2018年7月31日

主観的認知機能障害と社会参加とうつ


The role of subjective cognitive complaints and depressive symptoms in social re-integration following stroke: a mediation explanation in a cross-sectional sample
2018  7月  オーストラリア
軽症脳卒中経験者の70%は仕事や社会生活になんらかの不満を抱えているという。

そこで認知障害の前段階でもある主観的認知機能障害と社会参加との関連およびそれを媒介する要因についてしらべてみたそうな。


発症後6ヶ月以上経ち自宅に退院できた脳卒中経験者102人について、

主観的認知機能障害(Subjective cognitive complaints)アンケート、
社会参加(Community Integration Questionnaire)アンケート、
うつ不安尺度(Depression Anxiety and Stress Scale)をしらべ
関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・主観的認知機能障害はありふれていて、とくに58.9%が作業記憶について、53%が情報処理スピードについて不満を感じていた。

・主観的認知機能障害と社会参加にはあきらかな相関があり、

・うつ症状が両者を媒介していることがわかった。

主観的認知機能障害は脳卒中経験者にはよくあることで、社会参加を妨げる直接の原因になっていた。さらにこれらの関係をうつ症状が媒介していた


というおはなし。

図:媒介分析 脳卒中の主観的認知機能不満と社会参加

感想:

見た目の障害はないのに 物忘れしやすい 頭がまわらない、「こんなはずじゃなかった」と落ち込み 引きこもる。

どこかバブル景気をなつかしむのに似ている。

2018年7月30日

手の周りには意識が集中している 脳卒中患者では?


Time-dependent decline of body-specific attention to the paretic limb in chronic stroke patients
2018  7月  日本

手のひらに近い位置ではつづく握り動作にそなえて注意力が高まっていて、この付近からの視覚刺激への反応が遠い位置からよりも速くなる現象が報告されている。

これをつかって脳卒中患者の麻痺側への注意力の低下を定量化できれば学習性不使用や空間無視の理解につながるかもしれないので実験してみたそうな。


慢性期脳卒中で片麻痺の患者21人と健常者18人について、麻痺手と視覚刺激の位置をそれぞれ変えて、その位置関係と視覚刺激への反応速度の違い(body facilitation effect)を測定した。


次のことがわかった。

・健常者では手に近い視覚刺激への反応があきらかに速かった。

・脳卒中患者では麻痺手の左右にかかわらず、反応速度の差はひじょうに小さかった。

・脳卒中患者の手指の運動機能が低く発症からの時間がながいほど この反応速度の差は小さかった。

慢性期の脳卒中患者では手に近い位置での視覚刺激にすばやく反応する効果が弱く しかも時間とともに低下していた、


というおはなし。
図:体促進効果の実験

感想:

おそらくこれは二重課題トラップとでも呼べるもので、
深部感覚の単体検査では腕の位置を正確に答えられても、視覚反応検査を重ねられると 弱い腕の感覚が優先度の低いものとして意識からはじき出されてしまうためにこういった結果になる と考える、経験的に。

2018年7月29日

コクランレビュー:歩数計を着ける効果


Activity monitors for increasing physical activity in adult stroke survivors
2018  7月  オーストラリア
脳卒中経験者は再発予防と機能回復を促すために運動をこころがけることが望ましい。しかし現実はじっと座っている時間が長い。

じぶんの活動量をフィードバックすることで日々の行動をあらため運動量が増えるとする考え方がある。

そこで、歩数計(Fitbit、ガーミンウォッチ)やスマートフォンアプリ(Runkeeperなど)のような活動量を計るウェアラブルデバイスが脳卒中経験者の運動量に与える効果についてこれまでの研究をまとめてみたそうな。


関連する過去の研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者245人を含む4つのランダム化比較試験がみつかった。

・そのうち3つは入院患者について、もう1つは大学の実験室での調査だった。

・これら4つの研究は設定や評価方法がおおきくことなるため統合評価が困難だった。

・歩数や運動量をフィードバックするウェアラブルデバイスの装着によって患者の身体活動レベル(歩数や活発に動く時間)は上がらなかった。

・有害事象はなかった。

歩数計などの装着が脳卒中患者の身体活動レベルを上げるというエビデンスは確認できなかった、


というおはなし。
図:ガーミンウォッチ


感想:

ポケモンGoをつかって研究をやり直してもらいたい。
歩数計アプリとポケモンGoでは歩くモチベーションの大きさが桁違い。2桁はちがう。

2018年7月28日

起立性低血圧の認知症と脳梗塞


Association of orthostatic hypotension with incident dementia, stroke, and cognitive decline
2018  7月  アメリカ

アメリカでは高齢者の14%が認知症で 22%が認知障害という。
認知機能の低下は高血圧などの心血管疾患要因が関連することがわかっている。

いっぽう起立性の低血圧はめまいや疲労感のもとであり 心血管疾患との関連も報告されている。しかし起立性低血圧と認知機能の低下についての研究はほとんどないので大規模にしらべてみたそうな。


1987年の健常者11709人を24年間フォローしたARIC研究のデータを使用した。

起立性低血圧は、仰向け時と立位での血圧の差が、収縮期で20mmHgまたは拡張期で10mmHgを超える場合と定義した。

認知症検査、脳梗塞の有無、認知機能の経時変化との関連を解析したところ、


次のようになった。

・4.7%が起立性低血圧だった。

・起立性低血圧には 65% vs 37%で高血圧がおおかった。

・1068人が認知症になり842人が脳梗塞になった。

・起立性低血圧の認知症のなりやすさは1.54倍で、脳梗塞は2.08倍だった。

・また認知機能低下スピードもおおきかった。

起立性低血圧はのちの認知症や脳梗塞とあきらかな関連があった、


というおはなし。
図:起立性低血圧と脳卒中


感想:

高血圧なのに立ち上がるだけで血圧が下がるひとはボケる。ということは高血圧で降圧薬を飲む人もまた あたまに血が巡らずにボケる。

そんな予感がして降圧薬は3年前にきっぱりとやめた。

2018年7月27日

脳卒中の前庭リハビリテーション


Vestibular rehabilitation training in patients with subacute stroke: A preliminary randomized controlled tria
2018  7月  イタリア

内耳からくる平衡感覚をきたえる前庭リハビリテーションは視線の安定性やバランス能力を改善するとされ、パーキンソン病や多発性硬化症、脳性まひへの効果が報告されている。

前庭リハビリテーションの脳卒中患者への応用は、前庭動眼反射の改善についての報告があるものの歩行バランスについての研究はないので実験してみたそうな。


亜急性期の脳卒中患者25人にを2グループにわけ、
いっぽうに4週間の前庭リハビリテーションを行った。

前庭リハビリテーションでは、静止物をみつめながら顔を1分間かけて横に振る。さらに1分間かけて上下に振る。これを計10分間。

次にアイマスクを着けてその場で1分間足踏みをする。90度方向をかえて1分間その場足踏み。180度、270度についても行い計4分間おこなう。


次のようになった。

・前庭リハビリテーショングループで歩行スピードと歩幅があきらかにおおきくのびた。

・体幹安定性にはグループ間で差はなかった。

・その後12ヶ月のあいだの転倒件数は前庭グループで1件、比較グループで2件だった。

脳卒中患者の歩行とバランス能力の改善に前庭リハビリテーション訓練を取り入れるとよいかも、、


というおはなし。
図:脳卒中の前庭リハビリテーション


感想:

前庭感覚のもとになっているセンサーが内耳の三半規管や蝸牛。これにはとても関心があって、これ↓10数年まえの動画作品。

2018年7月26日

くも膜下手術70人未満の病院には行ってはいけない


Hospital case-volume is associated with case-fatality after aneurysmal subarachnoid hemorrhage
2018  7月  オランダ

年間に扱う脳卒中患者数がおおい病院ほど死亡率が低いという報告はすくなくない。

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血についても同様の報告があるいっぽう 否定する報告もある。

これを確認するべく多施設間で大規模に検証してみたそうな。


ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアにある計22の三次医療センターについて、
くも膜下出血でクリッピングまたはコイリングを行った年間の患者数ごとに次の3つに分類した。

Low:年間41件未満、 Intermediate:41-70件、 High:70件より大、

これと14日後の死亡率との関連を解析したところ、


次のようになった。

・2263人がLowで、3563人がIntermediate、2599人がHighの病院で治療をうけた。

・14日後の死亡率は、Low病院で10.4%、Intermediate病院で7.0%、High病院で5.4%だった。

・クリッピングの場合Low病院とくらべたときの死亡リスクはIntemediate病院で0.46倍、High病院で0.42倍、

・コイリングではIntermediate病院で0.77倍、High病院で0.56倍だった。
いずれも規模のおおきな三次医療センターであったが、年間のくも膜下出血の手術件数がおおいほど死亡率は著しく下がった、


というおはなし。
図:年間手術数と14日くも膜下出血死亡率

感想:

ようするに設備や病院としての専門性のもんだいではなくて、ただただ場数を踏んだ医師個人の「慣れ」におおきく依存しているってこと。

だからこれらは「安全な手術」では決してない。

さらにはその必要性すらうたがわしい。
理由↓

1) 再出血予防のクリッピング手術のRCTは存在しない。(by ガイドライン

2) 入院が遅れるほど死亡率は劇的に下がる。

3) もっとも再出血しやすい24時間以内の手術にまったく効果がない。

2018年7月25日

ラクナ梗塞の機能回復は1年後もつづく


Late functional improvement after lacunar stroke: a population-based study
2018  7月  イギリス

ラクナ梗塞は他の脳卒中にくらべ脳の損傷範囲がちいさいため 低下した機能を可塑性により代替できる皮質組織はおおきいと考えられる。

じっさい、ラクナ梗塞では回復が長く続くとする報告がないわけではないのでくわしくしらべてみたそうな。


3ヶ月時点で生存していた脳卒中患者1425人について、
12ヶ月後まで複数の機能評価基準
modified Rankinscale (mRs), Rivermead MobilityIndex (RMI), Barthel Index (BI)
でフォローしたところ、


次のことがわかった。

・234人がラクナ梗塞で、3ヶ月時点での機能評価で非ラクナ梗塞グループと差はなかった。

・しかし3-12ヶ月後までの機能回復度(mRSの減分)はラクナ梗塞グループであきらかに高かった(オッズ比1.64)。

・この関連は再発患者を除いても、他の評価基準 RMIやBIでも変わらなかった。

ラクナ梗塞の患者には3-12ヶ月にかけてあきらかな機能回復を示す大きな可能性がある。かんたんに回復をあきらめてはいけない、


というおはなし。

図:ラクナ梗塞の3-12ヶ月の機能回復

感想:

ラクナ梗塞って軽い脳卒中の代表の印象。だから彼らが後遺症を語ることについては少々はばかれる空気がある。
それでいままであきらかにならなかったんだろうね。

2018年7月24日

ウェッブサイトの脳卒中情報の質


Trustworthiness, Readability, and Suitability of Web-Based Information for Stroke Prevention and Self-Management for Korean Americans: Critical Evaluation
2018  7月  アメリカ

脳卒中経験者にとってウェッブサイトは健康情報の重要な入手先である。

とくに韓国系アメリカ人は脳卒中関連のリスク要因がおおく しかも健康保険に属していない場合がおおいことから、彼らにとってウェッブサイトへの依存度はなお一層高い。

そこでこれらウェッブサイトの内容をくわしく評価してみたそうな。


必ずしも英語が堪能でない韓国系アメリカ人が検索しそうな英語と韓国語のシンプルなキーワードについてGoogleとYahooの検索結果の1-2ページに表示されたウェッブサイトを抽出して、

その信頼性、可読性、適合性について複数人がリッカード尺度(良=2、可=1、不可=0)で評価した。


次のようになった。

・15の英語サイトと27の韓国語サイトに絞られた。

・そのうち信頼性では62%が可以上となった。

・しかし48%は1年以上更新されておらず、33%は発信者が不明か連絡がつかず、

・さらに50%のサイトでは健康情報の引用元を明示していなかった。

・読みやすさについては2つのサイトのみが推奨レベルに達していた。

・用語、内容、図表の使用、健康行動への動機づけなどの適合性については1サイトのみが良だった。

脳卒中に関する情報を扱うウェッブサイトはおおむね信頼できるものだったが情報の引用元をあきらかにするなどの改善が必要だった。また読者に高度な読解力を要求するものも少なくなかった、


というおはなし。

図:脳卒中情報サイトの評価


感想:

ネットはいいね。10年前なら大学に属していなければアクセスできないような情報にいまや居ながらにして触れられるのだから。

2018年7月23日

コクランレビュー:ミラーセラピーの効果は?


Mirror therapy for improving motor function after stroke
2018  7月  ドイツ

脳卒中患者のミラーセラピーは 手足のあいだに立てかけた鏡に映る健常側の動きを正常動作と錯覚させることで脳を刺激して運動や感覚、疼痛、視野の改善を期待するものである。

ミラーセラピーがほんとうに運動や日常生活動作、疼痛、半側空間無視の改善になるものなのかこれまでの研究をまとめてみたそうな。


関連する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者1982人を含む62(うち57はランダム化比較試験)の研究がみつかった。

・ミラーセラピーの施行条件は平均すると1回30分間x週5回x4週間 だった。

・ミラーセラピーでは上下肢の運動機能と日常生活動作が改善し、慢性期でも効果があった。

・疼痛緩和にも効果があったがおもに複合性局所疼痛症候群の場合だった。

・半側空間無視への効果は確認できなかった。

・運動機能への効果は6ヶ月持続するものもあった。

・有害事象の報告はなかった。

脳卒中患者へのミラーセラピーでは運動機能と日常生活動作の改善に中レベルのエビデンスがあった。しかし疼痛や半側空間無視緩和のエビデンスレベルは低かった、


というおはなし。
図:ミラーセラピー脳卒中

感想:

ミラーセラピーは問題を直接解決しようとするものではなくて、治ったと勘違いさせることが発想のベースになっている。

例えると「プラシーボ効果」にも似ているんだけど、最初っから偽の訓練であることを公言している点がちがう。

たとえ偽物であっても確信的だと 一周回って「本物」扱いされる良い例なのではないか、、と思うんだ。

2018年7月22日

嚥下障害への鍼治療の効果


Acupuncture Treatment for Post-Stroke Dysphagia: An Update Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
2018  7月  中国

嚥下障害は脳卒中患者の45-65%にみられるという。治療法として磁気刺激や電気刺激、飲み込み訓練、呼息筋トレーニングなどがあるがいずれも効果は小さく一時的である。

いっぽう中国では鍼治療は脳卒中後の神経症状の緩和によく用いられている。嚥下障害にも効果が期待できることから、これまでの研究をまとめてメタアナリシスしてみたそうな。


関連する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・患者2190人を含む29のランダム化比較試験がみつかった。これらはいずれも臨床試験基準である CONSORT および STRICTA で中グレードとみなされていた。

・鍼治療以外の方法とくらべたときの効果の強さは1.33倍と高かった。

・電気鍼の有無、刺激時間、セッション回数については研究ごとにばらばらだった。

・重度な有害事象の報告はなかった。

脳卒中で嚥下障害の患者への鍼治療は、通常のリハビリや薬物治療にくらべ効果的かつ安全だった。より高質な研究が望まれる、


というおはなし。
図:脳卒中の嚥下障害の鍼治療効果

感想:

中国発の研究は さいきん質と量でアメリカに次ぐようになったとかんじている。

けれど鍼治療にかぎっては共産党の情報統制をうけているとしか思えないほどポジティブな結果ばかりが目につく。

2018年7月21日

脳幹梗塞のデフォルト・モード・ネットワーク


Decreased functional connectivity within the default-mode network in acute brainstem ischemic stroke
2018  7月  中国

脳幹部の梗塞患者には認知障害がおおいと言われている。

いっぽうMRIで安静時の脳画像を時系列的に撮影したときに0.1ヘルツ未満の信号強度変化が観測される。この信号変化と脳の各部位との関係性の一部をデフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ぶ。これまでDMNの結合性低下と認知障害との関連がいくつも報告されている。

そこで、脳幹梗塞患者のDMNと関連要因についてしらべてみたそうな。


急性脳幹梗塞の患者21人と健常者25人について安静時MRI撮影を行い、independent component analysis (ICA)でDMNを検出した。

DMNの機能結合性と臨床パラメータとの関連を解析したところ、


次のようになった。

・脳幹梗塞患者では右内側前頭前皮質および右楔前部の機能結合性が低下していた。

・脳幹梗塞患者でのこの機能結合性の低下は 高ホモシステインレベルとあきらかな関連をしめしていた。

脳幹梗塞でのデフォルトモードネットワークの機能結合性の低下はホモシステインレベルの上昇と関連していた。これは脳幹梗塞と認知障害についての神経病理的プロセスを反映しているのかも、、


というおはなし。
図:脳幹梗塞のデフォルト・モード・ネットワーク

感想:

なにも考えずに寝ているだけの脳活動から 「ボケ」がわかっちゃうのがDMN。

[デフォルトモードネットワーク]の関連記事

2018年7月20日

復職から7-8年後の感想


Experiences of returning to work and maintaining work 7 to 8 years after a stroke: a qualitative interview study in Sweden
2018  7月  スウェーデン

脳卒中後の復職に影響する要因については これまでおおくの研究がなされてきた。しかし復職から長く仕事をつづけてきた者の経験談をまとめたものは少ないのでしらべてみたそうな。


スウェーデンのヨーテポリ大学病院に2009-2010に脳卒中で入院しその後復職を果たした82人について面談調査を試みたところ、


次のようになった。

・女性5人、男性8人で調査を完了できた。

・全員が復職への強い意志をもち、障害をもちながらも徐々に適応していった。

・障害により失った機能を嘆く気持ちと、ふたたび働ける喜びが入り混じっていた。

・復職後7-8年たったのちもほとんどが後遺症によるなんらかの制限を経験していた。

・疲労や認知機能障害により仕事を減らしたり休憩しなければならない状況がうまれ、自由時間はいつもぐったりとしていた。

・症状の悪化と再発のおそれから仕事上のストレスをできるだけ避けるようになった。

・仕事を続けるうえで上司や同僚の理解とサポートはなくてはならないものだった。

脳卒中からの復職後、仕事の継続は疲労や認知障害といった目に見えない問題とのたたかいである。ながく続けるには周囲の理解とサポートを得ることが必要、


というおはなし。
図:脳卒中から復職後のなやみ

感想:

上の表みると、集中力、マルチタスク、情報処理、疲労、頭痛、めまい、半身に力が入らない、ってところが解決しない問題なんだよね。

2018年7月19日

閉じ込め症候群に運動させる効果


Effect of Exercise on Physical Recovery of People with Locked-In Syndrome after Stroke: What Do We Know from the Current Evidence? A Systematic Review
2018  7月  中国

閉じ込め症候群は脳幹部の梗塞や出血によっておこることがおおい。

閉じ込め症候群には3つのタイプ、
1)クラシカル型:身体は動かないが垂直眼球運動とまばたきができる状態
2)不完全型:いくつかの自発的な動きができるまで回復した状態
3)完全型:身体も眼球もまったく動かない状態、
がある。

彼らは動かないことにより筋肉の委縮、関節の拘縮化、心肺障害などの合併症をおこしやすい。

そこで彼らに「運動させる」ことの効果をこれまでの報告からまとめてみたそうな。


関連する研究論文を厳選してデータを解析したところ、


次のことがわかった。

・35の事例を含む5つの論文がみつかった。

・このうち26例については身体パフォーマンスになんらかの改善がみられ、9例ではなんの変化もなかった。

・運動の種類や方法は論文ごとにことなり、全例で複数の方法をミックスしたリハビリが行われていた。

・評価方法もそれぞれ異なっていた。

脳卒中で閉じ込め症候群の患者への運動の効果はおおむねポジティブであった。複数の運動方法がミックスされていた。しかしその効果はあきらかではなく、有害事象はなかったものの事例報告ばかりでエビデンスレベルは低かった、


というおはなし。
図:脳卒中で閉じ込め症候群の運動リハビリ

感想:

閉じ込め症候群では意識は清明、それを表現する手段がほとんどないだけで感覚も正常という。

だからうごかない身体を動かすのはリハビリというよりはメンタルヘルス的に重要とおもう。

2018年7月18日

突発性難聴と脳梗塞


Sudden Sensorineural Hearing Loss Predicts Ischemic Stroke: a Longitudinal Follow-Up Study
2018  7月  韓国

突発性難聴患者の脳卒中リスクをくわしくしらべてみたそうな。


韓国の国民健康保険データベースから突発性難聴の患者4944人と性別、年齢、収入、居住地などのいっちする一般の19776人を抽出し、脳出血、脳梗塞、高血圧などの病歴をフォローしたところ、


次のことがわかった。

・脳梗塞は突発性難聴の4.2%、一般人の3.5%にみられ、

・このとき突発性難聴の脳梗塞リスクは1.22倍だった。

・50歳以上に限定するとそのリスクは1.40倍になった。

・脳出血は突発性難聴の0.7%、一般人の0.6%にみられ あきらかなリスク上昇はなかった。

突発性難聴だと脳梗塞リスクが高かった。特に高齢になるとハイリスクになった。脳出血リスクとは関連がなかった、


というおはなし。
図:突発性難聴

感想:

さいきん突発性難聴の脳梗塞が身近なところにいておどろいた。

[突発性難聴]の関連記事

2018年7月17日

動作観察刺激と優位脳半球の関係


Laterality of Poststroke Cortical Motor Activity during Action Observation Is Related to Hemispheric Dominance
2018  5月  アメリカ

脳卒中の脳機能イメージングの研究により、損傷脳半球の活動レベルの向上が機能の回復に重要であることがわかってきた。

しかし優位脳半球との関連についてはよくわかっていない。

そこで、動作観察刺激を与えたときの左右脳半球の活動をしらべ優位脳半球と活動の側方性との関連をしらべてみたそうな。


右利きで左脳半球が優位の脳卒中患者で

右脳損傷の12人と
左脳損傷の12人について、
健常者12人とを比較した。

動作観察刺激として左右それぞれの手をつかった動作ビデオを見せたときのfMRIを撮影し、左右脳半球の活動ボクセル数から側方性(laterality index)を求め関連を解析した。


次のことがわかった。

・右脳損傷のとき優位脳半球である左脳の活動が右脳よりもずっとおおきかった。

・この左脳優位状態は、左脳損傷の脳卒中でも同様であり健常者のそれと異なっていた。

動作観察刺激では脳卒中患者の脳活動は損傷脳側よりも優位脳側に偏っていた、


というおはなし。

図:側方性と左右脳損傷 動作観察

感想:

いまいちよくわからない。
左手の動作をみせても左脳にかたよる部位のある不思議ってことか。

2018年7月16日

感覚障害も比例回復則するの?


Is There Full or Proportional Somatosensory Recovery in the Upper Limb After Stroke? Investigating Behavioral Outcome and Neural Correlates
2018  7月  ベルギー

近年、脳卒中で麻痺した上肢の運動機能は リハビリの有無にかかわらずその機能低下ぶんの70%が数ヶ月内に自発的に回復することが確認され、比例回復則(proportional recovery rule)と呼ばれている。

しかし皮質脊髄路の健全性に問題がある患者では このルールに則らない(nonFitter)ことがあると考えられている。

今回、上肢の体性感覚機能についても比例回復則があてはまるものかくわしくしらべてみたそうな。


32人の脳卒中患者について発症から4日、7日、6ヶ月後の感覚機能をEm-NSA(Erasmus MC modification of the revised Nottingham Sensory Assessment)で評価した。

Em-NSAでは、体性感覚機能を
1)感覚の有無
2)シャープさや鈍さを受動的に識別する能力(パッシブ処理)
3)感覚を統合して立体物を能動的に識別する能力(アクティブ処理)
にわけて評価した。

また、MRIを使って視床-皮質、島-弁蓋路の病変量を測定し関連を解析したところ、


次のようになった。

・上肢運動機能には比例回復則がみられ、nonFitterグループも確認できた。

・上肢の体性感覚は6ヶ月後にはほぼ全員が回復していた。

・パッシブおよびアクティブ感覚処理には比例回復則が確認でき、それぞれ86%、69%が自発的に回復した。

・4,7日時点で感覚障害のあった患者には視床-皮質、島-弁蓋路の病変量がおおきかった。

今回のサンプルでは全員がはやくに体性感覚を取り戻したが、パッシブおよびアクティブ感覚処理の回復は比例回復則にしたがっていた、


というおはなし。
図:比例回復則 上肢の運動機能と体性感覚

感想:

たしかに今も左腕の感覚は弱いものの、まったくの「ゼロ」だった期間は短く数週間だったよ。

[比例回復則 "proportional recovery rule"]の関連記事

2018年7月15日

片麻痺が速くターンできる方向は


Effect of turning direction on Timed Up and Go test results in stroke patients
2018  7月  韓国

脳卒中で片麻痺の患者では 歩行中の方向転換動作で転倒リスクが高くなる。

タイムアップアンドゴー(TUG)テストは方向転換動作をふくむため歩行能力にくわえバランス能力の評価にも用いられている。

そこで方向転換の際に麻痺している側と健常な側のどちらに廻り込むのがたやすいのか、TUGテストでしらべてみたそうな。


脳卒中で片麻痺の患者113人について、

TUGテストを行い方向転換時の廻り込む方向べつにタイムを測定した。

また10メートルテストで歩行スピード別にグループをわけ、TUGテストとの関連も解析した。


次のことがわかった。

・TUGテストのタイムは、健常側に廻り込んだときに長く(17.52秒)、麻痺脚を軸に廻り込むときに短かった(17.10秒)。

・10メートルテストで歩行速度別に分類したグループ間でのTUGテストの有意な差はみられなかった。

脳卒中患者はタイムアップアンドゴーテストで方向転換時に廻り込む向きでタイムが異なった。麻痺側に廻り込むときにわずかに早かった、


というおはなし。

図:タイムアップアンドゴー


感想:

微妙な差すぎて記事にするのをためらったけど、暑くてどうでもよくなった。

2018年7月14日

軽い脳梗塞にはアルテプラーゼよりもアスピリン


Effect of Alteplase vs Aspirin on Functional Outcome for Patients With Acute Ischemic Stroke and Minor Nondisabling Neurologic Deficits
2018  7月  アメリカ

脳梗塞患者が4.5時間以内に入院できたとしても、その神経症状が軽微な場合には血栓溶解療法のアルテプラーゼ薬は使用しないことになっている。

しかしそれら患者のうち30%は 90日後になんらかの機能障害が残ることがわかっている。この問題を回避するために症状の軽い脳梗塞であってもアルテプラーゼを使うことが最近のトレンドとなっている。

そこで症状の軽い脳梗塞患者へのアルテプラーゼの効果と安全性を、アスピリンのそれと比べてみたそうな。


全米75の病院で3時間以内の軽症(NIHSS 0-5)の脳梗塞患者948人をアルテプラーゼとアスピリングループに分ける計画を立てた。

90日後の回復良好(mRS 0-1)の患者と頭蓋内出血を起こした患者をしらべたところ、


次のことがわかった。

・調査は313人の患者で終了した。(途中打ち切りのため)

・90日後、アルテプラーゼグループの78.2%、アスピリングループの81.5%が回復良好だった。

・アルテプラーゼの3.2%、アスピリンの0件が36時間以内に頭蓋内出血を起こした。

軽症の脳梗塞患者について、アルテプラーゼを使ったところでアスピリンよりも回復がよくなるわけではなかった。
研究途上だったのでこれ以上のことは言えません、、、(;_;)



というおはなし。
図:アルテプラーゼ vs アスピリン

感想:

この研究はとつぜん資金供給が絶たれ 早期に打ち切られてしまった。

その理由は、脳梗塞の8割を占める軽症患者について
「4.5時間以内とかむつかしいこと言ってないで、てきとうにアスピリン飲ませておけばいいんだよ 安全だし」
という身も蓋もない結論がでるのを恐れた業界団体からの圧力があったのだとおもう。
4分の1が血栓溶解治療で悪化

2018年7月13日

トランスジェンダー女性が脳卒中になりやすいわけ


Cross-sex Hormones and Acute Cardiovascular Events in Transgender Persons: A Cohort Study
2018  7月  アメリカ

性の同一性を適合させるための治療をうけているひとたち(トランスジェンダー)には静脈血栓症や脳梗塞、心筋梗塞がおおいと疑われている。

これを確かめるべく大規模にしらべてみたそうな。


患者データベースにトランスジェンダーとして登録されている男女を抽出して、脳卒中等の発生を4年間ほどフォローした。

これを10倍人数の性別適合者(シスジェンダー:cisgender)と比較した。


次のことがわかった。

・トランス(男→)女性2842人とトランス(女→)男性2118人およびシス男性48686人、シス女性48775人を対象とした。
トランスグループのうち23%は性別適合手術を受けていた。

・トランス女性の静脈血栓塞栓症のリスクが高く、2年後ではシス男性に比べてリスク4.1倍、シス女性のリスクの3.4倍 高かった。

・脳梗塞や心筋梗塞についても同様の発生リスクだった。

・特にホルモン療法を開始したトランス女性でこれらの関連が顕著だった。

・トランス男性については明らかな関連はみられなかった。

男性からトランスジェンダーした女性は、もとからの女性よりも静脈血栓症や脳梗塞のリスクが高かった。おそらくはエストロゲン療法の副作用によるものと考えられた、


というおはなし。
図:トランスジェンダーの女性

感想:

お茶大でトランスジェンダー解禁のニュースがあったばかりなので関心をもった。

2018年7月12日

健常側の白質病変と失語症の関係


Leukoaraiosis is independently associated with naming outcome in poststroke aphasia
2018  7月  アメリカ

脳卒中のあとの失語症には梗塞のおおきさや位置、発症からの時間、年齢、利き手、性別などが影響する。

さらにネーミング(呼称)などのネットワーク的に複雑な働きを要する課題では 梗塞の起きていない健常な側の脳が関係してくると考えられている。

右脳の白質病変が言語機能に与える影響はよくわかっていないので脳卒中患者でくわしくしらべてみたそうな。


左脳損傷で失語症の脳卒中患者42人について、

健常側の右脳の白質病変の程度をMRIのFLAIR(フレア)条件で撮影し評価した。

これと3ヶ月以降の呼称課題の結果との関連を解析したところ、


次のようになった。

・右脳白質病変の重症度が高いと呼称課題スコアがあきらかに低かった。

・この関連は梗塞のおおきさや位置、発症からの時間、合併症にはよらなかった。

左脳卒中で失語症患者の呼称課題スコアは、右脳白質病変の重症度に影響された。失語症からの回復は健常側の白質の健全性によるのかも、、


というおはなし。


感想:

これ↓2週間後に撮ったじぶんのフレア画像からの動画。血腫とその周辺の白質病変を着色してある。




たしかに人の名前がでてこない。特に映画女優。顔ははっきりとイメージできるのにでてこない。
たとえば「スカーレット・ヨハンソン」はなんどしらべてもすぐにわすれて思い出せなくなる。

2018年7月11日

MEPが観測されないのに脳卒中患者が歩けるわけ


Absence of a Transcranial Magnetic Stimulation–Induced Lower Limb Corticomotor Response Does Not Affect Walking Speed in Chronic Stroke Survivors
2018  7月  アメリカ

脳卒中で麻痺した上肢が回復する条件として、運動野への磁気刺激(TMS)で生じる運動誘発電位(MEP)が観測されることを挙げる報告は少なくない。

しかし下肢の運動機能についてMEP反応があることを回復の条件とする報告はほとんどない。

これを確かめるべく運動野から下肢筋肉へのMEPの有無と歩行能力との関連をくわしくしらべてみたそうな。


慢性期脳卒中患者61人について、

損傷脳側の運動野をTMSで刺激して麻痺脚の前脛骨筋および大腿直筋へのMEPの有無を測定した。

歩行スピード、6分間歩行距離、タイムアップアンドゴーテスト、下肢筋力との関連を解析したところ、


次のようになった。

・患者はMEPあり28人とMEPなし33人に分けられた。

・両グループ間で歩行能力にあきらかな差はなかったが、

・MEPありグループでは麻痺足首の背屈筋力が高かった。

・MEPパラメータと歩行回復度との関連はなかった。

脳卒中患者への経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位と歩行能力とのいかなる関連もみつけることができなかった、


というおはなし。
図:TMS MEP 脳卒中

感想:

この理由として、
皮質脊髄路ではなく網様体脊髄路を迂回している、もしくは健常脚がうまく代償運動しているだけではないか、、っていってる。

2018年7月10日

底辺家庭のこども 脳卒中からの1年後


Socioeconomic determinants of outcome after childhood arterial ischemic stroke
2018  7月  カナダ

脳卒中の発生率や重症度 回復度と社会経済的地位との関連は成人についてはよく研究されているが子供のそれはほとんどないので大規模にしらべてみたそうな。


37カ国にある複数施設での2010-2014の子供の脳梗塞患者355人について、

世帯収入、親の教育歴、住居の都会度、リハビリサービスを受けた回数、
等をしらべ、1年後の回復度(Pediatric Stroke Outcome Measure)スコアとの関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・年間世帯収入が10000ドルを下回る超低所得グループの回復度は明らかに低かった。

・脳卒中の原因や居住国の所得レベルを調整してもその関連は変わらなかった。

・所得額は1年時点でのリハビリサービスの利用状況とは関連がなかった。

国際的な大規模調査により、子供の脳卒中は低所得家庭ではあきらかに回復度が低いことがわかった。これは脳卒中の種類や合併症、リハビリサービスの有無では説明がつかなかった、


というおはなし。
図:こども脳卒中の回復度と世帯収入

感想:

上のグラフみると最低所得層で死亡割合がとてもおおきい。脳卒中で弱った子供は生存競争に敗れ淘汰されてしまうのだろうか。

2018年7月9日

半側空間無視はほとんどが自然に治る


Impact of clinical severity of stroke on the severity and recovery of visuospatial neglect
2018  7月  オランダ

半側空間無視は通常、損傷脳半球の反対側に注意障害がおきる。そして脳卒中が重症のばあいには同側にも無視が生じる。

そこで、重症脳卒中の半側空間無視とその症状の時間的変化をしらべてみたそうな。


右脳の脳卒中患者90人を非常に重症である 完全前循環梗塞(total anterior circulation infarct:TACI)38人と非TACIグループ52人にわけた。

半側空間無視の程度は文字抹消検査(letter cancellation test:LCT)で損傷脳の対側、同側についてしらべた。

発症から 1, 2, 3, 4, 5, 8, 12, 26週までその自発的な改善変化をフォローしたところ、


次のことがわかった。

・同側と対側の無視については臨床的重症度とLCTの取りこぼし数とのあきらかな関連はなく、

・いずれの場合も その数は時間が経つにつれ徐々に減少した。

・TACIタイプの重症脳梗塞では同側の無視症状の回復スピードがあきらかに遅かった。

広範囲におよぶ脳梗塞では同側への空間無視症状の回復があきらかに遅かった。しかしこれら症状は時間が経つにしたがい自発的に回復していった、


というおはなし。
図:半側空間無視の週別変化


感想:

この回復パターンは比例回復則 (proportional recovery rule)のそれとおなじで、そこから外れる患者こそが治療対象になるべきだって。

2018年7月8日

脳梗塞への遠隔虚血コンディショニングの効果


Remote ischaemic conditioning for preventing and treating ischaemic stroke
2018  7月  中国

遠隔虚血コンディショニング(Remote Ischaemic Conditioning :RIC)は腕や脚をカフで強く加圧して一時的に血流をとめたのち再灌流することで脳神経の保護や脳梗塞からの回復を期待するものとしていくつもの研究がなされている。

しかしその効果と安全性については結論がでていない。

そこでRICと脳梗塞に関するこれまでの研究を総括してみたそうな。


信頼性の高い研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者735人を含む7つの研究がみつかった。3つは脳梗塞の予防について、4つは脳梗塞の治療にかんするもので 内容に低質な部分が多く見られた。

・動脈狭窄患者へのRICで脳梗塞の再発リスクがあきらかに低下した。

・ステント使用者では脳梗塞発生率に差はなかったが、脳梗塞後の重症度はRICグループがあきらかに低かった。

・有害事象はRICグループにおおかったが重大なものはなかった。

・急性脳梗塞で血栓溶解療法をうけた患者にたいしては死亡と障害のリスク増加があった。

遠隔虚血コンディショニングが動脈狭窄やステント患者の再発率と重症度をさげる可能性が示された。血栓溶解療法を受けた患者では死亡と障害のリスクがあがった。しかし研究数の少なさや質の問題でまだ たしかなことは言えない、


というおはなし。
図:遠隔虚血コンディショニング

感想:

ふと思ったんだけど、「正座」の繰り返しは遠隔虚血コンディショニング的には脳に良いはず。

[遠隔虚血コンディショニング]の関連記事。

2018年7月7日

心房細動患者が気をつけるべき季節は


Seasonal variation in the risk of ischemic stroke in patients with atrial fibrillation: A nationwide cohort study
2018  6月  台湾

脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患は季節の影響をうけ、特に気温の低い秋や冬に発生率が高くなる。

心房細動患者に限定したときの季節と脳卒中リスクについてしらべてみたそうな。


台湾の国民健康保険研究データベースの心房細動患者289559人を3年間フォローして得た34991人の脳梗塞事例について季節と気温との関連を解析したところ、


次のようになった。

・気温のもっとも低い季節である冬に脳梗塞の発生率がもっとも高くなり、月あたり0.33/100人だった。

・夏とくらべたとき 春の脳梗塞リスクは1.10倍で、冬は1.19倍だった。秋は夏とほぼ同じだった。

・1日の平均気温が30℃のときとくらべて20℃を下回ると脳梗塞があきらかに増えた。

大規模調査により心房細動患者の脳梗塞発生率が気温が下がる冬に高いことが確認できた、


というおはなし。
図:心房細動が脳梗塞になりやすい季節

感想:

寒いと赤血球や血小板、血液粘度とかが高まって血がかたまりやすくなるメカニズムがあるんだって。

2018年7月6日

FASTキャンペーンは効果あったのか?


Medical Attention Seeking After Transient Ischemic Attack and Minor Stroke Before and After the UK Face, Arm, Speech, Time (FAST) Public Education Campaign
2018  7月  イギリス

一過性脳虚血発作(TIA)や軽微な脳卒中症状をほうっておくと24時間以内に5%が、30日以内に40%が脳卒中を再発するという。

脳卒中の初期症状を識別する Face, Arm, Speech, Time の「FASTキャンペーン」により 重症の脳卒中患者のレスポンススピードは改善された。

しかしTIAや軽微な脳卒中症状の患者へのFASTキャンペーンの効果はわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


2002-2014にTIAまたは脳卒中になった2243人について調査したところ、


次のことがわかった。

・73.8%がTIAや軽微な脳卒中症状があった患者だった。

・FASTキャンペーンのあと、重症の脳卒中患者が3時間以内に病院にかかる率は高まった。

・しかしTIAや軽微な脳卒中では救急車利用率や24時間以内の病院利用率にキャンペーンの前後で差はなかった。

・188人の患者が90日以内に脳卒中を再発したが、彼らの49.5%は最初のTIA症状のとき病院にゆく必要はないと考え無視した。この率はキャンペーン前後で同じだった。


FASTキャンペーンによる啓発活動はTIAや軽微な脳卒中の患者にたいしてまったく効果的ではなかった、


というおはなし。
図:FASTキャンペーンの効果

感想:

このFAST動画見ても高齢者を想定しているせいか心にひびかない。

脳のお医者さんにとっては脳卒中が世界のはんぶんくらいを占めているから一大事なんだろうけど、
顔のゆがみや手のしびれ 口がもつれる程度のことでいちいち病院にかかっていたら生活できんのよ 一般人は。

振り返ってみるに、出血する1年くらいまえから手の震えを止められなくて、しかも言いたいことがスムーズに出てこなくなってたわ。

2018年7月5日

くも膜下出血で1年後元気だった人の12年後


Prospective study: Long-term outcome at 12-15 years after aneurysmal subarachnoid hemorrhage
2018  7月  スウェーデン

くも膜下出血は脳卒中全体の5%を占め平均年齢は若く死亡率が高い。12%が即死し、30%以上がひと月内に死亡、25-50%は6ヶ月以内に死亡するという。

くも膜下出血のその後について1年以降の長期にしらべた研究はほとんどないので12年以上フォローしてみたそうな。


2000-2003に脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血で手術を受けた患者158人について、その1年後と12-15年後の回復度評価Glasgow Outcome Scale(GOS) をおこなった。


次のことがわかった。

・患者は発症時平均年齢55で、女性は114人だった。

・12-15年後、生存していた103人のうち39.9%は回復良好、15.2%が中程度の障害あり、10.1%が重度障害だった。

・23.6%の患者は時間が経つにつれGOSスコアが改善した。

・55人が4年前後で死亡していた。

・患者全体として12-15年後までの死亡率は一般人の3.5倍だったが、

・1年時点で回復良好だった101人(全体の67.3%)に限定すると 生存率曲線は同性同年齢の一般人とおなじパターンを示した。

・若くかつ1年後の高GOSスコアの患者は長く回復良好状態がつづいた。

くも膜下出血の1年以上ののちも機能的回復は続いていた。1年時点で回復良好だった患者の余命は一般人のそれと同レベルだった、


というおはなし。
図:くも膜下出血の生存率曲線

感想:

上の生存率グラフをみておどろいた。1年後の回復良好者のほぼ全員が、その後10年以上にわたり一般人とまったくおなじ軌跡を描いている。

他の脳卒中で こんなはなしはきいたことがない。


おそらくこういうこと↓だとおもう。

くも膜下出血はたとえると偶発的な「事故」のようなもので、運悪くすぐに亡くなってしまう人がいるいっぽう、それ以外はおおむね元気で 「自然に」出血が止まりほぼもとの状態にもどる。

しかも再出血予防手術にはほとんど意味がないっぽいんだ。
その理由↓

1) 再出血予防のクリッピング手術のRCTは存在しない。(by ガイドライン

2) 入院が遅れるほど死亡率は劇的に下がる。

3) もっとも再出血しやすい24時間以内の手術にまったく効果がない。

2018年7月4日

ボツリヌス療法で上肢機能は改善するのか?


Does botulinum toxin treatment improve upper limb active function?
2018  6月  イタリア

脳卒中後の痙縮は機能障害や能力障害のおもな原因であり、とくに上肢での影響がおおきい。

痙縮はボツリヌス毒素の筋肉注射により局所的に緩和できる。しかしこれによって上肢機能が改善するかどうかについては結論がでていない。

そこでこれまでの研究を総括してみたそうな。


脳卒中で麻痺した上肢痙縮へのボツリヌス療法と 障害にかんする数々の研究についてナラティブレビューを試みたところ、


次のことがわかった。

・治療の評価は disability assessment scale (DAS) や goal attainment scale (GAS) といった通常あまり用いられない特別な指標が使われていた。

・いくつものメタアナリシスではきわめてわずかな効果量が示されるのみで、ボツリヌス療法による麻痺上肢の日常生活動作上での機能的改善はまったくみられなかった。

ボツリヌス療法による痙縮緩和が上肢の機能改善につながっていなかった。もっと元気な患者を対象にして幾度も注射を繰り返せば良い結果が得られるのかもしれない、、


というおはなし。

図:disability assessment scale

感想:

6年ほど前に上の図の disability assessment scale (DAS) がボツリヌス療法でのみ好んで使われていることを知り、そのどうとでも解釈できるガバガバな評価内容に衝撃をうけた。

おかげでボツリヌス療法のなんたるかを一瞬で理解できた。

2018年7月3日

軽症脳梗塞の位置と健康関連QoL


Infarct location is associated with quality of life after mild ischemic stroke
2018  6月  アメリカ

神経症状スコアが高くない「軽症の脳梗塞」は脳卒中患者のほとんどを占める。

軽症にもかかわらず彼らの後遺症や健康に関する生活の質(HRQoL)の低さがもんだいになっている。

梗塞の体積ではなくその位置とHRQoLについての研究はすくないので調べてみたそうな。


平均年齢65、入院時のNIHSSスコアが1前後の軽症患者229人について3ヶ月後のHRQoLを測定し、梗塞位置との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・梗塞体積の中央値は0.74ccで、36.2%の患者がHRQoLのあきらかな低下を示した。

・HRQoL低下者の56.0%は皮質下梗塞で、また 21.4%は脳幹梗塞であり、

・HRQoLが低下しなかったグループよりもあきらかにそれらの割合が高かった。

・皮質下または脳幹の梗塞でHRQoLが低下するリスクは2.54倍だった。

軽症脳梗塞患者のうち、皮質下と脳幹の梗塞では健康関連QoLの低下が起きやすかった、


というおはなし。
図:健康関連QoLと軽症脳梗塞

感想:

軽症で見た目の障害がないためにQoLのようなわずかな質の変化に敏感になるんだって。(床効果 天井効果)

ぎゃくにいうと、質が問題になるうちはたいして深刻ではないってこと。

2018年7月2日

こども脳卒中の聴覚無視について


Auditory neglect in children following perinatal stroke
2018  6月  アメリカ

半側空間無視では損傷脳の反対側への注意力の低下がおき 視覚以外に聴覚にもおきうる。

また損傷脳が左脳よりも右脳のほうが無視の程度はつよく 長く影響がつづく。

子供の半側空間無視の報告はすくないながら成人にくらべ回復がはやいとする調査がいくつかある。

そこで、出生後28日までの周産期に脳卒中を経験した子供について聴覚無視の特徴をくわしくしらべてみたそうな。


周産期に左脳または右脳の脳卒中を経験した6-16歳の子供26人について、音を聴かせたときの音源の位置推定の正確さと反応速度について測定し、同年代の子供と比較したところ、


次のことがわかった。

・左脳損傷の子供は音源が左方にあるときに位置特定精度があきらかに右方よりも高く、

・反応速度は左方の音源にたいしては年齢にしたがい健常者と同レベルに回復した。
しかし右方音源にたいしては改善しなかった。

・右脳損傷の子供は右方音源の位置特定精度が健常者よりも低く、

・反応速度は音源位置の左右によらず改善しなかった。

・脳の損傷部位に頭頂部がふくまれていると無視の程度がよりおおきかった。

周産期脳卒中を経験した子供の聴覚無視は、左脳損傷では対側に、右脳損傷では両側に起きるのかもしれない。また頭頂部が聴覚的注意に重要な役割をもっていると考えられた、


というおはなし。
図:周産期脳卒中の聴覚無視 頭頂部損傷のケース

感想:

音源に発光機能をもたせると聴覚無視が治りやすくなることから聴覚空間と視覚のキャリブレーションが脳卒中でリセットされたことが聴覚無視の原因かもっていってる。

2018年7月1日

アルコールでおきる脳内出血の種類


Alcohol intake and the risk of intracerebral hemorrhage in the elderly: The MUCH-Italy
2018  6月  イタリア

アルコール摂取と脳内出血との因果関係についてはいまだ結論がでていない。

これを調べるべく脳出血の大規模研究MUCH-Italyのデータを解析してみたそうな。


55歳以上の白人被験者を飲酒量べつに ヘビー、中程度、飲まない、の3グループにわけ、
脳内出血の種類(皮質、深部)との関係を有向非巡回グラフをもちいて解析したところ、


次のことがわかった。

・皮質脳内出血1471人、深部脳内出血1702人と3155人の一般人の記録を解析した。

・ヘビードリンカーの深部脳内出血リスクは1.68倍で、脳内出血トータルのリスクも1.38倍、

・しかし皮質脳内出血と飲酒量との関係はみられなかった。

55歳以上の白人の調査ではアルコール摂取は脳内出血の原因であり、特に深部脳内出血をひきおこすと考えられた、


というおはなし。
図:有向非巡回グラフ 脳内出血とアルコール

感想:

じぶんがなった被殻出血も深部のそれだから あの日以来酒は一滴も飲まない。そのせいか酒飲みへの偏見が助長して酔った親戚をついあおってしまい なんどか険悪になった。

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