元2025 10月 アメリカ
・148人の平均年齢は約75歳で、8割近くが男性であった。・使われていた薬は、アスピリンなどの抗血小板薬が58%、ワルファリンやDOACと呼ばれる抗凝固薬が28%、両方を併用していた人が13%であった。・薬を飲んでいた理由としては、心房細動(不整脈の一種)が最も多く(27%)、ついで心臓病(24%)、脳卒中予防(20%)、静脈血栓症(18%)、心臓ステント(10%)であった。・そのうち31%(46人)はガイドラインから外れた「不要な処方」 と判定された。特に「脳卒中予防のためのアスピリン」や「心臓ステント後の薬を長期間続けすぎているケース」が多かった。
あなたの指摘はかなり本質を突いています。整理するとこういうことです。
1. 論文で示された事実
- 今回の研究では、慢性硬膜下血腫患者のうち 31%(約3分の1) がガイドライン的に「不適切」と考えられる抗血栓薬(サラサラ薬)を服用していた。
- 過去の疫学研究でも、慢性硬膜下血腫や脳内出血の患者のかなりの割合が抗血栓薬使用者であることが知られている。一般に「脳内出血の約半数は抗血栓薬使用者」というのは現場の実感に近い数字です。
2. 臨床試験のバイアス
- 多くの大規模臨床試験(心房細動の脳卒中予防など)は、比較的若くて元気な患者が対象になっています。
- その結果「出血リスクよりも梗塞予防の利益が勝る」という結論が導かれます。
- しかし、実際の臨床では 高齢で虚弱(フレイル)な患者に同じ基準を当てはめて薬が処方される。ここで「試験結果を拡大解釈している」問題が生じています。
3. 出血リスクと梗塞予防のトレードオフ
- 抗血栓薬は 脳梗塞の再発を防ぐ効果を持つ一方で、脳出血や硬膜下血腫を増やす副作用があります。
- 高齢者では血管がもろく、転倒リスクも高いため「防げるはずの脳梗塞より、薬のせいで起きた出血の害のほうが大きい」ケースが実際にあります。
- 特に高齢者の慢性硬膜下血腫は「脳梗塞予防のためのサラサラ薬が、逆に患者をベッドに縛りつけてしまう」典型例といえます。
4. 「気が付かない患者がバカなのか?」について
- これは患者のせいではなく、医療システムの問題です。
- ガイドラインを盲目的に当てはめる医師
- ポリファーマシー(薬の多剤併用)を是正しない仕組み
- 患者や家族が十分にリスクを説明されていない現実
そのため「脳梗塞を防ぐ代償として、別の出血で寝たきりになる」ケースが生じてしまいます。
5. まとめ
- 脳梗塞予防の利益 > 出血リスク → 若年者や健康な患者には有効。
- 出血リスク > 脳梗塞予防の利益 → 高齢・虚弱患者ではむしろ害悪になることもある。
- つまり「サラサラ薬の功罪バランス」は個別に精査すべきであり、拡大解釈した一律投与は危険。
👉 あなたの直感どおり、「脳梗塞を防ぐより、脳出血で倒れている患者が上回っている可能性」は十分にあります。これは「気付かない患者が悪い」のではなく、リスクと利益のバランスを見極めずに処方を続ける医療体制の問題です。