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2025年5月9日

動かぬ手が動き出す:迷走神経を刺激してリハビリ限界突破

2025  5月  アメリカ


脳卒中後の上肢麻痺は多くの患者に残存し、生活の質を著しく低下させる。発症から年単位を経過した慢性期の患者では、改善が困難とされてきた。

リハビリテーション単独での効果は限られており、神経可塑性を高める新たな介入が求められている。

動物研究や予備的臨床研究により、迷走神経刺激(VNS)と運動を組み合わせることで脳の回路が再構築される可能性が示唆されいるので、くわしくしらべてみたそうな。

2019年4月5日

Stroke誌:脳動脈瘤の破裂を防ぐ刺激方法とは


Noninvasive Vagus Nerve Stimulation Prevents Ruptures and Improves Outcomes in a Model of Intracranial Aneurysm in Mice
2019  4月  日本

脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血は死亡率が非常に高く 重い障害を残す可能性がある。

脳動脈瘤の発生から成長、破裂その後の回復には炎症反応がおおきく関与していると考えられている。

薬物的に炎症を抑えて動脈瘤の生成を抑える動物実験はあるものの、臨床応用には至っていない。

いっぽうてんかんやうつの治療に用いられている迷走神経刺激(Vagus nerve stimulation:VNS)療法には抗炎症効果が期待できることがわかっている。しかし刺激装置を体内に埋め込む必要があったため臨床応用の壁になってきた。

さいきんになって非侵襲的に皮膚のうえから頸部の迷走神経を刺激する装置が認可された。

そこでこの装置をつかってVNSが頭蓋内脳動脈瘤の破裂と予後におよぼす影響を動物でくわしく実験してみたそうな。



軽症高血圧と重症高血圧にしたネズミについて、
タンパク質分解酵素を脳脊髄液に注入して脳動脈瘤の発生をうながした。

並行して経皮的な頸部迷走神経への電気刺激VNSを20日間おこなった。

VNSは1日に2分間の刺激を5分あけて2回おこなった。
コントロールとして同様の刺激を大腿神経に対して行いFNSとした。

脳動脈瘤の破裂率、生存率、などをくらべたところ、



次のことがわかった。

・軽症高血圧では破裂率は29% vs. 80%でVNSが非常に低かった。

・くも膜下出血の重症度もまたVNSが低かった。

・重症高血圧では破裂率は77% vs. 85% でいずれも高かった。

・しかし生存日数の中央値は 13日 vs. 6日と、あきらかにVNSが長く、くも膜下出血の重症度によらなかった。

・VNSを継続することにより脳動脈瘤の発生要因の1つと考えられるタンパク質分解酵素MMP-9の発現がFNSよりも減少していた。

迷走神経刺激は脳動脈瘤の破裂率を低下させ 破裂後の生存率をも改善できる、


というおはなし。
図:迷走神経刺激と脳動脈瘤破裂


感想:

迷走神経刺激方法として、頸動脈洞マッサージ、ヴァルサルヴァ手技、冷たい水で顔を洗う、眼球を押す、などがある。

副交感神経を支配していることから、深呼吸や瞑想でリラックスしても似たような効果が得られるんじゃないかと思う。

もしくは今回使用した装置↓をつかう。
gammaCore device (electroCore, BaskingRidge, NJ).


これほどまでに破裂を防げるのなら、命がけでクリップやコイル手術を受ける必要ないね。
Stroke誌:高齢重症くも膜下出血を手術する理由?

Stroke誌:クモ膜下出血で手術をしなかったときの死亡率


[迷走神経刺激]の関連記事

2021年4月25日

ランセット誌:迷走神経刺激で上肢リハビリ!

2021  4月  イギリス


脳卒中による長期にわたる上肢の機能低下は一般的であり、迷走神経刺激と組み合わせることで改善する可能性が報告されている。

これが効果的な治療法になりうるかどうか、三重盲検のランダム化比較試験でくわしくしらべてみたそうな。

2020年6月5日

迷走神経刺激の上肢1年間リハビリの効果

2020  6月  イギリス

迷走神経刺激(Vagus nerve stimulation:VNS)と上肢訓練の組み合わせ効果が動物実験のほか人でもいくつか報告されている。


しかし長期にフォローしたものはほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。

2019年10月10日

耳の迷走神経刺激で上肢の感覚がもどる


Transcutaneous Auricular Vagus Nerve Stimulation with Upper Limb Repetitive Task Practice May Improve Sensory Recovery in Chronic Stroke
2019  9月  イギリス

迷走神経刺激(Vagus Nerve Stimulation:VNS)は薬が効かないタイプのてんかんやうつの治療に用いられている。

片頭痛や慢性疼痛にも用いられるようになり、慢性期脳卒中での運動機能の改善効果も報告されている。

従来、VNSは頸を走行する神経を刺激するために胸部にバッテリーを含む刺激装置を埋め込む手術が必要だった。

さいきん経皮的VNS装置が開発され実験が簡単にできるようになった。

そこで耳介を走行する迷走神経を刺激する装置(Transcutaneous Auricular Vagus Nerve Stimulation:taVNS)をもちいて、慢性期脳卒中患者の上肢「感覚」の改善効果をたしかめてみたそうな。



発症から3ヶ月間以上経つ患者12人について、
taVNSをしながらの上肢繰り返し訓練300回/1時間を6週間にわたり計18セットおこなった。

taVNSはNEMOS社の(https://nemos.t-vns.com/en/)装置を使用した。

この前後での触覚、固有感覚をFugl-Meyerスコアをつかって評価した(0-12ポイント)ところ、



次のようになった。

・12人中11人に感覚障害があり、そのうち64%で感覚の回復が見られた。(固有感覚が6人、触覚が2人、両方が1人)

・運動機能がもっとも回復した患者で感覚も もっとも大きい3ポイントの回復が見られた。
耳の迷走神経への経皮的電気刺激にくわえた上肢繰り返し訓練で 慢性期脳卒中患者の感覚が回復できるのかも、、、



というおはなし。

図:経皮的耳迷走神経刺激



感想:

NEMOS社のページみると当該装置が4万円未満で買えそう。
手術のいらない迷走神経刺激リハビリの効き目

耳への電気刺激で脳が回復するという根拠について


[迷走神経刺激]の関連記事

2025年2月1日

脳内出血リハビリの新戦力?非侵襲的脳刺激(NIBS)の真価と落とし穴

2025  1月  イタリア


脳内出血(ICH)は、脳卒中の中でも死亡や後遺症のリスクが高いタイプである。回復には時間がかかり、効果的なリハビリ方法の開発が求められている。

非侵襲的脳刺激(NIBS) は、脳の活動を調整することで機能回復を促し、ICH後の予後を予測する手法として注目されている。しかし、NIBSの刺激方法や対象患者の特徴が異なるため、その効果にはばらつきがあり、臨床応用には課題が残る。

そこで、ICHへのNIBSの有効性について最新の研究をくわしくしらべてみたそうな。

2015年3月1日

迷走神経を刺激したら慢性期で重度麻痺の手が動くようになった


Vagal Nerve Stimulation Encouraging in Stroke Rehab
2015  2月  イギリス

迷走神経刺激はてんかん発作の治療に用いられている。

そこで 脳卒中患者に迷走神経刺激したら上肢機能が改善するものかどうか実験してみたそうな。

先月の米国脳卒中国際会議で発表された研究。


平均年齢60 発症後2年で やや重い上肢麻痺の脳梗塞患者20人について、
2グループに分け、一方には迷走神経刺激を与えた。

並行して 上肢の理学療法訓練を1日2時間x 2週間行った。

迷走神経刺激は体内埋め込み型装置を用い、訓練動作に同期させ各0.5秒の刺激を与えた。


次のようになった。

・深刻な有害事象は起きなかった。

・迷走神経刺激グループで上肢機能の有意な向上が見られた。


迷走神経刺激で慢性期脳卒中患者の上肢機能を改善できるかもしれない、


というおはなし。


感想:

ネズミで実験した例はこれまでに何度か紹介したけど 人体実験は初めてみる。

最近は埋め込まなくても迷走神経刺激できる装置が開発されているようだ。

VNS
The gammaCore neurostimulation device.
ElectroCore LLC

2025年2月26日

脳卒中治療はどこまで進化した!? 50年の脳外科ブレイクスルーを徹底追跡

2025  2月  アメリカ


最近の脳外科領域における進歩はめざましく、さまざまな疾患に対する新しい治療技術や手法が開発されてきた。

それらのうち脳卒中に関係の深いポイントを整理し、まとめてみたそうな。

2014年3月8日

迷走神経を刺激しながらリハビリするとすっごく回復するらしい


Vagus Nerve Stimulation Delivered During Motor Rehabilitation Improves Recovery in a Rat Model of Stroke.
2014  2月  アメリカ

上肢リハビリ中の迷走神経刺激が運動機能の回復を促すものかどうか実験してみたそうな。


17匹のネズミを人為的に脳虚血にして、

*迷走神経を刺激しながらリハビリ
*リハビリのあとに迷走神経刺激
*リハビリのみ
の3グループに分けた。

迷走神経刺激は体内埋め込み型とした。


次のようになった。

・脳虚血によりすべてのネズミが上肢の明らかな運動機能障害を示した。

・迷走神経刺激中のリハビリグループで上肢機能が完全回復した。

・リハビリのみグループでは完全回復できなかった。

・リハビリ後に迷走神経刺激グループも十分な回復を得られなかった。


迷走神経刺激をしながら上肢リハビリをすると回復がきわめて良い、


というおはなし。
VNSリハビリの効果


感想:

簡単に迷走神経刺激できる方法がないか調べてみた。

・頚動脈洞マッサージというのがあった。

喉仏の片側辺りで脈をよく感じる位置を指2本でしっかり押しながら上下にマッサージ。

あんまり一所懸命にやると血栓が飛んで脳梗塞になる可能性もなきにしもあらずとか。


他には、・バルサルバ効果といって息を止めて力む。

・冷たい水で顔を洗う、・眼球を押す、 などもあるらしい。

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