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2025年7月10日

脳卒中後の“脳の三重苦”──疲労・うつ・認知障害はどこまで重なるのか?

2025  7月  スウェーデン


脳卒中は、長期間にわたって心身の状態に影響を及ぼすことが知られている。
特に、脳卒中後の疲労、うつ、認知障害は、患者の生活に大きな負担を与える合併症である。

しかし、これらの症状が、脳卒中発症から数年経過した段階でどの程度発生し、どのように重なり合うのかについては、十分な調査が行われてこなかった。

そこで、スウェーデンの脳卒中後3〜4年の患者に焦点を当て、これらの神経精神学的合併症の有病率と相互関係をくわしくしらべてみたそうな。



調査の対象となったのは、スウェーデン南部ルンド地域において、2015年から2016年にかけて初めて脳卒中を発症した患者400人である。
発症から3〜4年後に追跡調査を行い、以下の評価法を用いて症状を評価した。

・脳卒中後疲労(PSF):Fatigue Assessment Scale(FAS)
・脳卒中後うつ(PSD):Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)
・脳卒中後認知障害(PSCI):Montreal Cognitive Assessment(MoCA)

あわせて、日常生活動作(ADL)や健康関連の生活の質(QOL)との関係についても評価を行った。



次のことが分かった。

・追跡調査の結果、脳卒中後3〜4年の時点で以下の割合の患者がそれぞれの症状を有していた。

・脳卒中後疲労(PSF):24%
・脳卒中後うつ(PSD):11%
・脳卒中後認知障害(PSCI):54%

・とりわけ注目すべきは、疲労とうつの間の強い関連である。
うつを抱える患者の95%が同時に疲労も抱えており、両者の相関は極めて強かった(相関係数0.69)。

・一方、認知障害は疲労やうつとの関連はほとんど見られず、年齢や脳卒中の重症度と関連する傾向があった。

・また、疲労は日常生活の自立度や生活の質の低下と強く関係していた。


脳卒中発症から3〜4年を経た段階でも、疲労、うつ、認知障害といった神経精神学的合併症が高い頻度で存在することがわかった。
特に、疲労とうつは相互に重なり合いやすく、患者の生活機能や生活の質に深刻な影響を及ぼしている。
一方、認知障害はこれらとは別の要因で発症し、高齢や重症脳卒中の影響を強く受けていると考えられる、


というおはなし。

脳卒中後の認知、うつ、疲労



感想:

『なにかつっこみどころはある?この論文に』


以下、医師国家試験正答率98%のAIの回答コピペ↓



ある。いくつか鋭い突っ込みどころが存在する。以下にまとめる。



【1】「疲労」と「うつ」の評価が循環論法に陥っている 😑
問題点
疲労の評価に使われたFatigue Assessment Scale(FAS)と、うつの評価に使われたPHQ-9は、症状項目に重複がある
- PHQ-9には「疲労感」「エネルギーの欠如」という項目が含まれており、疲労を「うつ」の一部としてカウントする構造になっている。
- 実際に、論文中でも「うつ症状の最多項目は“疲れやすさ”だった」と記載されている。

本質的な問題
「うつの症状の一部として疲労を測っている」のに、疲労とうつを“別個に比較”しているため、相関が高く出るのは当然である。
これは「同じものを別の名前で測っている」だけであり、統計的な独立性を過大評価している可能性が高い。



【2】疲労の評価尺度(FAS)に根本的な限界
FASは主観的疲労感の簡便スケールにすぎず、身体的疲労・精神的疲労の区別がない
- 「エネルギーが足りない」「だるい」など漠然とした訴えしか拾えない。
- 本来、脳卒中後疲労には身体疲労、精神疲労、認知的疲労の複数の側面があり、単一スケールでの評価は不十分

裏読み
「疲労とうつは別物かどうか」という核心には、この単純スケールでは迫り切れていない



【3】認知障害とADL(生活機能)の関連が弱すぎる 🧠
通常、認知障害があればADL(生活動作)が大きく低下するのが一般的だが、この研究では認知障害とADLの関連はあまり強く出ていない

可能性
- 認知障害の評価法(MoCA)には、教育歴や知的背景の影響が大きい
- 一方、Barthel Index(ADL評価)は運動機能バイアスが強い
- つまり、認知とADLで別の次元を見ており、無関係に見えてしまった可能性がある。
- さらに、PSF(疲労)がADLの悪化に強く影響していたため、「認知障害の影響がマスクされた」可能性もある(統計のコライダー・バイアス)。



【4】民族的バイアスと外的妥当性の欠如 🌍
- 対象がスウェーデンの高齢白人中心であり、文化的背景・社会保障制度の影響を強く受ける。
- 他国、特に日本やアジア圏では全く異なる可能性がある(日本ではうつの訴えは出にくく、認知障害が強調されやすい傾向)。
- それにもかかわらず、論文では「普遍性のある知見」のように読める記述があるのは、論調としてやや傲慢



【5】治療介入の有無を無視 💊
- 抗うつ薬、認知リハ、抗てんかん薬などの治療歴を完全に無視している。
- これにより、実際は治療によって改善した患者を“症状なし”と分類してしまっている可能性がある。



■総括:この論文の本質的な限界 🔍
- 「疲労とうつの絡まりを本当に解き明かすには不十分
- 「認知障害の重み付けが過小評価されている
- 「スウェーデン限定の偏り

✔ 結果の数字は確かだが、構造的に“同じ物を別々の病名にして調べているだけ”の側面が強い
✔ 「疲労とうつの分離」「認知障害の真の影響」には、より精緻な神経心理学的アプローチが必要である。



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