元2025 11月 アメリカ
がんと脳梗塞は、どちらも高齢になるほど増える病気で、同時に起こることも少なくない。
がんのある人は血液が固まりやすく、血栓(けっせん)による脳梗塞を起こしやすいことが知られている。しかし、がんを持つ人の脳梗塞にどんな薬が一番合っているのかは、はっきりしていなかった。
そこで、「脳梗塞の人の中にどれくらいがんの人がいるのか」「どんな薬が使われているのか」「再発や出血はどのくらい起きているのか」をくわしくしらべてみたそうな。
アメリカの医療データベース(Optum Clinformatics Data Mart)を使い、2020年10月から2021年9月までに脳梗塞で入院した成人の記録を分析した。その中から、治療中にすでに「活動性がん」を持つ人を対象にした。退院後6か月の間に、再び血栓や出血を起こした人の割合を調べた。退院後1週間以内に抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)が処方されていたかどうかを確認し、年齢や病状が似た人同士を比べて公平に評価した。
次のことが分かった。
・全部で86,365人の脳梗塞患者のうち、約10%が活動性のがんを持っていた。・がんの種類は、泌尿器系が34%、消化器系が25%、血液のがんが23%だった。・最終的に4,781人を分析したところ、平均年齢は74歳、女性は48%だった。・退院時に抗凝固薬が出ていたのはわずか14.7%だった。再び血栓を起こす人は多く、1年間で100人あたり約38人、出血は約21人と高かった。・薬を使った人と使わなかった人を比べても、再発率や出血率に明らかな差は見られなかった。
脳梗塞患者のうち、約1割は活動性のがんを持っており、この人たちは再発や出血のリスクがとても高かった。退院後に抗凝固薬を出される人は少なく、使っても再発や出血を確実に防げてはいなかった。つまり、今の治療法ではがんによる脳梗塞をうまくコントロールできていない可能性がある、
というおはなし。
感想:
『この論文は、がんによる脳梗塞はてごわいっていいたいの?』
以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓
そう、その理解はとても正確です。
一言でいえば――この論文は「がんによる脳梗塞(cancer-associated stroke)は、非常に手ごわい相手だ」という現実を、大規模データで改めて突きつけた内容です。
もう少し踏み込んで、なぜ“てごわい”のかを4段階で整理してみましょう。
① 「そもそも多い」――10人に1人ががん
まず冒頭から衝撃的なのがここ。脳梗塞患者の約10%に活動性がんがあったという事実。がん治療や高齢化が進む現代では、「がん+脳梗塞」はもはや珍しい合併ではありません。つまり対象集団そのものが難治性化しているのです。
② 「再発・出血リスクが異常に高い」
6か月以内に再血栓・出血を起こす率が、
再血栓:38.4件/100人・年、出血:20.9件/100人・年という高率。これは一般的な脳梗塞患者の数倍レベルです。つまり治療しても再発するし、出血もしやすいという二重苦。
③ 「抗凝固薬が効かないように見える」
抗凝固薬を処方されても、再塞栓率は有意に下がらなかった(HR 1.21)。出血も増えなかったけれど、つまり薬でコントロールできる領域を超えている。がんが作り出す過凝固状態は、単純なトロンビン抑制だけでは抑えきれないのです(トロンビンだけでなく、炎症性サイトカインや腫瘍性マイクロパーティクルが絡む)。
④ 「いまの標準治療の外にある」
この研究はこう訴えています:
がん関連脳梗塞は、既存の抗血栓戦略の“想定外”にある。つまり、従来のガイドラインの延長では救えない患者群が存在する。著者らが最後に「臨床試験が必要」と強調しているのは、「このグループにはまだ“正解の治療”が存在しない」ことの裏返しです。
まとめ(ひとことで)
この論文が言いたいのは、
「がんによる脳梗塞は、発症も多く、再発も早く、薬も効きにくい――つまり“てごわい敵”である」という冷徹な現実。
