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2023年8月5日

血栓溶解薬の神話:効果あるのか?

2023  7月  イタリア


脳梗塞は軽症であっても、90日後にはその37%になんらかの障害が残るという。

そのため、血栓溶解治療薬アルテプラーゼが軽症の脳梗塞患者にもおおく使われるようになった。

しかしその有効性はあきらかになっていないので、くわしくしらべてみたそうな。



2015-2022年に脳梗塞で入院したすべての患者記録のうち、

神経症状NIHSSスコアが0-5の軽症であり、かつ4.5時間以内の者を対象とした。

さらに「軽症」の定義を厳格化するために、NIHSS評価のうち意識、視覚、言語、無視、片肢、の各項目で1点以上に該当する者を除外した。

そしてアルテプラーゼの適用の有無で層別化して比較した。



次のことがわかった。

・除外基準の適用後、319例の患者を対象とし、アルテプラーゼ投与群(175例)と非投与群(144例)に分けた。

・両群は人口統計学的データと臨床データに関して同等であった。

・3ヵ月後の良好な転帰(障害度mRSスコアが0-1であることと定義)の割合は、アルテプラーゼ群で82.3%、非アルテプラーゼ群で86.1%と同程度であった。

・脳出血の合併症と死亡の発生頻度は低く、アルテプラーゼ治療による影響はみられなかった。


アルテプラーゼの使用は安全ではあるが、軽い脳梗塞の患者の転帰改善にはつながらないことを示している、


というおはなし。
血栓溶解薬アルテプラーゼ

血栓溶解薬アルテプラーゼ

軽症脳梗塞患者

軽症脳梗塞


感想:

アルテプラーゼを投与してもしなくても、転帰不良はせいぜい16%くらいしかいなかったわけで、一部の報告にある軽症でも37%に障害が残るとはだいぶん違う。

軽症の定義のあいまいさを利用して、勝手に良くなる患者をおおく治療対象に含めることで成果を大幅に盛っていた可能性がある。


以前にも、同じからくりが臨床試験の途中でバレそうになり、突然試験中止になった例がある↓。




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