元2025 12月 日本
・全体を平均すると、「リハビリを60分以上やっても、良いとは言えない」という結果になった。・しかし、よく見ると話は単純ではなかった。リハビリの効果がとても大きかった人たちでは、自立できる確率が約17%も高くなっていた。
一方で、・ほとんど効果がない・むしろ成績が悪くなるような人たちもいた。
・リハビリの効果が大きかったのは、
・入院時のADLがかなり悪い(重症)・意識は比較的はっきりしている・持病が少ない・血栓を溶かす治療や血管を開く治療を受けている
といった人たちだった。・逆に、
・中くらいの障害・持病が多い・高齢
といった人では、たくさんリハビリをしても効果は小さかった。
指摘はかなり筋が通っている。少なくとも、この論文の結論をそのまま「重症者に効く」と一般化するのは危うい。
あなたの主張を、論文の設計に沿って2〜3段で検証する。
1) そもそもこの研究の「重症」は、一般にイメージする重症とズレる
この論文は対象を「脳梗塞で、発症早期にリハ開始でき、一定の条件を満たす人」に絞っている。実際に、意識レベルでいえばJCS 0〜1相当を条件にしており、昏睡・深い意識障害は入ってこない(少なくとも設計上は外れている)。つまり、この研究の「重症」は、主にADLの低さで定義された“機能的重症”であって、「生命危機としての重症」「全身管理が厳しい重症」を含みにくい。
ここで「重症者に効く」と言うと、読者は普通、昏睡や重篤な全身状態まで含めて想像する。そこにギャップがある。これはあなたのいう「巧妙な認知トリック」として成立する。
2) 「余命短そうな人を除けば効果が見えるだけ」仮説も、かなり当たり得る
この研究は、短期死亡や侵襲的治療(人工呼吸やカテコラミンなど)を伴うような患者を除外している。これは「リハビリの効果」を見るというより、「リハビリを十分やれる土俵にいる人」を集める操作にもなる。
すると、結果として
・回復する余地(ADLは悪い)がある
・しかし生理学的な余力(意識・併存疾患など)は残っている
という層が残りやすい。そこで高用量リハの効果が出たとしても、それは
「重症だから効く」
ではなく
「回復余地が大きいのに、死にそうではない人には効く」
と言い換えたほうが正確になる。
あなたが言う「余命が短そうな人を除けば〜」は、まさにこの構図の要約で、論文の議論(“生理的予備能がある重症”に効果が大きい、という含意)とも整合する。
3) ただし一点だけ注意:それでも論文が示した“差”は無視できない
あなたの批判が正しいとしても、この論文が示しているのは
「同じ“土俵に残った患者群”の中ですら、リハの効き方が極端に割れる」
という点である。平均効果がはっきりしない一方で、上位群では自立回復が大きく伸び、下位群では伸びない(むしろマイナス)という構造は、この研究の核だ。
つまり、論文の価値は「重症者一般に効く」ではなく、むしろ
「“重症”というラベルでは足りず、反応性は層別化される」
にある。
あなたの立場で一段鋭くまとめるなら、こう言える。
・この論文は“最重症(昏睡・全身不安定)”を除外しているため、「重症全体に効く」とは言えない
・実際に効いているのは「ADLは悪いが、意識が保たれ、併存疾患が少なく、急性期治療も受けている=回復余地と余力を併せ持つ層」である
・言い換えると「死にそうな人を外すと効果が見える」という側面は否定しにくい
・ただし同じ条件の中でも“効く群/効かない群”の差が大きいという点は、この研究の本体である
