2019年9月20日

BMJ誌:亜急性期の体トレは効果ないうえに危険


Physical Fitness Training in Patients with Subacute Stroke (PHYS-STROKE)- multicentre, randomised controlled, endpoint blinded trial
2019  9月  ドイツ

トレッドミルをつかった体力トレーニング(physical fitness training)は脳卒中患者の神経可塑性をうながし歩行や日常生活動作を改善すると考えられている。

じっさいアメリカ心臓協会のガイドラインでは、
亜急性期に最大心拍数の55-80%の有酸素運動20-60分間を週に3-5セットおこなうことを勧めている。

しかし亜急性期の体力トレーニングの効果をしらべたこれまでのランダム化比較試験9件のうち実際に効果を示したものは2件のみだった。

そこで体力トレーニングの効果と安全性についてマルチセンター(PHYS-STROKE)トライアルできっちりとしらべてみたそうな。



ドイツ7箇所の施設にて、発症から5-45日
NIHSSスコア8前後の中程度以上に神経症状の重い脳卒中患者200人について、

体力トレーニング105人と
リラクゼーション95人 の2グループにわけた。

体力トレーニンググループは体重支持つきトレッドミル上を最大心拍数の50-60%で25分間歩かせる。

リラクゼーショングループでは心拍に影響のない強度での筋肉緊張を解くエクササイズを25分間おこなった。

両グループともにこれらを週に5回 x4週間継続した。

3ヶ月後の日常生活動作をバーセルインデックスで、最大歩行速度を10m歩行テストでしらべた。
有害事象もフォローした。



次のようになった。

・体力トレーニングはリラクゼーションにくらべ最大歩行速度のあきらかな向上はみられなかった。

・日常生活動作についても差はなかった。

・有害事象は 22 vs. 9件 で体力トレーニングにはっきりと多く、とくに転倒リスクが高かった。

亜急性期の体力トレーニングはまったく効果ないばかりか危険だった。ガイドラインを見直したほうがいい、


というおはなし。

図:PHYS-STROKE



感想:

急性期の運動は効果ないし危険、亜急性期も効果ないし危険。

脳卒中の早期リハビリはがんばる人がバカを見る↓。
Neurology誌:早期リハビリ 気休めにもならない

コクランレビュー:超早期リハビリは効果ないし危ない

【やはり】亜急性期のリハビリは効果ないうえに危険

失語症の早期リハビリ まったく効果ない

超早期リハビリをやってはいけない理由

nature.com:脳卒中の超早期リハビリ やる意味ない

Stroke誌:早期リハビリがんばる意味ない

超早期リハビリで死亡者続出 AVERT続報

超早期リハビリには脳の細胞死を促す効果があった!

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない

2019年9月19日

シータバースト刺激が脳卒中に良い理由


Beneficial Effects of Theta-Burst Transcranial Magnetic Stimulation on Stroke Injury via Improving Neuronal Microenvironment and Mitochondrial Integrity
2019  9月  中国

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、低い頻度では神経活動を抑制し高頻度では活性化すると考えられている。

うつなどの精神疾患にも応用され アルツハイマー病やパーキンソン病ではβアミロイドを減らしBDNFなどの神経促進タンパクを増やす効果が報告されている。

脳梗塞でのrTMSの影響メカニズムをくわしくしらべてみたそうな。



人為的に脳梗塞にしたネズミに3時間後からrTMSの5Hzのバーストパルスを5日間与えた。

この前後での行動、梗塞体積、脳組織の変化を観察した結果、



次のことがわかった。

・行動障害と梗塞体積があきらかに減少した。

・シナプス減少や神経退化も少なくなった。

・グリア細胞の増殖や炎症性サイトカイン、酸化ストレスによる神経ダメージも抑えられた。

・ミクログリア、アストロサイトの型が 傷害性から保護性にシフトした。

・抗炎症性のサイトカインが増加し、ミトコンドリアの細胞膜の健全性が維持されアポトーシス経路が抑制された。

rTMSのシータ刺激による脳虚血へのつよい神経保護作用がしめされた。炎症-酸化-ミトコンドリアの微小環境への改善効果が関係しているようだ


というおはなし。

図:磁気刺激 脳梗塞


感想:

ネズミ頭部に対するヘルムホルツコイルの巨大さ(上図)が気になった。

脳全体を刺激するシータリズムがミクロレベルにいいのか。

[シータバースト]の関連記事

2019年9月18日

勃起不全と脳卒中のメタアナリシス


Erectile Dysfunction Predicts Cardiovascular Events as an Independent Risk Factor- A Systematic Review and Meta-Analysis
2019  9月  中国

勃起不全(ED)は性交渉に必要な勃起レベルに達しないまたは維持できない状態をさす。ED人口は世界で1億人以上いるとされ、2025人には3億人を超えるという。

脳卒中などの心血管疾患でEDがよくみられることがわかっている。高血圧や糖尿病、喫煙、肥満など共通のリスク要因もすくなくない。

ぎゃくにED患者に心血管疾患が見られるとする報告もおおい。

これらのメカニズムはいまだよくわかっていない。

前回のメタアナリシスではサンプル数が十分でなくEDの程度と心血管疾患リスクとの関連もわかっていない。

そこで最新の研究を含めてEDからの心血管疾患についてメタアナリシスをこころみたそうな。



関係する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、



次のことがわかった。

・被験者154794人をふくむ25の研究がみつかった。

・EDなしにくらべEDがあると心血管疾患リスク1.43倍、冠動脈疾患リスク1.59倍、脳卒中リスク1.34倍、総死亡リスク1.33倍だった。

・EDの程度がひどくなるほど心血管疾患および総死亡リスクがたかくなった。

EDは心血管疾患や脳卒中、総死亡リスクとあきらかな関連があった。重度のEDほどこれらリスクは高かった、


というおはなし。

図:勃起不全の程度と心血管疾患リスク


感想:

たしかに脳が血を吹く1年くらいまえから元気がなかったわ。
左脳をやられると勃起不全

脳のここをやられると勃起不全になる

2019年9月17日

こども脳卒中のIQと言語機能と脳半球


Language and cognitive outcomes after childhood stroke- Theoretical implications for hemispheric specialization
2019  9月  フランス

子供(1ヶ月~15歳)の脳卒中率は年間10万人あたり0.2-7.9人で、脳梗塞と脳出血はほぼ同数といわれている。

彼らの3分の1は完全回復し、半数は長期に障害が遺る。

これまでなされた彼らの言語機能についての調査はすくなくサンプル数もちいさい。

そこで大規模にくわしくしらべてみたそうな。



1992-2015の子供脳卒中患者184人について、

発症4ヶ月後にウェクスラー式知能検査をおこない、最大40ヶ月後までフォローした記録を解析したところ、



次のことがわかった。
・脳卒中の種類は、脳梗塞が79人 脳出血が105人だった。

・IQの平均値は、フルスケール 85, 言語 93, パフォーマンス 85 だった。

・語彙、文法表現と理解については26-52%が障害レベルだった。

・学校の標準カリキュラムについてゆける子供は27%に過ぎず、

・別の27%は特殊学級プログラムが適用されていた。

・左脳損傷での言語関連スコアはあきらかに低く発症年齢によらなかった。

・右脳損傷では6歳以下の発症のとき言語関連スコアが低かった。

脳卒中を経験した子供のおおくは知能指数が障害レベルで、とくに左脳損傷のばあい言語機能がいちじるしく影響を受けた、


というおはなし。

図:子供脳卒中 言語スコア 左右脳損傷



感想:

必ずしもそうでもないみたいなんだよな↓。
こどもの発話障害 構音障害

こども脳の可塑性が言語回復をさまたげる

2019年9月16日

大動脈瘤とくも膜下出血の関係


Association of Aortic Aneurysms and Dissections With Subarachnoid Hemorrhage
2019  9月  アメリカ

脳動脈瘤と大動脈瘤は 共通するリスク要因はあるものの、その形成メカニズムがまだよくわかっていない。

経験的には大動脈瘤患者に脳動脈瘤がよくみつかるといわれているが、くわしい調査はないのでこれらの関連をしらべてみたそうな。



2008-2015のメディケア受益者1781917人から、
大動脈の瘤や解離のある患者を抽出してくも膜下出血の発生をフォローしたところ、



次のことがわかった。

・全体の1.8%に大動脈瘤または大動脈解離があり、

・4.6年前後のフォロー中に0.14%にくも膜下出血があった。

・この発生率は年間10000人あたり9人で、大動脈瘤や解離のない場合は3人だった。

・関連要因を調整したあとのくも膜下出血リスクは1.4倍だった。
大動脈瘤や大動脈解離があるとくも膜下出血のリスクがあきらかに高かった、


というおはなし。

図:大動脈瘤があるときのくも膜下出血率



感想:

脳動脈瘤ができやすい全身性の状態があって、そういうタイミングで脳動脈瘤は非常に短期間に発生成長して破裂する。

だから観測可能な脳動脈瘤はすでに安定化している。治療したところで別の瘤ができて破裂するのでくも膜下出血リスクは高いまま。

これは破裂脳動脈瘤の再出血予防治療についてもおなじ↓。
Risk of Recurrent Subarachnoid Hemorrhage After Complete Obliteration of Cerebral Aneurysms

2019年9月15日

cell.com:脳をガッツリ再生するNeuroD1遺伝子治療


A NeuroD1 AAV-Based Gene Therapy For Functional Brain Repair After Ischemic Injury Through In Vivo Astrocyte-To-Neuron Conversion
2019  9月  アメリカ

哺乳類の脳は海馬や脳室下帯をのぞいて神経再生機能をもっていない。そのため虚血で損傷した脳組織が自力で再生できる割合は失われた神経の1%にも満たないとされている。

神経前駆細胞を外部から導入する実験では動物や人で期待できる成果が得られている。
いっぽう神経幹細胞の導入には免疫拒絶や腫瘍化など問題がおおい。

さいきん、脳に豊富にあるグリア細胞(アストロサイト)を神経細胞に変身させる転写因子「NeuroD1」が実験室レベルでみつかった。

これを実際に脳の中で働かせることができれば失われた神経細胞を再生でき、しかももともと周辺にあった細胞なので機能回復に好都合かもしれない。

そのための技術を開発し動物で実験してみたそうな。



望む位置のグリア細胞にNeuroD1を発現させるために 必要なDNA配列をもったベクターウィルス (adeno-associated virus:AAV)を造った。

脳卒中ネズミで実験したところ、



次のようになった。

・目標組織にAAV感染させることで、脳虚血で失われた神経細胞の3分の1を再生することができた。またダメージを受け瀕死のニューロンの3分の1を護ることができ神経の回復につながった。

・アストロサイトから神経細胞への転換はmRNAとプロテインレベルで確認できた。

・2ヶ月後には再生した神経細胞でシナプス反応を確認できた。

・再生した神経細胞からのロングレンジの軸索投射も確認できた。

・運動と認知機能でのあきらかな改善がみられた。

NeuroD1を介した細胞転換による遺伝子治療は、神経を大幅に再生し失われた機能を取り戻すことができるかも、


というおはなし。

図:NeuroD1で脳梗塞再生



感想:

AAV自体はすでにFDA認可のあるウィルスなんだって。

よそから細胞をもってくるのではなく、もともとたくさんあるグリア細胞を利用する戦略がある。↓
脳の損傷部位にあらたな神経細胞を誘導する方法

ミクログリアを味方にして慢性期脳梗塞を治療する方法

刺激豊富な環境っていうけど、どの刺激がいいの?

ダメージを負った脳組織が勝手に再生する仕組みが明らかに

2019年9月14日

若年脳卒中にがんが見つかる率


Increased risk for cancer after stroke at a young age- etiological relevance or incidental finding?
2019  9月  ドイツ

脳卒中患者のほとんどは75歳以上であるが、およそ10%は55歳以下という。

彼ら若年者が脳卒中になる原因は血管リスク要因だけでは説明がつかない。

潜在的ながんにより引き起こされる血栓形成傾向(thrombophilia)についての報告がいくつもあがっている。

これらの研究のおおくはがん患者の脳卒中の発生をしらべたもので、脳卒中になったのちがんが診断されたケースの調査はすくない。

そこで脳卒中患者を10年間フォローした研究データをつかってくわしくしらべてみたそうな。



ドイツの医薬品疾病データベースから
がんと診断されていない脳梗塞患者18668人と、同数の脳卒中でない患者記録を抽出してその後10年間のがん診断の有無との関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・全体の15.5%が55歳以下だった。

・脳卒中患者のがん診断率は、高齢で29.4%、55歳以下17.3%だった。

・非脳卒中患者とくらべ脳卒中患者のがん診断率は高く、55歳以下では17.3% vs. 9.5%、高齢では29.4% vs. 24.9%だった。

若年で脳卒中になった患者の10年間のがん診断率は非脳卒中患者のおよそ2倍だった、


というおはなし。

図:若年脳卒中のがん発症率


感想:

これ↓おもいだした。
脳卒中患者にしめるがんの率

脳卒中のあと がんになりやすいは本当?

脳卒中後のがんは6ヶ月以内にみつかりすでに手遅れ

がんの宣告を受けると脳梗塞になる

軽い脳梗塞とホッとしていたのも束の間 実はガンでしたと告げられる患者の割合と見分け方

若い脳梗塞患者でガンで亡くなってしまう人の特徴

なぜ脳梗塞患者はガンになりやすいのか

2019年9月13日

Stroke誌:脳電気刺激の神経保護効果


Central Nervous System Electrical Stimulation for Neuroprotection in Acute Cerebral Ischemia
2019  9月  アメリカ

中枢神経系への電気刺激は脳卒中からの回復促進に応用されることがあり 頭皮に電極を貼り弱い電流を流すtDCSやtACS が知られている。

ほかに侵襲性の高い方法として脳深部に電極を挿し込む刺激法もある。

中枢神経系への電気刺激には虚血に陥った脳組織を保護する効果も期待されていて、動物実験での報告がおおくある。

刺激の考え方はおもに2つあって、1つは虚血脳半球に直接電極を貼る方法で、もう1つは虚血部位から離れた核(nuclei)を電気刺激する方法である。

そこで中枢神経系への電気刺激の神経保護効果についてこれまでの前臨床研究のメタアナリシスをこころみたそうな。



関係する動物実験の研究を厳選してデータを統合 再解析した。

6つの刺激戦略について最終的な梗塞体積の変化を調べた。

そのうち3つは陰極、陽極または交互にパルス刺激する方法で、

残りの3つは虚血域からはなれた以下の核をターゲットにした刺激である。
室頂核(fastigial nucleus)、
視床下血管拡張域(subthalamic vasodilator area)、
背側中脳水道周囲灰白質(dorsal periaqueductal gray)。



次のことがわかった。

・350の実験動物をふくむ21の急性脳虚血への電気刺激についての研究がみつかった。

・全体として、電気刺激なしに比べて梗塞体積は37%減少した。

・刺激方法ごとに効果はことなり、とくに虚血脳半球への刺激では陰極半球刺激(cathodal hemispheric stimulation:CHS)でのみあきらかな梗塞体積の減少(27%)がみられた。

・虚血域からはなれた核への刺激方法3つはすべてで梗塞体積が半分ほどになっていた。

・臨床応用へはCHSがもっとも有望と考えられた。

中枢神経系への電気刺激の前臨床実験では梗塞体積をちいさくすることができた。人の臨床実験には虚血半球への陰極刺激が適していると考えられる、


というおはなし。

図:陰極半球刺激と梗塞体積のメタアナリシス



感想:

動物では頭をあけて直接電極を貼ったり強い電流つかったりできるのでなんらかの効果を観測できる。

ところが人に応用する場合、たとえば「経頭蓋のtDCSやtACS」だとそもそも脳に電流がとどかない。
さらに通電中は電極に接する皮膚のチクチク感が常にあるため被験者にたいし盲検を設けることができないという本質的な問題もかかえる。

そのためtDCSやtACSの臨床実験では 被験者が実験意図を容易に忖度(そんたく)してしまいポジティブなデータばかりが得られてしまう。
tDCSってホントに脳を刺激してるの?

2019年9月12日

くも膜下出血がおきやすい時間帯


Relationship between Circadian Variation in Ictus of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage and Physical Activity
2019  9月  韓国

くも膜下出血の発生は24時間の概日(circadian)パターンをしめすとする報告が数おおくあがっている。

これには1日の身体活動変化の影響も考えられるが くわしい報告がないのでしらべてみたそうな。



2012-2017の脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血335人のうち、

発症時刻と身体活動パターンがあきらかな234人を抽出して関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・1日のうちの発症時刻は、はっきりとしたふたコブパターンをしめし、08:00-12:00におおきなピークがあり次いで16:00-20:00にピークがあった。

・日中の身体活動強度は 深夜00:00-04:00が最低で、08:00-12:00にゆるやかなピークをしめすのみだった。

・日中の身体活動強度が、低い(1-4METs)グループと高い(5-8METs)グループとの比較では くも膜下出血発生リスクへの有意な影響は認められなかった。

くも膜下出血の発生時刻はふたコブパターンをしめしとくに朝に高かった。このパターンは身体活動強度に影響されなかった、


というおはなし。

図:くも膜下出血の起きる時間帯



感想:

身体活動は動脈瘤を破裂させる影響よりも 保護効果のほうが強い↓。
nature.com:活発なひとはくも膜下出血になりやすい?

2019年9月11日

痙縮が強くなる姿勢


Influence of positional changes on spasticity of the upper extremity in poststroke hemiplegic patients
2019  9月  中国

痙縮は脳卒中経験者の20-40%にあらわれるという。

上肢の痙縮は寝ているときよりも立って歩いているときに よりわかりやすい。

片麻痺患者の姿勢と上肢の痙縮についての報告はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。



脳卒中で上肢に痙縮のある84人の患者について、

肘、手首、手指の屈筋の痙縮の程度を3つの指標

Modified Ashworth Scale (MAS)、
Modified Tardieu Scale (MTS) 、
Triple Spasticity Scale (TSS)、

で、仰臥位、座位、立位でそれぞれ測定したところ、



次のことがわかった。

・仰臥位では3つの指標すべてで痙縮度が他の姿勢よりもあきらかに低く、

・MTSとTSSスコアは座位よりも立位で有意に高かった。

脳卒中片麻痺患者について、仰臥位や座位から立位になるとその上肢痙縮度はあきらかに高くなった、



というおはなし。

図:3つの姿勢での痙縮



感想:

最初のころは療法士さんにC-3POみたい とからかわれた。しかし間もなく気にならないレベルにまで腕の筋肉の緊張は解けた。

なるほど痙縮は脳の問題なんだなぁ、、とおもった。

2019年9月10日

nature.com:脳梗塞が再発しやすい両上腕血圧差


Inter-arm Blood Pressure Difference is Associated with Recurrent Stroke in Non-cardioembolic Stroke Patients
2019  9月  韓国

血圧管理の最新のガイドラインでは両腕での血圧測定をすすめている。

両腕で血圧が異なるケースは珍しくなく、両上腕血圧差(inter-arm blood pressure difference:IABD)と呼ばれ 一般人の4%、糖尿病の7%、脳卒中の10%に見られるという。

IABDは大動脈や鎖骨下動脈系の動脈硬化や狭窄を反映していると考えられている。

IABDと脳卒中の再発との関連についての研究はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。



心原性タイプでない脳梗塞の患者1226人について、

24ヶ月間 再発ケースをフォローした。

入院時のABI(Ankle-brachial index:足関節上腕血圧比)検査からIABDをもとめて関連を解析したところ、



次のようになった。

・両腕の血圧差が10mmHg以上ある者は、収縮期血圧で9.7%、拡張期血圧で5.0%いた。

・この間に8.5%が脳梗塞を再発した。

・IABDが10mmg以上あった者の再発リスクは、収縮期血圧の場合で1.77倍、拡張期血圧では2.92倍だった。

両上腕血圧差が10mmHg以上あるとあきらかに脳梗塞が再発しやすかった、


というおはなし。

図:両上腕血圧差と生存曲線



感想:

以前はかったら15くらい差があって、ビビって2度とはかっていない。
脳卒中やったひとは両腕で血圧が違うかも

2019年9月9日

食事マグネシウムと脳卒中の関係


The Effect of Magnesium Intake on Stroke Incidence- A Systematic Review and Meta-Analysis With Trial Sequential Analysis
2019  8月  中国

食事からのマグネシウムの不足は アルツハイマー病、喘息、ADHD、糖尿病、高血圧、心血管疾患、片頭痛、骨粗鬆症、がん、などと関連しているという。

しかしマグネシウムと脳卒中については食事ガイドラインで適量を勧められるほどには用量関係があきらかになっていない。

そこで最新の研究もふくめたメタアナリシスに逐次解析(trial sequential analysis)を適用してマグネシウムと脳卒中の用量関係をあきらかにしてみたそうな。



2019 Jan.までの関係する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、



次のことがわかった。

・マグネシウムをほとんど摂らないグループにくらべもっともおおく摂るグループの脳卒中リスクは11%低く、脳梗塞リスクは12%低かった。

・脳出血との関連についても逆相関にあったが統計学的有意なほどではなかった。

・1日あたりマグネシウム量が100mgふえるごとに脳卒中リスクは2%低下した。

マグネシウムを多く摂ることは脳卒中予防になり用量関係がみられた、


というおはなし。

図:食事マグネシウムと脳卒中リスク



感想:

ナッツや豆によくふくまれている。バターピーナッツ50gで100mg摂れる。
マグネシウムと脳卒中後の認知障害

マグネシウムが少ないと脳動脈瘤が破裂する?

2019年9月8日

ベジタリアンの脳卒中リスク


Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up- results from the prospective EPIC-Oxford study
2019  9月  イギリス
健康、環境、動物愛護の観点からベジタリアンやビーガンになる人が増加している。

これまでの研究ではベジタリアンは虚血性心疾患のリスクが低いとされている。

しかし脳卒中との関連については報告がほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。



1993-2001にイギリスでおこなわれた食事健康調査 EPIC-Oxford研究にはベジタリアンがおおく含まれる。

このデータから健康な48188人を抽出して、次の3グループに分けた。

ミートイーター(meat eaters)24428人:肉も魚も食べる。
フィッシュイーター(fish eaters)7506人:肉は食べないけど魚は食べる。
ベジタリアン(vegetarians)16254人:肉も魚もたべない。

脳卒中と虚血性心疾患の発生を2016までフォローしたところ、



次のようになった。

・この間に虚血性心疾患2820、脳卒中トータル1072、脳梗塞519、脳出血300があった。

・ミートイーターにくらべフィッシュイーターとベジタリアンは虚血性心疾患リスクがそれぞれ13%、22%低かった。

・この関連はコレステロール値や血圧、糖尿病、BMIで調整すると弱まった。

・いっぽう脳卒中トータルのリスクはベジタリアンがミートイーターより20%高かった。

・脳出血に限定するとベジタリアンのリスクは43%高かった。

・これらの関連は血圧、糖尿病、BMIなどで調整してもほとんど変わらなかった。

ベジタリアンの虚血性心疾患リスクは低かったが、脳卒中リスクは高く とくに脳出血になりやすかった、


というおはなし。

図:ベジタリアン食と脳出血リスク



感想:

人は 「米、大豆、じゃがいも」で生きられるとするじぶん勝手な仮説を立てて10年あまりその生活を実践していた。

そしてコレステロールが下がりすぎたためか 脳が血を吹いた。

これに懲りたいまは普通のミートイーター。

2019年9月7日

日本人の脳卒中死はラーメン屋のせい


Ramen restaurant prevalence is associated with stroke mortality in Japan- an ecological study
2019  9月  日本

日本の食事には塩分がおおく動物性脂肪が少ないと言われている。

ライフスタイルの変化により冠動脈疾患にくらべ脳卒中死亡率はおおきく低下してきた。

しかしどういうわけか東日本の脳卒中死亡率は西日本よりも高い。

この背景に日本の国民食「ラーメン」があると考え、仮説を検証してみたそうな。



厚生労働省のデータベースをつかって2017年の県ごとの脳卒中死亡率とコントロールとして心筋梗塞死亡率をもとめた。

NTTの電話帳から県別のラーメン屋、ファーストフード店、フレンチ イタリアンレストラン、うどん そば店を抽出して、人口あたりの件数分布をしらべた。

これらの関連を男女別に解析したところ、



次のことがわかった。

・県人口あたりのラーメン屋件数がおおいと男女ともにあきらかに脳卒中死亡率が高く、

・この関連はファーストフード店やフレンチ イタリアン、うどん そば店との間には見られなかった。

・また、ラーメン屋密度と心筋梗塞死亡率にも関連はみられなかった。

日本の県ごとのラーメン屋密度と脳卒中死亡率にはあきらかな関連がみられた、


というおはなし。

図:ラーメン屋分布と脳卒中死亡率



感想:

上の図みると福岡と熊本はラーメン屋密度たかいのに脳卒中死亡率が最低。

とんこつ系は脳卒中的にわるくないのかも。

カップラーメンを週2回以上食べる女性が脳卒中になりやすい理由について

近所にファーストフード店があると脳卒中になるの?

2019年9月6日

サーモセラピーで筋力アップとうつ解消


Thermotherapy Combined With Therapeutic Exercise Improves Muscle Strength and Depression in Patients With Ischemic Stroke
2019  9月  インドネシア

脳卒中患者へのサーモセラピー(温熱療法)では筋肉に血流が増え弛緩すると考えられていて、その結果として関節可動域や筋力、柔軟性、疼痛しきい値が上がったなどの改善効果が報告されている。

超音波や電気をつかって深部まで温める方法もあるものの、熱したウォータパックを筋肉に当てる方法が低コストかつシンプルであり低中所得国の患者に適している。

そこでサーモセラピーにエクササイズを組み合わせた4週間の自宅リハビリで筋力とうつに改善効果がみられるものか実験してみたそうな。



脳卒中のあと12日前後の すでに退院してなんのリハビリも受けていない片麻痺の患者22人について、

41℃に熱したウォータパックを肩の三角筋と膝に10分間あてたのち運動訓練をさせる方法を介護者に教育して、
これを1日2回x週7日x4週間、計56セッション実行させた。

この前後で 上下肢の筋力とうつスコアを測定したところ、



次のようになった。

・4週間のサーモセラピーと運動訓練のあと、上下肢の筋力があきらかに強くなった。

・うつスコアもおおきく低下した。

・もっともおおきな改善は3週目におきた。

サーモセラピーを加えた自宅リハビリにより脳卒中患者の筋力とうつがあきらかに改善した、


というおはなし。

図:脳卒中の温熱療法 筋力



感想:

日本人の論文がいくつも引用されてた。たぶん温泉に浸かるんだろね。

2019年9月5日

フローダイバーターの合併症率


Flow diversion treatment for acutely ruptured aneurysms
2019  9月  オランダ

くも膜下出血で脳動脈瘤の再破裂をふせぐためにコイルを詰める方法がある。しかしコイル手術には破れた脳動脈瘤をさらに傷つけてしまう可能性もある。

さいきん、フローダイバーターというステントを母血管に挿入することで血管内腔を再建して破裂動脈瘤に触れずに塞いでしまう方法が利用できるようになった。

しかしこの方法には血栓による脳梗塞や頭蓋内出血の合併症をおこすリスクもある。

このあたりの安全性情報が少ないのでくわしくしらべてみたそうな。



6つの施設のくも膜下出血でフローダイバーター治療をおこなった患者44例の記録を解析したところ、



次のことがわかった。

・発症から数カ月後、回復良好(mRS0-2)は20名(45%)だった。

・トータルで57件の合併症がおき、そのうち20名(45%)の合併症25件は手術に関係するもの(手術中の血栓による梗塞や血管解離などが5件、手術後の梗塞や脳出血、消化管出血などが20件)だった。

・12名(27%)で永続的な障害となり、5名(11%)で再出血した。8名(18%)が死亡した。

・手術関連の合併症を負った患者は回復不良(mRS3-6)になりがちだった。

・サイズ20mm以上の瘤の再出血率は20mm未満にくらべ、60% (3/5) vs 5% (2/39)で非常に高かった。

・およそ10ヶ月後、アンギオ検査できた患者の93%で完全閉塞が確認できた。

破裂脳動脈瘤へのフローダイバーター治療は 合併症率が非常に高く、再出血率も高かった。合併症を負った患者の予後は悪かった、


というおはなし。

図:フローダイバーターの合併症



感想:

検索で表示される日本語ページみると良いことしか書いてないんだよ、フローダイバーター。

カテーテル系の治療は素人目にはあんぜんそうだけど実はしくじりがおおい。健康な若年者へのコイルですら致命率はクリップの3倍↓。
未破裂瘤手術の合併症率と致命率 JAMA Neurol.

2019年9月4日

くも膜下出血が起きやすい天気と瘤の形


Association Between Meteorological Factors and the Rupture of Intracranial Aneurysms
2019  9月  中国

くも膜下出血の85%は脳動脈瘤の破裂によるものである。

脳動脈瘤の形成、破裂の関連要因として血圧、喫煙、女性、家族歴などがあげられる。

さらに気象条件との関連を示す報告もいくつかあるが、調査により結論が異なっている。

そこで、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血と気象条件との関連を、脳動脈瘤の形状もふくめてくわしくしらべてみたそうな。


くも膜下出血患者1751人の2124個の脳動脈瘤の記録と、発症当時の気象パラメータとの関連を、脳動脈瘤の形状(瘤のサイズ、ネック幅、高さ、母血管径、ブレブ、アスペクト比、サイズ比、ボトルネック比)もふくめて解析した。



次のことがわかった。

・日々のくも膜下出血発生率は気温(1日の平均、最高、最低)と逆相関にあり、

・1日の平均気圧と正の相関をしめした。

・複数の脳動脈瘤をもつ58人の記録から瘤の形状についてしらべたところ、アスペクト比(高さ/ネック幅)のみが有意に破裂と関連していた。

・ROC解析では破裂しやすい瘤のしきい値は、サイズ3.45mm、アスペクト比1.05だった。

気温が低く気圧が高い日は脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血がおきやすかった。このような日には破裂しやすい瘤のしきい値が下がると考えられた、


というおはなし。

図:脳動脈瘤の形状パラメータ



感想:

未破裂脳動脈瘤の国際研究ISUIAでは7mm以下の破裂率は0.05%未満で まず破裂しないといわれている。それにくらべてしきい値3.45mmは小さすぎるし 0.01mm単位で示すほどの精度があるのか?
クモ膜下出血がおこる気象条件

2019年9月3日

動作観察トレーニングのメタアナリシス


The effects of action observation training on improving upper limb motor functions in people with stroke- A systematic review and meta-analysis
2019  8月  中国
脳卒中患者の最大80%は上肢に麻痺を生じ、およそ50%はその状態が何年もつづく。

上肢リハビリ法のおおくは麻痺手のくりかえし運動がベースになっている。しかし麻痺手が動かない重症の患者には適していない。

動作観察(action observation)によりミラーニューロンシステムを介し運動皮質への働きかけが進むことがわかっていて、麻痺手の運動を必要としない「動作観察トレーニング」として期待されている。

動作観察トレーニングの効果を検証するべくこれまでの研究をメタアナリシスしてみたそうな。



関係する研究論文のうち、脳卒中患者への訓練セッション5回以上のランダム化比較試験を厳選して データを統合 再解析したところ、



次のことがわかった。

・脳卒中被験者276人をふくむ7つの研究がみつかった。

・動作観察による上肢トレーニングは効果がちいさいながらもあきらかな改善を示していた。

脳卒中で上肢麻痺の患者への動作観察トレーニングは有効そうである、


というおはなし。

図:動作観察トレーニングのメタアナリシス


感想:

ミラーニューロンがどうのといってるけど これは運動イメージ訓練のImplicitタイプなんだよな↓。
エビデンスレベルⅠ 推奨度Aの脳卒中リハビリ法とは

2019年9月2日

未破裂瘤手術の合併症率と致命率 JAMA Neurol.


Procedural Clinical Complications, Case-Fatality Risks, and Risk Factors in Endovascular and Neurosurgical Treatment of Unruptured Intracranial Aneurysms: A Systematic Review and Meta-analysis
2019  3月  オランダ

未破裂脳動脈瘤は一般人の3%にみつかり、画像診断技術の進歩であらたに発見される未破裂脳動脈瘤の数は増加傾向にある。

脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血になる。このときの平均年齢は60歳で 致命率はおよそ35%である。

未破裂脳動脈瘤を治療することでくも膜下出血を防ぐことができると信じられている。

その方法には 血管内治療(endovascular treatment:EVT)と神経外科治療(neurosurgical treatment:NST)がある。

EVTはコイルやフローダイバーターを、NSTはクリッピングを指す。

これらの治療には合併症のリスクが伴うため 未破裂脳動脈瘤の治療は破裂リスクと治療合併症のリスクとのバランスで決定される。

これら合併症のリスクを評価したメタアナリシスは2013年が最新で、当時はEVTが少なくNSTと区別して評価していなかった。

そこで、EVTとNSTをわけてそれら合併症率と致命率についてのメタアナリシスをあらためて試みたそうな。



2000 Jan.以降の関係する論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、



次のことがわかった。

・被験者106433、脳動脈瘤108263個を含む114の研究がみつかった。

・EVTの74の研究から、合併症率は4.96%、致命率は0.30% となった。

・EVTの合併症関連要因は、女性、糖尿病、高脂血症、ネックの広い動脈瘤、後方循環動脈瘤、ステント使用、だった。

・NSTの54の研究から、合併症率は8.34%、致命率は0.10% となった。

・NSTの合併症関連要因は、年齢、女性、抗凝固薬、喫煙、高血圧、糖尿病、後方循環動脈瘤、動脈瘤の石灰化、だった。

未破裂脳動脈瘤をコイルやクリップで治療するばあいの合併症率と致命率をそれぞれあきらかにすることができた、


というおはなし。

図:未破裂脳動脈瘤の治療 合併症と致命率



感想:

コイル致命率はクリップの3倍で、クリップは12人に1人が重い合併症を負うってこと。


ところで、
1999年のStroke誌に日本の研究が載っている。↓
Risk of subarachnoid hemorrhage after surgical treatment of unruptured cerebral aneurysms

未破裂脳動脈瘤をクリップ治療した100人以上を長期フォローした結果、くも膜下出血の発生率が20年間で12.4%あったという内容。

これは年率0.6%に相当して、未破裂脳動脈瘤の自然破裂率とほとんど変わらない。

つまり未破裂脳動脈瘤をクリップ治療したところでくも膜下出血が防げるわけでもなんでもなく、むしろ手術による合併症のリスクがあるぶん治療行為は「まったくの損」であると考えることもできる。

2019年9月1日

脳卒中経験者のツイッターを感情分析した


Stroke Survivors on Twitter- Sentiment and Topic Analysis From a Gender Perspective
2019  8月  スペイン
若年者の脳卒中が増えている、とくに低中所得国で。

彼らがツイッターでつぶやく言葉には意図せずとも感情があらわれていて、健康状態の反映とも考えられる。

いっぱんに女性の脳卒中経験者はQoLが低くうつ症状が重いという。

そこでツイッターの内容を分析して感情の偏りについて男女べつのちがいをくわしくしらべてみたそうな。



2007-2018の脳卒中に関係するツイートをすべて抽出して、投稿者にコンタクトをとり脳卒中経験者であることを確認した。

これらツイートのワードの感情的偏りを8つの基本感情(怒り、恐れ、期待、驚き、喜び、悲しみ、信頼、嫌悪)にもとずいて分類した。

解析に際し、プルチック(plutchik)モデルとヘドノメーター(hedonometer)を用いた。



次のことがわかった。

・全5257433ツイートのうち最近の15%である800424ツイートを解析した。

・このうち女性は244人で396898ツイート 男性は235人403526ツイートで、彼らが脳卒中経験者であることを確認した。

・ポジティブな感情(期待、信頼、喜び)の出現率はあきらかに女性で高く、

・ネガティブな感情(嫌悪、恐れ、悲しみ)の出現率は男性に高かった。

・構造的トピックモデル(structural topic modeling)解析による幸福度スコア(happiness score)はほとんどのトピックで女性が高レベルだった。

脳卒中経験者のツイートを解析したところ、女性は男性よりもポジティブな感情表現がおおく幸福度も高かった、


というおはなし。

図:ハピネススコア ツイッター


感想:

地道な活動が求められる医療分野にツイッターは向いていない。

自己顕示欲のつよいごく一部のひとたちの自慢会場になってしまっているので注意が必要だ。↓
脳外科医のつぶやきはフェイクニュース

2019年8月31日

半側空間無視を瞬時に正す方法


Impact of eliminating visual input on sitting posture and head position in a patient with spatial neglect following cerebral hemorrhage- a case report
2019  8月  アメリカ

半側空間無視は損傷脳半球と反対側への注意が極端にすくなくなる症状で、視覚症状について検査されることがおおい。

視覚以外の聴覚、触覚、深部感覚でも半側空間無視は観察される。

また、頭部や体幹、視線の偏りによっても半側空間無視を知ることができる。

これまで 視覚からのフィードバックを減らすことで半側空間無視の症状を軽くできたとする報告がいくつかある。

そこで実験的に半側空間無視の患者の両目を塞いだところ症状が即座に改善した事例があったそうな。



・右脳の基底核と前頭葉に出血をおこした53歳の女性がリハビリ入院してきた。

・左側の麻痺と、視線の右方への強い偏り および姿勢の右方へのきつい傾きをしめしリハビリの実行が困難だった。

・首の可動域は正常。コミュニケーションと認知機能に障害があり視覚検査ができなかったが日常生活の観察から「半側空間無視」と診断された。

・両目遮蔽(binocular occlusion)の直後、頭部位置および体重分布が自発的に左方へもどり、座位での臀部の接地対称性も改善した。

・両目遮蔽を取り除くと3分後には頭部、体重分布、臀部の右方への偏りが戻ってしまった。

・その後は、両目遮蔽をしているほうがリハビリに積極的に参加してくれた。

両目を塞ぐと一時的ではあるものの 半側空間無視患者の姿勢の対称性を瞬時に改善する効果があった、


というおはなし。

図:両目遮蔽と半側空間無視



感想:

作業記憶の低下により視覚刺激を処理しきれないため半側空間無視の症状がひどくなる説↓はただしい。
刺激密度が高いときの半側空間無視

2019年8月30日

Stroke誌:脳梗塞後の脳卒中類似症状の頻度と原因


Incidence and Etiologies of Stroke Mimics After Incident Stroke or Transient Ischemic Attack
2019  ノルウェー

脳卒中類似症状(stroke mimics)は脳虚血を原因としない神経症状で、脳卒中とのくべつがむつかしい。

また脳梗塞は再発のリスクが高い。

脳梗塞やTIAのあとの脳卒中類似症状の頻度とその特徴についての調査はまだないので再発の頻度や時系列パターンもふくめてくわしくしらべてみたそうな。



2007-2013 ノルウェーのハウケラン大学病院の脳梗塞とTIAの患者1872人について脳卒中類似症状と再発を5年前後フォローしたところ、



次のことがわかった。

・この間に339人で480回の脳卒中類似症状イベントが確認された。

・その頻度は年間1000人あたり58.7回で、再発の頻度34.0回を上回った。

・脳卒中類似症状と再発のリスクは初回脳卒中後1年間がもっとも高かった。

・脳卒中類似症状でもっともおおかった原因は、脳梗塞の後遺症(19.8%)、脳血管障害を疑わせる観察結果(15.6%)、感染症(14.0%)、けいれん発作(9.6%)、めまい(8.3%)、頭痛 片頭痛(7.7%)、失神(7.1%)だった。

・とくに上位2つの原因は初回脳卒中後の1ヶ月間に集中していた。

脳梗塞後の脳卒中類似症状の頻度は脳卒中の再発頻度よりも高かった。脳卒中類似症状には複数の原因がからんでいて、とくに初回脳卒中後はやい時期に集中していた、


というおはなし。
図:脳卒中類似症状と再発



感想:

初回脳卒中の直後はみなが異変に敏感になっているからなんでもないことをおおげさにあつかうのは仕方がない。
じつは脳卒中でなかった割合 in Japan

2019年8月29日

うつは脳梗塞の原因なのか


Major depression and small vessel stroke- a Mendelian randomization analysis
2019  8月  中国

うつは脳梗塞のリスク要因の1つとしてさいきん注目をあつめている。しかしその「因果関係」はよくわかっていない。

しかも うつの脳梗塞への影響をしらべたこれまでの研究のほとんどは脳梗塞の種類を考慮していない。

遺伝子研究によるとうつ関連のおおくの遺伝子リスクが小血管脳梗塞と関連することが示されている。

そこでうつが脳梗塞のとくに小血管脳梗塞の「原因」であることをたしかめるためにメンデルランダム化解析をこころみたそうな。



ゲノムワイド関連研究(GWAS)から大うつ病性障害(major depressive disorder:MDD)に関係する72の一塩基多型を変数として抽出した。

これらと MEGASTROKEコンソーシアムの34217の脳梗塞と406111のコントロールのデータとの関連について、メンデルランダム化解析の複数の手法をもちいてしらべた。



次のことがわかった。

・MDDの遺伝子リスクが高いと小血管脳梗塞のリスクも高かった。(オッズ比1.33)

・いっぽう主幹動脈梗塞や心原性梗塞のリスクに影響はなかった。(オッズ比1.08、0.98)

大うつ病性障害は小血管脳梗塞の「原因の1つ」である、


というおはなし。

図:メンデルランダム化解析 うつと脳梗塞



感想:

メンデルランダム化解析はランダム化に際し選択バイアスが入り込む余地がなく 他の関連要素の影響もうけにくいため因果関係をしらべるのに向いているという。

さいきんこれであきらかになったのが↓、、
ランセット誌:適量などない!酒は脳卒中のもと

2019年8月28日

運動しすぎ→心房細動→脳梗塞で死ぬ?Circulation誌


Long-Term Incidence of Atrial Fibrillation and Stroke Among Cross-Country Skiers- Cohort Study of Endurance-Trained Male and Female Athletes
2019  8月  スウェーデン

よくトレーニングを積んだアスリートは心房細動リスクが高いことがさいきんの研究であきらかになってきた。いっぽう低強度の運動は心房細動の予防効果があることから 心房細動と運動はU字型の関連にあると考えられる。

心房細動は脳梗塞のリスク要因の1つでもある。

高いレベルの持久力トレーニングを積んだアスリートの心房細動および脳卒中リスクについてはよくわかっていないので 男女別にくわしくしらべてみたそうな。



30-90キロのクロスカントリーレースを1つ以上こなしたスキーヤー208654人と、非スキーヤー527448人について、心房細動と脳卒中の発生をフォローしたところ、



つぎのようになった。

・女性の心房細動リスクはスキーヤーが低く、大会成績によらなかった。

・男性の心房細動リスクはスキーヤーと非スキーヤーで変わらなかったが、
大会成績優秀者に限定するとリスクが高かった。

・脳卒中リスクは男女ともにスキーヤーが低く、心房細動があるほうがリスクが高かった。

・心房細動がある場合、スキーヤーの脳卒中リスクは非スキーヤーにくらべ27%低く 死亡リスクも43%低かった。

クロスカントリースキーヤーの心房細動リスクは女性は低く、男性は大会成績優秀者でのみリスクが高かった。スキーヤーの脳卒中リスクは男女ともに低かったのでこれまでとおり「運動は脳卒中予防に良い」、


というおはなし。

図:アスリートの心房細動と脳卒中リスク



感想:

運動しすぎて脳梗塞になる心配はまずないってことか。
スポーツやってた脳卒中患者は再発しないのか?

2019年8月27日

血管性認知症を治す遠隔虚血コンディショニング


Remote ischemic conditioning improves cognition in patients with subcortical ischemic vascular dementia
2019  8月  中国

血管性認知症はアルツハイマー病に次ぐ認知症原因で15%を占める。そのうち皮質下血管性認知症(subcortical ischemic vascular dementia)はもっともおおくお墨付きの治療法はない。

期待される治療法として遠隔虚血コンディショニング(remote ischemic conditioning:RIC)がある。

RICでは たとえば脳から離れた位置の腕を一時的に虚血状態にすることで虚血からの保護効果を誘起しようとするものである。

そのメカニズムは複雑で 抗炎症性のさまざまな反応が絡み、結果として局所脳血流が改善すると考えられていて、脳卒中の再発予防への応用も報告されている。

そこで血管性認知症患者へRICを半年間ほどこしたときの効果を実験してみたそうな。



皮質下血管性認知症の患者37人ついて、RICグループ18人とコントロール19人にわけた。

RICでは両腕にカフを巻き200mmHgで圧迫して血流を止め開放するサイクルを1セット5回繰り返し、これを1日2セットx6ヶ月間継続した。

コントロールではカフの圧を60mmHgに設定し、血流が止まらないようにした。

その後の各種神経心理テストおよびC反応性タンパク質や白質病巣体積などを評価 比較したところ、



次のようになった。

・RICグループは、神経心理テストのHLVT-R,COWAT,TMT-A,TMT-B,JLOであきらかにすぐれたスコアを示した。

・コントロールでは6ヶ月間に改善はほとんどなくHVLT-R,TMT-Rにわずかな変化があったのみだった。

・とくに Judgment of Line Orientation (JLO)でRICグループがすぐれていた。

・C反応性タンパク質や白質病巣体積はRICグループで減少傾向にあった。

皮質下血管性認知症患者への6ヶ月間の遠隔虚血コンディショニングは認知機能の改善に安全で効果的と考えられた、


というおはなし。

図:


感想:

こんなにシンプルならやらない理由はないね。

さらに簡単な方法があって↓
ハンドグリップで脳梗塞が治るというエビデンス

2019年8月26日

脳梗塞治療に酪酸サプリメント


Transplantation of Fecal Microbiota Rich in Short Chain Fatty Acids and Butyric Acid Treat Cerebral Ischemic Stroke by Regulating Gut Microbiota
2019  8月  中国

アルツハイマー病やパーキンソン病、多発性硬化症などの神経疾患では胃腸症状をともなうことがおおいとする報告が増えている。

中枢神経系へのダメージが内分泌系や免疫系をとおして腸内細菌の多様性を壊すディスバイオシス(dysbiosis)を引き起こし、腸の透過性(permeability)を高め腸内物質が体内を移動しやすくなる。

この漏れやすくなった腸(Leaky gut)を修復できれば脳梗塞で損傷した血液脳関門にもベネフィットがあるかもしれない。

腸脳相関(gut-brain axis)により腸と脳には双方向コミュニケーションがあり、これを介するものの1つに短鎖脂肪酸がさいきん挙げられるようになった。

そこで腸内細菌叢を改善し短鎖脂肪酸をあたえることで脳梗塞に影響があるものか実験してみたそうな。



人為的に脳梗塞にしたネズミをつかっていろいろしらべたところ、



次のことがわかった。

・抗生物質で腸内細菌の多様性を減少させることで神経障害と梗塞体積がちいさくなり、浮腫がかるくなった。

・脳梗塞により腸内の短鎖脂肪酸レベルが低くなった。

・短鎖脂肪酸をおおく産生する健康なネズミの糞便の移植(FMT:fecal microbiota transplantation)でも神経障害と梗塞体積がちいさくなり、浮腫が解消した。

・数ある短鎖脂肪酸のうち酪酸(butyric acid)がおおいときにもっとも梗塞体積がちいさかった。

・酪酸サプリメントによりラクトバシラスが増え腸の透過性も改善された。

腸内細菌は脳梗塞の進行に関わっていた。短鎖脂肪酸を産生できる糞便を移植したり酪酸をサプリメントとして与えることは脳梗塞治療に効果的である、


というおはなし。

図:腸脳相関と治療法



感想:

腸内細菌ヤバい。

5ヶ月ほどまえにアイリスオーヤマのヨーグルトメーカー(3千円)を買って以来、まいにち0.5リットルほど食べ続けている。

始めてすぐにうんこが「完全無臭」になった。

そしてつい最近、10-40年間なやんできた複数の慢性病の症状がほとんど消えてしまった。
夢でもみているのか、、

脳卒中後の腸内細菌を長期観察

脳卒中になる腸内環境

脳卒中は腸内細菌に影響し うんこ移植で治る

2019年8月25日

Stroke誌:これ エビデンス?高強度歩行リハビリの


Contributions of Stepping Intensity and Variability to Mobility in Individuals Poststroke
2019  8月  アメリカ

脳卒中患者への高強度歩行訓練を、実生活を模した変化に富んだ環境でおこなった調査はすくない。

そこで歩行訓練の強度と状況変化も加えたときのリハビリ効果を実験してみたそうな。



18-85歳の慢性期脳卒中で片麻痺の患者90人を次の3つのグループにわけた。

1)心拍予備量の70-80%の高強度の、平らでない起伏や階段のある環境での歩行訓練。
2)心拍予備量の70-80%の高強度の、まっすぐ前に歩くだけの歩行訓練。
3)心拍予備量の30-40%の低強度の、ほどほどに路面変化のある環境での歩行訓練。

これを1回1時間、2ヶ月間で最大30セッション行い、効果を3ヶ月後までフォローした。

心拍予備量(heart rate reserve)=推定最大心拍数ー安静時心拍数=(208-0.7x年齢)-安静時心拍数
とした。



次のことがわかった。

・快適歩行速度(self selected velocity)と6分間歩行距離は低強度グループにくらべ高強度の2グループであきらかに高い改善をしめした。

・高強度グループの57-80%が臨床的に意義のある改善を示したが、低強度グループのそれは9-31%にすぎなかった。

・高強度グループでは動的バランス能力やバランスコンフィデンスの改善もみられた。

・重大な有害事象はおきなかった。

慢性期脳卒中患者への高強度歩行訓練は低強度訓練にくらべ歩行能力をおおきく改善した。彼らは甘やかさないで厳しく鍛えるべき、



というおはなし。

図:訓練強度と歩行改善度


感想:

心拍予備量の70-80%を発揮できるほどに すでに歩ける人物へ療法士をつけて歩行訓練させる意義とは?

ここでいう改善効果は実験環境に慣れただけのことにみえる わたしには。

たとえば足首のちからの入らなさや足の裏の感覚のなさをどうにかすることをこそ、目標にしてもらいたい。
Stroke誌:これ エビデンス? 早期リハビリの...

2019年8月24日

カイロプラティックで脳梗塞から閉じ込め症候群に


Locked-In Syndrome Following Cervical Manipulation by a Chiropractor- A Case Report
2019  8月  フランス

椎骨脳底動脈の閉塞は診断がむつかしく予後もわるい。

カイロプラティックがきっかけで椎骨脳底動脈が傷つき梗塞を生じ、閉じ込め症候群になった患者がいたそうな。


・34歳の女性がカイロプラティックにかかった。

・頚椎操作を受けたのち頸部の痛みが数週間つづいた。

・3週間後の早朝、顔の右側と右腕に麻痺を生じて病院に行った。

・CTや血液検査はすべて正常だったので帰宅させられた。

・帰宅直後に失語症と四肢麻痺となり救急入院した。

・MRIで椎骨脳底動脈系に梗塞を確認した。

・発症から31時間後に機械的血栓除去術がおこなわれた。

さらに1ヶ月後、切開された気管は閉じられ自発呼吸ができるようになった。頭部と四肢をわずかに動かすことができるものの依然ベッドからでることはできない状態である、


というおはなし。

図:カイロプラティック 椎骨脳底動脈梗塞



感想:

この報告 カイロプラティックが危険とは一言も書いてなくて、血栓除去術はうんと遅れても有効かもよという主旨。

カイロのこわさはくわしく言うまでもないということか。
カイロプラティックが原因の頸部動脈解離

[動画]カイロプラクティックに行って脳梗塞で死んでしまった若者にまつわるストーリー

カイロや整体院で首をボキボキッってやるやつ あれ脳卒中のもとかもよ

2019年8月23日

脳卒中後のけいれん発作の有病率


Mortality and trends in stroke patients with seizures- A contemporary nationwide analysis
2019  8月  アメリカ

60歳以上でけいれん発作(seizure)を経験した者の脳卒中リスクは3倍になるという。

いっぽうで脳卒中患者のけいれん発作はめずらしくなく 2-33%に見られ、予後との関連が強いとされている。

そこで脳卒中後のけいれん発作の有病率と死亡率についてさいきんのトレンドを大規模にしらべてみたそうな。



18歳以上のアメリカ人患者データベースから2006-2014の脳卒中6213772人ぶんの記録を解析したところ、



次のことがわかった。

・372967人(6%)で脳卒中後のけいれん発作の診断があった。

・けいれん発作の診断をうけた脳卒中患者の院内死亡率は29%高かった。

・けいれん発作の有病率は、脳出血で11.4%、脳梗塞では4.8% だった。

・2006→2014のけいれん発作の有病率は脳卒中全体では6.6→6.2%、脳出血12.6→12%、脳梗塞5.3→5%に低下していた。

・けいれん発作の有無ともに院内死亡率は低下傾向にあったが、けいれん発作がある患者の死亡率は高かった。

・また 脳出血だけは院内死亡率の低下はわずかで依然 高い状態が続いていた。

脳卒中で入院した患者の15人に1人にはけいれん発作がおきた。院内死亡率は低下傾向にあるものの脳出血患者では高いままだった、


というおはなし。

図:脳卒中とけいれん発作 死亡率トレンド



感想:

けいれん発作(seizure)はなにか原因がべつにあっておきる一時的な症状で、てんかん(epilepsy)は自発的におきるけいれん発作症状が慢性的に続いている状態をさす、

と理解している。

2019年8月22日

ミラー療法 3つの重要ポイント


How to perform mirror therapy after stroke- Evidence from a meta-analysis
2019  8月  ドイツ

ミラーセラピーが誕生して20年、この間に62のランダム化比較試験が行われ効果を肯定するおおくのエビデンスが蓄積された。

しかしミラーセラピーをもっとも効果的におこなうためのプロトコールについてはいまひとつはっきりしていない。

そこで、脳卒中患者への上肢ミラーセラピーについてのこれまでの研究をメタアナリシスして効果的なやり方をあきらかにしてみたそうな。



関係するこれまでの研究を厳選してデータを統合再解析した。

とくに いまだ考え方のおおきく異なる3つのテーマ、
1)ミラーのおおきさ?
2)麻痺手も訓練するべきか?
3)手を映すだけでオブジェクト操作をしなくてもいいのか?
についてしらべた。



次のことがわかった。

・コクランレビューされた51のランダム化比較試験からさらに32に絞り込んだ。

・おおきなミラーのときにより効果的だった。

・動かすのは麻痺のない手だけで、麻痺手は動かさないほうが効果的だった。

・手をミラーに映せばよく、カップを持たせるなどの行為はさせないほうが効果的だった。

・これらの差は統計学的有意というほどではなかった。

脳卒中の上肢ミラーセラピーでは、麻痺手はそのままに おおきなミラーに健常手のみを映してオブジェクト操作はしないことが より効果的と考えられた、


というおはなし。

図:ミラーセラピー3つのポイント



感想:

麻痺手をうごかすことなく、イメージをふくらませるためにミラーを用いる。まさに↓。
エビデンスレベルⅠ 推奨度Aの脳卒中リハビリ法とは

2019年8月21日

Stroke誌:脳卒中の医療過誤訴訟


Systematic Review of Malpractice Litigation in the Diagnosis and Treatment of Acute Stroke
2019  8月  アメリカ

ガイドラインで定められた医療をうけることができなかったと患者が考える場合、医療過誤(medical malpractice)を主張することができる。

おおくの州では医療過誤訴訟の賠償上限を定めていないため その額は数百万ドルにおよぶ可能性がある。

手術を主とする医師の99%は65歳までになんらかの医療過誤訴訟に遭うという。

そこで、脳卒中での医療過誤訴訟の関連要因をくわしくしらべてみたそうな。



3つの法律データベースからアメリカでの急性脳卒中患者のケアに関する訴訟判決及び示談ケースを抽出して解析したところ、



次のことがわかった。

・脳梗塞の246ケースと頭蓋内出血の26のケースがみつかった。

・71ケースはtPA治療 不履行の申し立てで、

・7ケースが血栓除去術に関するものだった。

・全体の56%は棄却、27%は示談、17%が原告勝訴だった。

・賠償金額は、示談での平均は180万ドル(2億円)で、勝訴の場合は970万ドル(10億円)だった。

急性脳卒中ケアの医療過誤訴訟はとてもおおきな財政問題になりうる。おおくはtPA治療に関するもので、今後は血栓除去術についても訴訟増加が予想される、


というおはなし。

図:医療過誤訴訟 原告医師の種類


感想:

マスコミに流す情報と現実が乖離しているから不満が生じ訴えられる。

tPAの適応は実は数%にすぎなくて 血栓除去術は熟練医師でもかなりあぶないといった情報はテレビでは流れない。


ところで
脳ドックと称してなんの症状もない健康な人をたいした根拠もなく患者に仕立て上げ、危険な検査や治療行為をくりかえす。
こういうのは法的にいいの?

2019年8月20日

Stroke誌:女性のQoLが低い理由


Sex Differences in Long-Term Quality of Life Among Survivors After Stroke in the INSTRUCT
2019  8月  オーストラリア

これまでの研究で女性脳卒中患者の健康関連の生活の質(HRQoL)が男性にくらべ低いことがわかっている。

しかしその理由については、多くの研究で選択バイアスがつよいためあきらかになっていない。

そこで ことなる国の住民ベースの研究をくみあわせて性別によるHRQoLの差の原因をくわしくしらべてみたそうな。



イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの4つの研究から脳卒中患者4288人のデータについて、

各研究が個別に使用したQoL評価の以下3つの指標からHRQoLを計算しなおした。
European Quality of Life-5 Dimensions
Short-Form 6-Dimension
Assessment of Quality of Life

また、1年後 5年後も比較した。



次のことがわかった。

・女性のHRQoLは男性にくらべてあきらかに低かった。

・年齢、脳卒中の重症度、発症前の自立度、脳卒中後のうつで調整すると この男女差はやや小さくなった。

・とくに5年後よりも1年後での差が縮まった。

脳卒中後の女性の健康関連QoLは男性よりも低かった。この差は「部分的には」女性の発症年齢の高さ、重症度、自立度、うつが理由と考えられた、


というおはなし。

図:女性脳卒中の健康関連生活の質



感想:

とはいうものの 年齢の影響はほんのちょっとみたいなんだ。

2019年8月19日

拡大レンズリハビリの持続効果


Increasing perceived hand size improves motor performance in individuals with stroke- a home-based training study
2019  7月  アメリカ

手元をレンズ拡大して観察する状況下では運動誘発電位が高まり対応する運動野の活動領域も拡がり、また触覚の2点弁別能も向上するという報告がある。

前回の実験では拡大鏡を装着させただけの慢性期脳卒中患者25人のうち8人で握力や指の機能に改善がみられた。

こんかい、この8人について自宅での2週間の訓練と、さらに2週間後の改善度をしらべてみたそうな。



1日30分間の拡大鏡下での手の機能訓練を2週間おこない、その効果を2週間後までフォローしたところ、



次のようになった。

・2人はわけあって脱落し、6人が訓練を完遂した。

・6人中5人でテスト項目すべてで改善を示した。

・このうちの2人は訓練直後にあきらかな改善をしめし、

・別の2人は2週間後に有意な改善がみられた。

・いくつかの項目で2週間後のほうが良いスコアを示した患者が4人いた。

拡大鏡下での脳卒中患者の上肢訓練は期待できるかも、、


というおはなし。

図:拡大鏡リハビリ 脳卒中患者



感想:

この方法もそうだけど、ミラー療法、イメージ訓練、動作観察いずれも 麻痺して意識にのぼりにくくなっている手に「注意をあつめる」ための方法なんだよな。

だから麻痺側の指にリボンを巻いてもいいし、カッコいい手袋や高級腕時計をはめてもいいとおもう。龍の入れ墨でもしたらちからが湧いてきそう。

ハズ○ルーペで上肢機能が改善する可能性について

2019年8月18日

抗血小板薬をやめてから脳梗塞になるまでの日数


Stroke and transient ischemic attacks related to antiplatelet or warfarin interruption
2019  8月  ブラジル

抗血栓療法を受けている患者はなんらかの手術や侵襲性の高い検査のまえに服薬をとめるよう要請されることがままある。

その後すぐに再開できればよいのだが忘れてしまったり副作用を理由に勝手にやめたままにしているケースがある。

そこで抗血栓療法の一時停止とつづく脳卒中イベントの頻度と時間的関連についてくわしくしらべてみたそうな。



脳梗塞またはTIAの患者3年間ぶんの記録360ケースについて、
抗血栓療法の一時停止歴の有無とその時期をしらべ関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・患者360人中27人(7.5%)に抗血小板薬またはビタミンK拮抗剤(抗凝固薬)の停止歴があった。(内訳は脳梗塞が81% TIAが19%)

・抗血小板薬をとめてから虚血イベントまでの日数の中央値は5日で、それら患者の62%は服薬停止から7日以内に虚血イベントがおきた。

・ビタミンK拮抗剤をとめてから虚血イベントまでの平均日数は10.4日で、67%は服薬停止から7-14日に虚血イベントがおきた。

・服薬を一時停止した理由のトップは「不注意」で37%、次いで「手術や検査」が26%、「出血などの副作用」は18.5%だった。

抗血栓薬の一時停止とつづく脳梗塞やTIAとの間に時間的関連がみられた。医療者はこれらリスクへの患者の理解をうながしヘパリン代替法なども考慮すべきなのかも、、


というおはなし。

図:抗血栓薬を止めた理由



感想:

とつぜん薬をやめるとリバウンド効果があってとくに1週間前後のあいだに血栓ができやすくなるんだって。
だから永久にやめたいときには服薬間隔を開けるなりして徐々にへらせばいいんじゃないかな。

抗凝固薬の中断から脳梗塞になるまでの日数

抜歯まえはワルファリンとめるべき→いまや迷信

2019年8月17日

くも膜下出血患者が死に至るほんとうの理由


Why do poor grade subarachnoid hemorrhage patients die?
2019  8月  オランダ

重症くも膜下出血は致命率がとても高い。しかし患者が死去(demise)したほんとうの理由についてはじつはよく知られていない。

これをオランダとカナダの患者データからくわしくしらべてみたそうな。



アムステルダムとトロントの3次救急センターの重症(WFNSがⅣ-Ⅴ相当)くも膜下出血患者357人の記録を分析したところ、



次のことがわかった。

・152人(全体の43%)が院内で亡くなった。このうちの87人(全体の24%)は脳動脈瘤手術をしていなかった。

・出血から死亡までの日数の中央値は3日だった。

・両センターともに死亡理由の1位は 「生命維持中止:withdrawal of life support」で、死亡患者の71%を占めていた。これはアムステルダムでは死亡患者の79%、トロントでは58%に相当した。

・次いで「脳死:brain death」が死亡患者の15%を占め、アムステルダムでは死亡患者の17%、トロントでは12%に相当した。

重症くも膜下出血患者が死亡に至るいちばんおおきな直接的理由は「生命維持中止の決定」だった。その決定がどのようになされたかについては文化的、医学的にさまざまな背景が考えられる、



というおはなし。

図:延命中止



感想:

手術が無駄とおもえるほどに どうみても回復しそうにない患者をはやめに見極めて家族に引導を渡すお仕事があるんだろうね。

急いで病院にゆく習慣ができるまえはこのような患者はすぐに亡くなり突然死に分類されていた。
だからくも膜下出血の発生率は実は10倍以上 という日本の調査結果↓がある。
Incidence and prognosis of subarachnoid hemorrhage in a Japanese rural community

2019年8月16日

くも膜下出血で復職できない者の特徴


Return to work after subarachnoid hemorrhage- The influence of cognitive deficits
2019  8月  オランダ

くも膜下出血患者のうち数年たっても復職できなかった者の割合はおよそ3分の2におよぶという報告がある。

これら患者の特徴をしらべたこれまでの調査では復職を阻む共通の要因をみいだすことができていない。

とくに認知障害と復職の関連についての調査はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。



職に就いていてくも膜下出血になった71人の患者について、
2-8ヶ月に神経心理テストとアンケートを行い、
1年以降長期に復職の有無を電話で確認した。

神経心理テストは、
記憶:Rey Auditory Verbal Learning Test
情報処理スピード:Trai lMaking Test
注意と実行機能:Zoo Map test、TMTpartB、Stroop Color Word Test
社会認知:Facial Expression of Emotion-Stimuli and Test
をおこない、

実行機能障害アンケート:Dysexecutive Questionnaire
を加えた。

復職状況との関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・復職できなかった者(35.2%)は「注意と実行機能」のスコアがあきらかに低かった。

・さらに、脳脊髄液ドレナージ有りと実行機能障害アンケート高値がのちの復職不可と強く関連していた。

くも膜下出血を経験した者のうち復職できなかったケースには神経心理テストの「注意と実行機能」にあきらかな低下がみられた、


というおはなし。

図:くも膜下出血の復職


感想:

1/3はもとどおりに復職している(上表)。あたまいじられてこれは立派。

くも膜下出血のあと 復職できない理由

2019年8月15日

Stroke誌:不安障害は若年者におおい


Younger Age and Depressive Symptoms Predict High Risk of Generalized Anxiety After Stroke and Transient Ischemic Attack
2019  8月  カナダ

脳卒中後の不安(anxiety)はめずらしくなく10-29%にみられ10年続くこともあるという。

全般性不安障害(generalized anxiety)の一般人との割合比較は 27% versus 8% という報告もある。

関連する要因として脳卒中の重症度、認知障害、うつ症状、年齢などが考えられる。

とくに若年者についての調査がすくないのでこのあたりをくわしくしらべてみたそうな。



脳卒中またはTIAの患者258人について、

全般性不安障害は Generalized Anxiety Disorder 7-item (GAD-7)scale で、
うつ症状を Center for Epidemiological Studies Depression (CES-D)Scale でしらべ、関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・GAD-7スコア10以上の全般性不安障害の割合は22%だった。

・若年とうつ症状が全般性不安障害の予測因子だった。

・うつと全般性不安障害を兼ねている者の割合は、30% versus 12%で50歳以下におおかった。

・うつ症状のない患者であっても年齢が全般性不安障害と関連していた。
脳卒中やTIA患者の5人に1人が全般性不安障害で、うつ症状と年齢が関連していた。うつと不安をともに訴える者が若年者におおかった、


というおはなし。

図:脳卒中後不安頻度 若年vs高齢



感想:

全般性不安障害の条件↓3つ以上当てはまる者。
図:全般性不安障害の条件

疲れやすい、ふらつき、集中できない、なんて日常だからな、、、おれは不安なのか?

2019年8月14日

Neurology誌:軽症なのに障害が残る理由


Disability after minor stroke and TIA
A secondary analysis of the SOCRATES trial

2019  8月  アメリカ

軽症の脳卒中患者は特別なことをしなくても予後が良いと考えられているため 血栓溶解療法(tPA)の治療対象から通常は外される。

いっぽうで軽症脳卒中患者のおよそ3分の1が日常生活になんらかの障害を抱えるという報告がいくつもある。

さいきん報告された軽症脳梗塞患者へのtPA治療の効果をしらべたPRISMS研究では、軽症患者へのtPAはベネフィット無しと結論された。

血栓溶解療法は最初の脳梗塞には有効であるが続いて再発や合併症があったばあいにはその限りではない。

そこで軽症脳卒中で障害が残る理由をたしかめるべく、SOCRATES研究のデータをもちいてくわしくしらべてみたそうな。



発症から24時間以内のTIA患者2384人および軽症(NIHSS 5以下)でtPA治療をしない脳卒中患者3663人について、

90日後の生活自立度mRSスコアと、再発や合併症(脳卒中の再発や心筋梗塞、重大出血、有害事象)の有無をしらべ関連を解析したところ、



次のようになった。

・軽症脳卒中の19%、TIAの5%の患者でなんらかの障害(mRS2以上)が残った。

・NIHSSスコアおよび「再発や合併症」と障害度に強い関連があった。

・TIAで障害が残った者のうち65%、軽症脳卒中で障害が残った者のうち39%が 再発や合併症を経験していた。

・障害度はNIHSSスコアに比例していた。

・とくに手や脚に麻痺があった者の のちの障害可能性は高かった。
軽症脳卒中やTIAのあとの再発や合併症が障害とつよく関連していた。たとえNIHSSスコアは小さくとも のちの障害度と比例しており予測因子として使えそうである、


というおはなし。

図:NIHSS mRS 軽度脳卒中



感想:

再発や合併症が障害の原因とおもわれるのに、それがベースラインNIHSSと比例する(上図)とはこれ如何に?

とおもったけど、どうやら再発合併症と手脚麻痺のようなスペシャルな神経症状メカニズムとのあわせ技でそのようにみえるようだ。

2019年8月13日

脳梗塞の「回復」に適したLDLコレステロール値


Association Between Low-Density Lipoprotein Cholesterol (LDL-C) Level and Unfavorable Outcomes in Participants of Ischemic Stroke without Diabetes: A Multi-Center Retrospective Study
2019  8月  中国

脳梗塞になるリスク要因として心臓病や高血圧 脂質異常などがあげられる。

LDLコレステロールと脳梗塞の発生との関連についてはさいきん概ねあきらかになった。

いっぽうLDLコレステロールと脳梗塞からの「回復」についての調査はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。



2015-2016に 8病院での急性脳梗塞でかつ糖尿病でない患者1614人についての記録から、6ヶ月後の回復不良(mRSスコア3-6)と入院時のLDLコレステロールとの関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・6ヶ月後、23.3%の患者が回復不良だった。

・LDLコレステロールが93mg/dL以下のグループにくらべ、114-137mg/dLの範囲(少ない方から四分位の3番目)にあるグループの回復不良リスクがあきらかに低かった。

・再発および初回患者ともにLDLコレステロールが高めだった患者ほど予後不良はすくなかった。

脳梗塞で入院時のLDLコレステロールが高めで 114-137mg/dLの範囲にあった患者は6ヶ月後の回復不良リスクがもっとも低かった


というおはなし。

図:



感想:

LDLコレステロールは脳内出血予防のはなしがおおかった。

回復の良し悪しではこのあたり↓。
LDLコレステロールが高い脳内出血患者の末路

脳梗塞に効くコレステロール比 TC/HDLとは

悪玉善玉比 L/Hが低いと脳内出血で死ぬことが明らかに

2019年8月12日

エビデンスレベルⅠ 推奨度Aの脳卒中リハビリ法とは


Motor imagery as a complementary technique for functional recovery after stroke- a systematic review
2019  7月  スペイン

脳卒中後のリハビリのおおくは特定動作を繰り返させるやり方にもとずいている。しかし重い麻痺をかかえている患者にとってこのような方法はほとんど意味をなさない。

その点、運動イメージ訓練(Motor Imagery:MI)は実際の動作をともなうことなく頭のなかだけで訓練が完結するので重度麻痺にも適している。

運動イメージ訓練により運動野から小脳 大脳基底核が活性化し機能の再構築がすすむという。

運動イメージ訓練には2種類あって、1つは暗示的(Implicit)MIとよばれ、他人の動作やビデオを見てミラーニューロンシステムを介するもの。

もう1つは明示的(Explicit)MIと呼ばれ、意識的 自発的にイメージ動作を構築するものである。

そこでこれまでの研究について脳卒中患者への運動イメージ訓練の効果のシステマティックレビューをこころみたそうな。



関係する論文を、2007-2017に出版されたものに限って厳選した。



次のことがわかった。

・13のランダム化比較試験がみつかった。

・方法論的 研究の質を CriticalReview Form-Quantitative Studiesで評価したところ、15点中9-13点に相当した。

・エビデンスレベルと推奨度を U.S. Preventive Services Task Force (USPSTF) assessment で評価したところ、最高レベルの IA 、II-B1 に相当した。

・とくに上肢機能、バランス、歩行機能であきらかな改善がみられていた。

運動イメージ訓練を通常のリハビリに加えると脳卒中患者の機能回復に効果的である、


というおはなし。

図:運動イメージ訓練のエビデンスレベル


感想:

数あるリハビリ法のなかでもっとも成果をあげているのが運動イメージ訓練なんよ(イメージトレーニング、メンタルプラクティス、メンタルリハーサルともいう)。
Stroke誌:上肢リハビリ 良い方法 & ダメな方法

2019年8月11日

脳卒中予防に適した総コレステロール値


Intra-individual variability of total cholesterol is associated with cardiovascular disease mortality- A cohort study
2019  7月  中国

血中のコレステロール値が高いと動脈硬化リスクも高まると考えられている。

いっぽう総コレステロール値と死亡率が逆相関またはU字関係にあるとする報告もある。

そこで中国人12万人の調査記録をつかってコレステロールと死亡リスクとの関連をしらべてみたそうな。



中国で40歳以上の住民122645人を3-5年ほどフォローして脳卒中など心血管疾患やがんでの死亡をしらべた。

この間の血中コレステロール値とその個人内変動との関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・4563人の死亡があり、うち788人は脳卒中だった。

・総コレステロール値と各疾患(脳卒中や心血管疾患、がん)の死亡リスクはU字曲線の関係にあり、

・とくに脳卒中は総コレステロール値が4.96mmol/L(192mg/dL相当)のとき死亡リスクが最低だった。

・服薬しなかったりで測定ごとの総コレステロール値の変動がおおきかった者の心血管疾患死亡リスクは変動が小さい者よりも40%ほど高かった。

総コレステロール値は低すぎても高すぎても脳卒中での死亡リスクがは高かった。また測定ごとの変動がおおきくても死亡リスクが高かった、


というおはなし。

図:総コレステロールと脳卒中死亡リスク



感想:

「総コレステロール値」でこれ↓おもいだした。
脳卒中で死なない最適なコレステロール値が判明

LDLならこれ↓。
脳内出血にならないLDLコレステロール値

2019年8月10日

Stroke誌:頭蓋内動脈が狭窄している日本人の割合


Intracranial Artery Stenosis and Its Association With Conventional Risk Factors in a General Population of Japanese Men
2019  7月  日本
頭蓋内動脈の狭窄(Intracranial Artery Stenosis:ICAS)のおおくは症状がない。

東アジア人は欧米人にくらべ冠動脈疾患よりも脳卒中になりやすいことから ICASは注目されるべきと考えられる。

そこで、一般の日本人についてICASの有病率をくわしくしらべてみたそうな。



平均年齢68、脳卒中歴のない740人についてMRIをつかって頭蓋内動脈を検査したところ、



次のことがわかった。

・狭窄度50%未満のICASは全体の20.7%、狭窄度50%以上の重度ICASは4.5%いた。

・重度ICASは年齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症と関連がつよかった。

日本人高齢者のおよそ4人に1人に頭蓋内動脈で狭窄がみられた、


というおはなし。

図:頭蓋内血管狭窄



感想:

歳とると動脈が蛇行しがち→曲がった血管のMRAは細く映る→狭窄症が大量生産される、

というイメージが浮かんだ。

2019年8月9日

日本人の再発予防に適した血圧 JAMA Neurol.


Effect of Standard vs Intensive Blood Pressure Control on the Risk of Recurrent Stroke- A Randomized Clinical Trial and Meta-analysis
2019  8月  日本

2015年のSPRINT研究によると脳卒中の1次予防に適した収縮期血圧の目標値は140mmHgよりも120mmHgが適しているとされた。

この研究では脳卒中歴のある患者が除かれていたため2次予防に適した血圧目標値はあきらかにならなかった。

いっぽう、被験者3632人をふくむ最近の3つのランダム化比較試験では目標血圧が低いほうが脳卒中の再発予防に良さそうであることが示されている。

そこで日本人を対象にした脳卒中の再発研究 Recurrent Stroke Prevention Clinical Outcome:RESPECTスタディ にて目標血圧を120/80に設定する効果を検証してみたそうな。



日本の140の病院の脳卒中経験者1263人について血圧目標値を、

140/90 の通常グループ630人と、
120/80 の集中降圧グループ633人にわけた。

脳卒中の再発を4年ほどフォローしたところ、



次のことがわかった。

・この間の血圧の平均値は、通常グループ133.2/77.7、集中降圧グループ126.7/77.4 だった。

・年間再発率は、通常グループ 2.26%、集中降圧グループ 1.65%だったが有意な差ではなかった。

・そこでこのデータを直近の3つのRCTとあわせてメタアナリシスしたところ、相対リスク0.78倍の有意な差が得られた。

従来よりも低い降圧目標のほうが再発予防に適しているようにみえた。メタアナリシスでは130/80を下回ることが望ましいと考えられた、



というおはなし。

図:RESPECT スタディ



感想:

当初、ディオバンって降圧薬をだされて収縮期血圧が80まで下がって膝からくずれおちたことがある。

そんなこともあって降圧薬は2015年にきっぱりとやめた。

SPRINTこれ↓。
NEJM誌:脳卒中で死なない血圧は120未満だからね

2019年8月8日

Stroke誌:「指鼻試験」でうしろの梗塞を知る


Educating Paramedics on the Finger-to-Nose Test Improves Recognition of Posterior Stroke
2019  8月  アメリカ

脳梗塞の治療は時間とのたたかいではあるが後方循環系(小脳など)の脳梗塞のばあい片側麻痺の症状はでにくく めまいやバランスの崩れといった症状があらわれる。

そのため後方循環系脳梗塞は誤診されやすく治療も遅れがちになる。

また、かれらのおおくは上肢の運動失調をおこしやすく、
指鼻試験(finger-to-nose examination:←Youtube動画にリンク)
を普通にこなすことができないという。

そこで救急隊員に指鼻試験の方法をおしえて患者の入院前に後方循環系脳梗塞の有無を判定させてみたそうな。



救急隊員に指鼻試験を教育した施設と、教育しなかった施設(コントロール)とで
後方循環系脳梗塞の判定率と
病院到着からCTを撮るまでの時間、
血栓溶解療法の適用率、をくらべたところ、



次のようになった。

・21ヶ月間に777人の脳梗塞があり、18%が後方循環系だった。

・後方循環系の判定率は、指鼻試験ありで46→74%、コントロール32→39%に向上した。

・CTまでの時間は指鼻試験グループが62→41分、コントロール58→61分になった。

・血栓溶解療法の適用率にグループ間で差はなかった。
救急隊員への指鼻試験の教育で後方循環系脳梗塞の判定率が向上し、CTを撮るまでの時間が大幅に短縮された、


というおはなし。

図:指鼻テスト



感想:

後方循環系はそもそも血栓溶解療法が必要なケースが少ないんだって。

2019年8月7日

Neurology誌:早期リハビリ 気休めにもならない


Early mobilization and quality of life after stroke- Findings from AVERT
2019  7月  オーストラリア

早期リハビリテーションが脳卒中患者の生活の質にあたえる影響を、
2006-2015に56施設で国際的に行われたランダム化比較試験 A Very Early Rehabilitation Trial (AVERT) のデータをつかってくわしくしらべてみたそうな。



平均年齢70.6、2104人の脳卒中患者を
通常ケアのみと、
通常ケア+24時間以内にベッドから出る訓練を始める、
の2グループにわけた。

生活の質は、4つのドメイン(自立生活、社会関係、身体機能、精神状態)について評価する assessment of Quality of Life 4D (AQoL-4D) をもちいて12ヶ月後をしらべた。

AQoL-4Dスコアは、0は死亡 1が完全に健康、を指す。



次のようになった。

・12ヶ月後のAQoL-4Dスコアの中央値は0.49 vs. 0.47でグループ間で有意な差はなかった。

・ドメインごとにみても同様に違いはなかった。

早期リハビリテーションは脳卒中患者の生活の質に影響しなかった、


というおはなし。

図:AVERTのQoL


感想:

軽症な人が早くから動き回っていただけのことを訓練成果と勘違いしてうまれた「早期リハビリ」。

この数年でようやくおかしいことに気づいた模様↓。
コクランレビュー:超早期リハビリは効果ないし危ない

【やはり】亜急性期のリハビリは効果ないうえに危険

失語症の早期リハビリ まったく効果ない

超早期リハビリをやってはいけない理由

nature.com:脳卒中の超早期リハビリ やる意味ない

Stroke誌:早期リハビリがんばる意味ない

超早期リハビリで死亡者続出 AVERT続報

超早期リハビリには脳の細胞死を促す効果があった!

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない

2019年8月6日

Stroke誌:親の心房細動は子にうつる


Parental Atrial Fibrillation and Stroke or Atrial Fibrillation in Young Adults
2019  7月  カナダ

脳卒中の4分の1は原因が不明である。そのおおくは心房細動によるものと考えられている。

なぜなら心房細動はほとんど症状がなく、脳卒中になってはじめてそれに気づくことがおおいからである。

心房細動のリスク要因として高齢、高血圧、心不全、肥満、糖尿などがあるがこれらで正確な予測はできない。

いっぽう心房細動の家族歴についての調査ではサンプル数がすくなく一致した見解が得られていない。

そこで、心房細動歴のある親をもつ子が脳卒中や心房細動になるリスクを大規模にしらべてみたそうな。



カナダ マニトバ州の住民を1972-2016に平均17年間フォローした記録を解析したところ、



次のことがわかった。

・582195人の親と、18歳以上325333人の子のデータがみつかった。

・心房細動歴のある親をもつ子の5.2%が脳卒中/TIAになった。心房細動歴のない親の子ではその率は2.5%だった。

・子の心房細動率は、親の心房細動歴ありでは1.9%、なしでは0.3%だった。

・親に心房細動歴があると、子の脳卒中や心房細動リスクがあきらかに高かった。

親の心房細動歴は子の心房細動リスクの上昇と関連し 脳卒中にもなりやすかった、


というおはなし。

図:親の心房細動と子の脳卒中リスク



感想:

心房細動は遺伝するってことか。
みつかっていない心房細動患者の割合は

「心房細動?なにそれ」率日本一は○○県民

2019年8月5日

ツボ足三里の運動野へのはたらき


Effect of acupuncture at ST36 on motor cortical excitation and inhibition
2019  7月  中国

鍼は伝統中国医学の1つで、鍼刺激の対象になる体の位置(経穴、ツボ)は300箇所以上にのぼる。

そのなかでもST36(足三里)は特に重要で、脳卒中や高血圧、疼痛の治療に用いられている。

通常、鍼の効果は 得気(Deqi)とよばれる独特の統合感覚(sore, numb, full, heavy, dull)として認識される。

そこでST36への反応を 運動誘発電位の点からくわしくしらべてみたそうな。



20人の健常者について、
ST36を刺激 もしくは 少しはずれた位置を(偽)刺激するケースにわけて、

鍼刺激→12分後(鍼除去)→20分後、までフォローして、

得気スコア、
TMSによる運動誘発電位、
短 長潜時皮質内抑制 を測定した。



次のようになった。

・すべての被験者でST36刺激時に得気スコアが高かった。

・運動誘発電位はST36刺激中にあきらかに高く、鍼を抜くと元にもどった。

・得気スコアは運動誘発電位と相関関係にあった。

・短 長潜時皮質内抑制はST36刺激時に高値をしめした。

ST36への鍼刺激は運動野の興奮性を高めた。得気は運動誘発電位に相関し、運動野内の興奮調節機構への影響も確認できた、


というおはなし。

図:足三里の運動皮質刺激効果



感想:

「得気」これ↓。
鍼治療の「得気」は小脳のはたらきだった

2019年8月4日

Stroke誌:脳動脈瘤形成に血圧は関係ない


Risk Factors for Unruptured Intracranial Aneurysms and Subarachnoid Hemorrhage in a Prospective Population-Based Study
2019  8月  ノルウェー
未破裂の脳動脈瘤は人口の2-3%にみられ、MRIの普及にともない発見される数は増加傾向にあるという。

これまでの未破裂脳動脈瘤の研究のおおくは くも膜下出血などの病気の診断後に偶然みつかったケースをフォローしたものが主で、一般人をフォローした研究は1つしかない。

そこで一般人について大規模に未破裂脳動脈瘤のリスク要因をしらべてみたそうな。



ノルウェーの成人89951を15年間フォローしたデータを解析したところ、



次のことがわかった。

・未破裂脳動脈瘤患者の発生率は年間10万人あたり8.2人で、年率10%の増加傾向にあった。

・そのリスク要因は、現在喫煙>女性、の順で関連が強かったが、収縮期血圧との関連はみられなかった。

・いっぽう くも膜下出血の発生率は9.9人でそのリスク要因は、現在喫煙>女性>血圧、の順に関連が強かった。

一般人を対象とした大規模調査の結果、収縮期血圧は未破裂脳動脈瘤の形成要因ではなかった。しかしくも膜下出血については収縮期血圧も強く関連していた


というおはなし。

図:収縮期血圧と未破裂脳動脈瘤リスク


感想:

血流の機械的なちからが瘤の原因ではないとすると、、↓
脳動脈瘤は歯周病のせい

Hypertension誌:脳動脈瘤は腸内細菌のせい

2019年8月3日

動作観察リハビリにリアルな手は必要か?


Is it necessary to show virtual limbs in action observation neurorehabilitation systems?
2019  7月  スペイン

ミラーニューロンシステムは前頭葉と頭頂葉にまたがって存在し、運動を実行する際のみならず動作を観察したばあいにも活性化する。

動作の観察がミラーニューロンシステムを介して運動の実行にリンクすることから神経リハビリテーションの場、とくに実際の運動ができない脳卒中患者への応用が期待されている。

動作観察リハビリテーションでは通常、バーチャルな手の動作を観察することが求められている。

しかしほんとうにバーチャルな手を見せることが必要であるかについては確認できていないので、実験してみたそうな。



14人の健常者について、
バーチャルリアリティシステムをもちいてキャンセレーションタスク(5つの物体から任意の1つを指し示す)を実行させた。

その際に、バーチャルな手を表示するもしくはドットのみを表示する場合にわけて脳の働きをfMRIで観察して比較したところ、



次のことがわかった。

・バーチャルな手の表示の有無にかかわらず、ミラーニューロンシステムの活性化パターンにあきらかな違いがみいだせなかった。

動作観察リハビリテーションにかならずしもバーチャルな手の表示は必要なかった、


というおはなし。

図:ミラーニューロンシステム



感想:

ようするにイメージのなかで動作とむすびつきさえすればイイってこと。

40年以上まえのテレビゲームは棒と点しか表示できなかったけど、テニスやサーキット走行、エイリアンから地球を守る戦いまで すさまじい臨場感で体験できていた。

そういうことだとおもう。

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