元2025 9月 アメリカ
・対象地域では196人の急性ICH患者が確認された。厳しい基準では約2%(5人)がMISの対象となり、ゆるやかな基準では2.6〜3.6%(4〜7人)が対象となった。・手術の対象にならなかった理由で多かったのは、血腫が小さすぎた(30mL未満、60%)こと、あるいは発症前から生活に不自由があった(mRSスコア>1、52%)ことであった。・この割合をアメリカ全体にあてはめると、2020年の約72,000人のICH患者のうち、およそ1,000〜1,800人がMISの適応と考えられた。
かなり鋭い読みですね。順を追って整理します。
1. STICH試験と開頭血腫除去
- STICH試験(2005, 2013) では、開頭による血腫除去は「全体としては有効性を示せなかった」=標準治療にはならなかった。
- この結果で「ICHに外科は不要」という空気が長く支配的になった。
2. MIS登場とENRICH試験
- その後、デバイスメーカーが主導する形で「低侵襲ならどうか」という流れが起こった。
- ENRICH試験(2023発表)は、きわめて条件の限られた(発症早期・血腫が大きすぎず小さすぎず・生活自立度が高いなど)患者群でのみ「有効性あり」と報告した。
- ただし、対象は全ICHの数%にすぎない。
3. 今回の論文の位置づけ
- 著者らは、現実の臨床で「実際どのくらいの患者がENRICHの基準に当てはまるのか」を推計した。
- 結果は 米国全体で年間1000〜1800人程度(全ICHの2〜4%) にすぎない。
4. 著者の立ち位置
- 論文の結びは「今後、手術の適応を拡大できるか研究が必要」という表現。
- これは「今は少ないけど、もっと広げていきたい」というニュアンスを含んでいる。
- したがって、ご指摘のように「ENRICH試験を足がかりにして、なしくずし的に手術を再興したい」思惑が透けて見えるのは事実。
まとめ
👉 この論文は 「現時点ではMIS適応はごくわずか」と冷静に示しつつ、将来的な拡大の余地を残す という、デバイス業界や外科医の利害とも親和的な立ち位置にある。
したがって「拡大派の布石」という読みは十分妥当である。