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2026年4月25日

降圧にACE阻害薬を使うと血管性認知症の可能性が高まる?

2026  4月  イギリス


血管性認知症は、脳の血流障害が積み重なって進む認知症であるが、今のところ病気そのものの進行を止める治療はほとんどない。

そこで、すでに使われているコレステロールの薬、血圧の薬、炎症を抑える薬の中に、血管性認知症の予防に使えそうなものがないかをくわしくしらべてみたそうな。



実際に薬を飲ませて比べる試験ではなく、Mendelian randomizationという遺伝学の手法を使って、46の薬の標的が血管性認知症にどう関わるかを調べた。
対象は、脂質を下げる薬、降圧薬、抗炎症薬の標的である。評価には、血管性認知症の診断だけでなく、白質病変、fractional anisotropy、mean diffusivity、ラクナ梗塞といった、脳小血管病に関係する画像指標も使われた。さらに、別の解析法でも確かめて、結果が大きくぶれないかを見ている。  



次のようになった。

・全体としては、多くの薬について、血管性認知症の予防や治療に使えそうだと強く言える証拠は乏しかった。その中で、β1アドレナリン受容体遮断は、血管性認知症リスク、白質病変、mean diffusivity、ラクナ梗塞に対して、よい方向を示しており、有望な候補と考えられた。

・一方で、ACE阻害は予想に反して、血管性認知症リスクを高める方向を示した。


既存の脂質低下薬、降圧薬、抗炎症薬の大半については、血管性認知症への転用を積極的に支持する証拠は乏しい。その一方で、β1遮断薬は今後さらに調べる価値がある候補であった。また、ACE阻害薬についてはリスク上昇の可能性が示されたため、今後の追跡研究が必要である、


というおはなし。

ACE阻害薬で認知症




感想:

『これまでもACE阻害薬でいやな噂はあったの?』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓



あった、と言ってよいです。

この論文でも著者らは、ACE阻害で血管性認知症リスクが上がるように見えた結果について、「直感に反する」としつつも、過去にも似た方向の報告があったと書いています。具体的には、
観察研究で全認知症リスクに不利な可能性が出ていたこと、
さらにアルツハイマー病を対象にしたMendelian randomization研究でも、同様にACE阻害が不利かもしれないという結果があったこと、
を挙げています。 

つまり、
今回いきなり初めて出た不穏シグナルではなく、
「以前から少し気持ち悪い話はあった」
という位置づけです。 

ただし重要なのは、これで
「ACE阻害薬は危険と確定」
ではないことです。この論文の著者自身も、薬剤安全性の追跡研究で確認が必要だとしています。しかもACE阻害薬は血圧、心不全、腎保護などで実臨床上かなり重要な薬なので、論文1本で即アウトとは扱っていません。 

かなり乱暴にひとことで言うと、

ACE阻害薬は「血圧にはいいのに、認知症側では本当に同じくいいのか?」という以前からのモヤモヤがあり、この論文はそのモヤモヤを少し強めた、

という感じです。



『高齢者が降圧がんばるとボケが進むっていうよね、 それとはちがうの?』



少し似ていますが、同じ話ではありません。⚠️

世間で言われる「高齢者が降圧をがんばりすぎるとボケる」は、主に
血圧を下げすぎて脳灌流が落ちる、
起立性低血圧が起きる、
とくに拡張期血圧が低すぎる、
という臨床的な心配を指すことが多いです。実際、起立性低血圧は認知機能低下や将来の認知症リスク上昇と関連するという報告がありますし、超高齢者では血圧と認知症リスクが単純な直線関係ではなく、低すぎても高すぎてもよくないようなU字型の見え方もあります。 ([ScienceDirect][1])

一方、この論文でACE阻害薬が「変な向き」に見えたのは、
単に「血圧を下げすぎたから」ではなく、
ACEという標的そのものをいじることに、血圧低下とは別の影響があるかもしれない、
という話です。著者らも、血圧自体は高いほどVaDリスクが上がるのに、ACE阻害だけが逆方向に見え、しかもAGTR1では同じ傾向が出なかったので、血圧以外の機序を疑っています。 

つまり整理すると、

「降圧しすぎでボケるかも」
は、主に治療強度や低血圧・脳低灌流の問題。

「ACE阻害薬が怪しく見える」
は、薬の標的そのものの問題かもしれない、という話。

ここは分けて考えたほうがいいです。 

さらにややこしいのは、ランダム化試験では、適切に管理された降圧はむしろ認知機能保護寄りの結果も出ていることです。たとえば SPRINT MIND では、強化降圧群は認知症そのものの有意差は明確でなかった一方、MCIは有意に減りました。別の2023年報告でも、集中的な血圧介入で認知症リスク低下が示されています。つまり「降圧一般が悪い」とは言えません。 ([PubMed][2])

なので、かなり雑に一言で言うと、

降圧そのものは基本的に悪者ではない。
でも、超高齢者やフレイルでは「下げすぎ」は別問題。
そしてACE阻害薬の件は、それとも別に、標的特異的な不穏さがあるかもしれない。

この3層で見るのがいちばんズレにくいです。
必要なら次に、
「なぜ高齢者では低すぎる血圧がまずいのか」
を脳灌流の図式で整理します。

[1]: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0378512223004723?utm_source=chatgpt.com "Systematic review and meta-analysis of longitudinal studies"
[2]: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30688979/?utm_source=chatgpt.com "Effect of Intensive vs Standard Blood Pressure Control on ..."



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