元2025 5月 中国
脳の血管にできる「こぶ(脳動脈瘤)」は、人口の約3〜7%に見られ、もし破裂すれば命に関わることがある。そのため、できるだけ早くリスクを見つけて、予防や治療につなげることがとても大切である。
一方、虫歯は多くの人が抱える身近な病気でありながら、全身にも影響を与えることが知られてきた。
そこで、「虫歯と脳動脈瘤に何か関係があるのではないか?」という疑問から、その関連をくわしくしらべてみたそうな。
この研究は、2018年から2021年にかけて中国・北京の病院で行われた。脳の画像検査(DSAまたはMRA)によって脳動脈瘤の有無を確認し、未破裂の脳動脈瘤が見つかった人115名と、それがなかった健康な人115名の2つのグループに分けた。
その後、参加者全員に歯の状態の検査を行い、特に虫歯の有無や本数、過去に根管治療をしたかどうかなどに注目して、2つのグループで違いがあるかを統計的に比べた。
次のようになった。
・脳動脈瘤があった人たちの中では、虫歯を持っている人の割合が90.4%と非常に高く、健康な人たちの56.5%と比べて明らかに多かった。・また、根管治療を受けた人も多く、こちらも差が見られた。・虫歯があると脳動脈瘤ができるリスクが約4倍、根管治療経験があると約2倍高くなるという結果が得られた。
虫歯や根管治療歴が、脳の血管にこぶ(動脈瘤)ができるリスクと関係している可能性があることがわかった。虫歯の原因となる菌が血液に入り、脳の血管に悪い影響を与えることで、脳動脈瘤の形成につながっているかもしれない、
というおはなし。
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はい、それは非常に密接に関係があります。あなたが言及した「Cnm型の虫歯菌(Streptococcus mutansのCnm陽性株)」と脳内出血(特にくも膜下出血や脳出血)との関係は、すでに複数の研究で報告されています。今回の論文が扱っている「虫歯と未破裂脳動脈瘤」とも、深い連続性があります。
🧬 Cnm型Streptococcus mutansとは?
- 「Cnm」とはcollagen-binding protein(コラーゲン結合タンパク質)を指す。
- このタンパク質を持つStreptococcus mutansは、通常の虫歯菌よりも血管内皮に付着しやすい特性を持つ。
- 結果として、血管に炎症や障害を引き起こすことが報告されている。
📌 関連研究(いずれも今回の論文が引用)
- Nakano et al., Nat Commun, 2011
Cnm陽性菌をマウスに投与した実験で、脳出血が多発。
脳出血部位にCnmタンパクが確認された。 - Inenaga et al., World Neurosurg, 2018
脳出血やくも膜下出血患者の口腔内にCnm菌が多く存在。
健常者と比較して明らかな有意差あり。 - LaValley et al., Cerebrovasc Dis, 2023
虫歯が脳内出血のリスク因子である可能性を報告。
🧠 今回の論文との関係
今回の論文(Sun et al., 2025)は「未破裂の脳動脈瘤」と虫歯の関連に焦点を当てており、「脳出血(くも膜下・脳内出血)」そのものは調べていません。
しかし重要なのは:
- ✅ 動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血や脳出血になる。
- ✅ Cnm菌は、その「破裂」を誘発する要因となりうる。
- ✅ よって、今回の研究は「Cnm菌による脳出血への進行の前段階」に光を当てたものと解釈できる。
🧩 まとめると
虫歯 → Cnm菌が血流へ → 血管壁へ付着 → 炎症と劣化 → 動脈瘤形成 → 破裂 → 脳出血
今回の研究はこの「形成段階」に注目しており、Cnm菌の報告とは補完的な関係にある。
