元2025 3月 カナダ
一過性脳虚血発作(TIA)や軽度脳梗塞は、一見して回復が早く軽症に見えるが、その後の長期的な脳卒中リスクについては十分に理解されていない。
過去にも短期的リスクを示す研究は存在したが、5年から10年先までを見据えた再発リスクを明確に示すデータは限られていた。
そこで、TIAまたは軽度脳梗塞後の長期的な脳卒中リスクを体系的に評価しなおしてみたそうな。
MEDLINE、Embase、Web of Scienceを用いて2024年6月26日までの関連研究を検索し、TIAまたは軽度脳梗塞後に少なくとも1年間の追跡期間を持つ前向きまたは後ろ向きコホート研究を対象とした。
38件の研究(計171,068人)が基準を満たし、各研究の筆者から未公開の集計データを取得した上で、年間発症率と累積発症率をランダム効果メタアナリシスにより算出した。
次のことがわかった。
・対象者の中央値年齢は69歳、男性の割合は中央値57%であった。・TIAまたは軽度脳梗塞後の脳卒中累積発症率(リスク)は、初年度で5.9%、5年で12.8%、10年で19.8%と推定された。・年間発症率は、初年度が5.94件/100人年、2〜5年目が1.80件、6〜10年目が1.72件であり、長期にわたってリスクが持続していることが明らかとなった。・地理的にはアジアや北米においてヨーロッパよりリスクが高く、2007年以降のコホートや積極的なアウトカム追跡を行った研究ではより高い発症率が観察された。・TIAのみ、あるいは初発イベントのみを対象とした場合ではリスクは高くなかった。
TIAや軽度脳梗塞を経験した患者は、その後10年にわたって脳卒中の高リスク状態にあることが明らかとなった。とくに初年度のリスクが高く、長期的にも年間1.7〜1.8件/100人年の発症率が持続するため、短期的な対策だけでは不十分である。今後は長期視点での脳卒中予防策の構築と、地域・時代背景を考慮した個別化アプローチが求められる、
というおはなし。
感想:
『いままでの似たような研究とどこが違うの?』
以下、医師国家試験正答率98%のAIの回答↓
過去研究との違いは?
JAMA 2025年のPERSISTメタアナリシスは、TIAや軽度脳梗塞後の脳卒中リスクに関する研究の中で、以下の点で際立っている。
① 対象人数と追跡期間の圧倒的な規模
- 対象は171,068人、最大10年追跡のメタ解析
- 多くの先行研究は短期(90日〜1年)かつ小規模
→ 長期リスクを信頼できる規模で示した点が新しい。
② 年間発症率(incidence rate)の精緻な推定
- 各研究から未公開データを直接入手して発症率を算出
→ 単なる累積率でなく、時間ごとの発症スピードを示した。
③ 層別解析の深さ
- 地域(アジア・北米 vs 欧州)
- 年代(2007年以降 vs 以前)
- イベント種別(TIA単独、軽度脳梗塞含む)
- 初発か再発か
- アウトカム測定方法(能動的 vs 受動的)
→ 誰が危険かをサブグループ別に精密に評価している。
④ 時間が経ってもリスクが下がらない
- 年間1.7〜1.8件/100人年の発症率が10年間持続
→ 「最初の3か月だけが危険」という常識を覆した。
⑤ 国際的なバイアスの分析
- アジアや北米でのリスクが欧州より高い(アジアRR=1.62)
- アウトカムの測定法によって結果が変わる
→ 単純な地域比較にとどまらず、観察バイアスを考慮した解釈が可能。
まとめ
この研究は、従来の「再発率の確認」ではなく、長期・大規模・構造的なリスク再評価を行った点で画期的である。
誰が・いつ・どのように再発しやすいかを可視化し、予防戦略の個別化に向けた基盤を提供している。
