元2025 3月 日本
これまでの研究では、アルコール摂取と脳卒中リスクの関係について数多くの知見が報告されてきたが、多くは平均摂取量のみに基づいて分類されており、「週末にだけ大量に飲む」ような一気飲み(RSOD: Risky Single-Occasion Drinking)のリスクを正確に評価していなかった。
また、「まったく飲まない人(never drinkers)」と「かつて飲んでいたがやめた人(former drinkers)」を同じ「非飲酒者」として扱うことが多く、結果の解釈にバイアスが生じていた。
そこで、飲酒量と飲酒パターン(RSOD)の両方を考慮し、かつ非飲酒者を厳密に分類したうえで、日本人におけるアルコール摂取と脳卒中リスクの関連をくわしくしらべてみたそうな。
1989年から2018年にかけて、日本の4地域で実施された大規模地域住民コホート研究「CIRCS(Circulatory Risk in Communities Study)」のデータを使用した。
対象者は30歳から74歳までの男女、最終的に8026人の男性と12,461人の女性が解析対象となった。
アルコール摂取は、平均摂取量とRSODの有無によって以下の7群に分類された:
- 生涯非飲酒者
- 元飲酒者
- 低飲酒者(RSODなし)
- 中程度飲酒者(RSODなし)
- 低飲酒者(RSODあり)
- 中程度飲酒者(RSODあり)
- 高飲酒者
RSODは、男性で一度に60g以上、女性で40g以上のアルコールを摂取した場合と定義された。
次のようになった。
・16〜19年の追跡期間中、男性で549件、女性で512件の脳卒中が確認された。・多変量解析の結果、以下のことが判明した:
- 男性において、低〜中程度の飲酒であっても、RSODがある場合、脳卒中リスクが1.47倍に増加した(生涯非飲酒者と比較して)- 女性においては、そのリスクはさらに顕著で、3.41倍であった- 一方で、RSODがない場合でも、中程度飲酒や高飲酒ではリスクが上昇しており、- 中程度飲酒(RSODなし):男性で1.44倍、女性でも非有意ながらリスク上昇傾向- 高飲酒:男性で1.49倍
・つまり、RSODの有無にかかわらず、飲酒自体が脳卒中リスクを上昇させる可能性がある。
たとえ日常的な飲酒量が少なくても、一度に大量に飲む習慣(RSOD)がある場合、脳卒中リスクは明確に増加する。
また、RSODを避けたとしても、日常的な飲酒そのものが非飲酒者と比べて脳卒中のリスクを高める可能性がある。
したがって、「たまの飲酒だから大丈夫」「適量なら安全」といった一般的な認識は、科学的には根拠が乏しく、見直す必要がある、
というおはなし。
感想:
『binge drinkingとはちがうの?RSODは』
以下、医師国家試験正答率98%のAIの回答↓
RSODとbinge drinkingの違いとは?
RSOD(Risky Single-Occasion Drinking)とbinge drinkingはよく混同されるが、似て非なる概念である。
✅ 共通点
- どちらも「短時間に大量に飲む」スタイルの飲酒
- 健康リスク(とくに脳卒中・肝障害・転倒・暴力など)が増加する
- 多くの国の公衆衛生ガイドラインで問題視されている
❗ 違いのポイント
| 項目 | RSOD | Binge Drinking |
|---|---|---|
| 定義主体 | 主にヨーロッパ(WHOやOECD) | アメリカ(CDCなど) |
| 評価基準 | 純アルコールgで定義 例:男性60g、女性40g |
ドリンク本数で定義 例:男性5杯以上、女性4杯以上 |
| 考え方 | 単回摂取によるリスク重視の定義 | 行動様式としての飲み方パターン |
| 計算基準 | 国や飲料によらずg換算で統一 | 米国基準の「1ドリンク=14g」で算出 |
🧠 たとえば:
● 同じ人の飲酒行動:
男性がビール(5%)500mLを5本=100gのアルコール
→ RSOD:該当(60g超)
→ binge:該当(5ドリンク=70g相当)
● ケースによっては違う:
ワインを3杯(13%・150mL)=約40g
→ 女性ではRSODに該当
→ でも bingeには該当しない
🧾 結論
RSODは、アルコール量に基づく「健康リスク」重視の定義。
Binge drinkingは、行動様式・文化的枠組みからの定義。
日本人やアジア人に適したリスク評価をするなら、RSODのほうが科学的に妥当性が高いと言える。
