元2024 12月 カナダ
脳卒中後は感情調整が困難になる。脳の損傷が感情をコントロールする能力を低下させ、ネガティブな感情(悲しみ、孤独、失望)が長く持続しやすくなる。
このような課題に対し、マインドフルネスと呼ばれる実践が感情調整に効果を持つことが知られているが、脳卒中経験者における効果については十分に研究されていなかった。
そこで、日々の生活におけるマインドフルネスの1側面である「注意を払った行動」が感情調整に及ぼす影響をくわしくしらべてみたそうな。
86名の脳卒中経験者を対象に、2週間にわたり日々の感情と行動を観察した。参加者は毎晩、以下の点について質問に回答した。
注意を払った行動(Acting with Awareness):
「今日は注意を払わずに物事をしていた」と感じたかを0~100のスライド式で評価し、逆転スコア化(高いほど注意を払った状態)を行った。
感情のスコア:
ポジティブ感情(例:幸せ、満足)とネガティブ感情(例:悲しみ、孤独)をそれぞれ9項目で評価し、日ごとの平均スコアを算出した。
感情調整能力の測定:
前日の感情が当日に持ち越されるかどうかを「感情キャリーオーバー」として分析した。ネガティブ感情の持続を抑える、あるいはポジティブ感情を維持することが感情調整力の指標とされた。
また、「注意を払った行動」はマインドフルネスの基本5要素の一つであり、次の特徴を持つ。
1.観察(Observing):自分の感覚や感情に注意を向ける。
2.記述(Describing):体験を言葉で正確に表現する。
3.注意を払った行動(Acting with Awareness):現在に意識を集中し、自動的な行動を避ける。
4.非判断(Non-judging):感情や思考を批判せず受け入れる。
5.非反応(Non-reactivity):感情に反射的に反応せず観察する。
次のことがわかった。
・注意を払った行動とネガティブ感情の関連:注意を払った行動を多く実践した日は、前日のネガティブ感情が当日に持ち越されにくくなった。これは、感情の切り替えがスムーズに行われたことを示している。・注意を払った行動とポジティブ感情の関連:注意を払った行動が多い日には、ポジティブ感情が維持される傾向が見られた。・全体的な傾向:感情調整力は、日ごとに変動する「注意を払った行動」に大きく依存していた。
