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2018年8月31日

同名半盲のビデオ鑑賞能力


Measuring the Difficulty Watching Video With Hemianopia and an Initial Test of a Rehabilitation Approach
2018  8月  アメリカ

同名半盲では両目の視野の片側が欠ける。脳卒中患者の8-16%は同名半盲を経験するという。

同名半盲は読書や自動車運転などの日常生活動作におおきな影響があり、テレビやビデオの内容理解に困難をきたすとの報告もある。

そこでビデオ内容をどれくらい理解できないのか、またそれを矯正する方法について実験をしてみたそうな。


脳卒中などの脳損傷により同名半盲になった患者60人と健常者24人について、30秒のビデオを見せ内容を口述させ、その正答度を IA(Information Acquisition)スコアとして比較した。

また健常者の視線データをもとに注意を促すグラフィックガイドを重ねたときのIAスコアの改善度も別の患者21人で評価した。


次のようになった。

・IAスコアは2.8 vs. 4.3 で同名半盲グループがあきらかに低かった。

・ガイド表示があるとIAスコアが0.5ポイント改善した。

同名半盲患者はビデオを観て情報を取得する能力が劣っていた。ガイドになる表示を加えることで若干の改善がみられた、


というおはなし。
図:同名半盲のビデオ理解力

感想:

よく同名半盲と半側空間無視は異なるメカニズムとして説明されているけど、実際はごちゃまぜになっていて おそらく区別はできないとおもうよ。

2018年8月30日

上肢の運動イメージ訓練とネットワーク変化


Motor imagery training induces changes in brain neural networks in stroke patients
2018  8月  中国
運動イメージ訓練では実際の運動はせずに心の中だけで動作訓練をする。

脳卒中で上肢麻痺患者での運動イメージ訓練の効果と神経ネットワークのはたらきはよくわかっていないので実験してみたそうな。


脳卒中で上肢が中等度以上に麻痺した男女20人を2グループに分けた。

両グループとも通常のリハビリを行い、
そのあといっぽうのグループには運動イメージ訓練をほどこした。

運動イメージ訓練は、椅子にすわりテーブル上に両手を置いて目を閉じ、指示にしたがって指や手首を動かす様子を一人称視点でくりかえし心に思い描く。

1回45分間x4週間の訓練を続けたのち、
上肢機能(ARAT,FMA)と運動誘発電位、拡散テンソル画像(DTI)から背側腹側経路の異方性変化をくらべた。


次のようになった。

・運動イメージグループで上肢機能の回復があきらかにすぐれていて、

・短母指外転筋への運動誘発電位の強度はおおきくなり、

・背側経路の異方性がおおきくなっていた。

通常のリハビリに運動イメージ訓練を加えることで上肢機能が改善し、背側経路が強化された、


というおはなし。
図:運動イメージ訓練と背側経路

感想:

DTIは機能や働きを見ているわけではないのと、処理の仕方でどうとでも表現できることから刺身のツマのようなものとしての認識がじぶんの中にはある。

2018年8月29日

軽度なのに認知障害→睡眠が短かった


Cognitive impairment and sleep disturbances after minor ischemic stroke
2018  8月  中国

脳卒中患者の25-81%は たとえ軽症であったとしても認知障害を示すという。

また睡眠時無呼吸症は脳卒中の発生要因の1つと考えられているが、脳卒中後の認知障害との関連についてはほとんど知られていない。

そこで、軽症脳卒中患者の認知障害および睡眠パラメータとの関連をくわしくしらべてみたそうな。


軽症(NIHSS 5以下)の脳梗塞から14日後の患者84人と健常者36人について、

複数の認知機能検査と睡眠ポリグラフ検査を行い関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中患者の81.4%に認知障害、74.4%に睡眠時無呼吸症がみられた。

・脳卒中患者はとくに注意力、作業記憶、実行機能が劣っていた。

・睡眠時無呼吸症は 50.0 vs. 80.0% で認知障害のある患者におおかった。

・またトータルの睡眠時間は 435 vs. 347分 で認知障害患者が短かった。

・教育期間、睡眠時間、血中酸素飽和度の最低値 が認知障害のリスク要因だった。
軽症脳卒中患者の認知障害は珍しくなかった。おもに注意力、作業記憶、実行機能が低下した。そのリスク要因として短い睡眠時間と低酸素症の可能性が示された、


というおはなし。
図:軽症脳卒中の認知障害

感想:

今朝「理研が遺伝子操作でレム睡眠のないネズミを作ったら記憶力が悪かった」というニュースがあったので関心をもった。

2018年8月28日

アンフェタミンの脳卒中リハビリ効果


Effect of Dextroamphetamine on Poststroke Motor Recovery
2018  8月  アメリカ

動物実験では脳卒中のあと数週間以内のアンフェタミン投与と課題訓練により運動機能の回復が促されるとする報告がある。

しかし人に応用したいくつかの調査では相反する結果が得られている。

そこでくわしい臨床実験(The Amphetamine-Enhanced Stroke Recovery Trial)をやってみたそうな。


発症から10-30日以内の脳梗塞患者1665人から64人を厳選して2グループにわけた。

一方には10mgのアンフェタミンをあたえ、もう一方のグループには偽薬をあたえた。

その1時間後に理学療法をおこなった。これを6セッションつづけ、3ヶ月後の回復度を比較したところ、


次のようになった。

・運動機能評価(Fugl-Meyer motor assessment)および

・神経症状(NIHSS)、上肢機能( Action Research Arm Test)、機能障害度(modified Rankin Scale score)、機能的自立度(Functional Independence Measure)、歩行スピードと距離、認知機能 等 いずれも両グループ間で差はなかった。

通常のリハビリにアンフェタミンを加えても脳梗塞患者の運動機能に特別な変化はもたらさなかった、


というおはなし。
図:アンフェタミンと脳卒中機能回復

感想:

薬のんだ直後はとてもハッピーなはずで、きっと何度でも受けたくなるリハビリにちがいない。

[アンフェタミン]の関連記事

2018年8月27日

上肢麻痺でこの筋肉が短くなる


Motor Impairment-Related Alterations in Biceps and Triceps Brachii Fascicle Lengths in Chronic Hemiparetic Stroke
2018  8月  アメリカ

脳卒中の上肢麻痺がながく続くことにより骨格筋に変化が生じうる。これまで上腕筋肉の長さを評価した調査は非常にすくないのでくわしくしらべてみたそうな。


慢性期脳卒中で上肢が中等度以上に麻痺した患者11人と健常者11人について

肘を曲げる上腕二頭筋と肘を伸ばす上腕三頭筋の長さを超音波断層画像上で測定し比較した。

2018年8月26日

母乳栄養した母親は晩年脳卒中になりにくい


Breastfeeding History and Risk of Stroke Among Parous Postmenopausal Women in the Women's Health Initiative
2018  8月  アメリカ

母乳でこどもを育てた(母乳栄養)経験があると乳がんや卵巣がん、高血圧 高脂血症 糖尿病になりにくいことがわかっている。

母乳栄養と脳卒中との関連についての調査はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。


女性の健康イニシアティブ観察的研究(Women's Health Initiative Observational Study)のデータをもちいて、

平均年齢64、出産経験のある80191人について脳卒中の発生を12.6年間フォローし 授乳期間や人種との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・3.4%に脳卒中がおきた。58%に母乳栄養の経験があった。

・母乳栄養経験のない者にくらべると、母乳栄養経験により脳卒中リスクは0.77倍になった。

・この関連は黒人で強く、脳卒中リスクは0.52倍だった。

・母乳による授乳期間が長いほど脳卒中リスクは低かった。

母乳栄養の経験が長いほど晩年の脳卒中リスクは低かった、


というおはなし。
図:授乳の脳卒中予防効果


感想:

母乳栄養をえらぶ女性のヘルシーライフスタイルを考慮にいれても同じ結果なんだって。

いっぽう人種の差は、黒人で母乳栄養できる女性は生活に余裕があるからではないかって言ってる。

2018年8月25日

BEFAST vs. FAST の脳卒中判定力


Prognostic Value of BEFAST vs. FAST to Identify Stroke in a Prehospital Setting
2018  8月  アメリカ

難しい訓練を経ずとも脳卒中を判定できる方法として Face-Arms-Speech-Time のFASTスケールがある。

しかしこの方法では5人に1人以上の脳卒中を見逃してしまう。さらに後方循環系の脳卒中の場合には その見逃し率は38%に達するという。

そこでFASTに 共調運動(Balance)と複視(Eyes)を加えた 「BEFASTスケール」が提唱されているのでその脳卒中判定能をFASTスケールとくらべてみたそうな。


2015年のカルフォルニア サンタクララの救急救命センターに運び込まれた発症から6時間以内の脳卒中を疑われる患者359人について、

BEFASTスケールを適用してスコアリングを行い最終診断結果との関連を解析したところ、


次のようになった。

・159人が脳卒中で、200人は脳卒中でなかった。

・脳卒中患者と非脳卒中患者のNIHSSスコアの比は 7 vs. 2、BEFASTでは 3 vs. 1、FASTでは 2 vs. 1 だった。

・顔の垂れ下がり率が 52% vs. 24%、腕の脱力率が 55% vs. 20% であきらかに脳卒中患者に顕著で、BEFASTのBalanceとEyesによってもたらされる違いをおおきくうわまわっていた。

・BEFASTとFASTのROC曲線下の面積はそれぞれ0.70, 0.69で脳卒中検出精度に差はみられなかった。

FASTスケールにBalanceとEyesを加えても脳卒中判定能は改善しなかった、



というおはなし。
図:BEFAST NIHSS

感想:

当日をおもいだすに、最初に脚にきてフラついていた。けど気合が足りないだけだとおもっていた。
脳卒中を見逃さない BE-FAST とは

2018年8月24日

失語症のtDCS JAMA Neurology


Transcranial Direct Current Stimulation vs Sham Stimulation to Treat Aphasia After Stroke- A Randomized Clinical Trial
2018  8月  アメリカ

この10年間、脳卒中後の失語症治療にtDCS(経頭蓋直流電気刺激)が有望であるとする報告がいくつもあがってきている。

この効果をたしかめるべく(二重盲検の)ランダム化比較試験をおこなってみたそうな。


脳卒中でブローカ失語になって数年経つ患者74人についてリアルtCDSと偽tDCSの2グループに分けた。

1回45分間の失語症訓練セッションの最初の20分間を通電した状態でおこなった。

各人fMRIで確認した側頭部の言語中枢位置にプラス電極を貼った。

偽刺激では20分間のうちの最初の30秒間だけ通電した。

これを3週間、計15セッション繰り返したのち、呼称テストで効果を評価 比較した。


次のようになった。

・呼称テストの正答数は、リアルtDCSで13.9、偽tDCSは8.2、

・その差5.7は70%の改善を示しており、すくなくともtDCSが「無効」ではないことを示していた。

・有害事象はなかった。
脳卒中で失語症患者へのtDCSに可能性を感じる、さらなる研究をすすめるべき、


というおはなし。
図:tDCSで失語症治療

感想:

tDCSは通電中に電極部位がチクチクする。ということは
リアル刺激は20分間チクチクするいっぽう、偽刺激は最初の30秒だけしかチクチクしない。
これではとても盲検とはいえない。

この疑問にたいする答えが「チクチク感は はじめの数十秒で麻痺するから大丈夫なんです!」とのこと。 ほんとかよ?

Stroke誌:tDCSは失語症治療に効果なし

2018年8月23日

ランセット誌:食塩は13gまでオッケー 脳卒中的に


Urinary sodium excretion, blood pressure, cardiovascular disease, and mortality- a community-level prospective epidemiological cohort study
2018  8月  カナダ

現在、WHOが勧める1日のナトリウム摂取量 の上限2g(食塩5g相当)を達成できている国はなく、しかもその目標数値が血圧を下げ心血管疾患を減らすとする信頼できる研究成果は じつは世に存在していない。

それどころか最近の調査ではナトリウム摂取量が少ないとかえって心血管イベントが増えることがあきらかになってきている。

そこで5大陸18カ国で実施されたPURE研究(Prospective Urban Rural Epidemiology study)をつかってこの関連をたしかめてみたそうな。


健康な35-70歳の17万人について心血管疾患を8年間ほどフォローした。

1日のナトリウム摂取量は採集した尿から推定した。


次のことがわかった。

・中国80%の地域では1日の平均ナトリウム摂取量は5gよりおおく、他の国々の84%は3-5gの範囲にあった。

・全体としてナトリウムが1gふえるごとに血圧が2.86mmHgあがった。ただしナトリウムのトータル量がおおいグループでのみの傾向だった。

・ナトリウム摂取量と心血管イベント(脳卒中など)の関連は単なる比例ではなく、ナトリウムが少ないグループ(4.43g未満)では逆相関で、おおいグループ(5.08g以上)でのみ正に相関する傾向がみられた。

・特に脳卒中との関連が 中国(平均摂取量5.58g)で他の国々(4.49g)より強かった。

・これら心血管イベントはカリウム摂取量がふえるにつれ減少した。
一日のナトリウム摂取量が5gを超える地域でのみ脳卒中など心血管疾患がおおかった。減塩政策はこれらの地域だけでなされるべきであろう、


というおはなし。
図:塩分と脳卒中 中国人

感想:

ナトリウム5gは2.54倍すると食塩で13g相当。日本の国民栄養調査をみると平成27年に男11.0g 女9.2gだからまだ余裕がある。

塩をいっぱいまぶしたおにぎりはうまいからね。
ランセット誌:塩分減らすとかえって脳卒中になる

2018年8月22日

80歳からのくも膜下出血


Long-term outcomes among octogenarians with aneurysmal subarachnoid hemorrhage
2018  8月  アメリカ

80歳超えのくも膜下出血患者を対象とした長期の予後調査はひじょうにすくない。

そこでメディケア・メディケイドサービスセンターの全国レベルのデータベースをつかってくわしくしらべてみたそうな。


2008-2011の80歳以上でくも膜下出血になりクリップもしくはコイル治療を受けた患者1298人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・1年以内に患者の56%が死亡またはホスピス送りになった。さらに8%が介護施設へゆき、36%が自宅へ退院できた。

・クリップよりもコイル治療で自宅へ退院できる率が高かった。

80歳代くも膜下出血患者は1年以内に56%が亡くなり、36%が自宅へ戻れた。この年代にはコイル治療が向いているかも、


というおはなし。
図:80歳超えのくも膜下出血の予後

感想:

これだけ高齢になると手術しない機会もおおいにあるはずなんだけど、それは評価の対象にはならず記録にないんだって。

2018年8月21日

脳卒中の再入院率さいきんのトレンド


Estimates and Temporal Trend for US Nationwide 30-Day Hospital Readmission Among Patients With Ischemic and Hemorrhagic Stroke
2018  8月  アメリカ
再入院率は病院ケアの質を反映していると考えられる。

脳卒中について全国レベルでの再入院率の傾向調査はまだないのでくわしくしらべてみたそうな。


アメリカ患者の半数をカバーする
医療費および利用状況に関する調査プロジェクト(Healthcare Cost and Utilization Project)
のデータベースをもちいて 2010-2015の脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血の再入院率の推移および病院の教育研究機関としてのステータスとの関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・平均年齢70、2078854人の患者を対象とした。

・30日再入院率は、脳内出血13.70%、脳梗塞12.44%、くも膜下出血11.48%の順に高かった。

・2010-2014に年率3.3%で再入院率が低下した。

・教育研究の機能を持たない病院をでた患者は再入院率があきらかに高く、病院が扱う患者数が増えるほど再入院率は上昇した。

・再入院の理由は再発、敗血症の順におおかった。

脳卒中患者で年間3.3%の再入院率の改善がおきている。患者数のおおい非教育研究病院の医療の質にさらなる改善の余地がありそうである、、


というおはなし。
図:脳卒中の再入院率と教育研究

感想:

大学病院のなっとくの安定感↑。

2018年8月20日

nature.com:喫煙と高血圧はくも膜下出血患者に良い


Impact of Comorbidities and Smoking on the Outcome in Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage
2018  8月  ドイツ

くも膜下出血は脳卒中の5%を占め女性におおい。その発生率はこの10年間で低下していて、喫煙や高血圧、飲酒習慣の改善によると考えられている。

くも膜下出血の予後にたいする喫煙や高血圧の影響についてはこれまで相反する結果がえられているため、くわしくしらべてみたそうな。


くも膜下出血で脳動脈瘤治療ずみの患者203人について12ヶ月後までフォローした結果、


次のことがわかった。

・55.7%が回復良好(mRS 0-2)で、42.4%は回復不良(mRS 3-6)だった。

・1年後の回復不良リスクは喫煙習慣があると0.21倍、高血圧では0.18倍になり、いずれも保護効果を示した。

・1年後の死亡リスクについても同様で、喫煙と高血圧があきらかな予防因子だった。

・糖尿病や高コレステロール血症ではこのような保護効果はみられなかった。
くも膜下出血の発生要因である喫煙と高血圧が、回復良好の予測因子でもあった、


というおはなし。
図:喫煙 高血圧 くも膜下出血の予後悪化リスク


感想:

rt-PAが喫煙患者によく効くパラドックスと似ている。

喫煙や動脈硬化で日頃から虚血気味な脳は、くも膜下出血のあとの血管攣縮のえいきょうに鈍感になっているのではないか、、

[喫煙パラドックス]の関連記事

2018年8月19日

つぎの脳動脈瘤がみつかってしまったら


Impact of Aneurysm Multiplicity on Treatment and Outcome After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage
2018  8月  スイス

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血患者の20-33%は複数の脳動脈瘤(多発脳動脈瘤:MIA)を持つという。単発の脳動脈瘤(SIA)とくらべたときのMIAの予後や治療方針については未だあきらかになっていない。

そこでスイスのくも膜下出血患者データベース(Swiss Study of Subarachnoid Hemorrhage:SOS)を使ってくわしくしらべてみたそうな。


2009-2014のくも膜下出血で初日に死亡しなかった動脈瘤を手術済みの1689人について
MIAまたはSIAでの
あらたな脳卒中の発生、機能回復度、死亡率との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・26.4%がMIAの患者だった。

・あらたな脳卒中の発生は 19.3% vs 15.1でMIAグループにおおかった。

・局所的な神経障害もMIAグループであきらかにおおかったが、

・機能回復度、生存率の点でMIAとSIAでグループ間の差はなかった。

多発脳動脈瘤のくも膜下出血患者では短期的にあらたな脳卒中を起こす率は高かったものの、機能回復度や生存率に悪影響をおよぼすことはなかった、


というおはなし。
図:多発脳動脈瘤の死亡リスク

感想:

読むと あらたにみつかった未破裂の脳動脈瘤(bystander aneurysms)のほぼ8割が追加の手術でクリップかコイルをしている。

未破裂だから放置しておいてもいいはずなのに手術率が高い。おそらくはこういう↓こと。

患者は最初の動脈瘤で手術への心理的ハードルが低くなっているので追加の手術を受け入れやすい。しかも未破裂とはいっても もはや健常者ではないので手術に失敗しても言い訳がたつ。
これらの状況が手術経験の少ない医師への練習台需要とマッチするため、高率で手術がなされるのだと考える。

脳に動脈瘤がいくつもできる人の特徴

脳動脈瘤は次から次へとできてしまうの?

2018年8月18日

水分とる日本人は脳卒中で死なない


Water intake from foods and beverages and risk of mortality from CVD- the Japan Collaborative Cohort (JACC) Study
2018  8月  日本

WHOの勧める一日の水分摂取量は男性2.9リットル、女性2.2リットルである。

体内の水分は血液量や血圧 心拍数と関係する。水分をおおく摂ることで心血管疾患死亡率が低下するという報告があるいっぽう、なんの関連もないとする報告もある。

そこで日本の大規模研究JACCのデータをつかってたしかめてみたそうな。


40-79歳の男性22939人と女性35362人について死因を19.1年間フォローした。

水分摂取量は食事アンケートから推定し 関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・この間に男性1637人、女性1707人が心血管疾患で死亡した。

・水分摂取量と心血管疾患リスクは男女ともに逆相関にあった。

・水分をもっともおおく摂っているグループの心血管疾患死亡リスクは男性で0.88倍、女性0.79倍だった。

・同様に脳梗塞死亡リスクについて女性で0.70倍、男性では関連を確認できなかった。

・脳出血死亡リスクと水分摂取量との関連はなかった。

食事や飲料からの水分摂取量がおおいと男女ともに心血管疾患死亡リスクが低かった。脳梗塞死亡リスクでも女性で同様の関連を確認した


というおはなし。
図:水分摂取量と脳梗塞死亡リスク

感想:

夏は水分足りなくなると左半身のしびれが強くなるからすぐわかる。
水をたくさん飲むと脳卒中にならない、はホントだった

努めて水を飲んでいれば脳卒中で死なないのか?

2018年8月17日

電気けいれん療法と脳卒中


Electroconvulsive therapy and later stroke in patients with affective disorders
2018  8月  デンマーク

電気けいれん療法(Electroconvulsive therapy:ECT)は気分障害に用いられることがあり、抗うつ薬が効かない患者や脳卒中後うつにも使えると考えられる。

ECTの副作用として健忘症、頭痛、失見当などがある。心血管パラメータや脳循環系への影響から理論的には脳卒中の引き金になりうるがそのエビデンスはみつかっていない。

そこでECTと脳卒中との長期的関連をくわしくしらべてみたそうな。


2005-2016の情動障害の患者174534人の記録から、

脳卒中歴のない162595人と
脳卒中歴のある11939人についてECTとの関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中歴のないグループでは3.6%がECTをうけ、3665件の脳卒中がありこのうち165人がECTをうけていた。

・このとき50歳未満に限定するとECTと脳卒中の関連はなく、50歳以上ではECTにより脳卒中リスクが0.69倍に下がった。

・脳卒中歴のあるグループでは1.9%がECTをうけ、2330人が脳卒中を再発してこのうち26人がECTをうけていた。

・このときECTと脳卒中の関連は確認できなかった。

電気けいれん療法は脳卒中やその再発リスクとあきらかな関連はなかった、


というおはなし。
図:電気けいれん療法

感想:

電気けいれん療法は家畜を屠殺する際に効率よく意識を飛ばすために洗練されてきた方法なのだという。

21世紀なんだからもうすこしましなやりかたはないのかね。

2018年8月16日

体重が少ないひとの心原性脳塞栓


Low Body Mass Index is a Poor Prognosis Factor in Cardioembolic Stroke Patients with NonValvular Atrial Fibrillation
2018  8月  日本

ボディマス指数BMIと脳卒中との関連については数多くの研究があって、BMIが高いほど脳梗塞になりやすく、日本人ではBMIが低いとその予後はよくないとされている。

さらに日本では高齢化がすすみ心房細動由来の心原性脳塞栓がふえている。また欧米にくらべ肥満はすくなく低体重がおおい。

そこで心房細動で心原性脳塞栓の患者の予後とBMIとの関連をしらべてみたそうな。


心臓弁に異常のない心房細動で心原性脳塞栓の患者419人について、BMIで 低(<18.5)、標準(18.5-25.0)、肥満(>25.0)の3グループにわけて、

入院時の重症度、退院時の回復度をくらべたところ、


次のようになった。

・入院時の重症度NIHSSは、低>標準>肥満の順に高く、低体重グループがもっとも重かった。

・退院時の回復度mRSも、低>標準>肥満の順に高く、低体重グループがもっとも悪かった。

・低体重は重症かつ予後不良のあきらかな要因だった。

・肥満は重症度や回復度に影響しなかった。

低体重で心房細動の心原性脳塞栓になった患者は 重症でかつ回復が良くなかった、


というおはなし。
図:心原性脳塞栓の予後と肥満度

感想:

スリムで健康そうに見えるひとがじつはいちばん酷かった、という意味での肥満パラドックスか。

2018年8月15日

脳内出血で血圧を下げ過ぎてはいけない理由


Cerebral ischemia and deterioration with lower blood pressure target in intracerebral hemorrhage
2018  8月  アメリカ

脳内出血患者のおおくは血圧が上昇した状態で入院してくる。急性期の彼らへの降圧治療の目標血圧値にこれまであきらかな根拠はなかった。

また彼らには出血部位から離れた位置で梗塞が起こることがあり 降圧治療との関連が指摘されてきた。

脳出血患者への降圧治療の臨床試験INTERACT-2の結果をうけ、2014年に目標収縮期血圧をこれまでの160から140mmHgに変更した。

この前後1年間の治療結果から急性期の脳内出血患者への降圧目標値とあらたな梗塞の発生との関連をしらべてみたそうな。


2013Jan.-2014Dec.の脳内出血患者119人について目標収縮期血圧べつに、
グループ1:160mmHgの62人
グループ2:140mmHgの57人
にわけた。
24-72時間の血圧とディフュージョンMRIによる急性梗塞検査との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・24時間の平均血圧は134 vs143 mm Hgでグループ2が低かった。

・72時間の最低血圧も106 vs 112 mm Hgでグループ2が低かった。

・急性脳梗塞は32% vs 16%でグループ2におおく、

・急性の神経機能低下も19% vs 5%でグループ2におおかった。

・72時間内の最低収縮期血圧が120以下になった患者で急性脳梗塞とあきらかな相関があり、

・130以上あった場合には脳梗塞は起きなかった。

・急性脳梗塞が起きると目標血圧にかかわらず退院時の神経症状はかなり悪かった。

急性期脳内出血患者の収縮期血圧を140mmHgを目標に下げる場合、勢い余って120未満にしてしまうと脳梗塞をおこしやすくなることがわかった、


というおはなし。
図:脳内出血と血圧降下からの脳梗塞

感想:

これは急性期のはなしだけど、慢性期でも背景はおなじとおもう。

脳のすみずみに血を巡らすために高めの血圧が必要なひとたちがいる。
彼らが薬で血圧を下げるほど 頭は働かなくなりやがて脳は壊死する。

2018年8月14日

脳内出血 20年間のトレンド


The impact of risk factor trends on intracerebral hemorrhage incidence over the last two decades-The Tromsø Study
2018  7月  ノルウェー

脳内出血は脳卒中全体の10-15%を占め 脳梗塞にくらべて症状は重く回復は悪い。

脳内出血の発生率とリスク要因について過去20年間の傾向をくわしくしらべてみたそうな。


ノルウェーのトロムソ住民28167人について脳内出血の発生を1994年からフォローしたところ、


次のことがわかった。

・219人が脳内出血になった。

・高齢、男性、高血圧が脳内出血の関連要因だった。

・特に高血圧は非脳葉型出血との関連がつよかった。

・女性の脳内出血罹患率は非脳葉型の減少にともないおおきく低下した。男性のそれはかわらなかった。

・血圧は男性よりも女性でおおきく低下していた。

・高血圧のおおくは未治療で、治療していても十分に下がっていなかった。

この20年間で脳内出血の罹患率のあきらかな低下が女性で確認できた。男性は変わらなかった。この理由として女性の血圧がおおきく低下したことが考えられる、


というおはなし。
図:女性 非脳葉性出血 20年トレンド

感想:

なぜ女性の血圧がさがったのか?

2018年8月13日

高血圧の新ガイドラインで脳卒中経験者はどうなる?


Nationwide Impact of the 2017 American College of Cardiology-American Heart Association Blood Pressure Guidelines on Stroke Survivors
2018  8月  アメリカ

14のランダム化比較試験のメタアナリシスから 脳卒中経験者は降圧薬治療により再発リスクが30%ちかく低下することが示されている。

いっぽう 高血圧にかんするこれまでのガイドラインは、
高血圧の予防,発見,診断および治療に関する米国合同委員会の第7次報告 seventh report of the Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure(JNC7)
にもとずくもので、
140/90 mmHg以上を高血圧としていた。

2017年、あらたにアメリカ心臓病学会/アメリカ心臓協会のガイドライン American College of Cardiology/American Heart Association hypertension guidelines (ACC/AHA)
ができて、130/80 mmHg以上を高血圧とするようになった。
さらにこのガイドラインでは130/80未満であっても降圧薬を始めるよう勧めている。

この変更により脳卒中経験者にしめる高血圧の割合がどのくらい増えるのか しらべてみたそうな。


2003-2014の米国国民健康栄養調査の記録をもちいて解析したところ、


次のことがわかった。

・ACC/AHA基準では脳卒中経験者の49.8%が、JNC7基準では29.9%が高血圧に相当した。

・目標血圧に達していない脳卒中経験者はACC/AHAで56%、JNC7では36.3%だった。

・2003-2010に、130/80未満の脳卒中経験者の死亡率は5.55%、140/90未満のそれは8.25%であり 新基準により死亡率の32.72%の低下が期待できた。

高血圧治療にかんするACC/AHAの新基準を採用することでこれまでのJNC7の場合よりも脳卒中経験者にしめる高血圧患者が67%増加することになる、


というおはなし。
図:ACC/AHA JNC7 Hypertension


感想:

最終的にどの基準を採るかは製薬会社が決めることではなくて薬を飲む自分自身だかんね。

2018年8月12日

植物性たんぱく質が脳卒中を防ぐ


Vegetable Protein Intake was Inversely Associated with Cardiovascular Mortality in A 15-Year Follow-Up Study of A General Japanese Population
2018  8月  日本

これまで食事から摂るたんぱく質の量が血圧と逆相関にあるという報告がいくつかある。

しかしたんぱく質の種類が植物性と動物性のどちらが血圧や脳卒中など心血管疾患と関連するかについては 結論がでていないのでくわしくしらべてみたそうな。


日本全国300箇所の住民で30歳以上 7744人の健康な男女について食事アンケートを行い、心血管疾患の発生を13.9年間フォローし関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・1213人が死亡し、そのうち29.2%が心血管疾患が原因だった。

・植物性たんぱく質が総カロリー比で1%増えるごとに脳出血死亡リスクが0.58倍になり、

・とくに高血圧でないグループに限定するとこの脳卒中死亡リスクは0.50倍だった。

植物性たんぱく質をおおく摂ると脳卒中など心血管疾患の予防になった、


というおはなし。

図:とうふたんぱく質図:納豆たんぱく質

感想:

脳出血にいいみたいだ。豆腐と納豆を努めてたべて、植物性ゆえに足りない必須アミノ酸は他の食材から自然に補われるからよしとしよう。

2018年8月11日

桜島大根が脳卒中を予防する?


Elucidating the Improvement in Vascular Endothelial Function from Sakurajima Daikon and Its Mechanism of Action- A ComparativeStudy with Raphanus sativus
2018  8月  日本

血管は外膜 中膜 内膜の3層構造になっていて内膜にある血管内皮細胞が一酸化窒素NOを介して血管の収縮 拡張をコントロールしている。

つよい酸化ストレスが加わると血管内皮細胞のNO産生能力が弱くなり脳卒中などにつながると考えられている。

大根には抗酸化 抗高血圧 抗血栓作用が報告されていることから、世界最大としてギネス記録にある「桜島大根」について血管に作用するそれらの効果とメカニズムをしらべてみたそうな。


人とブタの血管内皮細胞を桜島大根の抽出液に曝し、青首大根のそれと比較したところ、


次のことがわかった。

・桜島大根では一酸化窒素の産生が青首大根よりも大きくなった。

・このはたらきにはトリゴネリン (trigonelline)という成分が関わっていた。

桜島大根には血管内皮細胞の一酸化窒素産生能力を改善する効果が他の大根よりも強く、そこにはトリゴネリンが関わっていた、


というおはなし。
図:桜島大根の血管作用メカニズム

感想:

ニュース記事がいくつかでてたので関心をもった。

鹿児島県民はさぞ脳卒中フリーかとおもいきや、

厚労省のページみると、脳卒中率は3位、高血圧は1位、、、\(^o^)/

2018年8月10日

性機能不全 脳卒中とほかの神経疾患


Everything you always wanted to know about sex and Neurology- neurological disability and sexuality
2018  7月  アルゼンチン

慢性的な神経疾患は性機能不全をもたらすことがある。

性機能不全の理由として、脳皮質や神経路への直接のダメージ、筋萎縮や痙縮といった体の変化、うつ 自尊心の低下といった心理社会的要因、が考えられる。

そこで脳卒中のほか いくつかの代表的な神経疾患について性機能不全の割合と重症度をしらべてみたそうな。


発症から1年以上経つ患者で 筋萎縮性側索硬化症(ALS)9人、多発性硬化症(MS)12人、パーキンソン病(PD)13人、脳卒中(CVDs)9人と健常者29人について、

男性は国際勃起機能スコア(International Index of Erectile Function)
女性は 女性性機能指数(Female Sexual Function Index)
をもちいて評価 比較したところ、


次のことがわかった。

・平均年齢は54で、性機能不全は患者の77.5%に、健常者の22.5%にみられた。

・身体障害と性機能不全にあきらかな関連がみられた。

・パーキンソン病では全員が性機能不全で、多発性硬化症はほぼ健常者レベル、

・脳卒中患者では併存疾患とその治療内容が性機能不全に関係していた。

性機能不全は患者の身体障害レベルと関連があった、


というおはなし。
図:神経疾患別の性機能不全重症度割合

感想:

そうそうたる難病たちとならべていただいて光栄だ。

[性機能不全]の関連記事

2018年8月9日

運動イメージ能力と半側空間無視


Motor imagery in chronic neglect- An fMRI pilot study
2018  8月  ドイツ

脳卒中患者の運動イメージ訓練が半側空間無視にも有効であるとする報告がいくつかある。

このときの脳の働きをくわしくしらべてみたそうな。


右脳損傷の脳卒中で半側空間無視の慢性期患者9人について、

親指と他の指をタップする課題(finger opposition task)を心のなかで行わせた。

このときの脳のはたらきを脳機能MRIで観察したところ、


次のことがわかった。

・非麻痺手の運動イメージは、左脳の1次体性感覚野、運動前野および補足運動野が活動し、

・麻痺手の運動イメージでは、左脳の運動前野、補足運動野および背外側前頭前野の働きがあった。

・発症からの時間と視覚的にイメージ操作する能力がおおきいほど麻痺手イメージ中の補足運動野の活動が小さかった。

・半側空間無視が重症であるほど麻痺手イメージ中の補足運動野の活動はおおきかった。
麻痺手の運動イメージ中の補足運動野の活動をとおして運動イメージ能力が無視症状にたいして代償的に働くことを示せた、


というおはなし。
図:運動イメージと無視

感想:

なるほど、イメージができていないものはたとえ目の前にあっても見えないってことか。

2018年8月8日

若年者の脳卒中入院率 最近の傾向


Stroke hospitalization trends of the working-aged in Finland
2018  8月  フィンランド

脳卒中の発生率は低下傾向にあるといわれているが、若年層に限定すると必ずしもそうはならず調査によりおおきく異なる。

これをフィンランドの全患者についてたしかめてみたそうな。


2005と2014に18-64歳だった脳卒中患者記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・10万人あたりの入院率は、この間に脳内出血で15.2%低下、くも膜下出血は26.5%低下していた。この傾向は男女で共通していた。

・脳梗塞については入院率の低下は男性のみで女性にはみられなかった。

・しかし男性の35-44歳に限定すると脳梗塞入院率は37.5%高くなった。

・全体として脳梗塞患者の入院期間は減少したが、

・脳内出血とくも膜下出血の入院期間は変わらなかった。

・院内死亡率は脳梗塞で42.8%低下したが、脳内出血とくも膜下出血では変わらなかった。

フィンランドでは労働年齢層の脳卒中入院率が低下傾向にあったが、35-44歳男性の脳梗塞についてはその限りではなかった。脳梗塞の入院期間と院内死亡率の低下は重症な患者の減少と治療技術の向上を意味するのかも、


というおはなし。
図:血栓溶解療法の適用率変化2004-2014

感想:

脳内出血とくも膜下出血の入院率低下は血圧や喫煙コントロールの成果なんだろうけど、一旦なっちゃうと結果は相変わらずってことか。

2018年8月7日

死にたい想い 男女のちがい


Gender-specific factors related to suicidal ideation among community-dwelling stroke survivors- The 2013 Korean Community Health Survey
2018  8月  韓国

脳卒中経験者の自殺リスクは高い。

死にたいと思いを巡らす「自殺念慮」のある脳卒中経験者について男性と女性とでどのような特徴があるものか大規模にしらべてみたそうな。

2018年8月6日

nature.com:降圧薬を飲まないのは認知機能が低いから


Association between cognitive impairment and poor antihypertensive medication adherence in elderly hypertensive patients without dementia
2018  8月  韓国

高血圧の治療には降圧薬を飲み続けることが必要であるが、そうならない場合が少なくない。

とくに認知症の患者では服薬順守率がひくいことが報告されている。

高齢者について 認知症ではないレベルの認知機能の低下と服薬順守率との関連については結論がでていないのでくわしくしらべてみたそうな。


韓国の国民健康保険調査から高齢で高血圧の20071人を抽出し、処方箋の発行頻度から降圧薬の服薬順守率を推定し、認知機能評価との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・服薬順守率80%未満の高血圧患者が16.4%いた。

・認知機能の低さと服薬順守率の低さは正の相関があった。

・高収入、都会住まい、脳卒中や糖尿病などの経験者では順守率が高かった。

・しかしがんを患っていると順守率は低かった。

高齢で認知症とまでいかなくても認知機能の低下がみられる高血圧患者の服薬順守率は低かった、


というおはなし。
図:認知障害


感想:

頭のはたらきが弱いから薬を飲みつづけられないということか。自分は3年前に勝手にきっぱりと薬をやめた。

つぎつぎと高血圧の基準をさげることで積極的に病人を創り出そうとする世にあって、疑いもなく薬を飲み続けられるほうが認知機能的に問題が、、、と思うよ。
NEJM誌:脳卒中で死なない血圧は120未満だからね

メモ:落雷でルーターがだめになった。スマホ経由で更新。

2018年8月5日

孤独感 社会的孤立と 脳卒中


Loneliness, social isolation and risk of cardiovascular disease in the English Longitudinal Study of Ageing
2018  8月  イギリス

孤独感や社会的孤立が脳卒中など心血管疾患のリスクを上げるとする報告が増えている。

孤独感や孤立による喫煙や運動不足、自己肯定感の低下、急性ストレスへの反応変化がそのメカニズムとして考えられている。

主観的な孤独感と客観的な人的関係量のどちらがよりおおきく影響するのか、
イギリス住民を対象とした大規模調査ELSAの記録からしらべてみたそうな。


50歳以上の男女5397人について2004-2010の脳卒中と心血管疾患の発生をフォローした。

孤独感(loneliness)スコアは、孤独感を感じる頻度に関する3種類の質問に1-3点で評価、最大9点。

社会的孤立(social isolation)スコアは、一人暮らし、 子や親戚、友人に会う機会が月1未満、なんらかの社会組織に属さないなどを評価し 最大が6点とした。


次のようになった。

・571人が心血管疾患になった。

・他の要因を考慮にいれても、孤独感があると心血管疾患リスクが1.27倍になった。

・社会的孤立スコアは心血管疾患リスクと関連はなく累積効果もなかった。

孤独感はそれだけで冠動脈疾患や脳卒中のリスクとなり得た、


というおはなし。
図:孤独

感想:

独りで寂しそうにみえるひとでも、本人が寂しいと思っていなければ脳卒中的には問題ではないってことか。

[孤独]の関連記事

2018年8月4日

認知訓練と運動を組み合わせる効果


Effects of combined intervention of physical exercise and cognitive training on cognitive function in stroke survivors with vascular cognitive impairment: a randomized controlled trial
2018  8月  中国

脳卒中のあとは認知障害になりやすい。

認知訓練は認知機能の低下をおさえる効果が期待できる。さらに身体運動が認知機能を改善するという報告もおおい。

しかし認知訓練と身体運動を組み合わせたときの効果についてはじゅうぶんな研究がないのでくわしくしらべてみたそうな。


発症から6ヶ月未満の脳卒中患者で血管性認知障害の225人について次の4グループに分けた。

*認知訓練のあと身体運動
*身体運動のみ
*認知訓練のみ
*ビデオ鑑賞

認知訓練はコンピュータベースの視覚運動、学習、記憶、注意、実行機能などを網羅した60分間のトレーニング。
身体運動は心拍数をモニターしながらの50分間の有酸素運動。

これらを週3回x12週間続けたのち、6ヶ月後まで複数の認知機能評価(Trail Making Part B、Stroop、forward digit span、mental rotation test)をフォローしたところ、


次のようになった。

・79.56%がこの過程を完遂した。

・すべての認知機能評価で、認知訓練と運動を組み合わせたグループがあきらかな改善を示していた。

・特に認知機能改善度は認知訓練や身体運動を単体で行うばあいよりも有意にすぐれていた。

血管性認知障害をしめす脳卒中患者への認知訓練と身体運動の組み合わせは、それぞれを単独で行うよりもおおきな認知機能の改善を長期にわたりもたらした、


というおはなし。
図:運動プラス認知訓練の効果 脳卒中で

感想:

腕立て伏せをすると論文よみがはかどるのと似たような理由かな。


メモ:
きのう駅の階段を降りる際に左足首のうごきがなめらかで足裏の感覚が戻っている感激をもった。
今年の夏はおなじことがこれで2度め。「暑い」ことと関係があるとおもう。

いつも夏になると脛やふくらはぎがかゆくなる。このかゆさが今年は左足でも右足と同程度にかゆい。暑さのおかげで敏感になってるのか。

2018年8月3日

半側空間無視の過小診断率


Underdiagnosis of Unilateral Spatial Neglect in stroke unit
2018  7月  スペイン

半側空間無視は損傷脳半球の反対側からの刺激に反応しない症状で、脳卒中で優位脳でない方にダメージをうけたときにおきやすい。

その発生率は8-90%と報告によりおおきなひらきがある。神経症状を評価するNIHSSではじゅうぶんに捉えられずに過小診断になっている可能性がある。

過小診断されている半側空間無視の割合を確認するべく くわしくしらべてみたそうな。


非優位脳半球を損傷して21ヶ月未満の脳卒中患者について、
線分二等分課題(Line Bisection)のほか “TrianglesCancellation” や “Circle Gap Detection Task” で半側空間無視を確認した。

その結果とルーチン検査のNIHSSの結果とを比べたところ、


次のようになった。

・平均年齢74、62人の患者を対象とした。

・25人(40.3%)が半側空間無視と診断されたが、

・このうちの56%はNIHSSでは半側空間無視を検出できなかった。

脳卒中後の半側空間無視は通常の検査ではかなりの過小診断になっていた、


というおはなし。
図:半側空間無視 線分二等分検査

感想:

本人すら気づかないものを証明するのは難しんだな。

2018年8月2日

日本人脳卒中の2年間生存率


Two-Year Survival After First-Ever Stroke in a General Population of 1.4 Million Japanese - Shiga Stroke Registry
2018  7月  日本

最近の50年間で日本の脳卒中死亡率は低下している。しかし高齢化にともない患者数は増加することが予想される。

そこで脳卒中から2年間の累積生存率を一般住民について大規模にしらべてみたそうな。


滋賀県の住民140万人を対象とした2011-2013の脳卒中患者登録データを解析したところ、


次のことがわかった。

・2176人の脳卒中患者があった。

・この間に663人(30.5%)が死亡して、脳卒中後2年間の累積生存率は69.5%だった。

・脳卒中の種類別の生存率は、ラクナ梗塞 87.2%、主幹動脈閉塞 76.1%、心原性塞栓 55.4%、脳内出血 65.9%、くも膜下出血 56.7% だった。

・ほかに 高齢、男性、入院時意識障害が死亡しやすさに関連していた。

日本の一般住民を対象とした調査では脳卒中のあと2年間の累積死亡率は30%を超えており、とくに心原性塞栓、くも膜下出血、脳内出血で高かった、


というおはなし。
図:脳卒中後の生存率

感想:

滋賀県の脳卒中予防事業といったらこれ↓を思い出す。
YouTube の脳卒中ビデオってどうなのよ?

2018年8月1日

片麻痺の水中療法の効果は


Effects of water-based and land-based exercises on walking and balance functions of patients with hemiplegia
2018  7月  トルコ

脳卒中患者をプールで運動させる水中療法にはバランスや歩行能力の改善効果が期待されている。

しかし水中療法と地上訓練についてのランダム化比較試験の例が少ないのでやってみたそうな。

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