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2025年4月5日

なぜ働かない?脳卒中からの回復者が選ぶ“もう一つの生き方”

2025  4月  シンガポール


脳卒中後の「復職(Return to Work, RTW)」は、患者の生活の質と社会的自立において重要な目標である。特に若年層(18〜50歳)の脳卒中患者は、就労年齢にあることから、復職できない場合の社会的・経済的損失が大きい。

近年、若年者の脳卒中が世界的に増加している一方で、身体機能は回復しても復職に至らないケースが多く、その背景は十分に解明されていない。そこで、脳卒中後の復職率とその関連要因をくわしくしらべてみたそうな。



2020年から2022年にかけて、2つの病院で虚血性脳卒中を発症した18〜50歳の患者を対象に調査を行った。患者背景、入院時の神経学的重症度(NIHSS)、90日後の機能回復度(modified Rankin Scale:mRS)、および3ヶ月後の復職状況についてデータを収集し、復職に関連する因子を統計学的に解析した。さらに、同様の研究を対象とした系統的レビューとメタ解析を加え、結果の妥当性と一般化可能性を検討した。



次のようになった。

・シンガポールの2施設における調査では、虚血性脳卒中患者362名中、87.8%が90日以内に良好な機能回復(mRS 0–2)を達成したにもかかわらず、実際に復職できたのは68.8%にとどまった。

・特に、大血管アテローム性病変、糖尿病、高いNIHSSスコア(発症時の重症度)、および高いmRSスコア(回復度が低い)を持つ患者は復職率が低かった。

・メタ解析の結果でも同様の傾向が確認され、復職率は63.2%、機能回復率は84.7%であった。


身体的に良好な機能回復を達成しても、すべての若年脳卒中患者が復職できるわけではなく、その背景には身体機能以外の要因—たとえば、疲労感、うつ、認知障害、社会的支援の不足など—が影響している可能性がある。復職をより確実に支援するためには、身体機能だけでなく、心理社会的側面にも配慮した多面的なリハビリテーションが必要である。また、特に糖尿病や大血管病変を持つ患者に対しては、早期からの個別対応が重要とされる、


というおはなし。

俺じゃないよ



感想:

『じぶんもわりと早くに回復できたんだけど、発症後一度も出社せずに仕事を辞めた。
こういうケースって、わりと ありがち?』





回復したのに復職しない? その背景にある意外な真実

脳卒中後の復職(Return to Work: RTW)は、多くの研究で機能回復と並ぶ重要な目標とされている。しかし近年、身体的には回復しているにもかかわらず、復職しない患者が少なくないことがわかってきた。

たとえばある研究では、90日以内に機能的な回復(mRS 0–2)を達成した人が87.8%にのぼる一方で、実際に復職できたのは68.8%にとどまった。つまり、約2割の人が「身体的には復職可能でも、実際には職場に戻らなかった」ことになる。

なぜ「回復=復職」ではないのか?

このギャップの背景には、以下のような要因があると考えられる:

  • 疲労感や集中力の低下、認知的なパフォーマンスの限界
  • うつや不安など心理的影響
  • 社会的役割の変化に対する戸惑い
  • 仕事そのものに対する価値観の再構築
  • 再発への不安や家族からの過保護

「復職しない=失敗」とは限らない

一部の人にとっては、脳卒中が人生の転機となり、以前の働き方を見直すきっかけになることもある。「ポストトラウマ的成長(Post-Traumatic Growth)」という言葉があるように、人生観や価値観の変化は自然な反応でもある。

このような側面は、復職率やmRSスコアといった数値では捉えきれない。「復職しない」という選択が、必ずしも否定的な結果ではないことを、支援者側も理解しておくことが重要である。




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