元2022 2月 オーストラリア
画像診断技術の進歩により未破裂脳動脈瘤がみつかることがおおくなってきている。
未破裂脳動脈瘤の自然暦をしらべた ISUIAや日本のUCASなどの大規模研究では、ランダム化は行われておらず、破裂リスクの高い例は事前に治療へまわされる選択バイアスがかかっている可能性がある。
そこで、メタアナリシスによる破裂率の推定を、特に10mm以下の瘤についてこころみたそうな。
2020年8月までの研究を厳選して、データを統合 再解析した。
次のことがわかった。
・10mm以下の未破裂脳動脈瘤13800個を含む31の研究がみつかった。ランダム化比較試験はなかった。・10mm以下の破裂率は3.7年間で、1.1%だった。・7mm以下では3.6年間で0.9%だった。・5mm以下では、3.5年間で1.0%だった。・3mm以下では、3.8年間で0.8%だった。高質な研究に限定すると3.9年間で1.8%だった。
10mm以下の未破裂脳動脈瘤は、3.7年間で0.8-1.5%が破裂する。サイズ別にもほぼ同様だった、
というおはなし。
感想:
だいたい4年で1%くらいだからめっちゃ低いってこと。
未破裂脳動脈瘤の治療には2つの問題があって、
1. 治療の根拠がない。
コブにクリップやコイルをはめると破裂や死亡が減少することを裏付けるランダム化比較試験がこの世に存在していない。
じっさいクリップしても破裂率がぜんぜん変わらないという報告もある。
2. 「破裂するとくも膜下出血で3人に1人が死亡」はあてはまらない。
くも膜下出血の症状はおもに頭痛や吐き気のみだから、患者のおおくは深刻に考えず我慢して病院にゆかない。
そして自然に治る。
病院に担ぎ込まれるのはトップ10%の重症エリートだけなので、くも膜下出血はまれな病気とされ死亡率が見かけ上高い。
なるほど剖検調査ではくも膜下出血は10倍以上の頻度でおきていて、潜在的には脳梗塞とおなじくらいの患者がいる。
だからたとえコブが破裂しても死に至ることはめったにない。