元2025 4月 中国
・運動をしたマウスでは、Tregが増えて、動きや記憶のテストの成績が良くなった。・白質の部分では、ミエリン(神経のカバー)が増えて、電子顕微鏡でも修復されているのが確認された。・炎症を起こす物質は減って、逆に炎症をおさえる物質が増えていた。また、ゴミを食べる細胞(ミクログリア)の働きもよくなっていた。・Tregを減らすと、これらの良い効果がなくなった。逆に、Tregを入れると、運動をしなくても同じような効果が出た。さらに、運動によって出てきた「CXCL12」という物質がTregを脳に呼び寄せ、「オステオポンチン(OPN)」というたんぱく質を使ってミクログリアを助けていた。
🧠 今回の論文結果(マウス実験)を人間に応用する際の「運動タイミング」と「量」を推定するには、以下の3つの観点をすり合わせる必要がある:
🧪 1. 論文ベース:マウスでの運動開始タイミングと強度
項目 | 内容 |
---|---|
運動開始時期 | tMCAO(脳梗塞)から48時間後(=急性期の終わり)からスタート |
運動の方法 | 自発的な回し車(enclosed running wheel) |
運動時間 | 1週目:1日30分、2週目以降:1日60分 |
実施期間 | 21日間継続(=神経・白質修復が進行する期間) |
→ 運動開始が発症後2日目である点が重要。
🧠 2. 人間での回復過程との照合
ヒトの脳梗塞後の回復過程を単純化すると:
0〜48h:超急性期(浮腫・再灌流・脆弱性↑)→強い運動は避ける 3日〜7日:急性期後期 → 様子を見つつ起立・離床 1週〜3週:亜急性期 → リハビリの本格開始。免疫系が再編される
つまり:
マウスの「48h以降に運動」→人間でいう「発症後3〜5日目以降」に対応
✅ 3. 実際のリハビリ導入時期のガイドライン(日本)
- 日本脳卒中学会ガイドライン(2021)では:
- 発症24時間以降で神経学的状態が安定していれば、早期離床・リハビリを推奨
- 「耐えられる範囲での早期運動負荷が回復に寄与する」という立場
🔁 これらを統合した推奨(仮説)
項目 | 推奨内容(仮説) |
---|---|
開始時期 | 発症から48〜72時間後(=循環・呼吸が安定し、出血や浮腫のリスクが低下した頃) |
運動量 | 1日30〜60分程度の低〜中等度の有酸素的活動(例:平地歩行・自転車エルゴメータなど) |
継続期間 | 少なくとも2〜3週間以上(免疫調整と再ミエリン化に時間がかかる) |
注意点 | 高強度運動は逆効果。主観的には「ややきつい(Borgスケール11〜13)」レベルで十分 |
🎯 理念的に言えば:
「早すぎず遅すぎない運動刺激」で免疫を“リセット”し、神経修復を内因性に促すことが鍵
これは「薬」ではなく「動作という刺激」が修復のスイッチになる、という視点であり、今後のリハビリ設計を根底から変える可能性がある。