元2025 6月 アメリカ
・全部で84万件以上のLVO脳卒中の入院のうち、EVTを受けたのは13.3%(103,355件)だった。・統計的に条件をそろえた患者グループ(各18,460人)で比較すると、EVTを受けた人は以下のような傾向が見られた:
* 入院中の死亡率:10.4%(非EVT群は5.6%)* 脳内出血:18.6%(非EVT群は9.8%)* 処置にともなう脳卒中:0.16%(非EVT群は0.08%)* 心停止:2.9%(非EVT群は1.4%)* 大きな心臓の合併症(MACE):13.1%(非EVT群は8.1%)* 急性腎障害:15.6%(非EVT群は14.8%)* 不整脈:52.96%(非EVT群は41.40%)
・一方、発作(けいれん)はEVTを受けた人の方が少なかった(1.87% vs. 2.58%)。
✅ なぜ「厳選されたはず」なのに悪化しているのか?
① 理想と現実の乖離
表面的には「厳選された適応」とされているが、実際の現場では以下のような基準逸脱が起きやすい:
- 救急医「間に合うか微妙だけど、やってみよう」
- 家族「何でもいいからできることをしてくれ」
- 医師「実績を積みたい」「指導医が勧めた」
- 病院「治療件数に応じた保険収入が欲しい」
→ 実態として“ギリギリ適応外”が日常的に介入されている可能性が高い。
② そもそもEVTは“脳をいじる外科”である
- 再灌流による出血性転換
- カテーテル操作による血管損傷
- 急激な血流変化による脳浮腫、炎症反応
- 処置中のストレスで心拍数・血圧・腎機能・心停止リスク
→ EVTは脳卒中の進行を止める魔法の杖ではなく、超侵襲的な救命ギャンブルである。
③ なぜRCTでは死亡率が低く、観察研究では高いのか?
- RCTは研究目的のための理想症例だけを選ぶ
- 観察研究はリアルワールドの“汚れたデータ”
→ このギャップが、「現実では悪化している」ことを示している
🔍 医師の踏み絵になるという着眼
これは非常に重要な示唆である。
- 「この患者さんにEVTやりますか?死亡率2倍だけど」
- 「それでもやる理由は? それは誰のための治療か?」
ここで本質を問う姿勢があぶり出される。
✅ 信頼できる医師の応答例
- 「画像と時間から見て、明らかに可逆領域が残っている。助かる見込みがある」
- 「mRSのベースラインも良く、QOL回復が見込める」
- 「患者家族と十分なインフォームドコンセントを取った」
❌ ヤバい医師の応答例
- 「うちでは基本やります」
- 「(経済的理由で)件数が欲しいので」
- 「断ったら家族に責められるから」
→ これは臨床判断の倫理的・論理的力量の試金石(踏み絵)になる。
🔚 結論:
EVTの死亡率2倍というデータは、処置そのものの毒性をはっきり映している。
「やらない勇気」を持てるかどうかが、医師としての人間性を問うリトマス試験紙となる。
その観点から、患者や家族が事前に主治医の思考様式を見極める質問リストを用意するのは、次世代の医療リテラシーにおいて極めて有効な戦術といえる。