元2025 1月 イタリア
脳内出血(ICH)は、脳卒中の中でも死亡や後遺症のリスクが高いタイプである。回復には時間がかかり、効果的なリハビリ方法の開発が求められている。
非侵襲的脳刺激(NIBS) は、脳の活動を調整することで機能回復を促し、ICH後の予後を予測する手法として注目されている。しかし、NIBSの刺激方法や対象患者の特徴が異なるため、その効果にはばらつきがあり、臨床応用には課題が残る。
そこで、ICHへのNIBSの有効性について最新の研究をくわしくしらべてみたそうな。
ICHにおけるNIBSの役割に関する過去の研究を総括した。対象とした技術は以下の4つである。
経頭蓋磁気刺激(TMS)
迷走神経刺激(VNS)
経頭蓋直流電流刺激(tDCS)
経頭蓋交番電流刺激(tACS)
各技術について、ICH後の機能回復促進および予後予測の可能性に関する既存のエビデンスを評価した。
次のことがわかった。
1. NIBSを用いた予後予測
・TMSは、皮質脊髄路(CST)の損傷評価に有効であり、14日後のTMS検査が予後予測に最適とされる。
・運動誘発電位(MEP)の低下や消失は運動回復の悪化と関連し、MEPが正常に記録される患者は機能回復の可能性が高い。
・TMSの予測精度は、MRIの拡散テンソルトラクトグラフィー(DTT)と比較され、TMSは陽性的中率が高く、DTTは陰性的中率が高いとされた。
2. NIBSを用いた機能回復の促進
TMS(rTMS)
・上肢の運動機能回復に有望で、低頻度rTMS(1Hz)が対側の健常半球を抑制することで機能回復を促進する。
・rTMSと作業療法(OT)の組み合わせにより、慢性期の上肢麻痺が改善したという報告がある。
・しかし、ICHの急性期におけるrTMSの有効性については、さらなる研究が必要である。
tDCS(経頭蓋直流電流刺激)
・神経可塑性を促進する可能性が指摘されているが、ICH患者に対する効果は一貫していない。
・作業療法と組み合わせたtDCSの臨床試験ではADL(生活動作)の改善効果は認められなかった。
tACS(経頭蓋交番電流刺激)
・脳波の同期を調整することで認知機能や注意力に影響を与えるとされるが、ICHに対する臨床研究はほとんどない。
VNS(迷走神経刺激)
・自律神経を調整し、神経回路を修正する可能性がある。
・しかし、ICHに対するエビデンスはほぼ皆無であり、実際の有効性は不明である。
NIBSは、ICH後の機能回復促進と予後予測の手段として有望である。特にTMSは、ICH患者の運動機能回復や予後予測に有効なツールとして期待される、
というおはなし。
感想:
tDCSやtACSは電流が弱すぎて頭蓋を超えて脳に届かないことがわかっている。↓
TMSによる治療は典型的な逆因果と思う。MEP確認のためにTMSを何度も打った患者のなかに回復がよい者がいた。それをTMSの治療効果と勘違いしただけ。
AI『TMSの治療効果は逆因果の可能性が高い。 MEPが測定できる患者は、そもそも回復しやすい傾向があり、それをTMSの効果と誤認している可能性がある。また、TMSを何度も受けた患者の回復が良いのは、重症患者がそもそもTMSを受けられないためであり、サバイバルバイアスの影響も考えられる。TMSはICH後の回復を予測するツールとしては有望だが、治療効果があるとは言い切れない。 逆因果を排除した厳密な研究が必要である。』
