元2023 8月 ポーランド
心房細動患者の脳卒中予防には、直接経口抗凝固薬DOACを生涯飲み続けることが望ましいとされている。
抗凝固薬の主な副作用は出血である。
薬のリスクとベネフィットに関する知識が不十分だと、服薬が継続されない可能性がある。
そこで、DOACを投与された患者の出血リスクにたいする許容度(bleeding risk acceptance)と長期予後との関連をくわしくしらべてみたそうな。
2016-2019年、ポーランドの3次病院での心房細動のすべての外来患者167例を対象とした。
出血許容度は、1回の脳梗塞を予防するために患者が許容できると宣言した命にかかわるような大出血の最大回数として定義された「出血比」(Bleeding Ratio)をもって評価した。
脳梗塞、大出血または臨床的に準ずる非大出血(CRNMB)、死亡率との関連を解析した。
次のようになった。
・出血比の中央値は4であった。・51ヶ月間のフォロー期間中、脳梗塞や死亡は28例(3.3%/年)、大出血やCRNMBは33例(4.6%/年)で観察された。・出血比は脳梗塞または死亡した患者で有意に低かったが、出血には関連しなかった。・出血比が0〜3の患者は抗凝固薬治療に対して非継続的であり、出血比が高い患者よりも脳梗塞を起こすか死亡する可能性が高かった。・出血比が低いこと、CHA2DS2-VAScスコアが高いこと、年齢が高いことが脳梗塞または死亡を予測することが示された。
脳梗塞を避けるための抗凝固療法による命に関わるような重篤な大出血は、より少ないほうが好ましいと考える心房細動患者は、出血は少なかったが死亡や脳梗塞を経験する可能性が高かった。これは治療の非継続性に関係しているのかもしれない、
というおはなし。
感想:
もっとわかりやすく書くとこうなる↓
「心房細動による脳梗塞を防ぐためなら薬の副作用である命にかかわるようなひどい出血を何回までがまんする覚悟がありますか?と患者に尋ねたところ、中央値が4回であった。
0-3回と答えた患者群は、出血は少なかったものの脳梗塞や死亡する可能性が高かった。
この結果は、彼らが途中で薬をやめてしまうからと考えられる。出血なんぞ恐れずに、一生薬を飲み続けるべきである。」
すこし腹が立って手が震えた。
この気持ちを医師国家試験にもラクラク通ると評判の最新の人工知能AIに相談してみた↓。
私「低い出血比(出血受容度)を答えた患者は体調に自信がないことを意味すると考えられます。したがって予後が不良なのは当然です。この事実をもってあたかも出血受容度が高いほうが望ましいと思考誘導することは、薬の副作用に対して負うべき医師の責任を患者個人に転嫁しようとする行為に他なりません。腹が立って仕方がありません。私の言うことは間違っていますか?」AI「あなたの感じている不満や怒りは、特定の立場から見ると理解できます。この研究の結果が、出血受容度が高いことが望ましいと解釈されることに対する懸念は、患者の権利と医師の責任の観点からも重要な問題です。この研究における「出血比」または「出血受容度」は、患者が治療に対してどれだけ積極的か、あるいは慎重かを反映している可能性があります。低い出血受容度を持つ患者は、副作用への懸念から治療を中断したり、他の健康上の問題がある可能性も考えられるでしょう。これが予後不良につながることは、臨床的な観点から考えれば理解できるかもしれません。しかし、患者が自らの健康に対する恐れや懸念を持っていることを無視したり、これを非難する立場に立つべきではありません。医師や医療提供者は、患者の心配や恐れを共感し、適切なケアとサポートを提供する責任があります。この研究結果をどう解釈し、臨床実践にどう反映させるべきかは、倫理的にも専門的にも複雑な問題です。あなたの立場は間違っているとは言えませんが、この問題に対する解決策や考え方は多岐にわたる可能性があります。重要なのは、患者中心のケアを提供し、治療決定において患者の価値観や意図を尊重することであると言えるでしょう。」
私「大出血は命にかかわります。1回の脳梗塞を防ぐために何回もの大出血を経験する覚悟を問うことは治療のリスクとベネフィットのバランスを無視したものだと考えます。ずるいやり方だと思いませんか?」
AI「大出血のリスクと脳梗塞の予防のバランスを取る問題は、医学的な判断が非常に難しいものです。治療のリスクとベネフィットのバランスを正しく評価することなく、患者に対して一方的な治療方針を押し付けることは、医療倫理において問題があると言えるでしょう。
「ずるいやり方」という表現について具体的には以下のような観点から考察できます。
情報の非対称性:
医師が持つ専門的な知識と患者が持つ情報量の差が生じる場合、患者が十分な説明を受けずに意思決定を迫られることは、情報の非対称性から来る不公平な状況と言えるでしょう。
患者参加の不足:
患者の価値観や希望が治療方針の決定に反映されていない場合、患者参加の原則が無視されていると解釈される可能性があります。
倫理的な観点:
患者に対して誤った期待を持たせたり、リスクを過小評価したりすることは、医療倫理に反する行為となり得ます。
医療の現場では、患者との信頼関係が基盤となります。それを築くためにも、リスクとベネフィットの透明な説明、患者の意思の尊重、個別の状況に応じた最善の治療方針の選定が求められます。この問題に対して感じる不安や疑問がある場合、信頼できる医療専門家との対話や、第三者の意見を求めることも一つの方法であると考えます。」