元2023 7月 オーストラリア
クロピドグレルは世界で最も処方されている抗血小板薬の一つであり、脳梗塞予防に用いられている。
クロピドグレルはP2Y12受容体への拮抗を介して抗血小板活性を発揮する。
クロピドグレルの当初の臨床試験では考慮されていなかったことがある。
じつはP2Y12受容体は脳の免疫細胞であるミクログリアにも発現しており、この受容体が細胞損傷部位へのミクログリアの移動を促している。
ミクログリアのP2Y12受容体が阻害されると、ミクログリアは損傷部位に移動する能力を失い、必要な修復プロセスを遂行できなくなる。
この影響をたしかめるべく、脳卒中後のマウスにクロピドグレルを投与して、運動能力や認知機能の回復、生存率や体重、血管や免疫の変化についてくわしくしらべてみたそうな。
マウスを人為的に脳梗塞にして、
その後14日間、クロピドグレルまたはプラセボを毎日投与した。
認知能力(記憶と学習)はマウスのタッチスクリーンプラットフォームを用いて評価し、
運動障害は前足の非対称性を調べるシリンダー課題を用いて評価した。
15日目にマウスを安楽死させ、免疫組織分析のために脳を採取した。
次のようになった。
・クロピドグレル投与は、学習と記憶の回復を有意に阻害し、・マウスの生存率を低下させ、脳卒中後の体重を減少させた。・さらに、クロピドグレルは脳卒中後の血管漏出を有意に増加させ、・梗塞周囲のT細胞数を有意に減少させた。