リハビリ病院でのこと。
担当の医師がいるのだけれど、回診に一度も来なかった。
彼が回診している様子を見たこともなかった。
そのフロアには約50名の患者が居て、
担当する医師が3名居た。
同室の患者仲間の一人は別の医師の担当であったが、
やはり回診に来ない。
3人の医師のうち1人は物腰も穏やかでマメに病室を動きまわっていて
評判もよかった。
他の2人の医師は患者間での評判はひどかった。
例えばリハビリ計画面談の際に、
本人や家族と目を合わそうともせず、
療法士や看護師からあがってきたチェックシートのみを見て、
『良くなる可能性はほとんどない』など、
あれやこれやとキッツいことを言うらしい。
もちろんリハビリ訓練を見に来るなんてことは一切ないものだから、
あんたなんかにわかったふうなことを言って欲しくない、
という気持ちが当然のように沸き起こる。
能面のように感情を表に出さず、
機能検査の結果数値のみと仕事をする。
おそらく 医師になりたてのころはそんなじゃなかったと思う。
自分の医学知識と経験を活かして患者の心の支えになろう、と
熱い意欲を持っていたはずである。
しかし
脳卒中患者の少なからぬつらく悲しい境遇に遭遇しすぎて、
しかも己の無力さに打ちのめされて、
きっと心を閉ざしてしまったのだろう…
そう直感した。