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脳卒中後のリハビリテーションにおいて、バランス機能の回復は極めて重要である。近年、バイノウラルビートという特殊な音響刺激が、脳のリズムや集中力に影響を与える可能性が注目されている。
バイノウラルビートとは、左右の耳にわずかに異なる周波数の音を同時に聞かせることで、脳内に特定の周期的なうねりを生じさせる技法である。これにより、リラックスや集中の状態を誘導することが期待されている。
そこで、バイノウラルビートが脳卒中患者のバランス機能や日常生活動作の改善に有効かどうかをくわしくしらべてみたそうな。
本研究は中国のリハビリテーション施設にて行われ、脳卒中発症から1年以内の患者30名を対象とするランダム化比較試験である。参加者は無作為に二つの群に割り付けられた。
バイノウラルビート群では、Quickshiftsシリーズの「Gravity Grapes」というアルバムに収録されたバイノウラルビート入り音楽を、作業療法中に14日間聴取した。
対照群では、通常の音楽を同じ条件で聴取した。
両群とも、標準的なリハビリテーションである運動療法などは共通である。介入の前後で、バランス機能、下肢機能、日常生活動作、認知機能、抑うつ状態を評価し、群間の違いを比較した。
次のようになった。
・バランス機能は、両群ともに改善がみられた。ただし、標準的なバランス評価では群間の差は認められなかった。しかし、詳細な動作解析機器による検査では、バイノウラルビート群の方が優れた改善を示した。
・日常生活動作は、バイノウラルビート群で有意に改善し、対照群を上回る結果となった。
・抑うつ状態は、バイノウラルビート群のみで明確な改善が確認された。
・下肢機能と認知機能については、両群ともに改善は認められたものの、群間の差は見られなかった。
・さらに、バイノウラルビート群では、バランス機能の改善と下肢機能、日常生活動作、抑うつ状態の改善が密接に関連していた。
バイノウラルビートを用いた音楽療法は、通常の音楽療法よりも、日常生活動作の改善や抑うつの軽減において優れた効果を示す可能性がある。加えて、バランス機能にも間接的な良い影響を及ぼすと考えられる。これは、バイノウラルビートが脳内のリズム、感情、運動に関わるネットワークを同時に活性化することによって、リハビリテーション効果を高めているためと推察される、
というおはなし。