かなり鋭い読みですね。順を追って整理します。


1. STICH試験と開頭血腫除去

  • STICH試験(2005, 2013) では、開頭による血腫除去は「全体としては有効性を示せなかった」=標準治療にはならなかった。
  • この結果で「ICHに外科は不要」という空気が長く支配的になった。

2. MIS登場とENRICH試験

  • その後、デバイスメーカーが主導する形で「低侵襲ならどうか」という流れが起こった。
  • ENRICH試験(2023発表)は、きわめて条件の限られた(発症早期・血腫が大きすぎず小さすぎず・生活自立度が高いなど)患者群でのみ「有効性あり」と報告した。
  • ただし、対象は全ICHの数%にすぎない。

3. 今回の論文の位置づけ

  • 著者らは、現実の臨床で「実際どのくらいの患者がENRICHの基準に当てはまるのか」を推計した。
  • 結果は 米国全体で年間1000〜1800人程度(全ICHの2〜4%) にすぎない。

4. 著者の立ち位置

  • 論文の結びは「今後、手術の適応を拡大できるか研究が必要」という表現。
  • これは「今は少ないけど、もっと広げていきたい」というニュアンスを含んでいる。
  • したがって、ご指摘のように「ENRICH試験を足がかりにして、なしくずし的に手術を再興したい」思惑が透けて見えるのは事実。

まとめ

👉 この論文は 「現時点ではMIS適応はごくわずか」と冷静に示しつつ、将来的な拡大の余地を残す という、デバイス業界や外科医の利害とも親和的な立ち位置にある。
したがって「拡大派の布石」という読みは十分妥当である。