元2025 4月 日本
・最も多かった脳梗塞のタイプは「小さな血管が詰まるタイプ(SVO:小血管閉塞)」で26%、次に多かったのは「頭の中の動脈が裂けるタイプ(IAD:頭蓋内動脈解離)」で20%だった。・欧米のように心臓からの血栓や首の動脈のトラブルが多いわけではなかった。また、もやもや病との関係があるRNF213という遺伝子の変異は4.5%に見られたが、頭蓋内動脈解離とはあまり関係がなかった。・3か月後には76%の人が体の動きはほぼ元通りになっていたが、仕事に戻れたのは61%で、31%は気分が落ち込む(うつ)症状があった。特に、元の仕事に戻れなかった人で、うつ症状が多かった。
🧠 仮説:日本でSVOやIADが多く見えるのはMRIなどの過剰な画像診断のせい?
> 日本におけるSVOやIADの“多さ”は、疾患そのものの頻度の問題ではなく、
CT・MRIという可視化装置の「供給過剰」状態に起因する“検出バイアス”である。
✅ 1. データで裏付けられる“異常な撮像能力”
指標 | 日本 | OECD平均 | 比較 |
---|---|---|---|
MRI装置数(100万人あたり) | 57台 | 17台 | 約3.4倍 |
CT装置数(100万人あたり) | 111台 | 27台 | 約4.1倍 |
MRI撮影件数(1000人あたり) | 118件 | 66件 | 約1.8倍 |
CT撮影件数(1000人あたり) | 148件 | 136件 | やや多い |
✅ 2. 診断バイアスのメカニズム
疾患 | 検出に必要な技術 | 通常の可視性 | 日本のMRI頻度による影響 |
---|---|---|---|
小血管閉塞(SVO) | DWI(MRI) | CTでは見えない | 症状が軽くても発見可能 ✅ |
頭蓋内動脈解離(IAD) | 血管壁MRI、高解像度MRA、DSA | 欧米では診断困難 | 反復撮影で病変特定 🎯 |
✅ 3. IADの診断には「見る気」が必要
論文中でも明記されている通り、IADの多さの一因は「繰り返しの画像検査」にある。
特に血管壁MRIや反復MRA(発症時+7日+30日)は、日本のような医療制度でなければ難しい。
欧米の研究では、IADが「動脈硬化」と誤診されているケースも多数報告されている。
✅ 4. 認知バイアスとの複合要因
医師の側にも「SVOは日本人に多い」「IADはアジア人に多い」という先入観(診断の先回り)がある可能性。
MRIで異常が見える →「それっぽく分類する」→ 統計に反映 → 見かけの有病率が上がるという循環。
✅ 5. 検出されないものは存在しない(比較不能性)
欧米では軽症者はMRIすら撮らないため、「SVO」や「IAD」の統計そのものが出てこない。
よって、「日本で多い」は“見えている国”と“見えていない国”の比較という、そもそも成立しない前提で語られている。
🧩 補強のロジック
この仮説は「日本の疾患構造が独特」ではなく、「日本だけが“解像度の高い鏡”を持っている」という理解に近い。
したがって、検出装置の格差=病態統計の格差という構図になる。
🧠 結論
小血管閉塞と頭蓋内動脈解離が「日本で多い」とされる背景には、世界に類を見ないCT・MRIの普及と利用頻度の高さがある。
これは医療のハード・ソフト両面での過剰とも言える体制によって、他国では見逃される病変が「可視化されている」ためであり、
「病態が違う」というより「見え方が違う」ことを意味する。