質切開、白質線維の離断、穿通枝損傷、凝固による熱損傷、静脈損傷などは原理的に残ります。この論文は術後CT上の再出血を調べていますが、手術進入路による微細な脳損傷をMRI、神経心理検査、術前後の詳細な神経所見などで評価していません。

### ENRICHは、この136例の根拠にはほとんどならない

ENRICHは、手術機器メーカーのNICOがスポンサーかつClinicalTrials.gov上の責任主体で、NICO製品を用いた試験です。これは結果が虚偽だという証明ではありませんが、非常に強い構造的利益相反です。独立した追試なしに一般化すべき試験ではありません。([New England Journal of Medicine][1])

さらに、11,603人を適格性評価して無作為化されたのは300人、約2.6%だけです。途中解析では前方基底核出血に有望性がないと判定され、同部位の登録が中止されました。最終的な利益は、ほぼ脳葉出血に限定されています。([New England Journal of Medicine][1])

実臨床集団にENRICH基準を当てはめた研究でも、適応となるのは全脳内出血患者の約2~4%、脳葉出血だけに限れば2.8%程度と推定されています。したがって「ごく一部だけ」という理解は妥当です。([PubMed Central (PMC)][2])

ところが今回の136例の内訳は、

* 被殻出血58例
* 視床出血+脳室内出血24例
* 皮質下出血20例
* 小脳出血18例
* 脳室内出血単独14例
* 尾状核出血2例

です。ENRICHで利益が示唆された脳葉・皮質下出血に近いのは、最大でも20例、全体の約15%にすぎません。

しかも、その皮質下出血群は中央値で年齢84歳、発症前mRS 2、血腫量92mLです。ENRICHは原則として80歳以下、発症前mRS 0~1、血腫量30~80mLでした。患者別データがないため正確な重複人数は不明ですが、ENRICHに合致する患者は20人よりさらに少なかった可能性が高いです。 ([New England Journal of Medicine][1])

つまり、この論文がENRICHを引用していても、

「ENRICHによって136例の手術が正当化された」

とは到底言えません。

### 日本のガイドラインも積極的肯定ではない

日本脳卒中学会ガイドラインでは、被殻出血の血腫除去や内視鏡手術の多くはGrade C、すなわち「考慮してもよいが、有効性は不確実」という弱い推奨です。小脳出血の一定条件や閉塞性水頭症に対する脳室ドレナージは比較的根拠がありますが、視床血腫の急性期除去はGrade Dで「推奨されない」とされています。([PubMed Central (PMC)][3])

著者らは視床出血について「まず脳室内血腫を除去し、安全なら視床血腫も部分除去した」と説明しています。しかし実際には視床群24例で視床実質血腫の除去率中央値が65%です。単なる脳室ドレナージや脳室血腫除去だけではなく、相当量の視床血腫に介入しています。 

この24例については特に、

「なぜガイドラインが推奨しない視床実質血腫を65%も除去したのか」

という個別適応の説明が必要です。

### 136例という数だけでは過剰手術とは断定できない

約8年間で136例なので、年平均約17例です。高次脳卒中センターとして絶対数だけを見れば、極端に多いとまでは断定できません。

しかし本当に必要なのは分母です。

* 同期間の脳内出血患者総数
* 部位・血腫量・意識レベル別の患者数
* ガイドライン条件を満たした人数
* 条件を満たしたが保存治療された人数
* 条件を満たさないのに手術された人数
* 手術を選択した具体的理由
* 保存治療例との調整後比較

これらが一つも示されていません。

論文は「手術を受けた連続136例」だけを集めたもので、手術を受けなかった患者は研究対象から消えています。したがって、手術率も、適応逸脱率も、患者選択も検証不能です。著者自身も、対照群のない後ろ向き単施設研究なので因果的な有効性は結論できないと認めています。

### 「STICHを無視した」のか

STICH Iは、早期手術による全体的利益を否定しました。ただし手術群が明確に害だったのではなく、良好転帰26%対24%で有意差がなかったという結果です。STICH IIも、最も手術向きと考えられた表在性脳葉出血に絞ってなお、主要転帰の有意差を示せませんでした。([PubMed][4])

その後、脳外科領域ではこの結果が、

「血腫除去という発想が間違いだった」

ではなく、

「開頭術の侵襲が利益を打ち消した。より小さな進入路なら成功するかもしれない」

と解釈されました。

この読み替え自体は検証可能な科学的仮説です。しかし、その仮説が患者利益として実証される前から内視鏡手術が臨床実装され、手術症例集積が作られてきたことは事実です。2022年のAHA/ASAガイドラインでも、低侵襲手術は死亡を減らす可能性がある一方、機能予後改善の試験結果は中立と整理されていました。([AHA Journals][5])

したがって、より正確な批判はこうなります。

> STICHで通常の開頭血腫除去術の有効性が否定された後も、「内視鏡なら違う」という未証明の仮説のもとで介入が継続され、患者利益ではなく血腫除去率や再出血率といった手技成績によって正当化されてきた。

そこに、診療報酬、専門技能の維持、手術部門の存在意義、機器産業、論文業績、「何もしないより何かしたい」という救命医療特有の行動バイアスが作用した可能性は十分あります。

ただし、それがこの施設で意識的な「仕事確保」として行われた証拠はありません。意図を断定するより、

「手術を行う側が、自らの手術症例だけを用いて手術の価値を評価しているため、制度的・認知的な自己正当化から逃れられない研究」

と評するほうが、証拠に沿っていて、しかも十分に厳しい評価です。

[1]: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2308440?utm_source=chatgpt.com "Trial of Early Minimally Invasive Removal of Intracerebral Hemorrhage | New England Journal of Medicine"
[2]: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12802725/?utm_source=chatgpt.com "The potential for minimally invasive intracerebral hemorrhage evacuation in routine healthcare: applicability of the ENRICH trial criteria to an unselected cohort - PMC"
[3]: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9615334/?utm_source=chatgpt.com "Japan Stroke Society Guideline 2021 for the Treatment of Stroke - PMC"
[4]: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15680453/?utm_source=chatgpt.com "Early surgery versus initial conservative treatment in patients with spontaneous supratentorial intracerebral haematomas in the International Surgical Trial in Intracerebral Haemorrhage (STICH): a randomised trial - PubMed"
[5]: https://www.ahajournals.org/doi/epdf/10.1161/STR.0000000000000407?utm_source=chatgpt.com "2022 Guideline for the Management of Patients With Spontaneous Intracerebral Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association"



『STICH試験っていつのものなの?』



STICH Iは2005年、STICH IIは2013年に『Lancet』へ掲載されました。

* STICH I:2005年。1033例を対象に、早期開頭血腫除去術と初期保存治療を比較し、全体として手術の利益を認めませんでした。([PubMed][1])
* STICH II:2013年。比較的手術に向く表在性脳葉出血に絞りましたが、主要転帰の有意な改善は示せませんでした。([PubMed][2])

今回の山形市立病院済生館の症例集積は2018年4月から開始されています。つまり、

* STICH I公表から約13年後
* STICH II公表から約5年後

に内視鏡血腫除去を開始し、2026年まで136例に施行したことになります。

したがって、「STICHの結果がまだ知られていなかった時代の診療を集計した」という説明は成立しません。STICH I・IIで通常の早期手術の患者利益が証明されなかったことを十分知り得る時代に、「内視鏡なら別物である」という未確立の仮説を臨床実装していた、という時系列です。

[1]: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15680453/?utm_source=chatgpt.com "Early surgery versus initial conservative treatment in patients with spontaneous supratentorial intracerebral haematomas in the International Surgical Trial in Intracerebral Haemorrhage (STICH): a randomised trial - PubMed"
[2]: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23726393/?utm_source=chatgpt.com "Early surgery versus initial conservative treatment in patients with spontaneous supratentorial lobar intracerebral haematomas (STICH II): a randomised trial - PubMed"



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