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2025年3月20日

失神覚悟で血圧管理?厳格すぎる基準がもたらす意外なリスク

2025  3月  日本


脳卒中経験者にとって、再発予防のための血圧管理は極めて重要である。しかし、目標とすべき収縮期血圧(SBP)の基準については議論が続いている。

特に、標準的な血圧管理(SBP<140mmHg)と比較して、より厳格な管理(SBP<130mmHg)が再発リスクの低減に効果的かどうかは明確ではなかった。

そこで、過去のランダム化比較試験(RCT)を統合したシステマティックレビューとメタ分析をこころみたそうな。



PubMed/MEDLINE、Cochrane Database、Ichu-shiのデータベースを用いて、脳卒中経験者の血圧管理に関するランダム化比較試験を検索した。最終的に、7つのRCTが定量分析の対象として選ばれた。

メタ分析はランダム効果モデルを用いて実施され、試験のバイアスリスク評価も行われた。主要アウトカムとして、再発脳卒中、主要心血管イベント、および低血圧関連の副作用(失神やめまいなど)を比較した。



次のことがわかった。

・厳格な血圧管理(SBP<130mmHg)のグループでは、標準管理(SBP<140mmHg)と比較して、以下のような効果が認められた。

- 再発脳卒中のリスク低下(リスク比 0.79、95%信頼区間 0.65-0.96)
- 主要心血管イベントのリスク低下(リスク比 0.86、95%信頼区間 0.76-0.97)
- 特に再発出血性脳卒中のリスク低下が顕著(リスク比 0.33、95%信頼区間 0.15-0.74)
- 一方で、虚血性脳卒中の再発予防効果は限定的(リスク比 0.87、95%信頼区間 0.71-1.08)
- 失神やめまいのリスク増加(リスク比 1.30、95%信頼区間 1.00-1.68)

・絶対リスク減少量(1000人あたり)は、再発脳卒中が14件、主要心血管イベントが17件であった。一方、失神やめまいの絶対リスク増加は4件と報告されている。


厳格な血圧管理(SBP<130mmHg)は、脳卒中の再発や主要心血管イベントのリスクを低減する可能性が高い。しかし、その効果は絶対的なものではなく、特に低血圧による副作用が無視できない点が問題となる。特に、出血性脳卒中のリスク低減には有効であるものの、虚血性脳卒中に対する効果は限定的であり、すべての脳卒中経験者に適用すべきかは慎重に検討すべきである、


というおはなし。

厳格な降圧目標



感想:

『失神やめまいを我慢してまで血圧を下げる必要あるの? この論文を批判的にみるとしたらどこにツッコミどころがありそうなの?』



この論文を批判的に見る際のポイントとして、以下の点が挙げられる。

1. 絶対リスクの減少が大きくない

論文では 「再発脳卒中を防ぐ絶対リスク減少が14/1000人、主要心血管イベントの絶対リスク減少が17/1000人」 としているが、これは 全体の1.4%や1.7% にすぎない。一方で、失神やめまいの絶対リスク増加は4/1000人(0.4%) なので、効果とリスクのバランスを慎重に評価すべきだ。

👉 実際に患者が感じる利益と不利益を天秤にかけた場合、「血圧を無理に下げる価値があるのか?」という疑問が残る。

2. 低血圧が引き起こす他のリスクを考慮していない

失神やめまいの増加だけでなく、低血圧によって 脳灌流が低下し、逆に認知機能低下や虚血リスクが増す可能性 もある。特に脳卒中経験者は脳血流の自己調節機能が損なわれていることが多く、過度に血圧を下げるとむしろ害になるかもしれない。

👉 「低血圧による脳灌流低下の影響」を無視している点は大きな弱点。

3. 研究対象のRCTが7つしかなく、異質性も不明

このメタ分析の対象は わずか7つのRCT であり、それぞれの研究デザインが異なる可能性が高い。特に「標準治療群(SBP<140mmHg)」の管理方法や患者背景がバラバラなら、メタ分析の統合結果の信頼性が下がる。

👉 各試験の異質性(heterogeneity)についての詳しい検討がされていないなら、結論の一般化に疑問が生じる。

4. 「再発予防」に偏重し、QOLを軽視

論文は「再発脳卒中」や「主要心血管イベント」を減らすことに重点を置いているが、患者の生活の質(QOL)や日常生活の負担については考慮されていない。

👉 「少しのリスク減少のために生活の質を犠牲にする必要があるのか?」という視点が抜け落ちている。

結論:血圧管理は「バランス」が重要

脳卒中再発リスクの減少は確かにあるが、それが「低血圧による副作用やQOLの低下を考慮しても正当化されるのか?」は別問題。

130mmHg未満を目指すことがすべての患者に適しているわけではなく、個々の体質や併存疾患を考慮しながら 「過度な血圧管理が逆効果にならないか?」を慎重に見極める必要がある。



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