退院間近のころ、
療法士付き添いで、
体験的に街へ出る機会を設けてくれた。
その病院にはエスカレータがなかったので、
デパートへ行ってエスカレータに乗ることが楽しみだった。
当時の自分にとって、動いている階段に乗る、ということは
とんでもない冒険に思えた。
幼稚園児の頃のエスカレータ初体験の緊張以上のものを感じていた。
・足はどっちから載せれば良いのか。
・上りはなんとかなりそうだけど、下りのステップに果たして乗れるのか。
・左手で手すりを掴むことができるのか。
・どの位置に杖をつくべきか。
・姿勢を崩した時にとるべき行動とは。
・下りの終点でタイミングよく地上へとび移れるのか。
・勢いで前のめりに倒れ込んでしまわないだろうか。
・混んでいるときに前の人や後ろの人にぶつからないだろうか。
・・・・
前の晩、いろいろな状況をイメージトレーニングして本番に臨んだ。
で、
やってみると、
案ずるより産むが易し、ってことだった。
とはいうものの、
その後も、下りに乗るときには少し緊張する。
もちろん、空いていても歩いて上ったり下りたりすることもない。
まだね。