元2024 9月 アメリカ
外傷性くも膜下出血(iTSAH)は、外部からの衝撃によって脳のくも膜下空間に血液が漏れ出す状態である。
この状態は、他の脳出血と比較して比較的軽度とされているが、依然として重大な健康リスクを引き起こす可能性がある。
iTSAHの治療は現在、脳損傷ガイドライン(mBIG)のもとで行われているが、iTSAHの管理方法はまだ確立されていない部分が多く存在するので、iTSAH患者の臨床結果をくわしくしらべてみたそうな。
iTSAH患者に対する過去8年間のデータを対象とした。
患者は、外傷性くも膜下出血を発症した人々であり、除外基準として、外傷後の軽い意識障害(Glasgow Coma Scale 13未満)や、抗血小板薬や抗凝固薬を事前に服用していた者が挙げられる。
患者データは、主に頭部CTスキャンや神経外科の診察、放射線学的および神経学的進行の有無などを中心に収集した。
次のことがわかった。
・研究の対象となった患者数は276名であり、彼らに対して平均2回の頭部CTスキャンが実施された。・神経外科医による診察は全患者の約80.4%で行われたが、手術が必要な患者は一人もいなかった。・さらに、約8.6%の患者には放射線学的に進行が見られたものの、神経学的に悪化した患者はわずか2.2%にとどまった。・全体として、iTSAH患者は再入院や死亡に至ったケースはなく、治療を受けた全患者の予後は良好であった。
iTSAH患者に対して再度の頭部CTスキャンや神経外科の診察を必ずしも必要としない可能性があることが示唆された。放射線学的または神経学的に進行が見られる場合でも、ほとんどの患者は自然に回復しており、手術介入は不要であった。このため、外傷性くも膜下出血に対する現行の脳損傷ガイドライン(mBIG)の見直しが必要である可能性がある、
というおはなし。
感想:
いっぱんに、くも膜下出血でのアンギオ検査で出血箇所を「確認」することはできない。
なぜなら、検査時にはすでに出血は止まっているから。
血溜まりの近くに動脈瘤がみつかれば自動的にそれが出血源とされ手術対象となる。
外傷により正常な動脈が裂けて出血した場合はなおさら出血源を特定することが困難であるため、手術のしようがない。
これら手術ができなかったくも膜下出血患者の予後が良く死亡者がいなかったということは、手術介入自体が予後悪化の原因となっている可能性をつよく示唆している。
じっさい、外傷性でない自然発生のくも膜下出血では、その10-15%には検査で瘤がみつからないことが知られているが、かれらの80%以上は手術せずともほとんど元通りに回復する。
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