元2023 6月 アメリカ
クロスエデュケーションは、左右いずれかの肢の筋力や技能トレーニングがもういっぽうの肢にも向上効果をもたらす現象であり健常者でよく研究されている。
また、運動トレーニングのまえに準備運動(プライミング)をおこなうことで、運動皮質興奮性が高まりその後のトレーニング効果が向上することがわかっている。
脳卒中におけるプライミング研究のおおくは「大脳半球間競合モデル」に基づいており、病側M1(一次運動野)を促進し、非病側M1を抑制することを目指す。
とくにクロスエデュケーションに伴うこれらM1の変化はクロスアクティベーション(cross-activation)とも呼ばれている。
そこで、重度脳卒中患者での非麻痺側下肢の訓練が麻痺側下肢の筋力や反応時間、脳皮質の興奮性にどのような影響を与えるものか、くわしくしらべてみたそうな。
重度の下肢運動障害を有する17人の脳卒中患者を対象に、非麻痺側の足首関節についてつぎの3種類の運動トレーニングを実施した。
スキルトレーニング;スクリーン上の正弦波に合わせて足首を動かす。
筋力トレーニング:等尺性抵抗運動。
偽トレーニング:閾値下神経電気刺激。
これら運動トレーニングをプライミングとして、その前、直後、30分後、60分後の、
非病側M1から非麻痺側前腓骨筋への経路、
および病側M1 から麻痺側前腓骨筋への経路、
そして非病側M1 から脳梁を介した病側M1 への経路、での皮質興奮性をそれぞれTMSで測定した。
次のことがわかった。
・非麻痺側経路の皮質興奮性はスキルおよび筋力トレーニング後に増加した。・麻痺側経路と脳梁経路の皮質興奮性はスキルトレーニング後に増加したが筋力トレーニング後には増加しなかった。・麻痺足首の反応時間は、スキルおよび筋力トレーニング後に改善し、60分後にも持続していた。・偽トレーニングでは変化は観察されなかった。
重度下肢障害のある脳卒中患者において、非麻痺下肢をもちいたスキルおよび筋力トレーニングからなるプライミングアプローチによるクロスエデュケーションが、麻痺側下肢の皮質興奮性や半球間抑制、反応時間を改善した。この方法は高価な装置が必要ないので有望である、
というおはなし。
感想:
たとえば、杖をついて歩いているだけで麻痺側の足にも良い影響がバンバン及んでいるってことになるよね。
プライミング中は麻痺側はじっとしていないといかんのか?
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