元2025 5月 イギリス
・1108件の中から条件に合った研究は3件であった。対象者は全部で258名(脳梗塞200名、脳内出血58名)で、どの研究も信頼性はおおむね低〜中程度だった。・最初の段階では、脳内出血の人のほうが腕の動きが悪く、より重い障害を持っていた。・しかし、6か月後には両者の回復レベルに大きな差は見られなかった。・特に回復は発症から2週間ほどの間に大きく進んでいた。
🧠 なぜ脳内出血は「重くても回復する」のか?
✅ 1. 「血腫の圧迫」は時間とともに自然に軽くなる
脳内出血では、血のかたまり(血腫)が脳を圧迫することで麻痺が起こる。
しかし、血腫は2週間〜3か月ほどで自然に吸収・縮小される。
つまり、麻痺の原因そのものが時間とともに消えていく。
👉 一時的な「シャットダウン」が解除されるように、機能が戻る。
✅ 2. 出血による“追加の壊死”が起きにくい
脳梗塞では血流が止まって神経細胞が死んでしまうため、基本的に不可逆的。
一方、脳内出血では血は出るが、血流は止まっていない。
👉 そのため、脳細胞は“生きているけど動けない状態”で待機していて、血腫が吸収されれば再起動できる。
✅ 3. 炎症や浮腫の回復とともに神経活動が再開する
出血により周囲の組織は腫れ(浮腫)たり、炎症が起きる。
これも自然に治まっていくことで、沈黙していた神経ネットワークが再び働き出す。
👉 一時的な「機能停止」だったものが、時間とともに回復。
✅ 4. 早期の大きな回復は“自然回復”の一環
実験的にも、人間でも、脳卒中後の最初の数週間〜2か月で自然回復が起きやすいことが知られている。
特にICHでは「血腫吸収」と「脳の可塑性」が重なる時期が早く、回復が急峻に見える。
🧩 補足:比例回復則(Proportional Recovery Rule)とのズレ
一般には「発症初期の機能低下量の約70%が自然に回復する」とされており、これを**比例回復則(70%ルール)**と呼ぶ。 しかし、今回のデータでは、重度の脳内出血(ICH)患者がこの予測を上回る回復を示しており、比例回復則に当てはまらない“non-fitter”の中でも、良好な経過をたどった例が多数含まれていた。 👉 これは、脳内出血では神経構造が実際には保たれており、「血腫による一時的な機能停止」が回復とともに解除された結果として説明できる可能性がある。
🎯 わかりやすく一言で:
脳内出血の麻痺は、「壊れたから動かない」のではなく、「押しつぶされて眠っていた」だけであり、時間がたてば自然と目を覚ますことがある。
このようなメカニズムをもとに、論文は「脳内出血だからといって予後を悲観的に決めつけるべきではない」と強く示唆しています。