2019年12月7日

Neurology誌:不眠症の3症状と脳卒中 50万人調査


Insomnia symptoms and risk of cardiovascular diseases among 0.5 million adults
2019  11月  中国

不眠症は睡眠の質が低下した状態でメンタルの病気とされる。中国では15-69歳の35.7%が睡眠の質に問題を抱えているという。

不眠症と脳卒中など心血管疾患との関連を示すエビデンスが増えてきた。

不眠症の3つの症状、
入眠と睡眠維持の困難(difficulties in initiating or maintaining sleep:DIMS)
異常な早起き(early morning awakening:EMA)
日中への障害(daytime dysfunction:DDF)、

は それぞれ別の病理的メカニズムを反映している可能性があるので、症状ごとの心血管疾患リスクを大規模にしらべてみたそうな。



カドーリバイオバンク 30-79歳の487200人を2016年まで10年前後フォローした記録を解析したところ、



次のことがわかった。

・この間に130032の心血管疾患がおきた。

・全体の11.3%がDIMS, 10.4%がEMA, 2.2%がDDFを訴えていた。

・不眠症の3つの各症状はいずれも心血管疾患リスクの上昇と関連があり、

・とくに脳卒中全体ではリスク1.05倍、脳梗塞では1.06倍になり、

・脳出血とのあきらかな関連はみられなかった。

・これらの関連は50歳未満の若年者と高血圧でない者につよかった。
不眠症のなんらかの症状をもつ者の脳卒中など心血管疾患リスクは高く、とくに若年で高血圧症になっていない者で関連がつよかった、


というおはなし。

図:不眠症状と脳卒中リスク



感想:

寝不足だと脳が血を吹きそうな感覚になるけど脳出血とは関係ないのか。

2019年12月6日

飽和脂肪酸と脳卒中リスクの用量関係


Dietary saturated fat intake and risk of stroke- Systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies
2019  10月  中国

脳卒中で死亡する原因の43%は食事の問題であるとする報告がある。

とくに脂肪の影響はおおきいと考えられ、脂肪酸の種類とその構成比率が重要である。

飽和脂肪酸は肉、チーズ、バター、全脂肪乳に、
不飽和脂肪酸はオリーブ油、亜麻仁油、魚油、くるみ、ピーナッツにおおく含まれる。

現在の食事ガイドラインでは心血管疾患予防の観点から飽和脂肪酸の摂取を全カロリーの10%未満に抑えるよう指導している。

しかしこれまでの研究のおおくは飽和脂肪酸と脳卒中との関連について一致した結論がえられていない。

これをたしかめるべく最新の研究をふくめたメタアナリシスを試みたそうな。



飽和脂肪酸と脳卒中に関する研究論文を厳選してデータを統合 再解析した。
とくに用量関係をしらべた。



次のことがわかった。

・被験者598435人をふくむ14の研究がみつかり、そのうち12が用量関係のメタアナリシスに適していた。

・飽和脂肪酸をおおく摂ると ほとんど摂らないばあいにくらべ脳卒中リスクが0.87倍だった。

・飽和脂肪酸を摂る量が1日10グラム増えるごとに脳卒中リスクは0.94倍になった。


飽和脂肪酸をおおく摂るほど脳卒中リスクは低かった。摂る量が1日10グラム増えるごとに脳卒中リスクは6%低下した。食事ガイドラインを見直したほうがいい、


というおはなし。
図:飽和脂肪酸の摂取量と脳卒中リスク



感想:

こういう知識があると肉の脂身のうまさがきわだつ。
日本人は動物性脂肪をガッツリ摂ると脳卒中予防

ランセット誌:糖質で死亡、動物性脂肪は脳卒中予防

飽和脂肪酸は脳卒中予防になるの?

【ラクナ梗塞予防】日本人は飽和脂肪酸をたくさん摂るべし

2019年12月5日

くも膜下出血の頭痛と生存率


Warning headache correlates survival rate in aneurysmal subarachnoid hemorrhage
2019  10月  台湾

くも膜下出血のグレード判定方法にはいくつかある(Hunt and Hessscale, Fisher scale, WFNS)。たとえグレードがわるくても積極治療により半数ちかくが回復良好に至るという報告もある。

突然の強い頭痛や激しい嘔吐、局所神経症状、けいれん発作などはくも膜下出血の警告症状とされているが、これらと予後との関係はあきらかになっていない。

そこでくも膜下出血の警告症状と死亡率、その関連要因についてくわしくしらべてみたそうな。



2011-2013の脳動脈瘤破裂のくも膜下出血患者90人の記録について、

警告症状と死亡率との関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・警告症状である、頭痛、嘔吐、Hunt and Hess スケール、Fisher スケール、WFNS スケール、BMI,水頭症などは生存者と死亡者であきらかな違いがあった。

・とくに頭痛とWFNSスケールは死亡率につよく関連していた。頭痛があるケースのWFNSのグレードは低く、死亡率が低かった。

・頭痛症状を予後推定に加えるとその予測精度は90.4%から94.6%に向上した。

くも膜下出血の予後を推し量るさいには頭痛の有無を考慮にいれたほうがいい、


というおはなし。

図:くも膜下出血 頭痛 死亡率



感想:

頭痛には出血発症の数日から数週間まえにおきる「センチネル頭痛」があってこんかいこれも含むという。

ちなみに発症から入院までの時間は、頭痛あり336分、頭痛なし183分で早期入院と死亡率の関連はなかったと書いてある。

つまり、頭痛があったから早期治療ができて死亡率が低いのではなく 亡くなってしまうような重症なひとは頭痛を訴えるまもなく意識がとんでしまっただけ、ということのようだ。

上の表にあるようにくも膜下出血では症状のほとんどが頭痛だけのため 患者のおおくを占める軽症者は緊急性を感じず病院へゆかない。

意識を失うような超重症の患者のみが救急車で運ばれるから、くも膜下出血はまれでとても死亡率がたかい危険な病気だとおもわれている。

実際は10倍以上の高頻度で起きているめずらしくもない病気である。↓
Incidence and prognosis of subarachnoid hemorrhage in a Japanese rural community.

2019年12月4日

【祝】365日x10年間 連続更新

今日は脳卒中記念日で ブログを始めた日でありETの日でもある。
毎年この日は自分語りにだけつかう。


ブログ歴がまる10年(脳卒中歴は11年)になった。
この間一瞬だった。

たまに読み返すと書いた記憶がほとんどない記事がいくつもあっておどろく。
認知症の前段階だろうか。


キーワード「脳卒中」をアブストラクトに含む論文の出版ペースがこの10年で倍になり、さいきんでは1日50件以上がチェック対象になった。

なんの評価基準にも乗らないどうでもいいことを ただ「自分がそうしたい」という理由だけで続けてこられてちょっとうれしい。

とはいうものの あと4年は続かない自信がある。その理由とは、、、
図:脳卒中記念日

2019年12月3日

情報処理速度の低下 4年後の


Slowed Information Processing Speed at Four Years Poststroke- Evidence and Predictors from a Population-Based Follow-up Study
2019  11月  ニュージーランド

認知障害は脳卒中経験者の35-70%におきる。そのなかでも情報処理速度( Information Processing Speed:IPS)の低下は急性期患者の70%におよぶという。

IPSの低下は認知障害の他の側面にもおおきく影響し、数字モダリティー検査(Symbol Digit Modalities Test:SDMT)のスコアによく反映されると考えられている。

IPSの低下をもたらす要因と長期の有病率についての調査はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。



平均年齢71、発症後4年時点の脳卒中経験者133人についてSDMTをおこないIPSを評価した。



次のようになった。

・51%でSDMTスコアのあきらかな低下がみられた。

・年齢と教育歴を調整後、4年時点でのIPSの低下の関連要因は、75歳以上、脳卒中歴、高コレステロール、高血圧、冠動脈疾患、不整脈、だった。

脳卒中のあと4年の時点でさえ情報処理速度の低下は約半数に見られ、血管リスク要因が強く関連していた、


というおはなし。

図:情報処理速度 脳卒中 要因


感想:

クロック周波数の低いパソコンを強制使用させられる状況がたとえになるかも。文章を打つぶんには支障はないけど、リアルタイムの高度な画像処理には向いていない。

だから頭の衰えをもっとも実感するのは自動車運転シーン。

2019年12月2日

認知or運動の機能障害 神経科医が選ぶシナリオは


Self-perceptions on cognitive versus motor disability among neurologists
2019  11月  アメリカ

修正ランキンスケール(modified Rankin Scale:mRS)は脳卒中患者の機能回復度の評価によく用いられる。

0-6のスケールがあって、0は無症状、6は死亡をあらわす。
通常、0-2または0-3を「回復良好」とし4-6を「回復不良」と評価する。

たとえば介助なし歩行ができず 認知機能に問題ない場合、mRSは4の回復不良となる。

いっぽう運動機能にはまったく問題なくて 認知障害のために会社をクビになった場合でも、mRSは2となり回復良好とされる。

神経科医が患者に治療法をすすめる際には、臨床試験の結果から「回復良好」となりうる手段をえらぶことになるが、かれらが認知機能と運動機能のどちらに価値を見出しているのかによってはその意味するところがかならずしも患者と一致しなくなる。

そこで神経科医たちの価値観をしらべてみたそうな。



神経科医45人にメールでアンケートをおこなった。

自分なら次のどちらのシナリオを好むかを尋ねた。

a.認知機能上は正常で仕事にも支障がない。しかし車椅子が必要で一人では身の回りのことをすべてこなすことができない。(mRS4相当)

b.介助なしで自由に動き回ることができる。しかし認知障害があって医師を続けることができない。(mRS2相当)



次のようになった。

・神経科医の69%は30-45歳、24%は45-60歳だった。

・45人中44人が車椅子のシナリオ(mRS4)をQoL的に好ましいと判断した。

98%の神経科医は運動機能よりも認知機能に人生の価値をおいていて、mRSの評価に逆行する選択をした、


というおはなし。

図:神経科医への質問


感想:

さいきんQoL評価をする報告をよく目にするのはこんな背景があるのかもしれんね。

2019年12月1日

小児脳卒中と「心の理論」


Pediatric Stroke Impairs Theory of Mind Performance
2019  11月  アメリカ

小児期に脳卒中を経験した者の50-60%は長期にわたり運動 認知 行動に問題を抱えるという。

しかしこれまで社会認知(social cognition)機能についての研究はほとんどなかった。

心の理論(Theory of Mind:ToM)は他者の信念や意志を推し量り関係を構築する能力を指し社会認知機能の1側面をなす。

自閉症スペクトラムや外傷性脳損傷、ADHD、認知症でToMの障害がみられるとする報告がある。

そこで小児脳卒中経験者のToMについて健常者とくらべてみたそうな。



小児脳卒中経験者10人と年齢の一致する健常者10について、

2種のToM計測(Conative、Affective)と、
安静時fMRIをつかってネットワーク結合性を比較したところ、



次のことがわかった。

・健常者にくらべ脳卒中を経験したこどものToM成績はわるかった。

・安静時fMRIのネットワーク結合性検査では中央実行系であきらかな強化がおき、左右の下頭頂小葉では低下していた。

・安静時の脳活動とToMパフォーマンスにあきらかな関連はなかった。

小児期の脳卒中は「心の理論」能力の低下につながっていた。脳卒中により社会認知に関係する脳内ネットワークの結合性に変化が生じたのかも、、


というおはなし。

図:小児脳卒中のネットワークコネクティビティ



感想:

大人なら正常なころの記憶をもとに「不適切」な行動を反省することができるけど、子供はそれがむつかしいだろな。

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