元2025 7月 ルーマニア
脳内出血(ICH)は脳卒中の中でも死亡率・後遺症率が高いタイプである。外科的に血腫を取り除くことは理論的には有用と考えられてきたが、大規模試験(STICHなど)では全体として明確な生存利益が示されていない。
それでも、血腫の場所や大きさによっては手術が有利になる可能性は残っている。
そこで、ルーマニアの単一施設で2017〜2023年に治療したテント上ICHの患者を対象に、外科治療と保存療法の転帰を比較し、死亡率や手術適応の要因をくわしくしらべてみたそうな。
2017年1月〜2023年12月にルーマニア・シビウ県臨床救急病院に入院した成人の自然発症テント上ICH患者を対象とした。血腫最深部の位置によって葉性、被殻領域、視床の3群に分類した。
外傷性や二次性出血、テント下出血、記録不備例は除外した。収集項目は年齢、性別、居住地、入院時GCS、抗凝固薬使用、血腫量(ABC/2法)、脳室穿破、治療法(開頭血腫除去または保存的治療)、入院死亡、入院期間などである。手術は血腫量やGCSなど臨床所見をもとに主治脳外科医が判断し、多くは国際ガイドラインに沿った。
次のようになった。
・対象は445例で、葉性144例、被殻領域150例、視床151例だった。* 葉性ICHでは、手術群は血腫量48.0mL、GCS11.6、死亡率13.4%。保存群は血腫量19.4mL、GCS13.1、死亡率13.0%で差はなかった。* 被殻領域ICHでは、手術群は血腫量68.9mL、死亡率33.3%。保存群は18.1mL、死亡率15.2%。ただし血腫量30mL超の症例では手術群の死亡率が39.4%、保存群が61.5%と手術が低かった。* 視床ICHでは、手術群は血腫量63.8mL、GCS6.12、死亡率82.3%。保存群は20.7mL、GCS10.8、死亡率29.9%で、手術群の死亡率が高かった。
外科的血腫除去は全体として入院中死亡率を有意に減らさなかった。ただし葉性ICHでは重症例でも保存群と同等の死亡率を示し、被殻領域ICHの30mL超では手術で死亡率が低かった。一方、視床ICHは治療法にかかわらず予後不良だった。血腫量とGCSが予後の主要因であり、手術の有効性は部位と重症度に依存する可能性がある、
というおはなし。
感想:
『この論文は、ICHの開頭手術の有効性を否定したSTICH試験(2013年)後もあいかわらず手術を続けてきた事実のなかに、なんとかして正当性を見出すために書かれたってことですかね。』
以下、医師国家試験正答率98%のAIの回答コピペ↓
かなり近い解釈だと思います。
このルーマニアの論文は、少なくとも以下の特徴があります:
- 前提としてSTICH後も自施設では開頭を続けてきた
→ しかもMIS(低侵襲手術)ではなく、従来型の開頭がほとんど。 - その結果を後ろ向きにまとめ、「条件付きなら意味があるかもしれない」と結論づけている
→ 特に「基底核>30mL」や「大きな葉性ICHで重症例」に絞れば、保存療法より悪くはない、とする。 - 全体として有意な改善は示せていない
→ でも“同等の死亡率なのに元々の重症度は高かった”という言い回しで、リスク調整後の潜在的メリットをにおわせる。 - ガイドライン(AHA/ESO)の“条件付き推奨”と整合性を持たせている
→ 完全否定ではなく、「うちのやり方も理にかなっている」という形に着地させている。
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🗝 要するに
- 科学的に新しい発見というより、自施設の外科治療を正当化するストーリー作り
- 「STICH後も開頭をやってきた我々の経験には意味がある」と示したい
- 完全肯定はできないので、「特定条件下では有用かもしれない」という逃げ道を残す
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