2019年3月31日

脳梗塞で失われる年数


Estimating Years of Life Lost Due to Cardiovascular Disease in Japan
2019  3月  日本
日本では心血管疾患が全死亡原因の28%を占める。

このうちアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)である心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患の患者に要するコストは1人あたり7000ドルに達するという。

これら社会コストを評価する別の指標として、死亡が早まることにより損失する年数 YLL(years of life lost)がある。

そこでASCVDのYLLを推定してみたそうな。


世界の疾病負担研究(Global Disease Burden study)についての保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation:IHME)のデータベースおよび、
厚生労働省の背景死亡データをもちいて解析したところ、



次のことがわかった。

・心筋梗塞と脳梗塞の患者平均年齢はそれぞれ74、70で、

・ASCVD(心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患)での2017年の日本のYLLは2703711年であり、

・個人レベルでの損失生存年数 PYLLは、心筋梗塞が11.99年、脳梗塞は9.39年だった。

・ちなみに がんの2017年のYLLは58740502年で、PYLLは14.88年だった。

脳梗塞により患者が早くに死亡することで失われる年数は約9年と推定された、


というおはなし。
図:損失生存年数


感想:

がんは15年 早くに死ぬけど、脳梗塞は9年なので障害を抱えて生きる年数がより長い、という解釈はできるだろうか?

2019年3月30日

心房細動で認知症はほんとうか?


Atrial fibrillation increases the risk of dementia among older adults even in the absence of stroke
2019  3月  スウェーデン

認知症の有病率は年齢にしたがって高くなり、85歳では25%におよぶという。

いっぽう心房細動も高齢者におおく80歳以上では10-17%にみられ、脳卒中のリスク要因の1つと考えられている。

これまで心房細動と認知症との関連をしめす報告がいくつかあり、脳卒中をおこさなくても認知症リスクが高まるとする報告もある。

そこで心房細動と認知症との関連について、フォロー期間中の脳卒中の有無 さらに認知症のリスク遺伝子APOEε4の有無も含めてくわしくしらべてみたそうな。



70歳の561人について、
心房細動検査、神経心理検査と遺伝子検査をおこない、
75歳と79歳時点でも脳卒中と認知症の有無をしらべ12年間フォローして関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・心房細動があると認知症リスクは2.8倍だった。脳卒中経験のある者やフォロー中に脳卒中になった者を除いてもこの関連は変わらなかった。

・男女別では、この関連は男性でのみ見られリスク4.6倍で、

・とくにAPOEε4遺伝子をもっていない者で顕著(リスク4.2倍)だった。

・認知症にしめる心房細動の人口寄与リスク率は13%と考えられた。
心房細動は脳卒中の有無に関係なく認知症のリスク要因だった。この関連は男性およびAPOEε4遺伝子をもたない者で顕著だった、


というおはなし。
図:心房細動と認知症 脳卒中経験の有無


感想:

かならずしも脳卒中やるとボケに向かうわけじゃぁないんだな。
心房細動だけで認知症になることがあきらかに

2019年3月29日

病院へ急がなくてもよいことになった


New Study Supports Extended Time for tPA in Ischemic Stroke to 9hours - Neurology Today
2019  3月  オーストラリア

t-PAをつかった血栓溶解療法はこれまで 脳梗塞が発症してから4.5時間を超えると適用できないとされてきた。

しかし画像診断技術の進歩により24時間までは回復可能な脳組織を確認しうることがわかってきた。

そして t-PAの適用時間を延長することの臨床試験
EXTEND (Extending the Time for Thrombolysis in Emergency Neurological Deficits) トライアルの成果がえられたそうな。
先月の国際脳卒中会議でオーストラリアのモナシュ大学の報告。



脳梗塞患者225人を2グループにわけて、いっぽうにはt-PAのタイムウィンドウを9時間を上限に設定した。他方にはプラセボを与えた。

患者選別に際して断層画像から虚血で死にかかっている組織(ペナンブラ)を自動識別するアルゴリズムを使用した。


次のようになった。

・患者内訳は、10%が発症から4.5-6時間で、25%が6-9時間、65%は起床時に脳卒中に気づいたケース(Wake up stroke)だった。

・発症から治療までの時間中央値は7.2時間だった。

・90日後のmRSスコア0-1(障害なし相当)は37% vs. 29%でt-PAグループにおおかった。

・90日後の死亡者率は10% vs. 9.5% でt-PAグループがわずかに高かった。

・症状をともなう頭蓋内出血の発生率は 6% vs. 1% でt-PAグループで非常に高かった。

t-PAのタイムウィンドウを9時間に拡大することで死亡者を大幅にふやすことなくおおくの患者の回復をうながすことができそうである、


というおはなし。
図:EXTENDトライアルの成果


感想:

t-PAはもともと3時間までといわれていて、それゆえに早くに救急車を呼ぶ必要がありFASTキャンペーンの根拠になっていた。

それがいつのまにか4.5時間になり、こんかい9時間でもOKとなった。

日本はもっと先進的で、時間の上限をはずしてしまったようである。↓
脳梗塞 “血栓溶かす治療をより多くの患者に” 治療指針変更
(3月22日 NHK news)

こうなるともう「いそいで病院にゆく必要ないじゃん」とふつうは思う。
\(^o^)/

2019年3月28日

Stroke誌:脳内出血の肥満パラドックス


Obesity Paradox in Intracerebral Hemorrhage
2019  3月  アメリカ

脳内出血は脳卒中の10-15%をしめる。いっぽう肥満は 糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、脳卒中のあきらかなリスク要因である。

肺高血圧や肝臓病、冠動脈疾患では肥満の患者ほど生存可能性が高いという「肥満パラドックス」が数多く報告されている。

脳内出血の肥満パラドックスについては報告がすくないので、きっちりとしらべてみたそうな。



データベース Nationwide Inpatient Sampleから 2007-2014の脳内出血患者99212人の記録について、

院内死亡率、退院先、入院期間、気管切開、胃ろう、脳室シャントとの関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・肥満と病的な肥満では、肥満でない(BMI<30)患者にくらべ院内死亡率があきらかに低かった。

・ただし病的な肥満患者では気管切開や胃ろうになる率がたかく、

・ふつうに自宅へ退院できる可能性も低かった。

脳内出血患者のうち、肥満や病的肥満には院内死亡への保護効果がみられた。しかし病的肥満は気管切開や胃ろうになりがちで自宅に退院できないことがおおかった、


というおはなし。

図:肥満パラドックス


感想:

これまで↓よりもサンプル数が桁違いだ。
脳内出血の肥満パラドックス

脳内出血の肥満パラドックスがあきらかに

2019年3月27日

オーラルセックスでくも膜下出血


Subarachnoid haemorrhage- a sinister cause of transient loss of consciousness during oral sex - BMJ Case Reports
2019  3月  イギリス

くも膜下出血では「雷鳴頭痛」とよばれる激しい頭の痛みを訴えることがおおい。しかし一時的に意識をうしなうケースもすくなくないため診断がむつかしい。

今回、オーラルセックスで責められ数分間意識を失ったところ実はくも膜下出血だった、という事例がみつかったそうな。


・救急部に44歳の女性が運ばれてきた。

・救急車は彼女のパートナー(性別不明)が呼んだ。

・パートナーいわく、オーラルセックス中に彼女がオーガズムに達しそうになり、そのまま2-3分間意識をうしなった、とのこと。

・救急部到着時の意識レベルはGCS15/15で異常なし、中(6/10)レベルの頭痛を訴えていたものの、他の神経症状はなかった。

・患者には喘息とじんましんの病歴があり、血圧、心電図は正常だった。

・当初ただのけいれん発作を疑ったが、ねんのためCTを撮ったところくも膜下出血とわかり、つづくCTアンギオで前交通動脈に7mmの瘤をみつけた。

・翌日コイルを詰める手術をして、

・15日後に後遺症もなく退院した。
意識が飛ぶようなケースではCTを撮ってみることがだいじ、


というおはなし。

図:オーラルセックスでくも膜下出血


感想:

ふつう救急車呼ぶかね?

気持ちよさのあまり失神して目がさめると救急隊員が上がり込んできてそのまま病院へ連れてゆかれる。ちょっと頭いたいくらいなのに手術が必要といわれ 死亡リスクの高いコイル術をなかば強引に受けさせられる。

ひどいパートナーだ。

オナニーがきっかけで脳出血になる割合

2019年3月26日

再発率急上昇中 in China


Trends in the incidence of recurrent stroke at 5 years after the first-ever stroke in rural China: a population-based stroke surveillance from 1992 to 2017

いっぱんに再発は脳卒中患者の30%以上をしめるという。

過去20年間で世界全体の脳卒中経験者数は84%増加するいっぽう、高所得国での脳卒中発生率は低下傾向にある。

中国では脳卒中発生率は上昇傾向にあるが、再発率についての集団ベース研究はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。



1992-2017年の中国農村部での脳卒中患者768人について、その後の5年間の再発の有無をしらべ傾向を解析したところ、



次のことがわかった。

・5年間に全体の26.3%が再発を経験した。彼らは平均65歳で比較的若く 平均教育歴3年で 88%は中学校をでていなかった。脳内出血の32%、脳梗塞の25.2%が再発していた。年齢調整後の再発率は10万人あたり年間43.93人だった。

・2006-2012年の患者に限定すると、再発率は男性が107.79人で 65歳以上では557.76人だった。

・再発率はあきらかな上昇傾向にあり、1992-1998と比べると2006-2012では相対リスク6倍以上、女性はさらに高かった。

中国農村部の脳卒中患者の26%が発症後5年間に再発していた。再発率はおおきく上昇傾向にあった。緊急のリスク管理対策が求められる、


というおはなし。

図:中国の再発リスク傾向


感想:

リスク管理よりも基礎教育の普及がさきかな。

2019年3月25日

rt-PAの害と虚血コンディショニング


rt-PA with remote ischemic postconditioning for acute ischemic stroke
2019  1月  中国

脳梗塞には rt-PAをつかった血栓溶解治療がもっとも効果的といわれているものの、患者の50%近くにはなんらかの障害が残る。

rt-PAの線維素溶解作用により脳はさらに傷つき 血液脳関門が破壊され脳内出血のリスクが高まる。じっさい rt-PA治療を受けた者の9-27%に脳内出血が生じ、5%はあきらかな神経症状をしめす。

それゆえ rt-PAによる有害事象をふせぎ脳神経を護る対策がもとめられている。

遠隔虚血コンディショニング(remote ischemic conditioning:RIC)は腕や脚を一時的に虚血にして解放するサイクルを幾度か繰り返すことで 活性酸素レベルを下げ、血管内皮機能を高め、脳血流を増加させることができる。

動物実験ではRICが脳の梗塞体積をちいさくし機能回復をうながす効果が報告されている。

臨床実験はrt-PAの直前にRICを行った例が2014に報告されているので、rt-PA「直後」にRICをおこなうポストコンディショニングの実行可能性と安全性をたしかめてみたそうな。



ガイドラインにしたがいrt-PA治療となった患者30人を2グループにわけ、
いっぽうにはRICを、もういっぽうには通常のケアをおこなった。

RICは両腕にカフを巻き200mmHgで5分間締め付け 5分間解放のサイクルを1セット5回、1日2セット、rt-PAの直後からはじめて7日間つづけた。

RICに要した時間、血中ミオグロビン、出血性変化ほか有害事象を調べたところ、



つぎのようになった。

・RICを完遂した患者は97.0%で、1セット完了までの平均時間は66分間だった。

・RICグループで出血性変化が1例みられた。

・ミオグロビンレベルにグループ間の差はなかった。

急性脳梗塞患者へのrt-PA治療直後の遠隔虚血ポストコンディショニングは実行可能でかつ安全であると考えられた、


というおはなし。

図:虚血コンディショニングの紅斑
有害事象例


感想:

rt-PAは危険だから慎重に扱われてきたのに、いろんなちからが働いてついに学会から「発症からの時間にかかわらず恣意的な運用が可能!」とのお墨付きがでてしまった。↓↓↓ ええんか?
脳梗塞 “血栓溶かす治療をより多くの患者に” 治療指針変更(3月22日 NHK News)

2019年3月24日

3-4年後の社会的認知障害


Social cognition impairments are associated with behavioural changes in the long term after stroke
2019  3月  オランダ

脳卒中のあとの行動変容が患者のQoLにネガティブな影響を与えることはめずらしくない。

これら行動の変化は社会的 感情的に不適切なものがおおく、たとえば相手の感情や考えを理解せぬままひどいことを言ったり無視をしたりする。

このような行動変容の背景には社会的認知障害があると考えられ、脳卒中のあと時間が経っても続くものかは わかっていない。それを確認するためのテストと 患者自身の認識および近親者にもアンケートをとってその乖離度を評価してみたそうな。



発症から3-4年経った自立度の悪くない脳卒中患者119人および健常者50人について、

社会的認知能をしる方法として、
*感情認識(Emotion recognition):顔の画像から感情を読み取る。
*心の理論(Theory of mind):漫画から他者の信念を推し量る。
*共感(Empathy):失礼な扱い(faux pas)をうけた者の気持ちを知る。
*行動調整と抑制(Behaviour regulation and inhibition):ヘイリング文章完成法課題。

の各テストをおこなった。

さらに患者自身とその近親者について遂行機能障害アンケート(Dysexecutive Questionnaire:DEX)を行い関連を解析した。



次のことがわかった。

・脳卒中患者の 感情認識、心の理論、行動調整と抑制テストの結果が健常者にくらべあきらかにわるかった。

・DEXスコアの平均値について、自己評価値と近親者評価値とであきらかな違いはなかったが、

・感情認識、共感、行動調整と抑制スコアの低さと近親者によるDEX評価に関連がみられた。

軽度の脳卒中患者であっても社会的認知障害が長期にみられた。これらの障害は近親者の目にもあきらかであり、行動変容の原因と考えられた、


というおはなし。

図:DEX items


感想:

その種の能力については脳卒中をやるまえのほうがひどかったとおもう。

頭のはたらきがわるくなったことを自覚しているぶん いまのほうが自らを客観視できるようになった。

2019年3月23日

腸内細菌への長期の影響は


Rsearchers explore stroke's effects on microbiome -- ScienceDaily
2019  3月  アメリカ

腸と脳はたがいに関係しあってはたらいていて(gut-brain axis:腸脳相関)、脳卒中になると腸内細菌叢の構成がおおきく変わることが報告されている。

しかし長期の変化をしらべたものはないので動物実験してみたそうな。
2月の国際脳卒中会議でのウェストバージニア大学の報告。



脳卒中にしたグループとしなかったグループの腸内細菌を3日後、14日後、28日後までフォローしたところ、



次のことがわかった。

・脳卒中グループでは14日、28日後までにビフィズス菌で有名なビフィドバクテリウム属の細菌がおおきく減少した。28日時点ではヘリコバクター属の細菌が大勢をしめていた。

・肥満や糖尿、炎症の指標となるFirmicutes(フィルミクテス門) / Bacteroidetes(バクテロイデス門) の比が高くなり、14日ではコントロールの6倍、28日時点でも3倍以上をしめした。

・さらに顕微鏡観察で、脳卒中グループの腸の柔毛が28日時点でもおおきく崩れている様子が確認された。

脳卒中による腸内細菌叢および腸の構造への影響は1ヶ月後にもみられた。逆にサプリメントなどをつかった腸内細菌叢への介入で脳卒中の回復をうながすことができるかも、、


というおはなし。

図:脳卒中後の腸絨毛



感想:

つい先日、かきにあたって激しい下痢と悪寒で2日間絶食した。お腹が空になったついでにヨーグルトを1リットルたべて腸内細菌のリフレッシュを期待した。

すると翌日、はなみずとくしゃみの花粉症状が消えてしまった。
しかしその効果は1日しかもたなかった。

腸内環境への関心がたかまっている今日このごろ。

[腸内細菌]の関連記事

2019年3月22日

復職後 長期の就労率トレンド


Factors, trends, and long-term outcomes for stroke patients returning to work- The South London Stroke Register
2019  3月  イギリス

脳卒中の4分の1は労働可能年齢者で、脳卒中を経験したかれらは一般人よりも失業する可能性が3倍になるという。

脳卒中ののち復職する者を長期にフォローをした調査はすくないのでやってみたそうな。



ロンドンの脳卒中患者データベースをつかって、
1995-2014の患者5609人について、1,5,10年後の就労状況を調べたところ、



次のことがわかった。

・940人が脳卒中の直前まで職に就いていて、かれらのうち19%が3ヶ月後に復職していた。

・その率は、1年後では18%、5年後12%、10年後3%に低下した。

・機能的に自立していて入院が短い患者は早くに復職していた。

・若い患者は 5年後、10年後に就労しつづけていることがおおかった。

・非肉体労働者は10年後の就労可能性がたかかった。

・早くに復職した者ほど5年後、10年後の就労可能性がたかかった。

・機能的に自立状態にあった患者のうち、1年後に48%、5年後42%、10年後28%が就労していた。

・不安やうつの程度がひくくQoLの高いことが1年後の就労と関連していた。

機能的に自立しているほど復職しやすいと考えられるいっぽう、かれらのうち非常におおくの者が復職していなかった、


というおはなし。

図:


感想:

しごとやめたいけど踏ん切りがつかない、、とおもっている人にとって ほどほどの脳卒中は絶好の機会。だから復職しないのだとおもう。
復職後 なん年間仕事を続けられるのか 日本で

2019年3月21日

歯周病と脳内出血の因果関係は


Association between intensive periodontal treatment and spontaneous intracerebral hemorrhage-a nationwide, population-based cohort study
2019  3月  台湾

歯周病は歯石と細菌のはたらきにより歯肉炎からはじまり歯周炎にいたる。一般人の90%が経験するという。

全身にひろがった炎症は動脈硬化をうながし心血管疾患と関連すると考えられている。じっさい、歯周病を脳梗塞や脳内出血のリスク要因として認める報告がいくつもある。しかしその因果関係をあきらかにした調査はまだない。

そこで歯周病治療により脳内出血が減少するものか大規模にしらべてみたそうな。



台湾の健康保険データベースの歯周病患者から、
歯周病の積極的な治療術(フラップ歯肉剥離掻爬術)といった外科治療を受けた者とそうでない者を他の条件をひとしくして32480人ずつ抽出した。

およそ5年間に脳内出血をおこした者との関連を解析したところ、



つぎのようになった。

・歯周病治療グループは非治療グループにくらべ脳内出血リスクが0.60倍で あきらかにひくかった。

・この関連はとくに高齢の男性、2度以上治療を受けた者に顕著だった。

歯周病治療者の記録を解析したところ、かれらのとくに高齢男性の脳内出血リスクはあきらかにひくかった。この因果関係を確認するさらなる調査が望まれる、



というおはなし。

図:歯周病治療術の有無と脳内出血



感想:

フラップ術について10年以上まえにしらべた際、とても危険だと理解した記憶がある。

こんご「脳内出血になるよりはいいでしょ」がフラップ術を勧める際の殺し文句になるかも。
Stroke誌:歯周病のグレードと脳梗塞リスク

口の中が汚いと脳内出血になるという根拠について

脳内出血を起こす虫歯菌の種類が判明

2019年3月20日

慢性期に効く「豆乳リハビリ」とは


Soymilk ingestion immediately after therapeutic exercise enhances rehabilitation outcomes in chronic stroke patients- A randomized controlled trial
2019  3月  台湾

慢性期の脳卒中患者の30-60%はリハビリをいくらがんばっても運動機能がまったく改善しないという。さらに筋肉の萎縮もすすむ。

いっぱんに身体トレーニングとタンパク質の摂取を組み合わせることで筋力と筋肉量を増強できることが知られている。

大豆由来のタンパク質は安価で高品質である。とくに豆乳はアジアでポピュラーでコレステロールフリーしかも種類豊富でコンビニでも手に入る。

そこで理学療法の直後に豆乳を飲むトレーニングセットを8週間続けたときの効果をくわしくしらべてみたそうな。



慢性期の脳卒中で自立歩行のできる外来患者22人を2グループにわけて、
いっぽうには訓練直後に豆乳を他方には水をそれぞれ500mlを2回に分けてあたえた。

理学療法訓練は1回120分x週3回x8週間 継続した。

この前後での筋肉量、身体パフォーマンス(short physical performance battery:SPPB)、歩行速度、筋肉量あたりの歩行パフォーマンス(8-fts walking performance per unit lean mass:WPPULM)、握力、6分間歩行距離
を測定したところ、



次のようになった。

・8週間のリハビリ訓練で両グループともに機能改善があった。

・とくに豆乳グループでは握力、歩行速度、筋肉量あたりの歩行速度、歩行耐久能 が水グループよりもあきらかにすぐれていた。

・しかし身体パフォーマンスと筋肉量に有意な差はなかった。

リハビリ訓練だけではなく、その直後に豆乳を飲むことで 歩行速度、耐久能、握力、筋肉機能のあきらかな改善が慢性期患者に見られた


というおはなし。

図:豆乳療法と慢性期脳卒中



感想:

うえのグラフみると豆乳パワーすごい。

でも豆乳はそんなに安くないし まめ臭い。湯豆腐ならいける。


メモ:
かきにあたった。つらい。

2019年3月19日

nature.com:身内ほど救急車を呼ばないパラドックス


Social networks and risk of delayed hospital arrival after acute stroke
2019  3月  アメリカ

心臓発作のシーンでは医療機関へかかるまでの時間が長くなると患者の死亡率が高くなる。この時間のおくれは患者の症状の目撃者が 状況を理解できず救急車をよばないことによると考えられている。

しかし1000人以上の心臓発作患者の調査では まったくの他人や会社の同僚はすぐに救急要請をするものの、患者に親しい家族とくに配偶者は救急車を呼ばないというパラドックスが報告されている。

これと同様の傾向が脳卒中患者についても見られるものかくわしくしらべてみたそうな。


軽-中程度の症状の脳卒中患者175人について、
患者を中心とした個人的な社会ネットワークについてアンケートをおこない、構成員の人数、ひろがり、密度、つながりの強さ、を評価し、
入院までの時間と救急要請時の状況との関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・患者の属する社会ネットワークが小規模でかつ 家族中心の むすびつきがつよいものほど入院が遅れた。

・外部視点の入る余地がすくない近親者ネットワークにいると経過観察(watch-and-wait)戦略が採られやすかった。

脳卒中患者が家族中心のちいさな社会ネットワークにいるばあい入院はおくれがちだった。結びつきの強いひとびとに囲まれていると過剰に協議がなされ けっきょく様子見になることがおおかった、


というおはなし。

図:脳卒中患者の社会ネットワーク



感想:

患者を想い もっとも理解しているのは身内。

あかの他人ならためらいもなく病院へ「丸投げ」できるけど、じぶんの家族にそんなことはできない。
やはり119しないで見守ると思う。

2019年3月18日

nature.com:脳内出血ここをやられると意識が戻らない


Deep structural brain lesions associated with consciousness impairment early after hemorrhagic stroke
2019  3月  アメリカ

脳卒中からの意識回復のメカニズムはよくわかっていない。これまで皮質下の、視床、被殻、尾状核、淡蒼球といった構造の重要性が指摘され これに関係する上行性網様体賦活系(ascending reticular activating system :ARAS)や mesocircuit model といった障害と回復のモデルが提唱されている。

そこで脳内出血での皮質下の脳損傷と意識レベルとの関連をくわしく解析してみたそうな。


脳内出血患者158について、入院時のMRIと集中治療室ICUをでる時点での意識レベルとの関連を機械学習アプローチで解析して、

最初のMRI画像からのちの意識回復を予測するモデルを構築した。



次のことがわかった。

・MRI時点で患者の3分の1は意識がなかった。

・彼らの半数はICUをでるときには意識がもどっていた。

・従来の出血体積と正中偏位の評価に加えて、MRIからみた深部構造への病変のひろがりから意識障害と回復の予測ができた。

・とくに、中脳の脳脚部(midbrain peduncle)と橋被蓋(pontine tegmentum)に病変が及んでいるか否かが予測結果におおきく影響していた。

・今回のモデルで意識回復が予測された患者では機能回復も良好だった。
これまでの血腫体積と正中偏位の評価に加え、MRIで病変の深部構造へのひろがりをみることで意識回復の可能性をより正確に予測できるであろう、


というおはなし。

図:脳内出血 意識 脳構造


感想:

MRIの音がやんだ直後にAIが間髪いれず「意識が戻る確率は3720分の1です」っておしえてくれる世の中は もう すぐそこ。

2019年3月17日

脳梗塞を防ぐに最適な乳製品は


Substitutions between dairy products and risk of stroke- Results from the EPIC-NL cohort
2019  2月  デンマーク

高血圧予防のための食事ガイドライン DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)ダイエットでは全脂肪の乳製品を控えて低脂肪のそれをすすめている。

その後の改訂DASHの試みでは全脂肪乳製品を勧めて同程度の効果を得ている。

さいきんの18の研究のメタアナリシスでも全脂肪乳製品の使用が脳卒中リスクを下げるという結果が得られている。

またチーズなどの発酵乳製品が脳卒中リスクをさげるという報告も得られている。

そこで、乳製品の種類と脳卒中リスクとの関連を大規模にしらべてみたそうな。



デンマークの男女36886人に食事アンケートをおこない脳卒中の発生を15年間フォローした。

乳製品は、ミルク、バターミルク、ヨーグルト、チーズ、バターのそれぞれについて全脂肪と低脂肪の区別をして、カロリーを揃えた量で置換解析をおこなった。



次のことがわかった。

・この間に884人が脳卒中になった。

・全脂肪ヨーグルトの代わりに低脂肪ヨーグルトを摂ると脳梗塞リスクは2.58倍になり、

・全脂肪ヨーグルトを他の乳製品の代わりに摂ると脳梗塞リスクは0.33-0.36倍になった。

・脳出血との関連はまったくみられなかった。

全脂肪ヨーグルトは脳梗塞予防の観点から他のいずれの乳製品よりもすぐれていた、


というおはなし。

図:全脂肪ヨーグルト


感想:

全脂肪乳にふくまれるリノール酸および ヨーグルト菌がプロバイオティクスに適していることの2つが理由ではないか、と言ってる。

2019年3月16日

脳波筋電図コヒーレンスの皮質分布


Cortico-Muscular Coherence Is Reduced Acutely Post-stroke and Increases Bilaterally During Motor Recovery- A Pilot Study
2019  2月  ドイツ

脳卒中後の運動機能の回復はダメージを受けた脳の機能を他の部分が引き継ぐことによりすすむと考えられる。

脳皮質の活動EEGと筋肉の電気活動EMGとの同期の程度である脳波筋電図コヒーレンス(Cortico-Muscular Coherence:CMC)は脳卒中のあとに低下することが知られていて、運動機能回復の指標にできると期待されている。

さらにブレインコンピュータインターフェイス(BCI)をつかったリハビリテーションではターゲットとなる脳皮質の位置を知るためにCMC解析が必要になる。

そこで脳卒中患者について運動機能の回復と脳皮質の位置ごとのCMCとの関連を長期にしらべてみたそうな。


脳卒中で左脳損傷の4人と右脳損傷1人および健常者7人について、

発症から10日後、7週間後、11ヶ月後の手首の運動機能とCMCを評価したところ、



次のようになった。

・βバンド(12-30Hz)にCMCが観察され、運動機能の回復にしたがい高くなっていった。

・さらに運動野上の患者のCMCは健常者のそれよりも高かった。

・皮質上の高CMC領域の分布もことなり、健常者にくらべ両側にひろく患者ごとにその分布はおおきく異なっていた。

脳波筋電図コヒーレンスは脳卒中患者の運動機能回復のバイオマーカーとして期待できる、


というおはなし。

図:脳波筋電図コヒーレンス


感想:

運動機能が回復したからコヒーレントなのであって、コヒーレントにしようとしてなるものではないとおもうんだよね。
脳波筋電コヒーレンスでなにがわかるのよ

2019年3月15日

脳卒中であらたに視覚異常になる割合


High incidence and prevalence of visual problems after acute stroke- An epidemiology study with implications for service delivery
2019  3月  イギリス

脳卒中経験者のおおくになんらかの視覚異常がみられることがよく知られている。

しかしこれまでの調査のほとんどは発症から検査までの時間がバラバラで脳卒中によりあらたに生じた視覚異常との区別もあいまいだった。

そこで急性脳卒中患者の視覚検査をきっちりとおこない有病率をしらべてみたそうな。


3つの病院の急性脳卒中での入院患者1295人について調べたところ、



次のことがわかった。

・このうち20.2%は退院済みなどの理由で視覚検査ができず、1033人が検査を完遂した。

・フルの視覚検査にようした日数は4日前後だった。

・もともと視覚に問題のあった者を除くと、あらたに視覚異常を示した者は入院時に48%、2週間後には60%だった。

・けっきょく全体の73%がなんらかの視覚の異常を示し、

・内訳はおおい順に、視力低下、眼球運動異常、視野欠損、視覚不注意 で、

・27%の患者の視覚は正常だった。

急性脳卒中のあとに発生した視覚異常はおおく 患者の半数を超えていた、


というおはなし。

図:視力検査


感想:

退院のあと半年以上たって免許センターで運転適正検査をすませた。そして運転再開した直後に「ぜんぜん見えん、、!」とびっくりして メガネやに飛び込んだ。
脳卒中まえは1.5を下回ったことがなかった視力が0.4になっていた。

この間、病院も免許センターも視力検査はなかった。10年もまえのことだけど やばくね?

2019年3月14日

短下肢装具を与えると転倒3倍


The effect of ankle-foot orthoses on fall-near fall incidence in patients with (sub-)acute stroke- A randomized controlled trial
2019  3月  オランダ

入院中に転倒を経験する脳卒中患者は14-65%、退院後6ヶ月間の転倒は37-73%という。

これは年間1.3-6.5回の転倒頻度に相当し、一般高齢者の0.65回をおおきく上回る。

短下肢装具はつま先のクリアランスを確保しかかと着地を促す。短下肢装具によって転倒を防ぐ効果が期待できるがくわしい調査はまだない。

そこでランダム化比較試験を試みたそうな。



急性期の脳卒中で片麻痺の患者33人をすぐに短下肢装具を与える早期グループ16人と9週間後から与える遅延グループ17人にわけた。

1-8週、さらに9-52週目まで転倒の有無をフォローしたところ、



次のようになった。
・1-8週では、短下肢装具を早期に与えられたグループで転倒があきらかにおおく 11回 vs. 4回で、頻度は2.9倍だった。

・さらに 転倒した早期グループのうち63.6%は装具を着けていないとき(移乗や立ち上がり)に転倒していた。

・転倒しそこねたケースは 1-8週、9-52週でグループ間に差はなかった。

・骨折を含む重症を負ったケースは6件あった。

早期に短下肢装具を与えられた患者グループで転倒回数があきらかにおおかった。しかも彼らの63.6%は装具を着けていないときに転倒していた、


というおはなし。

図:短下肢装具と転倒回数


感想:

急性期は自発的な回復が起こっている真っ最中(比例回復則)なわけで、そんなタイミングに足首の固定をこころみるのはおかしい。

また 早い時期に物々しい装具を与えることは「じぶんはもうまともに歩けないんだ」という意識を強化して歩行への自信を失わせるだけである。だから装具を着けてもいないのに転ぶ。

これ↓とおなじ。
脳卒中リハビリは害!? 骨折しやすくなることが判明


そもそも装具を急ぐ理由はなさそうだ。
下肢装具をやめてしまう理由

短下肢装具を始めるに適した時期は、、

短下肢装具は使ったほうがいいの?

2019年3月13日

日本人の労働時間と脳卒中


Working Hours and Risk of Acute Myocardial Infarction and Stroke Among Middle-Aged Japanese Men
2019  3月  日本

欧米人を対象としたさいきんのメタアナリシスでは労働時間が長くなると冠動脈疾患や脳卒中のリスクが高くなることがわかっている。

日本人の労働時間と心血管疾患をしらべた研究はほとんどなくサンプル数も少ない。

そこで、多目的コホート研究(JPHCコホートII)のデータをつかってくわしくしらべてみたそうな。



40-59歳の男性15277人を1993年から約20年間フォローしたところ、



次のことがわかった。

・この間に212の心筋梗塞と745の脳卒中があった。

・1日の労働時間が7-9時間にくらべ11時間以上になると心筋梗塞リスクが1.63倍、脳卒中リスクは0.83倍となった。

・この長時間労働と心筋梗塞との関連は 年齢の高いサラリーマンでさらに顕著だった。
中年日本人男性については労働時間がながくなると心筋梗塞のリスクが高くなった、


というおはなし。

図:残業



感想:

とくに脳出血ではリスク0.64倍で長時間労働は予防効果すら期待できるようだ。

昨日の管理職ピロリ菌仮説もそうだけど 日本人は仕事のストレスがつよそうなグループほどなぜか脳卒中リスクが低い。

心筋梗塞と脳卒中とで真逆の結果になった理由として著者は 日本人には心筋梗塞とおなじメカニズムのアテローム性動脈硬化による血栓塞栓性の脳梗塞が欧米人の半分くらいしかいないから、と言ってる。

脳卒中になりやすい労働時間がわかった ランセット誌

2019年3月12日

日本人の管理職も脳卒中リスクは低い?


Occupational Class and Risk of Cardiovascular Disease Incidence in Japan- Nationwide, Multicenter, Hospital-Based Case-Control Study
2019  3月  日本

欧米の研究では管理職や専門職といった仕事の階級が高い者の心血管疾患(冠動脈疾患、脳卒中)リスクは低いという報告がいくつもある。

これとおなじ傾向が サービス残業のために「名ばかり管理職」にされストレスで酒とタバコに溺れる日本人においても確認できるものか大規模にしらべてみたそうな。


1984-2016 複数の病院の入院患者110万人あまりの記録を解析した。

ブルーカラー産業、サービス産業、ホワイトカラー産業のそれぞれについて、
ブルーカラー産業の一番下のクラスの労働者にたいする各産業の管理職、専門職の心血管疾患リスクを評価したところ、



次のことがわかった。

・喫煙や飲酒で調整してなお、高いクラスの仕事(管理職、専門職)に就いている者ほど冠動脈疾患リスクが高かった。

・この傾向はどの産業にも共通していたが、とくにサービス産業で顕著だった。

・いっぽう、この傾向を相殺するかのように脳卒中については高いクラスの仕事に就いている者ほどリスクは低かった。

高いクラスの仕事に就いているほど心血管疾患リスクが低いという傾向は日本人にはあてはまらず、彼らの冠動脈疾患リスクは底辺労働者よりも高かった、


というおはなし。

図:職業クラスと脳卒中リスク



感想:

冠動脈疾患と脳卒中で真逆の結果がでた理由として著者はピロリ菌を挙げている。

ピロリ菌は日本人の70%がもっていて、とくに貧乏人におおく感染し 彼らは脳卒中リスクが高い。貧乏人は高クラスの仕事には就かないから相対的にこうなる、って言ってる。

さすがお医者さまだわ、、

で結局、ピロリ菌があると脳卒中的にはどうなの?

2019年3月11日

安静時fMRIでみたTIA脳の異常


The Local Brain Abnormalities in Patients With Transient Ischemic Attack- A Resting-State fMRI Study
2019  1月  中国

TIA(一過性脳虚血発作)は症状が一時的ではあるがのちの認知症リスクは4倍で、3分の1はなんらかの認知障害を経験するという。TIAのあと脳の萎縮や血液還流の低下が報告されているが脳機能に与えるくわしいメカニズムはわかっていない。

安静時の脳機能MRI(rs-fMRI)は患者にタスクを課すことなくただ寝かせておくだけで脳機能をしらべることができる方法として期待されている。

これまでrs-fMRIについて数々の解析方法(FC,graph theory,ICAなど)が提唱されているが、

fMRI信号の低周波成分(0.01-0.08Hz)のゆらぎのおおきさを示すALFF(amplitude of low frequency fluctuation)および

同期するボクセルの拡がりを示すReHo(regional homogeneity)、

ネットワーク全体での重要性のDC(degree centrality)、
の3つの指標が近年ちゅうもくされている。

そこでTIA患者について ALFF, ReHo, DC を健常者との比較として評価してみたそうな。



平均年齢41、TIA患者48人と健常者41人について安静時 全脳のfMRIデータおよび血液 血圧検査をおこない、比較 解析したところ、



次のことがわかった。

・自発的神経活動を反映するALFFは健常者にくらべTIA患者の左中側頭回であきらかな低下を示し、

・DCもまた右の下前頭回の三角部で低下していた。

・ReHoにグループ間で差はなかった。

・これらの局所異常と血液血圧検査結果との関連はなかった。

TIA患者の安静時fMRIから、ALFFとDCの局所的な低下を確認することができた。病気メカニズムの理解に役立つかもしれない、


というおはなし。

図:ALFF TIA患者


感想:

脳の安静時ネットワークにはデフォルトモードネットワークのほかいろんな種類があって 脳はいろいろといそがしいようだ。ぼーっとしていてもお腹がすく理由はこれかな。

脳卒中後うつのfALFF解析

2019年3月10日

軽い脳卒中でも脳が縮む?


Longitudinal Brain Atrophy Rates in Transient Ischemic Attack and Minor Ischemic Stroke Patients and Cognitive Profiles
2019  2月  カナダ

TIAのあとおよそ3分の1の患者はなんらかの認知障害をしめす。しかしそのメカニズムはわかっておらず 隠れた梗塞があるわけでもない。

アルツハイマー病などの研究では認知障害まえの脳体積の減少が報告されている。

そこで、TIAや軽い脳卒中患者での脳の萎縮と認知障害との関連をくわしくしらべてみたそうな。



TIAや軽い脳卒中の患者80人と健常者70人について、全脳のMRIを3年ほどの期間をあけて複数回撮り、認知機能もしらべた。

脳萎縮率を自動評価するソフトウェア(Structural Image Evaluation using Normalization of Atrophy:SIENA)を用いて関連を解析したところ、



次のようになった。

・TIAや軽い脳卒中の患者はこの3年間に 健常者にくらべてあきらかな高レベルの脳萎縮を示した。

・糖尿病が脳の高萎縮の予測因子だった。

・脳の高萎縮と認知機能の情報処理スピードは関連をしめしたが 記憶力や実行機能との関連はみとめられなかった。

TIAや軽い脳卒中の経験者は認知機能に障害がでる以前に あきらかに高い脳の萎縮をしめしていた、


というおはなし。

図:脳萎縮


感想:

TIAですら数年でわかるほど脳が縮むのなら10年経ったじぶんはどうなってんのよ、、、とおもった。

2019年3月9日

nature.com:ラクナ梗塞の再発予防法「酒を飲む」


Recurrence Rate and Relevant Associated Factors of Stroke among Patients with Small Artery Occlusion in Northern China
2019  2月  中国

小動脈閉塞(Small Artery Occlusion=ラクナ梗塞)はヨーロッパでは脳梗塞の20%を、中国では31.3%を占めている。

小動脈閉塞の再発率と関連要因をあきらかにするべく大規模な調査をおこなってみたそうな。



2005-2014の小動脈閉塞の患者2524人について、3、12、36ヶ月後までフォローしたところ、



次のことがわかった。

・再発した者の率はそれぞれ、3ヶ月後3.1%、12ヶ月後、12.7%、36ヶ月後36.5%だった。

・3ヶ月時点では 男性、高齢、重症患者で再発リスクが高かった。

・12ヶ月時点では、C反応性蛋白レベルの上昇が再発リスクと関連があったが、

・飲酒習慣のある者の再発リスクは飲酒習慣の無い者にくらべ39%低かった。

・36ヶ月時点では、高血圧、心房細動、肥満もまた再発リスクだった。

小動脈閉塞の再発要因は年齢、性別、高血圧、心房細動、肥満、C反応性蛋白の上昇だったが、飲酒習慣だけは再発リスクの低下に関連していた、



というおはなし。

図:ラクナ梗塞の再発リスクとアルコール


感想:

今回の結果を励みにして好きなだけ飲むといい。じぶんはのまんけど。

2019年3月8日

左脳をやられると勃起不全


Positive Correlation between Left Hemisphere Lesion and Erectile Dysfunction in Post-Stroke Patients
2019  2月  インドネシア

インドネシアでは脳卒中は死亡と身体障害の原因の1位である。

さらに脳卒中の日常生活への影響、とくに性生活についての報告はほとんどない。他の国の研究では勃起不全(Erectile Dysfunction)がおおく報告されているがそのメカニズムはよくわかっていない。

脳の損傷位置と勃起不全との関連についても、副交感神経に影響する左脳の損傷でおきるとする説や右脳や大脳基底核、小脳、損傷位置は関係ないとする説などさまざまである。

そこで、脳の左右脳半球の損傷と勃起不全との関連をくわしくしらべてみたそうな。


脳卒中の発症から6ヶ月以上で、結婚して妻と暮らしている40-59歳の男性74人について調査したところ、



次のことがわかった。

・患者うちわけは、左脳損傷35人、右脳損傷39人で、勃起不全あり38人、勃起不全なし36人だった。

・弱いながらも統計学的有意に左脳損傷と勃起不全に関連が認められた。

左脳損傷の脳卒中男性にはあきらかに勃起不全がおおかった、


というおはなし。

図:勃起障害と左右脳半球ダメージ


感想:

疲労や無気力アパシー系のそれと共通で 損傷位置とはあまり関係ないような気がする。
脳のここをやられると勃起不全になる

脳梗塞の位置と勃起不全(ED) について

2019年3月7日

Brain誌:半側空間無視のシータバーストと比例回復則


Theta burst stimulation in neglect after stroke- functional outcome and response variability origins
2019  2月  スイス

脳卒中で半側空間無視の患者の、過活動状態にある健常側の脳半球のはたらきを磁気刺激などの非侵襲的な方法で抑えると 無視症状が緩和されるという報告がいくつかある。

ただしこの効果はすべての患者にあてはまるものではなく個人差がおおきい。

そこで、健常脳を抑制する条件と、効果があらわれる個人の特徴をくわしくしらべてみたそうな。



亜急性期の右脳の脳卒中で、左の半側空間無視の患者30人と無視症状のない30人について、

右脳の後頭頂葉に連続シータバースト磁気刺激をあたえた。

適した刺激量をさぐるため、1バーストトレイン44秒の磁気刺激を4日間で計8トレインまたは16トレイン、偽刺激 の3グループにわけて実験した。

無視症状と日常生活動作ADL、機能的自立度FIMを3ヶ月後までフォローした。

損傷の位置と拡がりを画像ボクセル解析VLMSでしらべた。

また比例回復則(proportional recovery rule)で予想される回復程度(~70%)とも比較した。



次のようになった。

・全体としてシータバースト刺激グループ(8と16トレイン)で無視症状のあきらかな低下が見られ、効果が3ヶ月以上持続して、

・彼らは身体機能の回復もすぐれていた。

・個人レベルではシータバーストの効果が見られない者は脳梁の、とくに背側注意ネットワークのある後頭頂葉に損傷がおよんでいた。

・シータバーストにより無視症状と機能的自立度があきらかに改善した者の脳梁構造は無傷に保たれていた。

・さらに比例回復則から予測されるADLと無視症状の回復幅はシータバーストにより大きくなっていた。

無視症状のある脳卒中患者で左右脳半球の結合が保たれている場合は、健常脳への連続シータバースト刺激により無視症状はおおきく改善する


というおはなし。

図:脳梁の健全性


感想:

比例回復則はリハビリの有無にかかわらず 運動機能や無視 失語について 機能低下したぶんの70%が数ヶ月間で自発的に回復するという経験則をさす。これに従うものをFitter、はずれる者をnon-Fitterと呼ぶ。

シータバーストにより non-FitterがFitterになるわけではなく、70%の期待回復度が100%ちかくになるようだ。


でもこんな↓はなしもあるからうのみにはできない。
半球間抑制のアンバランスは片麻痺の原因ではなかった

2019年3月6日

経験者の肥満の自覚と減量成果


Self-Reported Body Weight Changes, Perceptions, and Weight Loss Techniques among Stroke Survivors
2019  2月  アメリカ

脳卒中で障害をもつと不活発な生活になり体重が増えることが考えられる。実際、脳卒中経験者の過体重 肥満率は一般人の1.2倍という。

体重がおおいとリハビリの効果があがらない、死亡率が高いなどとされるいっぽう、かえって再発や心血管死亡リスクが下がり保護効果があるとする「肥満パラドックス」も報告されている。

これらはある時点での体重のみに着目しているので、脳卒中経験者の体重がどのように移り変わってきているのか大規模にしらべてみたそうな。



米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)の2011-2014のデータから50歳以上の脳卒中経験者387人、非経験者5085人を抽出した。

25歳時点での体重、現在もしくは脳卒中発症時点から10年前、1年前の体重をアンケート調査したところ、



次のことがわかった。

・脳卒中経験者の54%は脳卒中のあとにもっとも体重がおおくなった。

・脳卒中経験者 非経験者ともに70%が過体重か肥満だった。

・脳卒中経験者の24%のみが体重を減らそうとしていた。非経験者では35%が減量を試みた。

・そして過去1年間にいずれのグループも10-15%のみが5%以上の減量を達成できていた。

・おもな減量方法は、食事を減らす、運動、フルーツや野菜をおおく摂る、だった。

脳卒中経験者のおおくは脳卒中のあと体重がさらに増え、その後減量を試みた者のほとんどが失敗していた、


というおはなし。

図:脳卒中経験者の肥満


感想:

ちまたの健康情報にまどわされずゴーイングマイウェイな姿勢に好感。
Stroke誌:脳卒中でなお太ろうとする肥満の率

2019年3月5日

理学療法とADLのアンブレラレビュー


Subacute stroke physical rehabilitation evidence in activities of daily living outcomes: A systematic review of meta-analyses of randomized controlled trials
2019  2月  スペイン

脳卒中のリハビリテーションの主軸は理学療法であると考えられている。

脳卒中の理学療法について、これまでおおくの研究がなされてきたがメタアナリシスのメタアナリシスであるアンブレラレビューはわずかしかないうえに古い。

そこで、理学療法の最近の治療法もふくめてくわしいアンブレラレビューをこころみたそうな。



複数のレビュワーにより 亜急性期の脳卒中の理学療法について、
日常生活動作ADLを評価したランダム化比較試験RCTのメタアナリシスを厳選した。

データを統合 再解析して、
標準化平均値の差:Standardized mean differences (SMD)と統計学的異質性を評価したところ、



次のようになった。

・被験者13787人を含む314のRCT、21種類(ロボット、スリング、Nintendo Wii、tDCS、灸、鍼、CI療法、mCI療法、仮想現実、FES、繰り返し訓練、両手訓練、拡張現実、イメージ訓練、電気鍼、太極拳、水中訓練、ミラー療法、rTMS、サーキット、末梢電気刺激)の介入方法についての55のメタアナリシス論文がみつかった。

・仮想現実、CI療法、拡張現実、tDCS と理学療法の組み合わせでは異質性の低いわずかながらの改善効果がみられた。

・灸、太極拳、鍼(はり)はもっとも高い効果が得られていたが、異質性が高かった。

・これらのなかで鍼と理学療法の組み合わせのみが勧められるレベルにあった。

おおくの種類の介入方法が理学療法との組み合わせで試されてきているものの、ADLの改善を裏付ける質の高いエビデンスはいずれの方法でも得られていなかった、


というおはなし。

図:理学療法のアンブレラレビュー


感想:

なぜ鍼のようにまったく異なる信念体系の成果が しれっと理学療法の手柄にされているのか、不思議におもい しばらく考えて気がついた。

理学療法というのは理学療法士の指導のもとでなにかしらの体のエクササイズを行うことを指していて、

体に電気をながしながらでもいいし、
踊りながらでもいい、
おなじ動作をひたすら繰り返すだけでもいい、
鏡をみながらでもテレビゲームやりながらでもいい、

もちろん鍼をさしたあとでもいい、

そこに理学療法士がいて体をうごかしたらそれはもう「すべて理学療法」なのである!!!


ようやく理学療法のなんたるかについて理解できた気がしている。

2019年3月4日

亡くなる若年患者は肥満でかつ脳出血


Body mass index and fatal stroke in young adults- A national study
2019  2月  オーストラリア

近年、若年者の脳卒中発生率が上昇傾向にある。

彼らはおもにくも膜下出血と脳内出血を起こす。このリスク要因としてアルコール、タバコ、薬物、肥満などがある。

若年脳卒中で死に至ったケースについて 肥満との関連の報告はないのでくわしくしらべてみたそうな。



オーストラリアの死因究明調査結果を公開している「国立コロナー情報システム」のデータベースをつかって、
15-44歳で脳卒中が死亡原因の2009-2016年179例を抽出して解析したところ、



次のことがわかった。

・内訳は脳出血165例(くも膜下出血102例を含む)、脳梗塞14例 だった。

・BMI別では低体重5.6%、標準体重37.4%、過体重27.4%、肥満29.6% だった。

・BMIの高い者にくも膜下出血と高血圧がおおかった。

・高BMIとアルコール、喫煙、精神刺激薬との関連はみられなかった。

脳卒中で死亡した若年者には過体重と肥満がおおくを占めていた。若年者の肥満と高血圧への対策がもとめられる、


というおはなし。

図:若年死亡脳出血とBMI


感想:

脳内出血は太るほど減っているけど、くもはふえるとこが興味深い。

若いと脳梗塞で死ぬことはほとんどないんだな(~8%)。
若年者が脳卒中になる理由

2019年3月3日

脳卒中医師の4割は燃え尽き寸前


Burnout syndrome- are stroke neurologists at a higher risk?
2019  2月  ブラジル

燃え尽き症候群は仕事のストレスや対人関係からくる精神疾患と考えられ、興味関心の喪失、離人症(魂が体から抜ける)、自尊心や仕事の達成感の低下を伴う。

医師に多いとされ、医療の質の低下や医療過誤、さらには自身の薬物中毒や突然の退職の原因になるという。

ブラジルでは神経科医についての調査がこれまで1件しかないのでくわしくしらべてみたそうな。



神経科の医師74人にアンケート調査した。

燃え尽き症候群の判定は Maslach Burnout Inventoryを用いた。



次のようになった。

・彼らのうち44.6%が燃え尽き症候群と判定された。

・女性(60.6%)と脳卒中専門医(51.5%)に若干おおかった。

・脳卒中の救急治療を専門とする医師とそれ以外の神経科医では、いずれも精神的消耗度は中レベルで、仕事の達成感は脳卒中専門医が高かった。

・年齢と精神的消耗度は比例関係にあり、

・女性神経科医は仕事の達成感レベルが低かった。

神経科医の燃え尽き症候群は4割にみられ、他の報告と一致していた。脳卒中の専門医と外来患者を主対象とする神経科医とではあきらかな差はみられなかった、


というおはなし。

図:脳卒中専門医の燃え尽き


感想:

日本でも4割↓。これを知っていると医師の冷たさや態度の悪さにいちいちショックを受けなくなる。
患者が死んでも構わない 脳卒中医の4割が「燃え尽き症候群」

2019年3月2日

半球間抑制のアンバランスは片麻痺の原因ではなかった


Rethinking interhemispheric imbalance as a target for stroke neurorehabilitation
2019  2月  アメリカ

半球間競合モデル(interhemispheric-competition model)によると、左右の脳半球は平常時には脳梁を介して互いの働きを抑制しあいバランスを保っている。

ところが脳卒中で健常な側への抑制がはずれると、損傷脳半球への抑制が過剰にはたらき さらにひどい片麻痺におちいってしまう と考えられている。

このアンバランスな状態を正すことが脳卒中の運動機能回復につながると信じられていて、さまざまな脳刺激法(rTMSやtDCSなど)が試されている。

しかしこれまでのアンバランスな半球間抑制の報告は慢性期の患者ばかりである。

さらに2017年の112の研究のメタアナリシスでは 健常脳半球の過剰興奮を裏付けるエビデンスは1つもみつかっていない。

そこで、ほんとうにアンバランスな半球間抑制が急性期にも存在していて運動機能の回復と関連するものなのか、たしかめてみたそうな。



脳梗塞患者22人と健常者11人について、

半球間抑制の程度を ダブルパルスTMSパラダイムで評価し、運動機能との関連を調べた。

これを1年間、計5回(1,4,12,24,54週目)フォローしたところ、



次のことがわかった。

・指の運動に際する半球間抑制は急性期や亜急性期には正常レベルにあり、その異常は慢性期にのみ確認することができた。

・半球間抑制の影響は運動能力が回復するにしたがいひどくなった。

・さらにこの半球間抑制の程度は運動機能の種類(FMA、力、器用さ)のいずれとも関連を示さず、

・慢性期に向かって半球間抑制のアンバランスさが目立つにつれ、指の器用さの回復幅もわるくなっていった。

これらの結果から、半球間抑制のアンバランスさは片麻痺の回復がよくない原因というよりはむしろ回復結果の反映と考えられる。半球間抑制のバランスを正すことがはたして運動機能の回復につながるのかは おおいに疑問である、


というおはなし。

図:半球間アンバランス測定


感想:

原因と結果を都合よく勘違いしていたってことなんやね。

「健常脳を抑制したら〇〇が良くなった」という報告がやたら目について、単純化しすぎているな、、とはおもっていたよ。

2019年3月1日

nature.com:1度のカイロプラティックで筋力アップ


The effects of a single session of chiropractic care on strength, cortical drive, and spinal excitability in stroke patients
2019  2月  ニュージーランド

カイロプラティックはホリスティックな概念の治療法で、脊椎全体にたいしてサブラクセーション(subluxation)という手技をもちいて各椎体のズレを調節することが問題の解決につながるとされている。

カイロプラティックによる筋力強化や中枢神経系への影響の報告がいくつかあるので、脳卒中患者の弱った筋力についてその効果の有無を検証してみたそうな。


慢性期の脳卒中患者12人について、

1回のカイロプラティック施術の前後での足底屈筋力および
V-波(volitional waves:皮質からの信号)
H-波(Hoffman reflex:脊髄反射)
を測定して、

コントロール(同じ施術環境でのサブラクセーションだけを行わない)と比べたところ、


次のようになった。

・カイロプラティックにより足底屈筋力があきらかに強くなった。

・V-波も強くなり、H-波に変化はなかった。

1回のカイロプラティックにより足底屈筋力が増強した。皮質レベルでの変化があったと考えられる、


というおはなし。

図:カイロプラティックの足底屈筋力効果


感想:

被験者にはブラインドになっているみたいだけど、施術者はあきらかに確信的なわけで、その立ち居振る舞いにはあふれんばかりの自信がにじみ出ているはず。
それがもたらす強力なプラシボ効果だと考える。

けど 入院していたときにひたすら仙骨をいじるだけの療法士に出会い、肩の痛みを一瞬で治してもらったことがあるので あなどれない。

命をかけて↓いちかばちかでやってみる価値はあるのかも。
カイロプラティックが原因の頸部動脈解離

[動画]カイロプラクティックに行って脳梗塞で死んでしまった若者にまつわるストーリー

カイロや整体院で首をボキボキッってやるやつ あれ脳卒中のもとかもよ

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