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2018年10月31日

脳卒中の顔面麻痺


Facial motor and non-motor disabilities in patients with central facial paresis- a prospective cohort study
2018  10月  ドイツ

中枢性の顔面麻痺は脳卒中の初期症状として患者の45%にみられる。損傷脳の反対側 とくに下半分が麻痺して顔のゆがみやよだれがたれる。

顔面麻痺があると表情や発話 食事に困難を生じQoLが下がる。しかし脳卒中の顔面麻痺についての調査は非常にすくないので、表情筋の運動機能とQoLの面からくわしくしらべてみたそうな。


脳卒中で中枢性の顔面麻痺のある患者112人について、

入院時と退院時に、

表情筋を Facial Action Coding Systemにもとずき38のアクションユニット(AU)に分類して自動追跡する装置をつかって各動きを記録した。

QoLに関するアンケートも行った。


次のことがわかった。

・House-Brackmann gradingがⅢ(中レベルの顔面麻痺)以上の患者は入院時79%いた。

・下顔のAUのうごきは左脳損傷よりも右脳損傷で明らかに弱かった。

・入院時の顔面障害指数(Facial Disability Index)および顔面臨床評価スケール(Facial Clinimetric Evaluation Scale)の中央値はそれぞれ46.5(満点55)、69(満点75)だった。

・入院中にAU12(大頬骨筋)、AU13(口角挙筋)、AU24(口輪筋)のうごきがあきらかにおおきくなった。

・とくにAU10(上唇挙筋)、AU12,17(下唇制筋)、AU38(鼻筋)はQoLと強く関連していた。

中枢性の顔面麻痺は脳卒中患者のQoLにつよく影響していた。特定のアクションユニットを対象にしたリハビリテーションが有効かも、


というおはなし。

図:脳卒中患者の顔面アクションユニット

感想:

顔のしびれはカミソリでひげを剃るときに実感する。床屋で他人に剃られるときの違和感はつよい。お面をかぶっている感がある。

耳垢とるときにも 耳かき棒がどこまで入っているのか悩む。

2018年10月30日

血栓を予防するワクチンを日本で開発


Therapeutic Vaccine Against S100A9 (S100 Calcium-Binding Protein A9) Inhibits Thrombosis Without Increasing the Risk of Bleeding in Ischemic Stroke in Mice
2018  10月  日本

日本の再発脳梗塞患者の40%は抗血栓薬の服用をやめてしまっていた、という報告がある。

抗血栓能をもたせるワクチンを使えれば、効果が長続きするので毎日薬を飲む必要がなくなる。しかし出血作用も持続してしまう問題があった。

さいきんの研究で血管が傷ついたときにできるS100A9というタンパク質の働きを抑制すると血栓形成が抑えられかつ止血機能に影響しないことがわかってきた。

そこでS100A9への免疫を作るためにこれをワクチンとして与えて、血栓形成への影響と出血可能性についてしらべてみたそうな。

2018年10月29日

つよい精神的ストレスと脳卒中の関係


Psychological Distress and Risk of Myocardial Infarction and Stroke in the 45 and Up Study
2018  9月  イギリス

いっぱんに精神的な苦痛は脳卒中リスクと関係すると考えられているものの、これまでの研究では結果がばらばらで一致した見解が得られていない。

そこで、精神的苦痛(Psychological Distress)を定量評価するケスラーK10スケール(Kessler Psychological Distress scale)をつかって大規模にしらべてみたそうな。


心血管疾患のない45歳以上の221677人について、
精神的苦痛アンケートをとり、
脳卒中の発生を4.7年間ほどフォローして関連を解析したところ、


次のようになった。

・この間に2421の脳卒中があった。

・脳卒中リスクは精神的苦痛スコアが高くなるほど上昇した。

・精神的苦痛スコアが高いグループでは脳卒中リスクは、男性で24%、女性で44%高かった。

精神的苦痛レベルは脳卒中リスクと強く用量関係にあった、


というおはなし。


図:ケスラーK10


感想:

うえの表、
脳卒中まえの状態がけっこうあてはまってた。

2018年10月28日

長く続く脳卒中後の頭痛


Persistent Poststroke Headache- Finding Its Place in Stroke Aftercare

A Narrative Review of Persistent Post-Stroke Headache - A New Entry in the International Classification of Headache Disorders, 3rd Edition
2018  10月  カナダ

脳卒中患者の5人に1人がなんらかの疼痛を経験するわりには、脳卒中後の長く続く頭痛についてはよく理解されていない。

脳卒中後の頭痛についてまとめてみたそうな。

・脳卒中に頭痛がともなうことはめずらしくなく、

・それら頭痛の60%は脳卒中の発症まえから始まり、25%は発症と同時という。

・急性脳卒中患者の頭痛の罹患率は28%で、

・頸動脈よりも椎骨脳底動脈の脳卒中におおい。

・脳卒中の重症度とは関連がなさそうである。

・これまでの研究では脳卒中に関連する頭痛の発生率は9.3%-38%の範囲にあり、

・さいきんになって、長期につづく脳卒中後の頭痛(Persistent PostStroke Headache:PPSH)が国際頭痛分類に新登録された。

・この分類によると急性脳卒中にともなう頭痛は脳卒中から最大7日以内におきるものを指し、

・いっぽうPPSHは脳梗塞や脳出血の12-23%にみられ、

・緊張性の痛みが3ヶ月-数年にわたり続くものをさす。

・患者は退院後時間が経っているため脳卒中の症状とはみなされないことがおおい。

というおはなし。

図:脳卒中後のながくつづく頭痛

感想:

そういえば頭痛のことはよく知らないな、、、と思ったので関心をもった。

2018年10月27日

脳卒中は遺伝とライフスタイルのどっちが影響大?


Genetic risk, incident stroke, and the benefits of adhering to a healthy lifestyle- cohort study of 306 473 UK Biobank participants - The BMJ
2018  10月  ドイツ

脳卒中の発症にはライフスタイルをふくむ環境要因と遺伝要因が関係する。

脳卒中の遺伝要因については大規模研究MEGASTROKEにより関連DNA領域の数がいっきに3倍にふえた。

これら遺伝要因と実際の脳卒中発症率への影響および、健康的なライフスタイルがおよぼす影響について大規模にしらべてみたそうな。


イギリス全土の40-73歳の男女306473人について、
遺伝子データからMEGASTROKE研究によるリスクスコアを算定し、
健康的な4つのライフスタイル(非喫煙、健康的な食事、BMI30未満、定期的な運動)の有無をしらべ、

脳卒中の発生を平均7.1年間フォローして関連を解析したところ、


次のようになった。

・この間に脳梗塞1541、脳内出血287、くも膜下出血249があった。

・遺伝子リスクスコアが高い上位グループは下位グループにくらべ脳卒中リスクが1.35倍だった。

・健康的なライフスタイルが0-1個しかあてはまらないグループは、3-4個が相当するグループにくらべ脳卒中リスクが1.66倍だった。

・ライフスタイルとの関連は遺伝子リスクの高低によらなかった。

脳卒中のライフスタイル要因と遺伝要因はたがいに独立していた。だから遺伝要因にかかわらず健康的なライフスタイルを維持することがたいせつ、


というおはなし。

図:ライフスタイルと脳卒中リスク


感想:

遺伝の影響はライフスタイルによっては相殺されるから
家系に脳卒中がおおくてもあきらめないで、ってこと。

2018年10月26日

こども脳卒中経験者は計算が苦手 その対策


Does stroke impair academic achievement in children- The role of metacognition in math and spelling outcomes following pediatric stroke
2018  10月  カナダ

子供時代の脳卒中が認知機能にあたえる影響のうち学力面についてはかならずしも一致した見解が得られていない。

そこで、算数、言語、遂行機能の点から脳卒中経験のあるこどもの学力を評価してみたそうな。


6-14歳で脳卒中になり半年以上経つ32人と同齢の健常者32人について、

算数能力、書字能力、遂行機能のうちメタ認知(自身の認知プロセスを認知する)や行動調整能力を測定して比較したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中経験者は健常者にくらべ算数、書字、メタ認知、行動調整の能力があきらかに劣っていて、

・とくに紙と鉛筆を使った計算が困難で、40%は障害者レベルだった。

・学力の低下はメタ認知能力とつよく関連していた。

こどもの脳卒中経験者は算数がとくに弱かった。これにはメタ認知能力がつよく関わっていると考えられた、


というおはなし。

図:こども脳卒中の学力

感想:

思考プロセスのどこでつまずいているのかを振り返る能力の低下が すぐに反映されるのが計算問題。

もうすこし拡大解釈すると、意識が飛んで手足が動かなくなるほどの経験をしてなお「自分なら運転ができる」と確信できるのもメタ認知低下のなせる技。

だから自分の脳が多少なりとも馬鹿になってしまっていると素直に認めることが、対策の第一歩だとおもうよ。

2018年10月25日

Stroke誌:安静時fMRIの機能結合と脳卒中の予後予測


Resting-State Functional Connectivity Magnetic Resonance Imaging and Outcome After Acute Stroke
2018  10月  スペイン

脳卒中の予後は、神経症状の重さNIHSSスコアや梗塞の体積 位置を参照して予測されてきた。

近年、なんのタスクも課さずにただ寝ているだけの被験者のfMRIデータから脳活動のネットワーク的なつながりをみることができるようになった。

さらにこのネットワーク的つながりと実際のタスクパフォーマンスが関連することがわかってきた。

そこで脳卒中患者の予後を安静時fMRIのデータから予測できるものか実験してみたそうな。

2018年10月24日

感覚障害の機能的ネットワーク結合


Functional network connectivity is altered in patients with upper limb somatosensory impairments in the acute phase post stroke: A cross-sectional study.
2018  10月  ベルギー

脳は安静時であっても非常に低周期の活動をしている。これをMRIの信号強度の変化として観測することができ、部位ごとの周期活動への同期性からデフォルトモードネットワークや背側注意ネットワークなどが分類されている。

脳卒中患者の機能障害とこれらネットワーク的なつながりとの関連が報告されているが、体性感覚障害のそれについては報告がきわめて少ないのでくわしくしらべてみたそうな。


脳卒中の急性期で上肢に体性感覚障害のある患者19人について、
感覚障害を複数の指標、light touch, pressure, pinprick, sharp-dull discrimination, stereognosis, two point discrimination, perceptual thresh-hold of touch,
で測定した。

また、MRIで安静時のBOLDシグナル観測を行い、
脳半球間、脳半球内での機能的結合性との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・重度の体性感覚障害の患者は軽度患者にくらべ、脳半球間および損傷脳半球内での機能的結合性があきらかに低かった。

・特に触覚しきい値と軽い接触、立体認知との関連がつよかった。

感覚麻痺のつよい脳卒中患者ほど、脳半球間および損傷脳半球内での体性感覚関連の機能的結合性が低かった、


というおはなし。

図:脳の機能的結合性と感覚障害


感想:

fMRIのFunctional network connectivity は
データ取得がひじょうに簡単で、
職人的読影能力が必要とされないいっぽう、
AIと相性がよさそうな点でこんごに期待している。

2018年10月23日

深部感覚の障害と関係する脳の位置がわかった


Lesion locations associated with persistent proprioceptive impairment in the upper limbs after stroke
2018  10月  カナダ

脳卒中患者の64%が手足の位置や運動を知るための筋肉からのシグナル「深部感覚」に障害をもつという。

深部感覚の障害に影響する脳のエリアが体性感覚野以外にどこまで関係しているのかはほとんどわかっていないので大規模にしらべてみたそうな。


脳卒中患者136人について、
ロボット制御による上肢の位置感覚と運動感覚測定を6ヶ月後までフォローし、
断層画像上の脳損傷位置との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・縁上回、弓状束、横側頭回へのダメージが位置感覚と運動感覚の障害と関連していた。

上肢の位置感覚や運動感覚に影響する体性感覚野以外のエリア候補をみつけることができた、


というおはなし。

図:深部感覚障害の脳位置

感想:

上の図みると、どれも側頭部なんだよな。

たしかにじぶんもそれらしい位置をやられてたは。

2018年10月22日

あらたな脳動脈瘤ができる率と期間


Natural History of De Novo Aneurysm Formation in Patients with Treated Aneurysmatic Subarachnoid Hemorrhage- A Ten-year Followup
2018  10月  ドイツ

くも膜下出血で脳動脈瘤をクリップやコイルで塞いだ何年かあとに別の脳動脈瘤ができることがある。

あらたな脳動脈瘤が見つかる率と時期についてくわしくしらべてみたそうな。


くも膜下出血の手術をした患者130人(女性63%)を2年毎に画像検査でフォローしたところ、


次のことがわかった。

・10年前後フォローした結果、10人(7.7%)にあらたな脳動脈瘤がみつかった。

・発見までの平均期間は7.9年で、

・2人は2-5年、7人は5-10年、1人は10年以上経ってみつかった。

・あらたな脳動脈瘤の発生と、最初の脳動脈瘤の位置、喫煙、高血圧、年齢、性別に関連はみられなかった。

・この10人のうち2人は脳動脈瘤が破裂して再びくも膜下出血になった。

くも膜下出血のあとあらたに別の脳動脈瘤が見つかる率は7.6%で、その平均期間は7.9年だった。患者は長くフォローする必要がありそうだ、


といいうおはなし。

図:くも膜下出血

感想:

コブができやすい人っているんだな。

つぎの脳動脈瘤がみつかってしまったら

脳に動脈瘤がいくつもできる人の特徴

2018年10月21日

コクランレビュー:超早期リハビリは効果ないし危ない


Very early versus delayed mobilisation after stroke
2018  10月  イギリス

入院してまもない脳卒中患者の離床をうながして座位 立位 歩行訓練などを始める「超早期リハビリテーション」をすすめる臨床ガイドラインが世に存在しているが、その効果については結論がでていない。

これまでの研究をまとめてみたそうな。


19の医学データベースから信頼性の高い研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者2958人を含む9の臨床試験がみつかった。

・超早期リハビリの平均開始時期は入院後18.5時間以内で、通常ケアでは33.3時間後だった。

・超早期リハビリグループではセラピー時間と活動量が通常ケアよりもおおかった。

・回復不良率 51% vs. 49%、死亡率 8.5% vs. 7% でいずれも超早期リハビリで高かった。

・超早期リハビリの入院期間は通常ケアよりも1日短かったが、エビデンスレベルは低かった。

入院した脳卒中患者に24時間以内の離床を勧める「超早期リハビリテーション」により死亡者と回復不良者はむしろ増えた。入院日数の短縮効果はせいぜい1日であり、そのエビデンスレベルは低かった、


というおはなし。
図:早期離床


感想:

いったん信じ込んでしまったことをくつがえすのは大変なんだね。

【やはり】亜急性期のリハビリは効果ないうえに危険

nature.com:脳卒中の超早期リハビリ やる意味ない

Stroke誌:早期リハビリがんばる意味ない

超早期リハビリで死亡者続出 AVERT続報

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない
ほかにも↓
失語症の早期リハビリ まったく効果ない

超早期リハビリをやってはいけない理由

超早期リハビリには脳の細胞死を促す効果があった!

2018年10月20日

下肢動作観察のミラーニューロンシステム


Activation of mirror neuron system during gait observation in sub-acute stroke patients and healthy persons
2018  10月  日本

歩行訓練と動作観察の組み合わせが慢性期脳卒中の歩行リハビリをうながすとする報告がいくつかある。

これにはミラーニューロンシステム(下頭頂小葉-上側頭溝-下前頭回)が関与していると考えられている。

亜急性期の脳卒中患者でも動作観察でミラーニューロンシステムが活性化するのか については報告がないので、実験してみたそうな。


入院していて歩行リハビリ中の神経症状の軽い脳卒中患者5人と健常者9人について、

健常者の歩行ビデオを30秒おきに見せながらのfMRIをトータル6分間撮影した。


次のようになった。

・動作観察中、脳卒中患者の左側の下頭頂小葉と左右の下前頭回の活動があきらかに高くなった。

・健常者では、左側の下頭頂小葉と下前頭回 中前頭回 上側頭葉および左右の中側頭回で活動が高くなった。

亜急性期の脳卒中患者でも動作観察によりミラーニューロンシステムが活性化することが確認できた、


というおはなし。

図:動作観察とミラーニューロンシステム


感想:

ミラーニューロンシステムが活性化したから脳卒中患者の歩行が改善したとは思わない。

なぜなら運動神経の経路にダメージがなければ、なにもしなくても勝手に治るものだから。↓
Stroke誌:下肢運動機能の比例回復則からわかること

2018年10月19日

こども脳の可塑性が言語回復をさまたげる


Atypical language representation is unfavorable for language abilities following childhood stroke
2018  9月  オーストリア

子供の脳卒中の予後は成人にくらべ良いと考えられているが、言語能力についてはかならずしもあてはまらない。

子供は脳の可塑性が高い。たしかに周産期(妊娠20週-出生後28日)に脳卒中を経験した子供の言語獲得能力は高い。

しかし子供時代(1ヶ月-18歳)に脳卒中を経験した者の、言語機能を司るエリアが左脳から右脳へ可塑的にシフトすることの影響について一致した見解は得られていない。

そこで、子供脳卒中経験者の言語能力と脳機能分布との関連をくわしくしらべてみたそうな。

2018年10月18日

子供時代の脳卒中と認知 学力


Predictors of Cognitive and Academic Outcome following Childhood Subcortical Stroke
2018  10月  カナダ

成人まえの脳卒中は、周産期(妊娠20週-出生後28日)と子供時代(1ヶ月後-18歳)の2つに区分できる。

脳梗塞の発生率は周産期の1/2500に対し、子供時代では0.6-13/100000と非常にまれであるため詳しい調査がすくない。

子供時代の脳卒中の予後は周産期のそれよりも知能面で良好であるという報告があるものの、他の認知能力や学力の点でよくわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


子供時代に脳卒中になって、大脳基底核に損傷のある32人と視床損傷の12人ついて神経心理テスト等をおこなったところ、


次のことがわかった。

・彼らの知能は歳相応だったが、作業記憶力はあきらかに低かった。

・健常者にくらべ脳卒中経験者は読解力、算数能力、注意力、とくに遂行能力がはっきりと劣っていた。

・大脳基底核グループは視床グループよりも作業記憶が弱く、ADHD(注意欠陥多動性障害)と診断されやすかった。

・損傷部位のおおきさが作業記憶力ともっともよく関連していた。

子供時代に脳卒中を経験すると作業記憶力や学力、遂行能力があきらかに低かった、


というおはなし。

図:子供脳卒中の作業記憶

感想:

たしかにADHDは周産期の報告しかみなかったわ。↓
周産期脳梗塞のこどもの注意欠陥 多動性障害

周産期脳卒中やった子供はADHDが徐々に進む

2018年10月17日

大気汚染と脳梗塞 その日の影響


Association between ambient air pollution and daily hospital admissions for ischemic stroke- A nationwide time-series analysis
2018  10月  中国

2013年の "世界の疾病負担研究"(Global Burden of Diseases)では脳卒中の原因の4分の1以上が大気汚染によるものとされた。

これら研究のおおくは先進国のもので、しかもひとつの都市や病院でのデータが主だった。PM2.5についての調査も少なかった。

そこで、中国全土2.8億人の健康保険データをもちいて、短期的な大気汚染暴露と脳梗塞との関連をくわしくしらべてみたそうな。


2014-2016、中国172都市の脳梗塞患者200万人以上の入院記録と 大気汚染モニターの観測結果との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・PM2.5, SO2, NO2, COへの短期暴露と脳梗塞の発生は関連があって、

・それぞれが10μg/m3ふえるごとにそれぞれ、0.34%、1.37%、1.82%、3.24% その日の入院数が増加した。

・この影響は高齢者で大きかった。

中国全土での大規模調査の結果、大気汚染度が高まるとその日のうちに脳梗塞患者が増加した、


というおはなし。

図:PM2.5と脳梗塞リスク


感想:

数日前、地下鉄構内でのPM2.5が鉄由来粒子に限定すると地上の200倍ってニュースがあったので関心をもった。

2018年10月16日

高血圧でめまいがある人の脳卒中死亡リスク


Recurrent vertigo is a predictor of stroke in a large cohort of hypertensive patients
2018  10月  フランス

めまいにはフワフワとしためまい(dizziness)と回転性のめまい(vertigo)がある。

脳卒中患者の0.2-3.4%にはなんらかのめまいが見られ、一部は小脳梗塞にゆらいするという。

とくに回転性のめまいは血管リスクを反映すると言われるが実はよくわかっていない。

そこで高血圧患者について めまいと脳卒中など心血管疾患との関連をくわしくしらべてみたそうな。


高血圧の1716人を1970代から約30年間フォローした結果、


次のことがわかった。

・この間に508人が心血管疾患で死亡し、114人は脳卒中が原因だった。

・めまい(dizziness)は総死亡率、心血管疾患死亡率、脳卒中死亡率とは関連がなかった。

・しかし回転性のめまい(vertigo)は別で、

・とくに脳卒中死亡リスクがめまいなしに比べて2.43倍、

・dizziness のみと比べると2.22倍だった。

高血圧でフワフワしためまいがあってもたいして危険ではなかった。しかし回転性のめまいがあると脳卒中で死亡するリスクが高かった、


というおはなし。

図:回転性めまいの脳卒中死亡リスク

感想:

dizzinessには船酔いのような動き由来のものと起立時にクラっとくる低血圧タイプがあるんだって。

[vertigo]の関連記事

2018年10月15日

若年脳梗塞で復職していない率と理由


Return to work after ischemic stroke in young adults- A registry-based follow-up study
2018  10月  フィンランド

近年、若年者の脳梗塞が増加傾向にある。若い脳卒中患者にとって復職は重大な関心事の1つである。

これまでの研究では脳卒中患者の復職率は平均44%であるが、サンプルサイズや脳卒中の種類、関連要因的に偏りがあった。

そこで、若年脳梗塞に限定して「復職していない」率とその理由を大規模にしらべてみたそうな。


1994-2007ヘルシンキ大学病院での、15-49歳で入院直前に1年以上就労していて退院時の神経症状が重度ではない(NIHSS15以下)脳梗塞患者769人について、

年金徴収記録から推定した1-3年後の就労状況と 医療記録との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・非就労率は、1年後 37.6%、2年後 42.0%、5年後 46.9% だった。

・年齢、性別、社会経済状況、入院時の重症度で調整すると、非就労の要因として、

・前頭部の広範な梗塞、アテローム血栓性、心原性、失語症、手脚の麻痺、重度の視野欠損が関連していた。

若年の脳梗塞で軽-中レベルの症状の患者が復職していないことはめずらくなかった、


というおはなし。

図:若年脳梗塞の就労状況
ラザニアプロット:赤が非就労、青は就労、白はデータなし


感想:

裏返すと復職率は1年後 62.4%ってこと。

グラフみると、より若いひとほど復職後に失業するケースが少ないようにみえる。

歳取るほど続けるのはむつかしい。

復職後 なん年間仕事を続けられるのか 日本で

なんとか復職しても仕事は続けられるのだろうか?

2018年10月14日

考え事をしながら散歩する効果


A randomised controlled trial of a walking training with simultaneous cognitive demand (dual task) in chronic stroke
2018  10月  イギリス

脳卒中経験者が地域で安全かつ目的をもって生活するためには単に歩けるだけではなく、歩行中の視覚や聴覚からの複雑な状況変化を判断しながら移動できることが必要である。

しかし脳卒中経験者は運動と認知課題を並行して処理する「二重課題能力」が低下していることがわかっている。

二重課題処理能力を鍛えることで脳卒中経験者の身体活動量が増えたとする報告がわずかながらある。

これをたしかめるべく、10週間の二重課題訓練プログラムを実験してみたそうな。

2018年10月13日

脳卒中経験者の肺炎死を防ぐウォーキング時間は


Associations of Daily Walking Time With Pneumonia Mortality Among Elderly Individuals With or Without a Medical History of Myocardial Infarction or Stroke: Findings From the Japan Collaborative Cohort Study
2018  9月  日本

肺炎は先進国での死亡原因6-8位にあり、高齢者ほど肺炎になりやすい。

いっぽうウォーキングや高強度の運動が肺炎リスクを下げることがわかっている。

そこで、心筋梗塞や脳卒中経験のある高齢者の日々の歩行習慣と肺炎で死亡するリスクとの関連をくわしくしらべてみたそうな。

2018年10月12日

迷走神経刺激の慢性期上肢リハビリ効果


Vagus Nerve Stimulation Paired With Upper Limb Rehabilitation After Chronic Stroke
2018  9月  アメリカ

脳卒中患者にとって上肢機能の麻痺はもっとも深刻な問題の1つである。

しかも上肢訓練の繰り返し回数をふやしてもまったく効果がないことが臨床試験であきらにされたいま、回復を促すべつの方法が求められている。

迷走神経刺激を上肢訓練に組み合わせると機能改善がうながされるとする結果が動物実験で得られている。人でも若干の報告がある。

そこで、慢性期の脳卒中患者について迷走神経刺激の上肢リハビリ効果を検証してみたそうな。


慢性期の脳卒中患者17人について、
全員の身体に迷走神経刺激装置を埋め込んだ。

実験グループ8人と比較グループ9人にわけた。
まず病院で6週間の上肢リハビリを行い、家に帰って90日間上肢リハビリを継続した。家での最初の30日間は迷走神経は刺激しなかった。

電流強度は実験グループが0.8mAで、比較グループには電流を流さなかった。

実験終了後、比較グループには実験グループと同様の電流0.8mAで上肢訓練プログラム(6週間+90日間)を再実行した。

上肢機能スコアFMA-UEを比べたところ、


次のようになった。

・埋め込み手術の際の有害事象が3件あった。

・上肢機能は最終的に、実験グループで9.5ポイント、比較グループで3.8ポイント改善した。

・FMA-UEスコアが6ポイント以上改善した患者の割合は、実験グループで88%、比較グループでは33%だった。

・実験終了後に比較グループにも電気を流し再訓練した結果、実験グループと同様の改善が見られた。

慢性期の脳卒中で上肢麻痺患者に迷走神経刺激と上肢訓練を組み合わせた結果、安全性と機能改善傾向が確認できた、


というおはなし。

図:迷走神経刺激の上肢機能回復効果

感想:

上図のIn-clinicの期間にどのグループもやたら回復しているところが奇妙だ。

インプラント手術を承諾するほど熱烈に実験に期待している患者だから医療現場の雰囲気にのまれ治った気になり易い。

しかも完全にブラインド実験とはいうものの、おそらくは頸部への電流の有無が本人にはわかるため、家に帰って頭が冷えたあとは 電流刺激のないグループは治ったフリをするのをやめてしまう、、、

そういうことだと思う。

[迷走神経刺激]の関連記事

2018年10月11日

脳梗塞が再発して死亡する白人と黒人のちがい


Racial differences in recurrent ischemic stroke risk and recurrent stroke case fatality
2018  10月  アメリカ

脳梗塞の発生率は人種でことなり、白人にくらべ黒人は1.5-3倍以上高いという。

しかし再発率については報告によって状況はまったく異なる。

さらに30日致命率は、初回脳梗塞にくらべ再発では4倍になると言われているものの、人種差の報告はほとんどない。

そこで脳梗塞の1年間の再発率とその30日致命率を白人と黒人で大規模にくらべてみたそうな。


1999-2013のメディケイド加入者の医療記録からランダムに5%を抽出して解析したところ、


次のことがわかった。

・平均年齢80、128789人の脳梗塞記録がみつかり、11.1%が黒人だった。

・脳梗塞の再発は1年間に1000人あたり、白人が108人、黒人154人で、

・黒人の再発リスクは白人の1.36倍だった。

・再発後、30日以内の死亡は黒人の21%、白人16%で、

・関連要因である年齢、性別、収入、併存疾患等で調整すると、黒人の30日致命率は白人の0.82倍になった。

高齢脳梗塞患者の再発リスクは白人にくらべ黒人が高く、再発による30日致命率は黒人が低かった、


というおはなし。

図:脳梗塞再発率の人種差


感想:

黒人はラクナ梗塞がおおいため再発しやすく、白人には心房細動がおおいため心原性の脳梗塞で死に至りやすい、という背景があるようだ。

2018年10月10日

脳卒中にならない体重 400万人調査から


A J-shaped relation of BMI and stroke- Systematic review and dose-response meta-analysis of 4.43 million participants
2018  7月  中国

肥満が脳卒中のリスク要因の1つであることはわかっている。

しかし肥満度(BMI)の違いによって脳卒中リスクがどのように変化するのか(用量関係)については、線型、U型、J型と報告によって異なる。

そこでこれまでの研究をまとめて くわしくしらべてみたそうな。


2018年5月までの関係する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者4432475人と脳卒中事例102466件を含む44の研究がみつかった。

・BMIと脳卒中リスクの用量関係は J型で、(下図)

・BMIが24未満ではさほど変化はなく、BMIが25を超えると脳卒中リスクはおおきく上昇した。

BMIと脳卒中リスクは J型の関係にあり、過体重や肥満だと脳卒中になりやすかった。BMIが23-24のときにもっとも脳卒中リスクは低かった、


というおはなし。
図:400万人のBMIと脳卒中リスク

感想:

BMIが25までは気にしなくてよいってこと。

あと20kg太れるわ。

2018年10月9日

薬にたよらない脳卒中リハビリのおすすめは


Non-pharmacological interventions for the improvement of post-stroke activities of daily living and disability amongst older stroke survivors: A systematic review
2018  10月  イギリス

脳卒中のリハビリテーションでは薬を用いない方法が大勢をしめている。

しかし、これら非薬物的リハビリテーションの高齢患者での研究はおおくない。

そこで65歳以上の高齢脳卒中患者を対象とした非薬物的リハビリテーションについての、これまでの研究をまとめてシステマティックレビューを試みたそうな。


複数のレビュアーが関連する研究を厳選して、データの偏り、エビデンスの質(GRADE)を評価したところ、


次のことがわかった。

・14の非薬物的リハビリテーションについての計72の論文がみつかった。

・各方法と論文数の内訳は、鍼灸1、介護者トレーニング1、CI療法2、ロボット支援8、音楽療法1、神経刺激3、作業療法12、プリズムメガネ3、理学療法17、イメージ訓練6、自己管理教育6、ビデオゲーム1、自走車椅子1、だった。

・日常生活動作の改善が見られたのは、理学療法と作業療法のみだった。

・14あるいずれの方法も、身体障害の改善に効果的とするエビデンスはまったくなかった。

・すべてにおいてエビデンスレベルは低く、研究の数も少なかった。

高齢脳卒中患者への薬物を使わないリハビリテーション方法のうち、理学療法と作業療法のみで日常生活動作への改善効果が確認できた。全体的に報告数がすくないのでさらなる研究を期待する、


というおはなし。
図:DRADE英ビデンスレヴェル

感想:

理学療法と作業療法以外は、やっている内容をそれぞれ容易にイメージすることができる。

ところが理学療法や作業療法については漠然としすぎていて具体的にどんな介入内容を指すのかわからない。

だからこの2つを他と同列に比べるのはフェアでないとおもうんだ。

日本の理学療法士はどういう根拠に基づいて仕事をしているのか?

コクランレビュー:作業療法のエビデンス信用できない

2018年10月8日

なかなか回復できない脳梗塞の位置がわかった


Impact of Ischemic Lesion Location on the mRS Score in Patients with Ischemic Stroke- A Voxel-Based Approach
2018  10月  ドイツ

これまで脳梗塞の予後の良し悪しはCT画像上での梗塞のおおきさから推定されてきた。

とうぜん梗塞の位置も関係しているはずなので、最新の画像解析法である "ボクセル単位の病変と症状のマッピング" (Voxel-based lesion-symptom mapping:VLSM)をつかってくわしくしらべてみたそうな。

2018年10月7日

肩の痛みとの付き合い方


Pain management strategies among persons with long-term shoulder pain after stroke - a qualitative study
2018  9月  スウェーデン

脳卒中で上肢麻痺のある患者の50-80%は肩の痛みに悩まされる。

薬やアームスリング、ミラー療法、電気刺激などの治療法が提案されているがいずれもほとんど効果はなく、肩の痛みは長く続く。

肩の痛みに悩まされてきた脳卒中経験者がどのように適応してきたのかしらべてみたそうな。


発症から2年前後の脳卒中経験者で肩の痛みを訴える13人について個別に面談したところ、


次のことがわかった。

・彼らがとる対策には実践的なものと精神的なものがあって、

・実践的な方法として、家の中で高い棚のものを下に置く、1回の買い物の量をへらして軽くする、着替えしやすいようゆったりとした服を選ぶ、

・肩が痛くなりやすい動作方向や特定のタスクを避けるようにする。たとえば着替えの際に麻痺腕を先に袖に通すなど。

・痛みがひどいときには休憩を入れる、薬を使う、シャワーで温冷刺激を与える、散歩で痛みを紛らわす など。

・精神的な方法として、痛みを受け入れ、痛みに耐え、痛みを無視できるような認識をもつこと。たとえば もっとひどい状況の人がいる、チクチクする痛みよりはましだ、自分は強く楽観的である、などと考える。

脳卒中のあと長期に肩の痛みに悩まされてきた人は実践的かつ精神的な方法をくみあわせて痛みに対処していた、


というおはなし。

図:脳卒中のあとの肩の痛み


感想:

肩の痛いは周囲の人にまったく理解されない点がいちばんきつかった。

原因や理由を説明できないから病人のわがままな泣き言だと思われる。

2018年10月6日

脳卒中のあとの新たな痛みと部位


New-onset pain in the early phase and three months following stroke - data from a multicenter study
2018  9月  ノルウェー

脳卒中のあと何らかの痛みを訴える患者の割合は、測定方法や時期などによって11-54%の幅があるという。

脳卒中になってから「あらたに」発生した痛みの割合とその部位についてくわしくしらべてみたそうな。


ノルウェーの11の病院で発症から14日以内の脳卒中患者390について、
入院時と3ヶ月後に痛み調査をしたところ、


次のことがわかった。

・入院時、9.9%にあらたな痛みの報告があった。

・3ヶ月時点では、この割合は21.8%になった。

・痛みの部位は麻痺側の上肢または両下肢で、

・いずれも入院時よりも3ヶ月後におおかった。

・あらたな痛みは不安スコアと関連があり、半数が日常生活動作への影響を訴えていた。

脳卒中のあとすぐに10人に1人があらたな痛みを訴え、3ヶ月後にはこの割合は5人に1人になった。痛み症状は特に麻痺上肢と両下肢にみられた、


というおはなし。
図:脳卒中後の痛みと部位と時期

感想:

両下肢ってところが新鮮だった。
わからないでもないけど麻痺側の痛みが圧倒的で健常側のそれを同レベルにカウントできないとおもう。

2018年10月5日

睡眠時間と脳卒中リスク 人種と性別での違い


Sleep duration and risk of incident stroke by age, sex, and race
2018  10月  アメリカ

睡眠は脳卒中と関連すると考えられ、睡眠時間は短くても長くても脳卒中リスクが高くなるとするメタアナリシスもある。

これらの関連は性別や人種によっても異なるという報告がいくつかあるので、大規模調査REGARDSスタディのデータをつかってたしかめてみたそうな。


脳卒中歴や睡眠障害のない45歳以上の白人と黒人16733人について調査したところ、


次のことがわかった。

・全体の10.4%は睡眠時間が6時間未満で、6.8%は9時間以上だった。

・6.1年間のフォロー期間中に480件の脳卒中があった。

・睡眠時間と人種および性別と脳卒中リスクにあきらかな関連がみられた。

・特に黒人男性で、睡眠6時間未満は7-8.9時間にくらべ脳卒中リスクが80%低かった。

・いっぽう白人男性は9時間以上の睡眠で脳卒中リスクがほぼ倍になった。

・女性に関してはこれほどの差は生じなかった。

睡眠時間と脳卒中リスクは人種や性別によりおおきく異なり、短時間睡眠の黒人男性は脳卒中リスクが低く、長時間睡眠の白人男性は脳卒中リスクが高かった、


というおはなし。
図:睡眠時間と脳卒中リスクと人種

感想:

睡眠時間は自己申告なので、貧乏暇なしで身体をよくうごかす黒人が細切れになった睡眠時間の一部だけを上げているためではないか、、って言ってる。

2018年10月4日

早期リハビリを勧める理由


Behavioral Effect of Short- and Long-Term Exercise on Motor Functional Recovery after Intracerebral Hemorrhage in Rats
2018  9月  日本

脳卒中後のリハビリ効果には その開始する時期と期間が関係すると考えられる。

動物実験でこれをたしかめてみたそうな。


人為的に脳内出血にしたネズミをつぎの5グループに分けた。

1.脳内出血のみ(運動なし)
2.脳内出血の翌日から14日間運動
3.脳内出血の翌日から7日間運動
4.脳内出血の8日目から7日間運動
5.手術のみで脳内出血なし

運動は30分間のトレッドミル。

複数の行動検査をおこない比較したところ、


次のことがわかった。

・翌日から運動させたグループは、他のグループよりも回復があきらかにすぐれていた。

・8日目から運動させたグループは脳内出血のみのグループと同レベルの回復だった。

脳内出血のあと早くに運動を始めたグループは回復がよかった。この効果は運動させる期間によらなかった、


というおはなし。

図:脳内出血の早期リハビリ効果

感想:

アブストと本文中のこのあたり↓の記述、素人目にもおかしいと思う。
図:謎の記述

ネズミの歳も気になる。

いずれにしても早期リハビリを勧める根拠は いまだ動物実験しかない。

なぜなら人間では真逆の結論↓だから。
【やはり】亜急性期のリハビリは効果ないうえに危険

nature.com:脳卒中の超早期リハビリ やる意味ない

Stroke誌:早期リハビリがんばる意味ない

超早期リハビリで死亡者続出 AVERT続報

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない
ほかにも↓
失語症の早期リハビリ まったく効果ない

超早期リハビリをやってはいけない理由

超早期リハビリには脳の細胞死を促す効果があった!

2018年10月3日

腕の血流をとめるだけの脳卒中治療法とは


Upper Limb Ischemic Postconditioning as Adjunct Therapy in Acute Stroke Patients- A Randomized Pilot
2018  9月  中国

腕や脚の血液の流れを一時的に止めること(虚血コンディショニング)で脳の神経保護効果が得られるとする考え方がある。

虚血コンディショニングで血管内皮の一酸化窒素の放出が促されて血管が拡張し、死にかかっている脳組織の血流が回復するなどの反応が考えられている。

そこで脳卒中になった直後の患者への虚血コンディショニング効果を検証してみたそうな。


平均年齢65、発症から72時間以内の脳梗塞患者60人を2グループにわけた。

実験グループでは血圧計のカフを使って各人の収縮期血圧+20mmHgの圧で健常側の腕を5分間しめつけそのご5分間開放するサイクルを4回おこなった。

もう一方の比較グループには最大30mmHgの圧のみをかけ同様の操作をおこなった。

これを1日1回おこない14日間継続した。

90日後まで効果(NIHSS、梗塞体積、脳灌流MRI、mRS)をフォローしたところ、


次のようになった。

・実験グループでしめつけの痛みで1人がギブアップした。比較グループでのみ2件の再発があった。

・90日後、比較グループよりも実験グループであきらかな神経症状の改善があり、

・脳血流の平均通過時間の左右脳半球での差が小さくなり、

・生活自立度スコアの改善度が高くなり、

・梗塞体積は31.3%減少した。

急性脳卒中後の虚血コンディショニングは安全で、神経症状と脳血流 梗塞サイズを改善した、


というおはなし。
図:脳卒中の虚血ポストコンディショニングと梗塞体積

感想:

虚血コンディショニングには事前(pre)と事後(post)があって、preがもともとのアイデアで、徐々にpostでもいけるんじゃない?ってなってきた感がある。

お金かからないし簡単だからどんどんためしてほしい。

[虚血 コンディショニング]の関連記事

2018年10月2日

nature.com:血液のナトリウム濃度と脳卒中


The association between serum sodium concentration, hypertension and primary cardiovascular events- a retrospective cohort study
2018  9月  イギリス
食塩はおおく摂ると血圧があがり脳卒中などの心血管疾患のリスクになることがわかっている。

その背景メカニズムにあるであろう血中のナトリウム濃度と心血管疾患との関連はよくわかっていないので大規模にしらべてみたそうな。


40歳以上で心血管疾患歴や腎臓に異常のない231545人について、
血中ナトリウム濃度と、
5年間におきた脳卒中など心血管疾患の記録との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・血中ナトリウム濃度と心血管疾患リスクとの関連は Jカーブを描いていた。(下図)

・心血管疾患リスクがもっとも低くなるナトリウム濃度は 141-143mmol/l だった。

・ナトリウム濃度が高い者のうち、高血圧のグループで心血管疾患リスクが高く、正常血圧のグループではそうはならなかった。

・いっぽうナトリウム濃度が低いグループでは血圧の高低にかかわらず、すべての被験者で心血管疾患リスクが高かった。

血中のナトリウム濃度は高くても低くても心血管疾患リスクが上がった。とくに低い場合は正常血圧の者でも心血管疾患になりやすかった、


というおはなし。
図:血中ナトリウム濃度と脳卒中リスク

感想:

ようするに、高血圧でもないのに減塩すると危険ってこと。

これ↓に完全一致。
ランセット誌:塩分減らすとかえって脳卒中になる


141mmolだと1リットルあたりナトリウム約3グラム、ひとの血液量は5リットルほどだからトータルで15g、食塩に換算すると40グラム。

毒のように扱われているけれど、体の中には常におおさじ3杯くらいの塩が流れているのね。

2018年10月1日

ランセット誌:乳製品の脳卒中予防効果


Association of dairy intake with cardiovascular disease and mortality in 21 countries from five continents (PURE)- a prospective cohort study
2018  9月  カナダ

乳製品はこれまで 飽和脂肪酸をおおく含むというそれだけの理由で摂取を最小限にするよう勧められてきた。

乳製品には他の不飽和脂肪酸や腸の働きを整えるプロバイオティクスもおおく含まれていて、そのトータルの働きを見直す研究成果がつぎつぎと得られている。

しかしこれら研究のおおくは欧米のものに偏っているので広く大規模にしらべてみたそうな。


5大陸21カ国の35-70歳の住民136384人を対象として、
食事アンケートを行い、牛乳、ヨーグルト、チーズ、バターの摂取頻度をしらべ、
心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、心不全)の発生を9.1年間フォローして関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・この間に5855件の心血管疾患があった。

・乳製品をまったく摂らない場合と比べて1日2回以上摂る場合の心血管疾患リスクは0.78倍で、とくに脳卒中では0.66倍だった。

・心筋梗塞とのあきらかな関連は見られなかった。

・乳製品の種類別ではチーズとバターとの関連が弱かった。

・地域によらずこれら同様の関連がみられた。

乳製品をおおく摂ると心血管疾患リスクが低下した。とくに脳卒中リスクがおおきく下がった、


というおはなし。
図:乳製品摂取頻度 地域 心血管疾患リスク

感想:

これ↓思い出した。
高血圧のヨーグルト脳卒中予防効果は

脳卒中になりやすいミルク なりにくいミルク

脳卒中を防ぐヨーグルトの量がわかった

乳製品は脳卒中的にアジア人にもいいの?

脳卒中を防ぐミルクとチーズの量が明らかに
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