元2025 12月 アメリカ
心房細動は、脳卒中の中でも特に重症になりやすい心原性脳塞栓症の大きな原因である。
そのため、心房細動を起こしやすくする要因、逆に起こしにくくする要因を知ることは、脳卒中予防にとって非常に重要である。
オメガ3脂肪酸については、
血液中のオメガ3が多い人ほど心房細動が少ないという話がある一方で、
魚油サプリを飲むと心房細動が増えるという報告もあり、意見が割れてきた。
特にUK Biobankという大規模データを使った研究で魚油サプリは危ないとされたことで、脳卒中に関心のある人の間でも混乱が生じていた。
そこで、血液中のオメガ3の量と、魚油サプリを飲んでいるかどうかの両方を調べて、心房細動との本当の関係をくわしくしらべてみたそうな。
UK Biobankに登録された一般の人たちの健康データを使った研究である。
最初から心房細動がない人を対象とし、
約26万人で血液中のオメガ3を測定し、
約46万人で魚油サプリの使用状況を確認した。
平均で10年以上、心房細動が起こるかどうかを追跡している。
年齢や性別、生活習慣、持病など、心房細動に関係しそうな要素をできるだけ考慮して解析が行われた。
特に重要なのは、年齢をきちんと細かく調整した解析を行った点である。
次のようになった。
・血液中のオメガ3が多い人ほど、心房細動は起こりにくかった。
オメガ3が多いグループでは、心房細動の発症が約1〜2割少なかった。DHAやEPAといった成分ごとに見ても、同じ傾向が確認された。
・一方で、魚油サプリを飲んでいるかどうかについては、年齢を正しく調整すると、心房細動との関係は見られなかった。・これまで魚油サプリで心房細動が増えると言われてきた理由は、高齢の人ほどサプリを飲み、かつ心房細動も多いという当たり前の関係を、統計的にうまく取り除けていなかった可能性が高い。
血液中のオメガ3が多い人ほど、心房細動になりにくかった。
また、普通の量の魚油サプリを飲むこと自体が、心房細動を増やすとは言えない。
脳卒中予防の視点でまとめると、食事や一般的なサプリでのオメガ3摂取は、
心房細動、ひいては脳卒中リスクを下げる方向に働く、
というおはなし。
感想:
以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓
結論
結論から言うと、「言われてきた」のは事実だが、その根拠は限定的で、かなり歪んだ形で広まった、という位置づけになる。
整理
流れを切り分けると次のとおりである。
1. 「オメガ3が心房細動の原因」という話の主な出どころ
主な出どころは、高用量の医薬品オメガ3(1.8〜4 g/日)を使ったランダム化比較試験(RCT)である。これらの試験では、心血管イベントは減らない一方で、心房細動の発症が相対的に増えたという結果が出た。ここだけ切り取られて強調された。
2. その結果が一般の食事・サプリへ拡張されてしまった
この結果が、食事由来のオメガ3や、一般的な魚油サプリにもそのまま当てはめられてしまった。しかしRCTで使われているのは生理的摂取量を明確に超えた薬理量であり、条件がまったく異なる。
3. 血中オメガ3を指標にした研究では逆の傾向が多い
一方で、血中オメガ3濃度を指標にした観察研究(コホートやメタ解析)では、一貫して「血中オメガ3が高い人ほど心房細動は少ない」という逆の結果が出続けている。今回のUK Biobank解析もここに一致する。
4. 「魚油サプリで心房細動が増える」とした過去の解析の弱点
「魚油サプリで心房細動が増える」とした過去のUK Biobank論文では、年齢補正を雑に(二値化で)処理していたことが大きな問題になりうる。年齢を連続変数として扱うと関連が消失するというのが、今回の論文の重要点である。つまり原因はオメガ3ではなく、「高齢者ほどサプリを飲み、かつ心房細動が多い」という交絡だった、という解釈が成り立つ。
総合すると
- 低〜中等量のオメガ3(食事・通常サプリ)→ 心房細動リスクは低下方向
- 高用量の医薬品オメガ3 → 心房細動リスクが上がる可能性あり
このように、用量依存、あるいはU字型の関係として捉えるのが整合的である。
まとめ
つまり「オメガ3は心房細動のもと」という言説は、高用量薬剤の結果を一般栄養学に雑に拡張した誤解が、メディアや解説を通じて定着したもの、と理解するのが妥当である。
